著者
工藤 アキヒコ 西垣 誠 鳥居 剛 浅田 昌蔵
出版者
一般社団法人 ダム工学会
雑誌
ダム工学 (ISSN:09173145)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.137-151, 2003

本研究は, フィルダムロック材の浸透特性が水位急低下時の残留水位とロックフィルダムの安定性に及ぼす影響について検討したものである. 長期間の計測の結果からは, 上流側ロックゾーン内には残留間隙水圧が発生していないこと, この傾向は, 建設後24年を経たダムにおいても継続して維持されていることなどを確認した. また, 残留水位面の浸透流解析と安定解析の結果から, 実際のフィルダムロック材の飽和透水係数, 不飽和浸透特性および動水勾配依存性 (非ダルシー現象) がダムの設計に重要であることを示した.
著者
赤沼 安夫 繁田 幸男 井村 裕夫 七里 元亮 垂井 清一郎 馬場 茂明 堀野 正治 兼子 俊男 三村 悟郎 清水 直容 内藤 周幸 中川 昌一 工藤 守 久保田 奉幸 阿部 祐五 王子 亘由 鍋谷 登 河原 啓 安東 千代 陣内 冨男 小坂 樹徳 後藤 由夫 葛谷 健 平田 幸正 伊藤 徳治 梶沼 宏 堀内 光 坂本 信夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.9-18, 1984

ブタインスリンの化学的修飾によつて酵素学的畔合成されたHuman Momcomponent Insuliれの安全性, 有効性および免疫学的推移を精製ブタインスリンを対照薬剤とした二重盲検法にて検討した. 用いた製剤はいずれもActrapidおよびMonotard製剤である. 治験は96週間の予定にて実施進行中であるが, 今回は24週間まで投与し得ている症例を対象とした中間成績である. 対象は, 精製ブタインスリン製剤のみで治療されているType IおよびType II糖尿病患者153例であった. 解析は除外症例8例を除いた145例にて実施された.<BR>患者の年齢, 糖尿病病型, 肥満度, 糖尿病発症年齢, 糖尿病罹病期間および糖尿病性合併症など背景因子に明らかな偏りはなかった.<BR>全般改善度, 有用度とも精製ブタインスリン群の方で改善および有用と判定する傾向があった (0.05<p<0.1).<BR>インスリン1日用量, 空腹時血糖値およびヘモグロビンAiでは両薬剤群間に有意な差は認められなかった. 体重, 抗インスリンIgG抗体およびインスリン特異性IgE抗体でも両薬剤群間に差を認めなかった. インスリンアレルギーが治験開始1ヵ月頃に, リポアトロフィーが12週間頃に各1例ずつ認められたが, いずれも治験はそのまま継続し得た. これら以外に副作用は認めなかった. 臨床検査成績に治験薬剤によると思われる直接的な影響は認められなかった.<BR>以上より, Human Monocomponent Insulinは, 精製ブタインスリンとほぼ同様の安全性, 有用性を有しており, 糖尿病治療上, 有用なインスリンであると判断された. しかしながら両者間には作用特性に多少の差異がみられる可能性は残る. この点に関しては今後さらに検討される必要があろう.
著者
工藤 崇 檀原 徹 岩野 英樹 山下 透 柳沢 幸夫
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.273-280, 2011

新潟県加茂地域,三条市塩野淵において,中部中新統の七谷層から黒雲母に富むテフラを発見し,塩野淵バイオタイト(Sbi)テフラと命名した.本テフラは灰色を呈する層厚9 cmの結晶質中粒~極粗粒砂サイズの凝灰岩で,七谷層の玄武岩~安山岩火山砕屑岩と明灰色塊状泥岩の間に挟在する.本テフラの構成鉱物は,斜長石(オリゴクレース及びバイトゥナイト組成),石英,サニディン,黒雲母,不透明鉱物を主体とし,微量のジルコンと褐れん石を伴う.本テフラのジルコンFT年代は13.8±0.3 Maであり,微化石層序と調和する.本テフラは,同じく七谷層に挟在し,紀伊半島の室生火砕流堆積物に対比されるKbiテフラと同様な層準にあり,非常によく似た層相を示す.しかし,SbiテフラとKbiテフラは,斜長石組成の不一致,微量に含まれる重鉱物の組み合わせの不一致,ジルコンのウラン濃度の不一致から対比されない.したがって,今後,両者の対比にあたっては注意が必要である.
著者
阿部 東 工藤 貢次 近藤 格 斎藤 和夫
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.179-186, 1969

