著者
横窪 安奈 木村 健一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P50, 2010 (Released:2010-06-15)

本研究は,茶室における亭主の動作と茶釜音(環境情報) が茶事における周期性を持つことを明 らかにし,この周期への客の同期を図ることで,茶事協調支援を促すための新しい茶室「幻庵」の 提案を目的としている.茶道は日本の伝統芸能の代表の1つである.茶道の技能を習得するためには,教科書を用いた知識習得型の学びでは,体得するのは困難である.そのため,技能の習得に関わる身体動作の周期性への同期を主体とした,スキル・サイエンスの知見を用いて茶事協調を解明することに取り組んだ.まず,茶釜の湯温変化が茶事協調の重要な要素であると仮説を立て,LED を発光体とし,Gainer で発光パターンを制御する明滅発生装置「幻庵ver0.1」を試作した.ここでは,茶室空間独自の雰囲気を損ねないことが確認できた.次に,茶事協調の同期の状況を確認するため,茶室フィールド実験を行った.実験結果から,亭主の動作が茶釜の音の変化と同期していることが明らかになった.さらに,亭主の動作を一区切りとした周期があり,茶事全体の周期を構成していることが示唆された.これを可視化することで,客が茶事の周期への同期を図ることができ,茶事協調の支援となる可能性があると考える.
著者
橋村 斉 原田 佳澄 舘 友基 木村 圭佑 櫻井 宏明
出版者
日本理学療法士協会
雑誌
第6回日本地域理学療法学会学術大会
巻号頁・発行日
2019-10-25

【はじめに】 地域包括ケア推進のために在宅医療・介護の推進が必要であり、各地で自助・互助の強化、社会参加の促進が取り組まれている。その中で、療法士が社会参加の促進を行うためには、療法士自身が近隣の地域活動を把握している必要がある。当院では、利用者が地域の中でその人らしく生きがいを持って取り組めるような地域活動を提案するために、松阪市内の地域活動について電子地図を用いて情報収集・記録しており、リハビリテーション科の職員が常時確認できるように管理している。今回は、その活動内容を報告する。【地域活動の情報収集・管理】 松阪市内の公民館・集会場などの場所と活動内容・開催日について、市のホームページや地域包括支援センターの生活支援コーディネーターより情報収集を行った。また、公共交通機関について、市内を運行するバス停の位置をホームページ上で調査した。収集した情報を一括で管理し、各々の位置関係を把握するため、電子地図(Google My Maps)上にまとめた。これにより、利用者の自宅周辺で開催されている地域活動が視覚的に判別できるようになった。さらに、市役所に各公民館の内部環境調査を依頼し、建物内各所の部屋の構造・段差の高さ・手すりの有無などを把握することができた。これらの情報により、移動距離や段差昇降の必要性など、地域活動へ参加するために達成すべき課題が明確になり、利用者と共有できるようになった。【地域活動の見学と環境調査】 当院利用者が多く居住する地区を中心に、一部の公民館に赴いて活動内容や現地環境を調査した。活動内容は大きく分けて趣味系・運動系の2種類があった。趣味系の活動は全体的に自由に休憩が取れ、自分のペースで活動ができる様子であったが、運動系は総じて実施時間が長く、求められる身体機能が高い印象であった。また、市内には80ヶ所以上の公民館があるが、バリアフリー構造の建物は1ヶ所のみであった。その他の公民館は築50年以上が経過しており、内部構造は和室が多く段差が多数で、トイレも和式が多くを占め、身体機能の低下した高齢者にとっては利用しにくい環境であった。 【展望・課題】 上記ツールを使用し、現在までに介護保険利用者6名に対して地域活動の紹介・参加に結び付けることができ、現在も電子地図の活用事例を増やし、入院患者への適応拡大を図っている。今後は、当院のホームページ上に電子地図を公開し、当院以外の医療従事者にも活用してもらうことで意見を収集し、電子地図に掲載する情報の見直しを行っていく。【倫理的配慮、説明と同意】本研究に関しては、事前に当院の倫理委員会にて承認を受けて実施している。
著者
梅崎 重夫 福田 隆文 齋藤 剛 清水 尚憲 木村 哲也 濱島 京子 芳司 俊郎 池田 博康 岡部 康平 山際 謙太 冨田 一 三上 喜貴 平尾 裕司 岡本 満喜子 門脇 敏 阿部 雅二朗 大塚 雄市
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.13-27, 2014 (Released:2015-03-26)
参考文献数
19

