著者
永井 貴博 吉田 仁 黒田 久泰 金田 康正
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG13(ACS19), pp.214-222, 2007-08-15

並列計算機の性能向上や数値計算法の進展は,大規模科学技術計算における大きな鍵となっている。特に浮動小数点数における演算においては、計算規模が増すに従ってより多くの計算量を必要とし、計算誤差も増大する。そのために、倍精度演算より有効桁数が多い 4 倍精度演算の必要性が高まってきており注目されている。4 倍精度数の表現には、倍精度浮動小数点数を 2 つ用いて表される 128 ビットデータ型があるが、SR11000 モデル J2 上の Hitachi 最適化コンパイラにおいて、4 倍精度演算は 2 つの倍精度データ型を用いてソフトウェアによって実現されており、倍精度演算に比べより多くの計算回数を必要とする。そこで本研究では、SR11000 モデル J2 上の Hitachi 最適化コンパイラを用いて 4 倍精度演算を定量的に解析し、FMA 命令 (Fused Multiply-Add) を用いて演算回数を削減することによって高速化を行い、最大で約 1.5 倍の高速な 4 倍精度積和演算を実現した。
著者
野田 宏 奈良林 直 吉田 智朗 中村 誠 桐本 順広
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.408-419, 2008 (Released:2012-03-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Failures on demand of a reactor core isolation cooling (RCIC) system in BWRs are the most frequent events of limiting conditions for operation during 1982-2006 in Japan, according to data gathered in Nuclear Information Archives (NUCIA). In this work, probabilities of failures of the RCIC system are analyzed by using the hierarchical Bayes method. The failures on demand of the RCIC system are classified into two groups; one is related to the demand at a periodical inspection test, which is performed almost every 13 months at the end of the periodical inspection of the nuclear power plant, and the other is related to the monthly surveillance test during plant operation. The hierarchical Bayes analysis shows the characteristics of probabilities of failures of each Japanese plant and also that probabilities of failures at the periodical inspection test are quite different from those at the surveillance test, comparing Japanese nuclear power plants with American ones. This paper provides a new approach to analyzing sparse failure data taken from nuclear power plants in Japan.
著者
永武 拓 玉井 秀定 秋本 肇 吉田 啓之 高瀬 和之
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
計算力学講演会講演論文集 (ISSN:1348026X)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.25, pp.718-719, 2012-10-06

The Fukushima Daiichi Nuclear Plant, Unit No.1, 2 and 3 which were under operation were automatically shut down when the earthquake occurred. After the earthquake, the tsunami reached the planst and all AC power was lost. This loss of AC power made it impossible to supply cooling water into the pressure vessel. After that, the water level in the pressure vessel became less and the meltdown occurred. But the loss of coolant and core uncovery process is unclear, because the plant parameters (water level, pressure, etc) could not be checked in the situation of loss of electric power. Now we are performing the numerical evaluation regarding to the core uncovery process in the Fukushima Daiichi Nuclear Plant Unit No.1 accident with the TRAC-BF1 code. In this study, the core uncovery process and the effect of isolation condenser for the reactor core cooling were investigated. This paper describes the results of the numerical evaluation on the core uncovery process.
著者
吉田 望 篠原 秀明 澤田 純男 中村 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.170, 2005 (Released:2010-11-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

設計用の地震動は多くは工学的基盤で設定されるが, この場合, 表層地盤の存在を考慮せず設定されることが多い。本論では, まず表層を考慮しないと工学的に重要な周波数領域で増幅率の評価を誤ることをケーススタディをにより示す。表層を考慮しないで設計用の地震動を定義することは, 表層から工学的基盤への下降波, 深い基盤からの再反射による上昇波などを無視することを意味するが, これが無視できないからである。さらに, 工学的基盤より上の表層の計算用地震動を工学的基盤で設定する場合の設定法として, 表層で線形の挙動を仮定して工学的基盤の波形を求める方法, 地表で設計用の地震動を設定する方法を示す。ケーススタディによればこれらの方法は弾性時にはほぼ完全に地表の波形を再現でき, また, 非線形挙動時でも既往の方法に比べれば格段に精度よい予測ができる。
著者
馬場 章 吉田 成 谷 昭佳 吉田 正高 吉仲 亮 川瀬 敏雄 肥田 康 吉谷 隆彦 津田 光弘
雑誌
じんもんこん2001論文集
巻号頁・発行日
vol.2001, pp.17-24, 2001-12-14