青森県内で採集されたクワガタムシ科(Lucanidae)の4属5種について雄の染色体を調べた.それらの種名, 染色体数および性決定様式を一括して第1表に示したが, 観察結果は次のように要約される.ミヤマクワガタLucanus maculifemoratusは染色体数がn=13(I, II)であつて, 第1分裂でXY対を識別できる(第1, 2, 3図).ノコギリクワガタProsopocoilus inclinatusは2n=19, n=10(I), 10, 9(II)である(第4, 5, 7, 8, 19, 20, 21, 22図).この結果は利岡・山本(1937)の観察と一致する.第1分裂では, 一極に向つて先行する性染色体(X染色体)が認められる(第6, 19, 20図).アカアシクワガタNipponodorcus rubrofemoratusは2n=10, n=5(I, II)であつて(第9, 10, 11, 12図), 大型のV型染色体が精原細胞には一対, 第2精母細胞に一ケ含まれている(第9図のV, 第12図のV).またこの種でも第1分裂でXY対を識別できる(第11図).コクワガタMacrodorcas rectus(第13, 14, 15図)とスジクワガタMacrodorcas binervis(第16, 17, 18図)は染色体数は同じであつて共に2n=18, n=9(I, II)である.性染色体構成は雄がXYと推定される.従つてXO型であるノコギリクワガタはこれらのうちでは特異な種である.なお, 第1分裂でのXY対を比較すると対合様式はミヤマクワガタとアカアシクワガタがrod型であつてneo-XY型であるDorcus parallelopipedusと異つている.またアカアシクワガタとコクワガタおよびスジクワガタの染色体数の関係が注目される.
著者
吉田 毅 工藤 保子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.36_1, 2019

<p> 東京2020オリンピック・パラリンピック(オリ・パラ)の開催を契機として、さまざまなレガシーの創造が模索されている。学校教育との関わりから言えば、オリ・パラ教育が多様なアクターによって推し進められている。</p><p> 例えば、東京都教育委員会は、育成すべき人間像、教育のレガシーを定め、基本的枠組みとして4つのテーマと、4つのアクションを組み合わせた多様な取り組みから、重点的に育成すべき5つの資質を掲げ、教育を展開している。</p><p> 一方で、ほぼ全ての幼稚園、学校を網羅することもあり、多様な価値観を含み込むオリ・パラについて、一方的、かつ固定化された価値の押しつけにつながるのではないかという懸念もある。また、そのような教育が行われる社会的意義については十分議論されているとは言いがたい。そこで、本シンポジウムでは、オリ・パラ教育の現状について実践例を検討しながら、その社会的意義や課題、向かうべき方向性について体育社会学の観点から議論したい。</p>

1 0 0 0 IR 語源俗解考

著者
工藤 力男
出版者
成城大学
雑誌
成城国文学論集 (ISSN:02869063)
巻号頁・発行日
no.25, pp.187-212, 1997-03
著者
沼田 華織 工藤 せい子 津島 律
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1_63-1_72, 1990-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
13

貧血患者(WHOの基準でHb値,男性13.0g/dl未満,女性12.0g/dl未満)男女16名に対して前屈位洗髪を行いVital signs(脈拍,呼吸,血圧)に与える影響を貧血のない患者男女17名を対照として比較した。 洗髪は,38℃,40℃温湯で,洗髪車を用い病室で行った。体位は,椅子に腰かけ前屈坐位で,洗髪時間は1人8分で,テープレコーダーに吹き込み一定時間で行い,終了後10分までVital signsを測定した。この結果,脈拍・呼吸はともにt検定で有意な変化はなく,38℃,40℃温度間でも有意差はなかった。最高血圧では,貧血患者が40℃で0分(施行直前)に比べ8分,10分,18分に有意に上昇した。最低血圧は,両群とも38℃で0分に比べ8分,10分,18分に有意に上昇した。両血圧とも温度間の有意差はなかった。 今回,38℃,40℃の温湯は,貧血患者に対して影響はなかった。しかし,貧血患者に対しては,貧血の程度によっては,仰臥位洗髪の方法で施行した方が安全と考えた。
著者
宍戸 常寿 工藤 郁子 クロサカ タツヤ 庄司 昌彦 山本 龍彦
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.201-224, 2020-12-01 (Released:2021-01-07)

