著者
小林 隆志 佐伯 元司
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.60-75, 2004-01-27

本稿では, Gang-of-Four(GoF)デザインパターンのようなソフトウェアパターンを使用したソフトウェア開発を支援するために, パターンのモデルとその利用法に関して議論する. 我々はパターンを使用した開発の問題点は, 開発者によるパターンの持つメカニズムを壊す変更であると捉え, パターンとその正しい使用過程のオブジェクト指向モデルを提案する. 本モデルでは, パターンには変更可能な箇所と, パターンの持つメカニズムのために変更すべきではない箇所がある点に着目しパターンの構造情報と, 変更可能な構造をどのように変更するべきかの操作情報を保存する. また本稿では, モデルを記述する言語としてJavaを選択し実際にGoFパターンのうち22個を記述する. また, その記述を利用し開発者を支援するツールを提案する.
著者
小林 盾
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.183-194, 2002-10-31 (Released:2009-02-10)
参考文献数
57
被引用文献数
2

数理社会学は,社会規範の発生メカニズムを扱うことができるし,むしろ積極的に扱っていくことが期待されている.社会規範は社会のセメントとして役立っているが,これまで社会学は「すでにあるもの」と仮定することが多かった.しかし,もし社会規範がどう生まれて変化していくのかをあきらかにできないと,ひとびとの行動や社会現象を理解するときに誤解する危険がある.いっぽうもし解明すれば,秩序問題という社会学の根本問題を解決できるであろう.そこで,1つの有望な戦略として,社会規範の発生を「選好形成」と捉えて,社会規範の内面化をモデル化することを提案する.そうすることで,理論的には合理的選択理論やゲーム理論の成果を継承できるし,方法論的にはマイクロな行動をマクロな構造へと架橋できる.そのとき,「ピンポイントの数理モデル」を立てて,研究対象を狭く深く限定することがふさわしい.こうした検討をとおして,「望ましい社会とはなにか」という問いにも,貢献できる可能性がある.
著者
永原 陽子 粟屋 利江 鈴木 茂 舩田 さやか 阿部 小涼 今泉 裕美子 小山田 紀子 尾立 要子 小林 元裕 清水 正義 前川 一郎 眞城 百華 濱 忠雄 吉澤 文寿 吉田 信 渡邊 司 津田 みわ 平野 千果子 浅田 進史 飯島 みどり 板垣 竜太 大峰 真理 後藤 春美 高林 敏之 旦 祐介 津田 みわ 中野 聡 半澤 朝彦 平野 千果子 溝辺 泰雄 網中 昭世 大井 知範 柴田 暖子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、「植民地責任」概念を用いて、脱植民地化過程を第二次世界大戦後の植民地独立期に限定せず、20世紀の世界史全体の展開の中で検討した。その結果、第一次世界大戦期の萌芽的に出現した「植民地責任」論に対し、それを封じ込める形で国際的な植民地体制の再編が行われ、その体制が1960年代の植民地独立期を経て「冷戦」期にまで継続したことが明らかになった。
著者
本堂 毅 坂田 泰啓 小林 泰三
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.537-541, 2008-07-05

本堂は2002年,初等的な理論計算で,日常環境中のマイクロ波被曝レベルが現行の推定に比べ数桁高くなりうることを示し,受動被曝の問題を指摘した.今回,実験と数値シミュレーションでその理論計算を確認し,空間的に局在した強い曝露領域(ホットスポット)が存在することを明らかにした.本稿では,研究の背景と実験結果,数値新算上の課題を記し,環境科学と基礎物理学の関係および物理学の社会的役割について考えてみたい.
著者
長谷川 琢哉 西川 公一郎 小林 隆 丸山 和純 石井 孝信 中平 武 坂下 健 荻津 透 木村 誠宏
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

物質優勢宇宙創成の謎に迫るべく必須の液体アルゴン三次元飛跡検出装置について、試作機を構築し特性を把握した。今回の性能評価により、同測定装置は、T2K前置ニュートリノ測定装置に必要とされる能力を有することが結論付けられた。20ktから70ktの液体アルゴン三次元飛跡検出装置を、ニュートリノ源から2300kmの超長基線長かつ大深度地下(3000m水密度相当以上)に設置して研究を行えば、ニュートリノ質量階層性、レプトンのCP対称性の研究に関して、他の計画の追随を許さないものとなることが示された。又、大深度地下に測定装置を設置することが、陽子崩壊探索の感度向上に重要であるということが確認された。
著者
平森 智幸 伊藤 元剛 吉川 正雄 廣瀬 明夫 小林 紘二郎
出版者
社団法人エレクトロニクス実装学会
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.503-508, 2003-09-01
被引用文献数
5 6

