著者
佐々木 公明 日野 正輝 長谷部 正 山本 啓 小林 一穂 照井 伸彦 赤松 隆 徳永 幸之 林山 泰久 福山 敬 徳川 直人 平野 勝也 伊藤 房雄 村山 良之 横井 渉央 張 陽
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

日本の集計データに基づいた幸福関数の統計的分析は「他者との比較」を表す生活水準が住民の幸福度に影響を与えることを示す。一方、物質の豊かさの価値よりも心の豊かさに価値を置く方が幸福度を増加させる。幸福度は所得満足度と共に単調に増加するが、所得満足度は生得水準の単調増加ではなく、「快楽の踏み車」仮説があてはまる。社会環境を表す所得分配の不平等と失業率はいずれも個人の幸福度に負の影響を与えるが、不平等よりも失業が住民の幸福により大きな影響を与える。
著者
足立 守 吉田 英一 山口 靖 鈴木 和博 志知 龍一 山本 明彦 竹内 誠 束田 和弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

数多くの断層により"破砕帯列島"となっている日本列島において、人口密集地の都市部は、家屋、道路、田畑等で覆われているため、地下構造を推定することは容易ではなく、地下構造に応じた地震動対策を立てることは難しい。こうした問題をクリアするために、稠密な重力探査結果に地表地質データ、ボーリングデータ、および地質リモートセンシングデータを組み合わせて地下構造解析を行い、断層のずれの量や破砕帯の規模を推定する研究を行った。主要な成果は以下の通りである。・従来の西南日本重力データベースに新たな重力データを加えて、国土基礎情報としての「日本列島重力アトラス-西南日本および中央日本」(山本明彦・志知龍一編、2004、東京大学出版会)を出版した。・人口密集地の名古屋市とその周辺地域において、1328の地点において新たな重力測定を行い、既存の温泉ボーリングデータ等と組み合わせて、詳細な地下構造解析を行った。その結果、北北西-南南東の枇杷島-熱田断層および東西の熱田-日進断層による基盤岩の垂直変位量が、それぞれ、約550mおよび約350mであることを明らかにした。・岐阜県高山南方の宮盆地において稠密な重力測定、地質調査、リニアメント解析を行った結果、宮盆地には北東-南西方向に延びる著しい負の重力異常域が存在し、2本の横ずれ断層に挟まれたプルアパート・ベイスンとして形成されたことを明らかにした。・阿寺断層地域の花崗岩中に発達する破砕帯の詳細な調査を行い、破砕帯の生成環境と形成プロセスについて明らかにした。
著者
山本 芳久
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、一言で言うと、近世のスコラ学という世界的に未開拓の分野における「人間の尊厳」という概念の構造を詳細に探求することによって、従来の思想史の空白部分を埋めるとともに、人間の尊厳という問題に関する哲学的な議論の土俵を広げていくような新たな視点を提示していくことである。「人間の尊厳」や「人格」といった概念に関する中世と近代の連続性・非連続性の具体的な詳細を明らかにするための最大の手がかりは、中世末期から近世初頭にかけてのスコラ学における人間論の探求にある。だが、本邦においては、近世のスコラ学に関しては、社会思想史に関する若干の研究を除けば、哲学的に見るべきところのある研究は未だ殆ど為されていない。また、世界的なレベルで見ても、この分野は未開拓の分野であり、そこには哲学的探求のための非常に豊かな鉱脈が埋もれていると言える。それゆえ、本研究は、そのような鉱脈の中においても、とりわけ、近世スコラ学における「人格(persona)」概念と法哲学(自然法と万民法)に着目し、人間の尊厳の存在論的な基礎づけに関する哲学的探求を、近世スコラ学のテキストとの対話の中で遂行することを目的としている。本年は、とりわけ、トマス・アクィナス(1225-1274)とスアレス(1548-1617)における自然法と万民法概念の構造を哲学的に分析しつつ、更に、現代の社会哲学のなかでスコラ的な法理論の持ちうる積極的な役割を明らかにした。
著者
山本 恵子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2007年度には、ニーチェにおける初期・中期・後期の生理学的考察を概念史的に検討することによって、当時の生理学者との関係に関する研究の骨子を示した。その結果、ニーチェにおける生理学という概念装置の意味が著作時期によって大きく異なることが明らかとなった。2008年度には、「健康」や「無意識」等の諸概念に着目した。そこでは、健康を画一的なものと捉える見方が人間の平等というドグマに侵されたものとして積極的に否定されるニーチェの思索が確認された。
著者
山本 正治 渡辺 厳一 中平 浩人 遠藤 和男
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