歴史学におけるディジタルアーカイヴの作成は、史料の複製として歴史学研究のプロセスの一環に位置づけられる。その目的は、史料のより効率的な利用と保存、そして公開である。破砕したガラス乾板画像と大型二次元カラー史料である国絵図を例に、それらのディジタル化から研究利用、さらには博物館展示による一般公開までの一連の過程を紹介し、歴史学におけるディジタルアーカイヴの意義について考察する。
著者
吉田 光由 米山 武義 赤川 安正
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.481-483, 2001-07-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10
被引用文献数
13 13

高齢者の肺炎の多くが口腔内細菌の誤嚥により引き起こされる誤嚥性肺炎であることが指摘されている. とりわけ, 誤嚥性肺炎起炎菌として歯周病菌であるグラム陰性嫌気性菌が注目されており, 口腔内に歯がある有歯顎者の方が歯のない無歯顎者よりも誤嚥性肺炎が発生する危険性が高いという報告も見受けられる. 我々は全国11カ所の特別養護老人ホーム入所者366名を口腔ケアを行う群 (ケア群184名, 平均年齢82.0歳) と行なわない群 (対照群182名, 平均年齢82.1歳) に分け, ケア群には, 看護士もしくは介護職による毎食後の歯磨きならびに1%ポピドンヨードによる含嗽の他に, 週に1回, 歯科医師もしくは歯科衛生士がブラッシングを行なったのに対し, 対照群では, 従来行われていたケアをそのまま継続することで, 両群の肺炎発生頻度を比較した. 2年間にわたる追跡調査の結果, 誤嚥性肺炎は, 脳血管障害の既往 (p<0.05) のあるADLの低下 (p<0.01) した者で有意に発生したものの, 有歯顎者と無歯顎者との間で肺炎の発生に差はなかった. さらに, 期間中の肺炎発生者は, ケア群で21名 (11%), 対照群で34名 (19%) とケア群で有意に低く (p<0.05), この傾向は, 有歯顎者においても有意に (p<0.05), 無歯顎者でも有意差はなかったもののほぼ同様の傾向が示された. このことは, 口腔ケアは口腔内の歯の有無に関わらず, すべての要介護高齢者の肺炎予防に効果的であることを示唆している.
著者
柿本 多千代 松井 三枝 中澤 潤 吉田 丈俊 市田 蕗子
出版者
富山大学医学会
雑誌
富山大学医学会誌 (ISSN:18832067)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.28-32, 2011-12

Bayley乳幼児発達検査-第3版(Bayley−Ⅲ)は乳幼児の発達を詳細に,かつ客観的に評価でき,世界標準で用いられることの多い検査である。しかし,日本版は未だ作成されておらず有用性は確かではない。本研究では,日本人健常12ヵ月児42名と36ヵ月児81名にBayley−ⅢとBayley式検査-第2版(BSID−Ⅱ),発達質問紙(津守式)を実施し,Bayley−Ⅲの有用性を検証した。米国の健常児と比較した結果,12ヵ月児では言語尺度の得点低下,36ヵ月児では微細運動の得点上昇が認められた。BSID−Ⅱよりは全体的に得点は高く,尺度間には高い相関が確認された。津守式では,両年齢ともに月齢相応の発達を示していた。Bayley−Ⅲの言語尺度においては,日本人小児には見合わない文法が認められたが,それ以外の教示や用具など実施上の不都合はなく,Bayley−Ⅲは日本でも使用可能な検査であった。
著者
吉田 充 堀金 明美
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.10-16, 2008-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