日本の強みは,現場の優秀な作業者や管理・監督者及び生産技術者が質の高い安全管理と生産技術に基づく改善を実施していることにある.したがって,この“現場力”を基盤に置いた上で,技術に基づく安全の先進国と言われる欧州の機械安全技術や社会制度を適切に活用すれば,日本の現場力と欧州の機械安全技術を高次の次元で融合させた新しい枠組みの安全技術と社会制度を構築できる可能性がある.本稿では,以上の観点から日本で望まれる法規制及び社会制度のあり方を検討した.その結果,今後の日本の社会制度では,安全をコストでなく新たな価値創造のための投資として位置づけること,高い当事者意識と安全な職場を構築しようとする共通の価値観を関係者間で共有すること,及び再発防止から未然防止,件数重視から重篤度重視への戦略転換と想定外の考慮が重要と推察された.また,実際の機械の労働災害防止対策では,特に経営者及び設計者に対して欧州機械安全の基本理念と災害防止原則を普及促進するとともに,①ISO12100に定めるリスク低減戦略,②モジュール方式による適合性評価と適合宣言に関する情報伝達を目的としたマーキング,③マーキングの情報に基づく機械の使用段階での妥当性確認,④機械の設計・製造段階への災害情報のフィードバックが特に重要と考えられた.
著者
神馬 征峰 木村 真三
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

原子力災害後、被災者はどのような心理社会的健康影響を受けるのか。日本でも世界でも学術的研究は少なく、その影響要因はほとんど明らかになっていない。本研究では、2011年3月に発生した福島第一原発事故の現場で、質的・量的調査の両手法を用いて、その要因を特定する。「放射線による健康不安」に着目し、一人ひとりの被災者や避難者が抱える不安を具体的かつ系統的に把握できる尺度(質問票)の開発を行うのが最初の目的である。次に、開発された尺度によって、精神健康指標をはじめとする健康状態と健康不安との関連を探索する。今後、原子力事故を含む同様の複合災害が発生した場合にも起こりうる心理社会的影響の予防や長期化した時のあり方について具体的に提言することを目指す。本研究は、三段階で構成される。1) 「放射線による健康不安」を把握するための尺度開発にあたり、質的手法を用いて被災者のインタビュー調査を行い、情報収集を行う。2) インタビュー調査で得られた内容に基づき、福島版「放射線による健康不安」尺度の開発を行う。3) 更に、開発された尺度を用いて、精神健康指標をはじめとする健康状態との関連を探索する。研究初年の26年度においては、避難生活を続ける高齢者を主な対象として、インタビュー調査を実施した。27年度においては、別の対象(母親、子供等)にインタビューを実施しながら、入手した情報の整理を行い、尺度開発を進めている。28年度においては、インタビューで得られた内容を、チェルノブイリ原発事故被災地のウクライナで開発され、使用されている「放射線被ばくによるPTSD尺度」及び、その他関連のある尺度等を参考に福島避難者用の尺度の作成を行った。29年度においては、国内での調査の一部を実施。また、尺度が長期的に使用可能かを調査するため、チェルノブイリ原発事故被災地における聞き取り調査を実施した。
著者
大野 能之 樋坂 章博 岩本 卓也 木村 丈司 百 賢二 米澤 淳 伊藤 清美
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.537-545, 2018-11-10 (Released:2019-11-10)
参考文献数
11

The first academic subcommittee of the Japanese Society of Pharmaceutical Health Care and Sciences has a plan to create a guide on how to manage drug interactions in clinical settings. This review describes the information that forms the basis of the guide. This article, part (1), reports the results of a questionnaire on the content of the guide and also describes how to evaluate and manage drug interactions in clinical settings. The contents of the ʻDrug Interaction Guideline for Drug Development and Labeling Recommendationsʼ, the new Japanese guideline, are also described. It is important also in clinical practice to appropriately evaluate and manage drug interactions based on a sufficient understanding of the new guideline and related information.
著者
木村 尚史
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.216-219, 1996 (Released:2013-02-19)
参考文献数
1
著者
木村 洋二 ハンナロン チャーン 板村 英典
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.55-106, 2006-03-30