胆道癌死亡率の高い下越地域の新潟市と死亡率の低い上越地域の上越市で採取した水道水の突然変異原性の差を年間を通して比較検討を行った。水道水の採取は両市の各1給水栓にて行い、夜7時に勢い良く約10秒間排水した後、1日10lずつ採取し、各1サンプルとした。採水日は毎月第4週の水、木、金曜日の3日間とし、これを1年間実施した。更に溶出溶液を濃縮乾固後、DMSOに溶解して突然変異原性試験に供した。突然変異原性試験はAmes法(TA100,TA98)のプレ・インキュベ-ト法を用い、代謝活性化は実施しなかった。これまでに、3〜7月の試料と8〜10月の試料について分析を行った。その結果、フレ-ムシフト型のTA98株に対する突然変異原活性はほとんど試料で確認されなかった。一方、塩基対置換型のTA100株に対しては、新潟市の全試料が1l当たりの復帰コロニ-数が自然復帰コロニ-数の2倍を越えたのに対し、上越市では3月を除くほとんどの試料で2倍に達しなかった。新潟市と上越市の水道水1l当たりの復帰コロニ-数の平均は3月がそれぞれ392【plus-minus】75、253【plus-minus】91、7月が253【plus-minus】50、71【plus-minus】29といずれも新潟市の方が高い結果が得られた。また、その差は3月より7月の方が若干大きくなった。ただし、7月の上越市の試料は自然復帰コロニ-数の2倍に達しなかった。また、すべての月で突然変異原活性が確認された新潟市の水道水の変異原活性の大きさは3月から7月まで暖かくなるにつれて除々に低下していく胆道癌の死亡が多い新潟市の水道水の突然変異原性が、死亡の少ない上越市の突然変異原性より強かった。そこで、原因物質の同定など、胆道癌発生との関わりを、より分析的方法で進める必要がある。
著者
渡邉 智之 佐藤 早織 山本 俊昭 熊代 永
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.961-968, 2010-10-01

知的能力に遅れのない広汎性発達障害の子どもは,その障害の存在が気づかれず見過ごされがちである.しかし,社会性に欠け対人関係も苦手であることからさまざまな困難を抱えやすい.今回,幼少期から不登校を呈していたが,発達障害の視点で支援した結果,改善がみられた症例を報告する.自己洞察を促すサポートよりも支持的対応を基本として共感性を促し,対人関係の促進を目指した.また,認知行動療法を基本とした問題解決技能や個別での対人スキル訓練のアプローチも行った.母親に対しては障害特性と本人の行動を結びつけて説明し障害理解を促した.その結果,不登校という不適応状態が改善した.子どもが示す不適応状態を発達という視点からとらえ,発達歴の聴取や行動観察などのていねいなアセスメント,障害特性に配慮した対応をしていくことが重要である.
著者
北里 洋 豊福 高志 山本 啓之 土屋 正史
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究は,硫化水素存在環境に生存する有孔虫類を例として,真核単細胞生物への微生物の共生について理解するとともに,「硫化水素が飛躍的な生物進化を誘引する」仮説を検証する道筋を作ることを目的とする。研究は,(1)嫌気的な環境に生息する有孔虫にはどのような微生物が共存するのか?(2)微生物は何をきっかけとして,どのように取り込まれるのか?(3)微生物は細胞内で何をしているのか?(4)微生物が細胞内にいることは有孔虫の殻にどのような影響を与えるのか?について形態、分子両面から検討する。また、微生物生態学的なアプローチも試みる。研究材料は,夏季に硫化水素に充満した環境が出現する非調和型汽水湖である鹿児島県甑島なまこ池,京都府阿蘇海,静岡県浜名湖に生息する有孔虫Virgulinella fragilisを用いた。遺伝子および細胞のTEM観察の結果、この種には、細胞膜近傍にγ-プロテオバクテリア(硫黄酸化細菌)が分布し、細胞の中心には、浮遊珪藻スケルトネマに由来する葉緑体が多量に取り込まれていた。一方、模式地であるニュージーランド・ウェリントン港に生息するVirgulinella fragilisは、酸化的な環境であるにもかかわらず、γ-プロテオバクテリアと葉緑体が細胞内に分布していた。ただし、葉緑体は珪藻コシノディスカスに由来するものであった。これらのデータは、有孔虫が共生微生物をまわりの環境から取り込むことを示した。共生体の機能は、硫黄酸化細菌が硫化水素の無毒化、葉緑体が窒素固定と推定されているが、現在検討中である。有孔虫への細胞内共生は、Virgulinellaだけでなく、貧栄養の超深海に生息するステルコマータを持つ軟質殻有孔虫や近縁グループのグロミア属の細胞にも見られる。しかし、これらの共生微生物が何をしているのかという機能の解明は今後の問題として残った。
著者
山本 憲二 芦田 久
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ニワトリ卵黄より抽出した糖ペプチドまたは糖ペプチドに糸状菌エンドグリコシダーゼ(エンド-M)を作用して遊離した糖鎖を縮合反応または還元アミノ化反応によりアルギン酸やキトサンに多価に重合した糖鎖結合ポリマーを合成し、糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸残基にインフルエンザウイルスを結合させて捕捉する新しい概念の感染阻害剤として応用した。阻害剤について動物細胞を用いたインフルエンザウイルス感染阻害能を調べた結果、高い感染阻害活性を示すことを確認した。
著者
盛永 審一郎 加藤 尚武 秋葉 悦子 磯部 哲 今井 道夫 香川 知晶 忽那 敬三 蔵田 伸雄 小出 泰士 児玉 聡 小林 真紀 坂井 昭宏 品川 哲彦 松田 純 山内 廣隆 山本 達 飯田 亘之 水野 俊誠
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