日本においては, 炊飯前に米を水に浸けることが習慣となっている。これにより米粒の中に水が浸透し, 加熱されたときに米粒の中心までデンプンが充分に糊化して米がふっくら炊きあがる。弥生時代の昔から米を栽培し, 米食に親しんできた日本人のやり方である。日本酒の醸造においても, 麹菌を生育させる米は, 蒸す前に水に浸す。浸漬時の米粒内への水の浸透とその結果である粒内水分分布は, 炊飯後, 加工後の米やその加工品の品質を決定する重要な要因である。そこで, 水の分布を画像化できる磁気共鳴画像法 (magneticresonanceimaging, MRI) を用いて, 浸漬過程における米粒中の水分分布変化を追ってみたところ, 水の浸透経路や水分分布は, 米の胚乳のデンプン細胞の粗密や並び方を反映し, 炊飯用の品種コシヒカリと, 酒米用の品種山田錦とでは, 水の浸透パターンが異なっていた。このことから, MRIにより米粒内への水の浸透を観察することで, その米の加工適性の一面を評価できるのではないかと期待される。
著者
吉田 伸夫
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.85-100, 1988-11-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
西村 拓生 岡本 哲雄 吉田 敦彦 山内 清郎 井谷 信彦 辻 敦子 神戸 和佳子 山田 真由美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

教育における宗教性は、教育という営みの根底を考える際に非常に重要な契機である。この問題を考える際に思想史的に注目すべきなのが、京都学派の哲学に源流をもつ教育哲学の系譜である。この研究では、京都学派教育哲学の諸思想を分析し、その中に、「生命性と超越」を鍵概念とする系譜、「臨床性から公共性」という志向をもつ系譜、そして「言語の限界と可能性」をめぐる系譜を見出した。さらに、その分析を基盤として、教育における宗教性・超越性に関する多様な思想史的・人間学的研究を行ない、包括的・体系的な研究への足掛かりを構築した。
著者
赤荻 栄一 三井 清文 鬼塚 正孝 石川 成美 吉田 進 稲垣 雅春 間瀬 憲多朗 山本 達生 稲毛 芳永 小形 岳三郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.483-488, 1994-08-20
被引用文献数
9

原発巣と同側の肺内に転移を持つ肺癌切除67例の術後成績をみて, 同側肺内転移を遠隔転移ではなく腫瘍の局所進展と考えるAmerican Joint Committeeon Cancer(AJCC)新分類の妥当性を検討した.原発巣と同一肺葉内に留まる肺内転移を持つ41例の術後中問生存期問は25.8ヵ月で, 他肺葉に及ぶ肺内転移を持つ例に比べて有意に良好であった.同一肺葉内転移例につき, 肺内転移を除いた病期別にみると, I期11例では42.9ヵ月と他に比べて有意に良好で, IV期5例では9.6ヵ月と最も不良であった.AJCC新分類による中問生存期間は, I期とII期を合わせた4例が48.3ヵ月, IIIA期21例28.3ヵ月, IIIB期34例22.2ヵ月, IV期8例11.1ヵ月であり, リンパ節転移がないかあっても肺門までに留まる例が最も予後良好で, 肺内転移以外に明らかな遠隔転移を持つIV期例は最も予後不良であった.これは, AJCC新分類が, より臨床に即した有用な分類であることを示すものと思われる.
著者
吉田 国光
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.124, 2020 (Released:2020-03-30)