2004年5月10日の記者会見における皇太子の「人格否定」発言を日本の4大新聞がどのように報道したか、荷重グラフを作成して比較分析した。はじめに、同じく王室を戴くタイ国における王室報道を概観した。記事の割付けと面積をグラフィカルに表現するパターングラフ(NWP)を開発するとともに、「敬意度」を測定するために記事の開始段数を指標化(SRW)した。タイにおいてはすべての王室報道が第1段から掲載されるのに対し、日本の新聞にはかなりのバラツキが見られた。産経、読売が「敬意度」の得点が高く、朝日、毎日の得点が低いことがグラフ表示から明らかになった。
著者
木村 五郎 赤木 博文 岡田 千春 平野 淳 天野 佳美 大村 悦子 中重 歓人 砂田 洋介 藤井 祐介 中村 昇二 宗田 良 高橋 清
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.628-641, 2012

【背景・目的】Lactobacillus acidophilus L-55 (L-55株)には,マウスアレルギーモデルに対する症状緩和効果が認められている.そこでL-55株含有ヨーグルト飲用による,スギ花粉症臨床指標への影響について検討した.【方法】スギ花粉症患者にL-55株含有ヨーグルト(L-55ヨーグルト群, n=26)あるいは非含有ヨーグルト(対照ヨーグルト群, n=26)を花粉飛散時期を含む13週間飲用してもらい,症状スコア,症状薬物スコア,IgE抗体について検討した.【結果】L-55ヨーグルト群の総症状スコアと症状薬物スコアは,対照ヨーグルト群より低い傾向が認められた.特に治療薬併用例(n=23)では, L-55ヨーグルト群の花粉飛散後第5週の総症状スコア,第4週の咽喉頭症状スコアおよび第1週の総IgEの変化比が有意に低値であった.【結語】L-55株はスギ花粉症に対する緩和効果を有し,治療薬の併用により効果的に症状を軽減,あるいは使用薬剤を減量することが期待された.
著者
稲積 真哉 與北 雅友 木村 亮 嘉門 雅史 西山 嘉一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-22, 2007-11-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

海面埋立処分場において鋼管矢板を打設することで構築される鋼管矢板遮水壁は、埋め立てられた廃棄物からの浸出水が外海へ漏出することを防ぐ重要な遮水工要素である。一方、鋼管矢板が遮水工としての機能を発揮するためには、継手を有する鋼管矢板の嵌合打設において周辺地盤との密実性を保持しなければならない。本研究では、鋼管矢板遮水壁の打設における周辺地盤の乱れ領域の形成に着目し、海面埋立処分場全体の環境保全機能に対する乱れ領域の影響、乱れ領域の形成を抑制する打設工法の効果およびサンドコンパクションパイル工法による地盤改良の影響を、浸透・移流分散解析によって評価する。本研究における成果の一例として、下部堆積粘土層において形成される乱れ領域が特定経路における有害物質漏出の漏出量に大きく影響し、一方、ソイルセメントによる鋼管矢板周辺の地盤改良を伴う鋼管矢板の打設工法が有害物質の漏出抑制に効果的であることを示した。
著者
木村 直弘 KIMURA Naohiro
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.14, pp.115-136, 2015