1)20世紀に外延的に同値された神学的-哲学的概念としての「尊厳」と政治的概念としての「権利」は内包的に同一ではないということ。また、「価値」は比較考量可能であるのに対し、「尊厳」は比較考量不可であるということ。2)倫理的に中立であるとされたiPS細胞研究も結局は共犯可能性を逃れ得ないこと、学際的学問としてのバイオエシックスは、生命技術を押し進める装置でしかなかったということ。3)20世紀末に登場した「身体の倫理」と「生-資本主義」の精神の間には何らかの選択的親和関係があるということ。
著者
森 友彦 栗原 堅三 高見 茂 林 由佳子 二ノ宮 裕三 山本 隆
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

昧覚機能は、年齢、性別、生活・職業形態、疾病など種々の環境要因によって変動する。特に、過食と肥満、拒食と痩〓、美食と生活習慣病、食スタイルと生老病死では、味覚機能の変動が原因と結果の双方で生起する。これら諸現象には食の健康科学の視点から関心が高まっていることから、味覚の基本的なメカニズムの解明を通じて味覚機能の全体を理解することが要望される。本企画調査を通じて味覚機能と健康の関連性を科学的に解明する研究の拠点的組織を構築することにより、生命科学としての味覚研究の推進をさらに図る。そのために味覚・食・健康に携わる計12名の第一線の研究者を研究班として組織した。まず、7月26日午後1時から4時、名古屋アソシアターミナルホテル、小会議場にて第1回全体会議を行った。特定研究領域発足に向けて研究方針を立てると共に研究組織の改編を行った。第2回全体会議は9月24日午前10時から12時まで、岡山衛生会館第5会議室で発足に向けての最終打ち合わせを行った。その後、インターネットによる綿密な打ち合わせを頻繁に行い、11月に平成16年度発足特定領域「食の健全性と味覚機能」を申請した。そして、2004年3月1日(月)13時半から6時過ぎまで、京都大学宇治キャンパス農学研究科講義室にて「食の健全性と味覚機能」に関して研究報告会兼シンポジウムを開催した。本研究班に加え、米国ジョンズホプキンス大学医学部より恒成隆博士を招聘して、感覚研究がこれから向かうであろう領域に関して情報を収集した。
著者
山本 美枝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.233-242, 1992-08-20
被引用文献数
1