日本が目指すべき未来社会の形としてSociety5.0が提唱されてから数年が経ち、デジタル経済社会においてはサイバー空間とフィジカル空間の融合は深化している。そこでは、Society5.0の名の下にイメージされていた創造性の発揮や利便性の向上が見られる一方で、従来の個人情報保護政策や競争政策の枠では捉えきれないデジタル経済社会における「新たな課題」も出現してきている。このような「新たな課題」を適切に捉えるためには、現在起きている地殻変動を、単にサイバー空間の領域が拡張し、フィジカル空間を侵食しているものとイメージするのではなく、むしろ、サイバー空間における活動とフィジカル空間における活動が、データの流通を介して相互に深く影響を与え合うという関係性・循環性を適切に認識することが重要である。そのようなサイバー空間とフィジカル空間の活動がデータの流通を介して相互に深く影響を与え合う相互の関係性・循環性を含む総体としての「ネットワーク空間」における状況と課題について、大きく4つの議題(「ネットワーク空間の環境変化とその背景」、「環境変化に伴う社会経済的な課題」、「課題解決に向けて採るべき政策、目指すべき姿」、「新型コロナウイルス感染症拡大に係る問題意識」)に分け、それぞれについて話題を提起しつつ、有識者による議論を行った。
著者
工藤 雄一郎 米田 穣 大森 貴之
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
pp.60.2020, (Released:2021-06-11)
参考文献数
47

本稿では,日本列島で最古段階となる縄文時代草創期の隆起線文土器群の年代的位置づけを検討するため,東京都百人町三丁目西遺跡出土土器内面付着炭化物の分析を行った.土器に付着した炭化物は少量であったが,炭素をセメンタイトに合成する微量分析による放射性炭素年代測定を実施し,12,660±50yrsBP(15,270~14,940calBP)の土器であることが分かった.また,炭素・窒素安定同位体分析により,炭化物の由来が陸上動植物であり,年代測定結果の信頼性が高いことを示した.隆起線文土器の土器付着炭化物の放射性炭素年代測定50点および最古段階の資料である長崎県福井洞窟3c層出土炭化材による隆起線文土器の年代を比較し,隆起線文土器は約16,000年前から2,000年程度続く土器型式であり,百人町三丁目西遺跡の土器はそのなかでも中段階に位置づけられることを示した.
著者
伊藤 富子 工藤 智 下田 和孝
出版者
北海道立水産孵化場
雑誌
北海道立水産孵化場研究報告 (ISSN:02866536)
巻号頁・発行日
no.59, pp.11-20, 2005-03
被引用文献数
1

北海道では、2001年に大沼公園内円池でオオクチバスとコクチバスが、2002年に余市町余市ダムでオオクチバスが、2002-2004年に南幌町親水公園池でオオクチバスが、それぞれ捕獲された。余市ダムおよび南幌親水公園におけるオオクチバスの生態的地位と履歴を解明する目的で、オオクチバスの食性を調べると共に、オオクチバスと餌生物の炭素および窒素同位体の分析を行った。また、同位体分析結果の解明のため、オオクチバスの同位体濃縮係数とターンオーバータイムの測定を試みた。その結果、余市ダムのオオクチバスは最近違法放流されたものと推定された。一方、南幌親水公園池では、比較的長い間この水域に生息していた体重500g以上のものと最近放流された体重100g以下の個体の両者が含まれていると推定され、2004年6月に採集された体重300g余の個体は新たにごく最近違法放流されたものであると考えられた。
著者
伊藤 富子 工藤 智 下田 和孝
出版者
北海道立水産孵化場
巻号頁・発行日
no.59, pp.11-20, 2005 (Released:2011-03-05)