本研究では,無電解Ni-Pめっき上にさまざまな厚さのAuめっきを施した基板にBGA対応のSn-AgはんだボールおよびSn-Ag-Cuはんだボールを接合し,リフロー後および高温放置後における界面構造の観察および接合強度の測定を行った。Sn-Ag-Cuはんだの場合,Auめっき厚が250nmと500nmの試料では界面にPリッチ層が形成されたが,Auめっき厚の薄い試料では形成されなかった。一方,Sn-Agはんだの場合,Auめっき厚によらず界面にPリッチ層が形成されていた。どちらのはんだにおいてもAuめっき厚の厚い試料では強度試験において界面で破断が生じたので,Pリッチ層の形成は界面強度の低下につながると考えられる。Sn-Ag-Cuはんだでは50nmのAuめっき厚さが最適であった。
著者
小林 隆人 稲泉 三丸
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.20-30, 2003-01-10

オオムラサキの幼虫の越冬期の死亡率とその要因を明らかにする試みの一つとして,栃木県真岡市において1999年11月下旬から2000年3月末にかけて以下の実験を行った.幼虫が越冬している林床の枯葉に,天敵の捕食活動を防止するための1mm,5mm,40mmメッシュのネットを地表に被せた区,風などの物理的要因による枯葉の移動を防ぐために枯葉に重りをつけた区,および無処理区を設けた.いずれの区においても死亡個体数は11月下旬から12月末までは少なかったが,越年後の1-2月には増加した.調査終了時のこれら5つの試験区での幼虫の生存率は64-70%で,全ての調査日において試験区間の生存率の差は有意でなかった.ペンキで標識を付けた枯葉に,越冬幼虫1個体,2個体,3個体に相当する重りをつけ,11月下旬に林床に設置し,翌年3月に再確認したところ,枯葉はすべて設置した地点から見つかった.調査期間中の真岡市における最低気温は-9.3℃,12月の最低気温は-8℃であった.越冬期前半(12月)の越冬幼虫を室温5℃から-5,-10℃まで徐々に低下させた条件,あるいは急激に低下させた条件に置いた場合の生存率はいずれも90%以上の高い値を示し,処理間で有意な差はなかった.幼虫が越冬する枯葉に対する給水頻度を実験的に変えたところ,毎日,4日に1度,7日に1度,15日に1度の間隔で給水した区での幼虫の生存率は高い値を維持したが,30日に1度の給水区,および全く給水しなかった区では,3月初めより他の区に比べ有意に低くなった.野外において幼虫の死亡率を調べた期間において1日当たり10mmを越える降水があった日は1月上旬と3月中-下旬に限られ,20日以上の間降水がない期間が3回あった.以上の結果から,越冬期に捕食者によって死亡するオオムラサキ幼虫の個体数,枯葉の移動による幼虫の消失数は少なく,低温による死亡数も越冬期前半に関しては少ないと考えられた.本種幼虫の越冬期の死亡要因の1つとして枯葉に対する給水頻度が働いている可能性が示唆された.
著者
橋本 樹明 澤井 秀次郎 斎藤 芳隆 稲富 裕光 石川 毅彦 小林 弘明 坂井 真一郎 山川 宏 吉光 徹雄 斎藤 芳隆 石川 毅彦 稲富 裕光 澤井 秀次郎 坂井 真一郎 吉光 徹雄 小林 弘明 藤田 和央 坂東 信尚 山川 宏
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

数十秒間の微小重力環境を中程度のコストで実現する手段として、高高度気球から微小重力実験装置を落下させ、自由落下中に微小重力実験を実施するシステムを開発した。飛翔実験にて10^<-4>G以下の微小重力環境を約35秒間実現し、今後の定常的運用に目処を立てた。
著者
竹村 元秀 米原 典史 小林 真之 杉生 真一 森谷 正之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

神経損傷ラットの情報伝達機構が大きく変化することが、神経因性疼痛発現の基礎にあることが明らかになった。ぺプチド性C線維を介したシグナリングが侵害刺激をよりシャープに上位中枢に送るが、非ぺプチド性C線維のシグナリングがそのぺプチド性C線維を抑制するといった制御に関わっている可能性を示すデーターを得た
著者
小林 保子 高橋 泉
出版者
東京福祉大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、重症心身障害児(以下、重症児)とその家族が、地域でより豊かにQuality Of Life(以下、QOL)の高い生活が享受できるよう(1)主たる養育・介助者である母親、(2)きょうだい、(3)家族を地域で支援する事業実践の視点から、先行する諸外国の訪問調査から得られた知見も踏まえ検証し、地域における重症児の「家族支援」の必要性とサービス内容のあり方について方向性を示した。
著者
小林 敏男 金井 一頼 淺田 孝幸 高尾 裕二 関口 倫紀 椎葉 淳 伊佐田 文彦 栗本 博行 松村 政樹 平山 弘 朴 泰勲 寺川 眞穂 古田 武 前中 将之 中田 有吾
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

グローバルニッチ戦略とは,自社の開発技術を評価する特定顧客に対して,そのニーズに叶った製品を開発・供給していく過程で,事業として存続しうる売上規模を獲得でき,その状態を持続可能にすることによって,当該製品が属する市場において参入障壁が高い小市場を形成でき,グローバルな多地域への展開が可能となる戦略のことである。ニッチ市場は,既存市場のセグメント分析から存在論的に発見できるものではなく,特定顧客との密接な協働から形成しうる過程論的な市場である。
著者
小林 傳司 山脇 直司 木原 英逸 藤垣 裕子 平川 秀幸 横山 輝雄 副田 隆重 服部 裕幸 沢登 文治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