『婦人之友』戦後誌の肉料理記事から焼肉料理のみを取り出して調査資料とし,焼肉の調理素材としての利用状況,料理の種類と調理法,調味法などから焼肉料理としての年代的た変化を捉え,さらに執筆者別に焼肉の利用度,食事目的別に肉種別の利用度と料理の内容について比較分析し,家庭料理としての焼肉調理の特色を考察した。要約すると次のようである。1.焼肉の利用度は,塊肉料理の通年出現頻度としては肉料理総数に対して約2割であり,肉種別では特に豚焼肉の利用度が高く焼肉総数の半数を占め,肉種別の最多例数を示す年代は牛焼肉では60年代,豚焼肉は40年代後半,丸鶏では30年代の後半であった。年代別の利用度は食肉の供給状況・消費傾向との関連が認められた。2.焼肉の調理形態は部位焼肉,中抜き丸鶏・七面鳥などの基本形態のほかに,特殊形態として背開き鶏,詰め巻・袋状詰め肉,鶏ガランティンなどの多様な形態がみられ,45年以降に多かった。3.調理法のうち焼肉で頻度の高い調理法は,1位ロースト,2位ゆで煮,3位煮込みの順であるが,肉種別では,牛肉はゆで煮,豚肉は煮込み,丸鶏では天火焼ローストが1位を占める料理であった。4.ゆで煮料理やロースト類にみる調味法の変化は,50年以後に顕著に認められ,醤油や複合調味料,香味材料だとが併用され,用い方には和風感覚が活かされ,より高度な味を求める嗜好の変化が,調味に多様性をもたらしている。5.執筆者別による焼肉の利用は他の婦人雑誌と異なって,プロ,セミプロなどによる料理よりも一般主婦による料理が多く,6割を占めていた。そしてそれは50年代に多くみられた。6.一般主婦の料理は多様であり,日常食と特別食の料理とに分けられ,ほぼ同じ程度に用いられていたが,牛焼肉の場合に日常食がやや多かった。7.一般主婦の焼肉料理はロースト,ゆで煮,煮込み,銀ロースト,の順に利用され,主にローストは特別食,他は日常食の利用形態であった。
著者
稲村 哲也 山本 紀夫 川本 芳 大山 修一 苅谷 愛彦 杉山 三郎 鵜澤 和宏
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究代表者らはこれまで中央アンデス、ネパール・ヒマラヤ山岳地域などで共同研究を重ね、高地環境における牧畜文化の研究を蓄積してきた。アンデス高地の研究から、リャマ・アルパカ牧畜の特徴として、(1)定住的であること、(2)乳を利用しないこと、(3)農耕との結びつきが強いこと、などを明らかになった。これらの特徴は相互に関係し、低緯度の高地に位置する中央アンデスの自然環境、生態学的条件と関係している。そして、アンデスには2種類のラクダ科野生動物ビクーニャとグアナコも生息している。アンデスの家畜種アルパカと野生種ビクーニャの遺伝的近縁性が解明されたことから、その両種の生態を把握することの学術的意義が明確になり、他の地域では困難な「家畜と近縁野生種の同一地域における共時的・通時的研究」がアンデスでは可能となった。そこで、本研究では、ラクダ科動物の家畜種と野生種に関する遺伝学的な分析をさらに精緻化すると共に、それらの生態、牧畜システムの実態をさらに検証し、また、より精度の高い自然環境に関するデータを踏まえて、野生種と家畜種、狩猟と牧畜、動物と農耕などの相互関係、ドメスティケーション等に関わる研究を推進し、新たな知見を得た。また、今後のドメスティケーション、牧畜成立過程、古代文明形成プロセスなどに関する新たな研究への基礎を構築することができた。
著者
山本 和弘 榊 広光 北目 茂 木村 義徳
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.760-760, 1982-04-25

東京女子医科大学学会第243回例会 昭和57年1月22日 東京女子医科大学本部講堂
著者
山本 教人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