北海道では、2001年に大沼公園内円池でオオクチバスとコクチバスが、2002年に余市町余市ダムでオオクチバスが、2002-2004年に南幌町親水公園池でオオクチバスが、それぞれ捕獲された。余市ダムおよび南幌親水公園におけるオオクチバスの生態的地位と履歴を解明する目的で、オオクチバスの食性を調べると共に、オオクチバスと餌生物の炭素および窒素同位体の分析を行った。また、同位体分析結果の解明のため、オオクチバスの同位体濃縮係数とターンオーバータイムの測定を試みた。その結果、余市ダムのオオクチバスは最近違法放流されたものと推定された。一方、南幌親水公園池では、比較的長い間この水域に生息していた体重500g以上のものと最近放流された体重100g以下の個体の両者が含まれていると推定され、2004年6月に採集された体重300g余の個体は新たにごく最近違法放流されたものであると考えられた。
著者
山田 康二 工藤 崇博 大塚 未来子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.130, 2005

【はじめに】当院は2002年10月、日本医療機能評価機構による病院機能評価(一般病院B)を取得し、5年後の更新時Ver.5.0の評価を受ける為、各部署患者サービスの向上への取り組みが展開されている。<BR>今回、総合リハビリテーションセンター(以下、センター)では、病院機能評価の大項目にある「リハビリテーション体制の整備」に注目し、その小項目である"リハビリテーションの必要性の検討と方針の確立"をテーマに、センターでの業務機能分化を行い、外来リハビリテーション(以下、外来リハ)チームとして、関わりのシステムを検討し、業務改善を行ったので以下に報告する。<BR>【現状把握】まずは月1回行われる外来リハチーム会議にて、病院機能評価で取り上げたテーマについて確認し、現状の問題点について話し合った。<BR>現状の問題点として、1)外来リハの長期化 2)外来リハの効果判定 4)患者満足度の視点の3点が上がった。また3)については、外来患者を対象にアンケートを実施し結果を分析した。<BR>1)については、外来リハ継続期間は疾患によって異なるが、全体の54%が1年を超えている。<BR>2)については、必要に応じて医師に報告する程度で、カンファレンス時間も取れない状況である。<BR>3)については、待ち時間が長い・担当休日時の対応が不十分・スタッフ接遇(言葉づかいが良くない)についての問題点があがった。<BR>【改善内容】1)については、外来リハ処方時に今回のリハビリ実施期間設定及び週何回行うかの頻度設定を行うよう、医師に依頼した。<BR>2)については、今回のリハビリ実施期間がきれる前、各セラピストが指定の用紙に、期間内行った訓練内容と効果判定評価について記載し、その評価内容によって、医師が終了か継続または他施設への連携の判断を行う事とした。<BR>3)については、当院は2002年11月より電子カルテ導入へ向けてコンピューター委員会が立ち上がり、2004年4月よりまずオーダリングシステムから開始された。オーダリングシステムは、処方オーダー・予約オーダー・入院病棟オーダー・食事オーダーを基本機能とし、各検査オーダー・投薬チェック・診療予約の拡張機能から構成される。外来リハについても、診療予約機能を利用し、完全予約制にする事により待ち時間の軽減・担当休日時のトラブルを回避する事とした。<BR>【改善後外来リハの流れ】患者来院後、各科の医師は外来リハ処方箋発行と同時に、別紙にて今回のリハビリ実施期間と頻度を設定し開始となる。担当はリハビリ終了時、予約台帳を提示し次回の日時・時間予約を行い、コンピューターに入力し予約券を発行する。この作業にて担当のスケジュール管理へ連動し、他の部署からの閲覧も可能である。またその場で予約できない患者についてはコールセンターで電話予約するシステムである。コールセンターへの連携はすべてオーダリングシステム上で行う。<BR> 再来時は、予約券にあるバーコードを読み取り受付を行い、リハビリ科ではコンピューターにて、再来時間や外来診療記録等を確認する。特に検査・画像についてタイムリーな情報を収集できる。効果判定評価については、有効期間内に各担当者が目標設定・訓練内容・評価内容・本人(家族)の希望を記載しカルテへ添付する。その後、医師はリハビリの必要性を検討し、継続または終了の判断がなされる。<BR>【結果及び考察】まず外来リハ1年を超えている患者には、医師より、再度リハビリの目的や期間など説明を受け、今後のあり方について方向性が明確化された。また効果判定評価についても、医師との連携手段の1つに位置付けされた。<BR>完全予約制については、何のトラブルもなくスムーズな流れで運用されている。予約をとることで、患者にとっては、その日の生活時間を有効に活用する目安となると同時に、スタッフにとっても1日の仕事量を把握し、空いた時間に別の予定を組み込むなど、業務の効率化を図ることができたと考える。何より、訓練待ち時間が軽減された事は、患者満足度に大きく反映されるものだと確信している。この事については、今後もアンケート調査を実施したいと考える。<BR>また2005年4月より当院リハビリシステム(リハッシュ)も導入され、日々の業務書類・データ管理・レセプト等が電子化された。今後、電子カルテへリンク体制を整備し、個人情報保護や改ざん防止等の管理面を充実させ、より良いシステムの構築へ向けて改良していきたいと考える。
著者
工藤 真由美 Mayumi Kudo 四條畷学園短期大学保育学科 Shijonawate Gakuen Junior College
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
no.40, pp.42-48, 2007