現代社会における科学技術が、知的、物質的威力としてのみではなく、権力や権威を伴う政治的威力として機能していることの分析を行い、科学者共同体において確保される知的「正当性」と、科学技術が関連する社会的意思決定において科学知識が果たす「正統性」提供機能の錯綜した関係を解明し、論文集を出版した。また、このような状況における科学技術のガバナンスのあり方として、科学技術の専門家や行政関係者のみならず、広く一般人を含む多様なステークホルダーの参加の元での合意形成や意思決定様式の可能性を探求した。特に、科学者共同体内部で作動する合意形成様式の社会学的分析に関する著作、幅広いステークホルダー参加の元手の合意形成の試みのひとつであるコンセンサス会議の分析に関する著作が、その成果である。さらに具体的な事例分析のために、参加型のテクノロジーアセスメントにおける多様な試みを集約するワークショップを開催し、現状の成果と今後の課題を明らかにした。課題としては、全国的なテーマと地域的なテーマで参加手法はどういう違いがあるべきか、参加型手法の成果を政策決定とどのように接続する課などである。同時に、「もんじゅ裁判」を事例に、科学技術的思考と法的思考、そして一般市民の視点のずれと相克を記述分析し、社会的紛争処理一般にかかわる問題点や課題を明らかにした。本研究の結果到達した結論は、人々の現在及び将来の生活に大きな影響を与える科学技術のあり方に関しては、政治的な捕捉と検討という意味での公共的討議が必要であり、そのための社会的仕組みを構想していく必要があるということである。こういった活動の成果は、最終年度にパリで開催された4S(Society for Social Studies of Science)国際大会でセッションを組んで報告された。
著者
小林 久高
出版者
奈良女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

当初より、本研究は、第1に原発問題をとらえる枠組みの構成、第2に島根原発をめぐる地域問題の分析、という2つの課題を設定していた。研究ではまず第1の課題を達成するため、(1)関連の先行業績を検討するとともに、(2)全国紙における原発関連の記事を収集し、また(3)世論関係の資料を収集することによって、原発問題をとらえる基本的な枠組みを構成した。そこで明らかになったことは、原発問題をとらえる際には、社会学の各分野のうち、社会問題論、社会運動論、生活構造論という3つの分野からのアプローチが有用であり、それらを総合した視点が必要であるということである。同時にまた意思決定の過程についての考察が重要であり、政治社会学的な観点からの接近も欠くことはできないということも明らかになった。第2の研究課題である、島根原発の研究は、これら4つの研究分野(政治社会学、社会問題論、社会運動論、生活構造論)との関連で進められていった。具体的には、政治社会学の枠組みをもとに地域政治における意思決定のありようを探るため、地方政治家や議会議事についてのデータが収集された。社会問題論との関連では反原発団体の活動を、主として地方紙を中心に検討した。原発問題をどう考えるかということにかんしては、住民全体が決して一様な意見を保持しているわけではない。商工会と漁民の見解の相違などは顕著なものであるが、そこには当事者の生活のありようが反映している。そして、生活は地域の長い歴史と関連している。したがって、原発所在地である鹿島町の歴史について考察することも重要であると判断し、資料収集を試みた。以上の基礎的な資料をもとに、今後さらに分析を進めていく予定である。
著者
竹内 敦子 岡野 登志夫 和田 知子 須藤 都 新谷 有美 小林 正
出版者
日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.121-124, 1991-03-25

Effect of solar radiation on vitamin D_2 contents in raw and dried Shiitake mushrooms (Lentinus edodes) was investigated. Contents of vitamin D_2 in raw Shiitake cultured in vinylhouses (average : 21 and 14 IU/piece) were generally lower than those cultured outdoors (average : 100 IU/piece). On the other hand, the contents of ergosterol in all the samples were much higher than those of vitamin D_2 (about 9,000〜46,000 times as weight ratio). When gills parts of the samples cultured in a vinylhouse were exposed to sunlight for 1 h or 3 h at a fine day, the contents of vitamin D_2 increased about 3.6 times (average : 76 IU/piece) or 5 times (average : 104 IU/piece) higher than those before radiation (average : 21 IU/piece). The vitamin D_2 contents in raw Shiitake increased according to increase of solar radiation times. When gills parts of dried Shiitake were exposed to sunlight for 1 h or 3 h, the contents of vitamin D_2 increased about 24 times (average 488 IU_piece) or 27 times (average : 548 IU/piece) higher than those before radiation (average : 20 IU/piece). The contents of vitamin D_2 in raw and dried Shiitake exposed on gills part were significantly higher than those in the samples exposed on pileus parts. Since no significant change was observed in the smell, color and taste of Shiitake by solar radiation, exposure to sunlight is an effective method for increase of vitamin D_2 in raw Shiitake mushurooms.