宮崎駿と並ぶ日本アニメ映画界の「レジェンド」で1998年には紫綬褒章を受章し,2015年には『かぐや姫の物語』で第87回アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされるなど今日国際的な評価を得ている高畑勲監督(1935年生)は,2014年10月,NHKテレビのインタビュー(1)で,宮澤賢治作品をアニメ化することについて問われた際,「僕にとっては,畏れ多い」と答えている。以前,5年の月日を費やしてアニメ映画『セロ弾きのゴーシュ』を自主制作したこともある高畑に賢治作品への畏敬の念が本当にあったかどうかについてはさて措き(2),賢治作品について高畑がこのようなイメージをもつに至ったのは,1939年,賢治没後初めて出版された子ども向け童話集『風の又三郎』(坪田譲治解説,小穴隆一画,羽田書店)を読んだという彼の最初の賢治体験に依るところが大きい。羽田書店は,この前年,賢治の盛岡高等農林学校時代の後輩でその思想に多いに影響を受け農村劇活動などを実践した松田甚次郎の『土に叫ぶ』を刊行し,ベストセラーになった。同店はその余勢を駆って,松田編の『宮澤賢治名作選』を1939年3月に刊行,これが賢治の童話作家としての名声が広まる大きなきっかけとなったことはよく知られている。このいわば大人向けの選集の好評を受け,さらに同年12月に子ども向けとして刊行されたのが童話6編を収めた前掲『風の又三郎』で,当時文部省推薦図書指定を受け,これも多くの子どもたちに読まれた。さらに,翌1940年10月には,日活によって映画化された『風の又三郎』(監督:島耕二)が公開され,「はじめての児童映画の誕生」ともてはやされ「文部省推薦映画」となり,映画文部大臣賞を受賞,宮澤賢治の名は人口に膾炙することになる。同年,小学校三年生の時に故郷岡崎で観たこの映画や小学校六年生の時に読んだ〈銀河鉄道の夜〉の「すごくメタリックに光る,キラキラした印象」(3)をもとに,名実ともに「一大交響楽」(4)を作曲したのが,高畑より3歳年上のもう一人の「勲」,すなわち,数多くの映画音楽やテレビ番組の音楽を手がけ,またシンセサイザー音楽で世界的に評価されている作曲家・冨田勲(賢治没年の前年である1932年生)である。
著者
舘野 泰一 中原 淳 木村 充 保田 江美 吉村 春美 田中 聡 浜屋 祐子 高崎 美佐 溝上 慎一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-11, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
27

本研究では,大学での学び・生活が就職後のプロアクティブ行動にどのような影響を与えているかを検証するために質問紙調査を行った.本研究の特徴は2点ある.1点目は縦断調査という点である.近年,大学教育において「学校から仕事への移行」に関する調査研究は増えてきているが,その多くは振り返り調査という限界があった.2点目は,就職後のプロアクティブ行動に着目した点である.プロアクティブ行動とは,個人の主体的な行動のことであり,近年大学教育で議論されてきた「主体的な学び」の成果に関連が深い.しかし,これまでその影響について検証されてこなかった. 共分散構造分析を行った結果,1.授業外のコミュニティを持っている学生,2.大学生活が充実している学生ほど,就職後にプロアクティブ行動を行っていることが明らかになった.
著者
今村 展隆 GLUZMAN Daniel F. KLIMENKO Ivanovich Victor GULUZMAN Daniel Fishelevich GLUZMAN Dani KLIMENKO Iva 木村 昭郎
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

我々は非汚染地区であるビテブスク州(人口1,423,000名ベラルーシ共和国)においてリクイデーター(除染処理作業者)に高率の白血病発症を認めた。多数のリクイデーターが居住しているウクライナ共和国においても同様であった。更にドネエプロペトロフスク、ドネツク及びチャーコフ州に居住しているリクイデーター(各々 21,906, 26,503, 28,314名)と、それらの州における非被爆者男性に発症した白血病及び悪性リンパ腫の発症率を比較した。これらの州における白血病発症率は1986年のリクイデーター群において相対リスク3.02と非被爆者群と比較して高率であり、一方1987年のリクイデーター群では相対リスク1.05と低値であった。この差は1986年のリクイデーターに大線量被曝を受けた人々が多数存在している結果であり、白血病発症が線量依存性に発症している可能性を強く示唆している。悪性リンパ腫発症においても同様であり、1986年のリクイデーター群において相対リスク1.35とやや高率で、1987年のリクイデーター群は0.75と低率で白血病発症と同様に線量依存性である可能性を示唆するものと考えた。更に重要な事実は、原爆被爆者に発症した骨髄異形成症候群患者が白血病に進展する際にp53癌抑制遺伝子の突然変異を持っていた事実と同様に、検討し得た2例の急性骨髄性白血病にp53癌抑制遺伝子異常を認めた。放射線被曝によりDNAの突然変異が招来されたものと考えた。