本稿は、いのちが希薄化した今日の社会情勢に鑑み、いのちの重み、大切さを実感できるような、実践的で本質的ないのちの授業を構想することがねらいであり、そのために過去の教育実践を紐解き、そのエッセンスを汲み取ることを主眼とする。横浜の浜之郷小学校の校長、大瀬敏昭氏は自身の闘病から死に至るまでを、その死と直面しつつ生きる心情、絶望と恐れ、希望と勇気を、それらを与えてくれた絵本との出会いというかたちで子どもたちに紹介していく。彼の自己の病状を包み隠さず、平易な言葉で子どもたちに語りかけていく「いのちの授業」の実践記録が、我々に示唆するところは大きい。それは、我々自身が人生から問われたものとして、真摯に日々生きる姿の中にこそ、真の「いのちの授業」が生まれてくるというものであり、また、最後まで学び続け変わることが人間の可能性であり、その点で死は人間にとって成熟する最後のチャンスであるということである。
著者
前野 正久 両木 岱造 工藤 力
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.401-406, 1964-01-30 (Released:2010-11-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ニュージーランド, オーストラリア, スェーデン, アメリカで生産された15試料のバターオイルの乳脂肪について主な化学試験を行ない, 脂肪酸組成をガスクロマトグラブィーにより分析し, 日本のバターから得た乳脂肪と比較した。酸価, 不ケン化物の量は国別, 季節別の差はない。融点は国別の差はなく季節的に冬季の試料が夏季の試料より1.0~1.5℃高い値を示した。ケン化価, 沃素価は国別の差よりも同じ国の季節による差の方が大きく, 冬季にはケン化価が高い値を示し, 沃素価は減少する。夏季にはこの逆の傾向を示した。脂肪酸組成は日本, アメリカの夏季試料ではステアリン酸, オレイン酸, リノール酸, リノレン酸が多く, 低級脂肪酸は減少する。冬季にはミリスチン酸, パルミチン酸, 低級脂肪酸が増加し, ステアリン酸, オレイン酸, リノール酸, リノレン酸が減少する。日本の試料は酪酸含量は外国の試料と大きな差はないが酪酸からラウリン酸までの脂肪酸量は外国のものより低く, リノール酸, リノレン酸は外国の試料とほぼ同じ量を含んでいる。オーストラリアの試料はアメリカ, 日本の試料と同じ傾向にあった。ニュージーランドの試料は夏季でもオレイン酸が少なく, 低級脂肪酸が多く他の国の夏季試料と組成が異なっている。スエーデンの試料はアメリカ, 日本の冬季の試料よりパルミチン酸含量が多く, ステアリン酸, オレイン酸が少なく, 低級脂肪酸およびミリストオレイン酸, パルミトオレイン酸の量が多い。
著者
田邊 優貴子 工藤 栄
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.S0069, 2009 (Released:2009-10-23)