マーシャル・マクルーハンのメディア論をもとに,スポーツがメディア・コンテンツとしてだけでなくメディアそのものとして機能している可能性の検討を行った.具体的には,「メディアとしてのスポーツ」が我々の社会,人間関係,感性などに及ぼす影響を検討するために,解釈学的な研究方法から「Jリーグ公式戦」,「ゴールデンゲームズ in のべおか」,「第53回西日本各県対抗九州一周駅伝競走大会」,それに「第87回全国高等学校野球選手権福岡県大会」の観察と記録を行った.その結果,以下のことが明らかとなった。高度情報環境の出現は,あらゆる物事に対する人々の信頼感や現実感を希薄化させ,現代人のアイデンティティを寄る辺ないものとし,人とひととの直接的なコミュニケーションの崩壊を引き起こしていると問題視されている.このように社会全体が仕組みとして身体性の脱落を加速化させる中,スポーツが「メンバーシップ」,「相互のつながり」,「社会参加」,「確信や信念」,「他者への影響力」を介して人々の関心を引きつけていると解釈できる現象が,サッカーや陸上競技,そして野球の試合観戦を行っている人々の観察から明らかとなった.これらのことから現代社会におけるスポーツは,新聞,テレビ,インターネットといった一般にいわれるメディアの内容であるばかりでなく,それ自体人とひととを媒介し結びつける「コミュニケーション・メディア」として機能していると解釈された.現代社会においてスポーツが重要なのは,スポーツが「する,極める,見る,支える」といった多様な参与形態により人とひととを瞬時に結びつけ,交流を促し,彼らの住まう地域の活性化に貢献し得るからである.つまりスポーツは,「情動的なコミュニケーション」を介して集団のメンバー間に多様な関係を生み出すことで,彼らに「実存の感覚」をもたらすよう機能していると考えることができる.
著者
長尾 誠也 山本 正伸 藤嶽 暢英 入野 智久 児玉 宏樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は。重要ではあるがデータの蓄積に乏しく、季節や地域によりその変動幅が大きく、沿岸域での炭素の吸収と放出量の見積もりを行う上で不確定要素の1つと考えられている河川から海洋への有機体炭素の移行量と移行動態を検討するものである。そのために、寒冷、温帯、および熱帯域の河川を対象に、河川流域の特性、植生、気候による土壌での有機物の分解と生成機構・時間スケールと河川により供給される有機物の特性、移行量との関係を難分解性有機物である腐植物質に着目して調べた。泥炭地を有する十勝川、湿原を流れる別寒辺牛川、褐色森林土の久慈川、スコットランド、ウクライナ、インドネシアの河川水中の溶存腐植物質を非イオン性の多孔質樹脂XAD-8を用いた分離法により分離生成し、いくつかの特性について分析を行った。また、河川水中の有機物の起源と移行動態推定のために、放射性炭素(Δ^<14>C)および炭素安定同位体比(δ^<13>C)を測定し、両者を組み合わせた新しいトレーサー手法を検討した。その結果、放射性炭素(Δ^<14>C)は-214〜+180‰の範囲で変動し、土壌での溶存腐植物質の滞留時間が流域環境により大きく異なることが考えられる。上記の検討と平行して、連続高速遠心機により河川水20〜100Lから懸濁粒子を分離し、放射性炭素および炭素安定同位体比を測定した。その結果、久慈川では年間を通してΔ^<14>Cは-19〜-94‰、炭素同位体比(δ^<13>C)は-24.0〜-31.1‰の範囲で変動し、石狩川ではΔ^<14>Cは-103〜-364‰、δ^<13>Cは-25.9〜-34.2‰、十勝川ではΔ^<14>Cは-111〜-286‰、δ^<13>Cは-25.0〜-31.6‰であった。これらの結果は、流域の環境条件および雪解けや降雨による河川流量の変動等がこれら炭素同位体比の変動を支配している可能性が考えられる。以上の結果から、放射性炭素および炭素安定同位対比を組み合わせる新しいトレーサー手法は、河川の流域環境の違いを反映し、移行動態および起源推定のために活用できることが示唆された。また、現時点では、大部分の地域では核実験以前に陸域に蓄積された有機物が河川を通じて移行していることが明らかとなった。
著者
佐和橋 衛 山本 尚生 樋口 健一
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本課題では,ピークデータレート1Gbpsを実現する第4世代移動通信方式に位置づけられるInternational Mobile Telecommunications(IMT)-Advancedに向けた高効率無線パケットアクセス技術を提案し,効果を計算機シミュレーションで明らかにした.具体的には,100MHz程度の送信帯域幅を有するLayered OFDMの無線インタフェース,高効率マルチアクセス,無線リソース割り当て制御,制御情報の高効率多重法,高精度チャネル推定,高次マルチアンテナ技術などを提案し,効果を計算機シミュレーションあるいは実験評価により明らかにした.