1.研究課題 農村地域における代表的な経済活動の一つである農業生産をめぐって,当事者である農家間での共同作業や集団的に土地の管理が行われてきた。草刈り作業などの作業内容によっては,当該地域に居住する非農家もそれらの共同作業に関わり,地域の社会的機能が維持されてきた。他方,農村地域において,農業生産活動に経済的役割は相対的に低下してきており,農家であっても農地や用水路など農業生産に関わるインフラ等(以下,農業インフラ)を維持・管理する意欲は減退し,それらの作業を「誰がどうやって担うのか」といった問題が表面化し,一部の作業は外部化されるなかで履行されている。かつては,個別世帯や集落などの社会集団を単位として自己完結的に農業インフラが維持されてきたが,それらの担い手が集落外へも広がりつつある。そこで本発表では,近年の農業・農村地理学の成果を概観することから,農業インフラを維持・管理する担い手が再編される仕組みを地理学的に読み解く方法について検討する。2.最近の農業インフラの維持に向けた担い手の広域化 近年の農業・農村地理学においては,耕作放棄地の増加が社会問題としても取り上げられるなかで,農地管理や農作業の共同化や外部受委託を取り上げた事例研究がみられるようになった。これらの研究を通じて,明治行政村や旧町村などを単位とした地域営農組織による農地利用の維持,また他出子弟による農作業など,農地管理や農作業の共同化や外部受委託の担い手が集落外へと広がる様相が描かれてきた。これらの研究のなかで,担い手の広がりじゃ様々な地縁や血縁,その他の縁を契機として構築された事例が示されてきた。さらに,特定の農業生産法人による広域的な農作業受委託(農地貸借含む)によって,担い手の広がりが地縁や血縁を必須とせずに構築される事例が示されてきた。3.広域化する担い手を読み解く視点 農業インフラ維持の担い手が集落外にも及ぶようになりつつあるなか,担い手の広域化を可能とする地域条件の検討について,コモンズ研究の領域で社会実践も含みながら学際的に取り組まれてきた。これらの領域では,社会ネットワークや社会関係資本などをキーにしながら「どのような地域社会のあり方が,集団的な保全活動を可能にするのか」といった命題が取り組まれている。そして英語圏の地理学者らが,コモンズ研究の専門誌で社会ネットワークや社会関係資本をキーにコモンズ研究との接合を図る議論を展開している。 社会ネットワークに注目することで,従来の村落地理学では分析対象として含めにくかった,集落内外に広がる多様な主体を同列に分析の俎上へのせることが可能となった。とくにコモンズ研究の領域では,社会ネットワーク分析や社会関係資本を枠組みとして,個人や世帯を単位とした社会ネットワークの広がりや,結びつきの強弱,媒介性を可視的に示す点に強みがある。しかし,社会ネットワークの広がりを,地理的スケールの重なりのなかで捉える視点について課題がみられる。 他方,地理学においては集落など社会集団が他の集落や地方自治体,その他の機関と構築される社会ネットワークについて,集団以上の地理的スケールの重なりのなかで説明する点に強みがある。しかし,個人の社会ネットワークが集団の集合的行為として平準化される点に課題がみられ,アンケート調査で得られた地域組織の有無や会合の回数などのスコア化に頼らない分析も必要といえる。4.社会ネットワークに注目した地理学的アプローチ 農業インフラの維持の担い手を分析対象とした研究で,日本の農業・農村地理学の強みを生かした地理学的アプローチとして,社会ネットワークを定性的に分析する方法が有用と考えられる。この方法では,一つないし複数の集落というミクロな対象地域を単位とし,農業インフラの維持をめぐる個人や世帯,その他集団の行動がより大きな組織等への集団の集合的行為へ統合されていく過程を検討する際に有用と考えられる。この方法は,各地理的スケールがどのような結びつきに依拠して集団を組織しているのかといった集団の社会的特性や,その影響をおよぼす範囲の実態把握,集団を構成する個人間を結びつける社会関係に関するデータを必要とし,詳細な現地調査を必須とする。詳細な現地調査は,日本の農業・農村地理学において重視されてきた強みである。分野横断的に取り組まれる地域運営組織を分析対象に取り上げる際に,地理学の強みを活かした方法としても端的に示しやすいと考えられる。また,このアプローチはNPO法人などによるローカルガバナンスの研究や,リスケーリングの議論とも方法論的の接点を見出せ,地理学界内における研究対象を横断したような議論の共有につながるのではないかと考えられる。