昭和基地周辺には、南極の一般的イメージ「薄暗い氷に閉ざされた大陸」とは違った露岩域と呼ばれる地帯がある。これらは氷期-間氷期サイクルという地球規模の環境変動の影響を受け、3~4万年前に南極氷床が後退して創成された。そこに多数点在する多様な形状・水質を持った湖沼の底には普遍的に、まるで森林のようにユニークな植物群落(藻類・コケ類優占)が一面に広がっており、南極陸域生態系の中で最も豊穣な植生と言われている。この湖ごとに独自で多様な湖底藻類形成と繁栄の謎に迫るべく、1)南極湖沼の環境変動の解明、2)湖底藻類群集の保持色素と光合成の関係、3)光変動に対する藻類群集の応答性、というアプローチによる研究を行った。南極湖沼は一年のほとんどを氷に覆われ、氷厚や積雪によって水中の光環境は大きく影響を受けていた。南極の夏季は光合成生物にとって限られた成長期であるが、日長が長く、紫外域を吸収する溶存有機物質が低濃度の湖水であるためか、湖底まで強光・強紫外線が到達しており、貧栄養かつ低温の湖水環境であった。藻類群集は、このようにストレスの多い極域で生存し生長するために、強光・強紫外線の防御によって死滅回避しながらも、可能な範囲の光エネルギーを利用するように応答することが明らかになった。これにより、藻類群集は死滅すること無く正の光合成を維持でき、南極の湖底で大群落を築き上げていたと考えられる。
著者
工藤 紗希 小島 慎一郎 佐久間 博子 町田 明子 杉本 諭 丸谷 康平 伊勢崎 嘉則 室岡 修 大隈 統 加藤 美香 小林 正宏 三品 礼子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2246, 2009

【目的】<BR> 近年では在院日数の短縮化に伴い、介護老人保健施設(老健)を経て在宅復帰されるケースが増加している.一方在宅復帰した者の中には、機能低下により在宅生活が困難となり、施設入所となることも多い.従って通所者の在宅生活の継続、入所者の在宅復帰を目標とした際に、在宅生活に必要なADL能力及びバランス能力を把握することは、理学療法を進める上で重要であると考えられる.本研究の目的は、通所・入所者のADL自立度の違いを明らかにし、その違いをバランス能力に焦点を当てて分析することである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は通所リハサービス利用者及び老健施設入所者のうち本研究に同意の得られた高齢者247名(男性75名、女性172名、平均年齢79.1±8.8歳)で、通所者188名、入所者59名であった.疾患の内訳は、脳血管疾患95名、神経疾患20名、整形疾患87名、内部障害27名、その他18名であった.ADL自立度の評価にはFIMの運動項目を、バランス能力の評価にはBerg Balance Scale(BBS)を用いた.なおFIM下位項目のうちの階段昇降は、運動能力の違いに関わらず使用している者が少ないため、階段を除く12項目の合計(FIM12項目合計点)及び各下位項目の素点を用いた.BBSは合計点及び14の下位項目を用いた.分析方法は、まず通所者と入所者のFIM12項目合計点及び下位12項目の得点の違いをMann-Whitney検定を用いて分析し、有意差のみられた下位項目の分布と臨床的意味合いをもとに、各下位項目を良好・不良の2段階に分類した.次に抽出されたFIM下位項目を独立変数、利用状況(通所・入所)を従属変数として、Stepwise法による判別分析を行った.更に判別分析により最終選択された下位項目を従属変数、BBS下位項目を独立変数とし、Stepwise法による重回帰分析を行い、バランス能力との関連について分析した.<BR>【結果および考察】<BR>FIM12項目合計点の中央値は通所者78点、入所者61点、BBSは通所者44点、入所者27点であった.Mann-Whitney検定の結果、FIM12項目合計点、FIM下位12項目のうち食事と移動を除く10項目に有意差がみられ、判別分析ではトイレ動作と浴槽への移乗が最終選択された.この2項目が良好と判断される境界点は、トイレ動作は6点、浴槽への移乗は5点であった.重回帰分析によるBBS下位項目との分析では、トイレ動作では着座、リーチ、起立、浴槽への移乗では一回転、リーチ、タンデム立位、車いすへの移乗が最終選択された.以上より、在宅復帰の可否にはトイレ動作が修正自立、浴槽への移乗が見守りで可能であることが関連し、このような動作の獲得には、着座、起立、リーチ、一回転、タンデム立位、移乗動作のようなバランス能力の向上が重要であることが示唆された.
著者
工藤 暢宏 新美 芳二
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.428-439, 1999-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
6 13

