著者
本田 裕子 林 宇一 玖須 博一 前田 剛 佐々木 真二郎
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.41-64, 2010-03-25

ツシマヤマネコは,長崎県対馬市にのみ生息し,野生復帰の将来的な実施が検討されている。ツシマヤマネコ及び野生復帰計画を含めツシマヤマネコの保護を住民がどのように捉えているのか,本研究ではその住民意識を探る。本研究は検討段階を対象としており,野生復帰直前・直後を対象としていた先行研究に対して新規性がある。方法は,長崎県対馬市全域住民のうちの20歳以上79歳以下の男女1000人を対象とし,住民基本台帳使用による無作為抽出郵送方式を採用,回収率は48.8%であった。住民によるツシマヤマネコの捉え方は,「対馬にだけ生息する生き物」「対馬を象徴するもの」として,その固有性が評価された。検討されている野生復帰に関しては,実施場所としては検討されている下島が適当とする回答は少なかったが,野生復帰そのものに関しては全体として肯定的に捉えられていた。ツシマヤマネコは,ほとんど目撃されない存在でありながら,主に交通事故対策を中心とした保護活動の展開や新聞テレビ報道によって,「対馬にのみ生息する」や「絶滅のおそれがある」という認識は普及していることが背景にあると考えられる。ただし,生活とは遠い存在であるがゆえに利害関係が想像されにくく,保護活動が肯定的に受け入れられているとも考えられる。
著者
佐藤 忠信 小長井 一男 堀 宗郎 澤田 純男 本田 利器 盛川 仁 張 至鎬 濱田 政則
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、エジプト側研究協力者が主体となりナイルデルタを取り巻く地震活動資料の収集を行った。また、過去に発生しカイロ市に被害を及ぼした地震の断層破壊過程を明確にするとともに、将来発生する地震のシナリオを作成した。日本側研究分担者はエジプト側研究者の協力の下にカイロ市を取り巻く地域の詳細な地盤調査の資料収集を行った。収集した資料の内容は以下のようである。1.ボーリング調査(PS検層、サンプリングを含む)と室内試験2.微動調査および屈折法探査(板叩き)による地盤構造調査3.重力異常による深層地盤調査4.RI(ラジオ・アイソトープ)コーン貫入試験による浅層地盤物性調査さらに、得られた資料からカイロを含むナイルデルタ地帯の地盤構造をモデル化するとともに、エジプト側の研究協力者と共同して、ナイルデルタ地帯の地震危険度マップを作成した。特に、今年度は最終年度であるので、平成18年9月にエジプト国立天文台・地球物理学研究所を研究分担者全員と研究協力者1名の合計6名で訪問し、研究の途中経過発表会をエジプトで開催するとともに微動観測点の選定を行なった。また、カイロ内の特定構造物の耐震性能を評価するために用いる動的解析用の入力地震動のシミュレーション方について議論した。特定地点を選定し微小地震の観測を継続するためのプロジェクトを立ち上げた。そのために必要な予算措置をエジプト国家地震局に申請すると共に、エジプト国立天文・地球物理学研究所の地震観測網を利用してナイルデルタにおける微小地震活動を評価した。
著者
中根 允文 本田 純久 高田 浩一 三根 真理子 朝長 万左男
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

長崎市にて生活している原子爆弾被爆者(原爆被爆者手帳の保有者)はおおよそ5万人いるが、彼らについて科学的方法論に則って詳細な疫学研究は未だ行われてこなかった。われわれは、原爆投下から50年を経過してこの被爆者における精神的な負担の程度を知り、且つ精神障害の有病率を明らかにすることによって、現在彼らが如何なる精神保健支援を必要としているかを探ろうとした。対象は調査期間内に被爆者健康診断を受診してくる被爆者のうち、本研究に参加の同意が表明された者で、彼らに全般健康調査12項目版(GHQ-12)でスクリーニングを施行し、二次調査としてCIDI面接、および三次調査として精神科医による臨床面接が実施された。協力の得られた事例は7,670名(男性3,216名、女性4,454名)である。一次調査の結果として、GHQ-12における高得点者の頻度は9.3%であり、性別・年齢階層別に全く同一の頻度ではないものの有意な差を見るほどではなかった。これを被ばく距離別に見たとき、近距離被爆者(〜2km)が他の被爆距離群の者より高い平均得点を示し、また高得点者も多いことが確認された。次にこの一次調査のスコアをもとに二次調査(参加協力者は225名)・三次調査対象(同212名)が抽出されたが、彼らに見られた精神障害のうち最も頻繁に見られた診断はF4「神経症性、ストレス関連性、および身体表現性の障害」であり、中でも身体表現性障害・他の不安障害の亜型が目立った。次に多かったのはF3「気分(感情)障害」で、特にうつ病圏患者が目立って多かった。今回の多数の協力をもとに、被爆者における精神疾患の有病率を推算してみると、最低の11.59〜19.59%までの幅があった。日本においては、こうしたデータの報告が全くと言っていいほどに見られないので、同値が低率なのか高率なのかを判断できない。われわれは、一般内科外来を受診した患者について全く同じ方法論でもって調査研究を行い、20%を越える有病率であったことを報告している。それに比すと、やや高率であることが窺われる。ただ、今後も詳細な疫学研究を継続することによって、適切な解釈が可能となるであろう。更に、こうした頻度に影響する要因の解明も必要であり、今後は心理社会的背景を綿密に調査していく予定にしている。
著者
飯田 明由 小久保 あゆみ 塚本 裕一 本田 拓 横山 博史 貴島 敬 加藤 千幸
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.73, no.732, pp.1637-1646, 2007-08-25
被引用文献数
6