アメリカノリノキ(Hydrangea arborescens)の有する不良環境適応性を'セイヨウアジサイ'(H. macrophylla)に導入することを目的として, 両種間で正逆交雑を行った.1. H. macrophyllaとH. arborescensの花粉を塩化カルシウムとともに管ビンに入れ, -20, 5および20℃の温度条件で貯蔵し, その後の花粉発芽能力を経時的に調査した.-20℃で貯蔵した花粉の発芽能力は長期間(10&acd;12か月間)維持されたが, 5℃で貯蔵した花粉は, 5ヶ月で, 20℃で貯蔵した花粉は5日でそれぞれ発芽能力を失った.2. 自家, 種内および種間交配ではどの組合せでも両種の花粉は柱頭上で良く発芽し, 花粉管は花柱内を伸長して子房内の胚珠に達した.3. 自家および種内交配では, 両種とも完熟種子が得られた.しかし, 得られた完熟種子数は品種や組み合わせで異なり, さく果当たり種子数は, H. macrophyllaでは10&acd;54粒, H. arborescensでは19&acd;38粒であった.4. 得られた種子をポットと無菌培地に播くと, いずれの場合でも, H. macrophyllaでは58&acd;85%の発芽率であり, H. arborescensの発芽率は, 14&acd;52%の範囲であった.H. arborescensの実生の第一本葉には毛茸の発生があり, これが両種の実生を区別する形態的特徴であった.5. 種間交配では, 種子親にH. macrophyllaを用いた場合, わずかに種子が得られ, H. arborescensの場合, 種子が得られなかった.得られた種子を人工培地に無菌播種した結果, 実生が得られた.しかし, これらは幼植物期にすべて枯死した.6. H. macrophyllaを種子親にした種間交配では交配60&acd;150日後の胚珠を培養して実生が得られたが, 子葉展開後生育を停止しすべて幼植物期に枯死した.一方, H. arborescensを種子親とした種間交配では交配60日後の胚珠を培養して1個体の実生を得たが, 子葉展開直後に枯死した.7. H. macrophylla×H. arborescensで胚珠培養により得た実生の子葉に形成された不定芽を切り取り, BA添加培地で継代した結果, 根系をもつ植物体が得られた.その茎頂部に花粉親のH. arborescensに特有の毛茸が発生したため, 雑種植物であると判断した.再分化植物は生育が緩慢で試験管外では生育しなかった.
著者
内藤 理 佐藤 啓宏 工藤 俊亮 池内 克史
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.629-638, 2012 (Released:2012-08-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

In recent years, the social network has attracted attention as the system which causes the innovation, and various studies for researchers' networks have been carried out. This paper conducts social network analysis for a researchers' social network based on co-authorship in papers in the journal of RSJ. We investigate the 1,912 papers published from 1983 to 2010, which include 2,736 authors (nodes of the network) and 6,531 co-authorship (edges of the network). The network turns out to have general features as a complex network, such as scale-free structure, small-world structure, and cluster structure. We extract 710 core members from the network and analyze various centrality among them to show that some researchers demonstrate more importance in the network than their degrees. We also apply cluster analysis to the network to find 27 clusters in which researchers have close relationship, and give a coarse-grained representation of the clusters to clarify the adjacency among them.