The aim of this investigation is to understand the generation mechanism of aero-acoustic feedback noise radiated from rear-view mirrors. In order to clarify the relationship between the velocity fluctuation and radiated noise, correlation in terms of aerodynamic noise and velocity fluctuations were measured in a low-noise wind tunnel. The experimental results showed that noise level of the tonal-noise depended on the ratio of the height of the bump to the thickness of the boundary layer. Strong tonal-noise was generated when the height of the bump was almost equal to 40% of the height of the boundary layer. The tonal-noise level also depended on the length between the trailing-edge of the bump and the edge of rear-view mirror. The frequency of the tonal noise can be calculated by modified Rossiter equation. The tonal-noise was disappeared in the case of the bump was placed at separated boundary layer. It revealed that the seed of the tonal noise was small disturbances generated by the bump on the surface of the rear-view mirror.
著者
望月 源 本田 岳夫 奥村 学
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.37-38, 1995-09-20
被引用文献数
2

語義曖昧性解消などに使用される代表的な機械可読の日本語シソーラスには、国立国語研究所の分類語彙表[4](以下、[分類])と、角川書店の角川類語新辞典[5](以下、[角川])が挙げられる。これらは人手により、異なる語彙分類基準で構築されている。本稿では我々の語彙的結束性[1]に基づいた語義曖昧性解消アルゴリズム[3]を両シソーラスそれぞれを用いて実装し、実際のテキストで曖昧性解消の実験を行なう。その結果から、語彙的結束性に基づく語義曖昧性解消の観点からシソーラスの比較を行なう。
著者
太田 憲治 本田 新九郎 大澤 隆治 永野 豊 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.7, pp.61-66, 1999-01-25
被引用文献数
2

本稿では、仮想空間、並びに仮想空間上のオブジェクトの実感をより高める手法を紹介する。コンピュータネットワーク上に3DCGを利用した仮想空間を構築し、仮想空間上での活動、遠隔地にいる他者とのコミュニケーションが可能な場を提供する研究が盛んに行われており、我々も在宅勤務を支援するための仮想オフィスシステム"Valentine"の研究を行ってきた。しかし現在の仮想空間においては、画面を見ることによって情報を得ることがほとんどであり、得られる情報も現実世界で得られる情報と比較するとごくわずかである。また現実世界と仮想空間における行動はほとんどの場合異なっている。この現実世界と仮想空間との差が、仮想空間に対する実感の妨げになっていると考えられる。そこでValentineでは、ユーザの身振り情報をアバタに反映させることによりノンバーバル情報の伝達を行い、握手デバイスを用いた仮想握手を実現した。また、風力測定デバイスを作成し、画面上に息を吹きかけることによって仮想空罰上のオブジェクトを操作することを可能にした。In this paper, we propose the new technique which can let us realize a virtual space and object further. Now many researchers have constructed 3D virtual space, in which people can take a walk, do shopping, communicated with distributed members and so on. We also have built a virtual office system "Valentine" which supports home office workers. However in many systems users get almost all information only by watching picture, and it is much less than in the real world. There are many obvious differences between the action in the real world and the virtual space in most case. we can consider that those differences prevent us from realizing the virtual space. So in our office system we transmit "non-verbal information" by letting the avator reflect user's state and action, and realize "virtual handshake" by using the handshake device. We also make device that measures the strength of the wind. This makes it possible that users can handle objects in the virtual space by only blowing it.
著者
本田 靖
出版者
筑波大学体育科学系
雑誌
体育科学系紀要 (ISSN:03867129)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.187-189, 2005-03

地球温暖化の健康影響を評価する場合に、影響を受ける死亡の大半は老齢人口が占める。しかしながら、図1に示すように、相対的に見ると幼児期の死亡が特に大きく高気温と関連していることがわかる(Mantel-Haenszel死亡率比とは ...
著者
屋良 朝彦 金光 秀和 本田 康二郎 蔵田 伸雄 須長 一幸 永澤 悦伸 大小田 重夫 坂井 昭宏 長谷川 吉昌
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)科学技術によってもたらされる不確実なリスクに対処するための意思決定モデルとして、「予防原則」を検討した。その際、予防原則にはどのようなレベルのリスクに対処するべきか明確な基準が欠けていることが明らかにされた。そのため、予防原則はリスクに関する合意形成モデルによって補完される必要があることが示された。(2)科学技術による不確実なリスクの本質を知るために、それをリスクコミュニケーションの観点から分析した。
著者
定金 晃三 横尾 武夫 福江 純 松本 桂 有本 淳一 小林 英之 本田 敏志
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.55-65, 1995-09
被引用文献数
1

大阪教育大学に設置された口径50cm の反射望遠鏡には,観測装置として液体窒素冷却の高性能CCDカメラが備えられている。さまざまな種類の天体観測を行いながら,このCCDカメラそのものの性能の評価と柏原キャンパスにおける天体観測性能の評価を行った。結果として,CCDカメラの冷却性能,読み出しノイズのレベル,直線性などはいずれも良好であることがわかった。空の明るさの計測を行った結果,柏原の空は市街光の影響を著しく受けており,しかも,方向によって影響の大きさが異なることが分かった。多数のイメージを計測した結果,星像の大きさの平均は現状ではおよそ4秒角である。点光源(星)を対象とした場合,120秒間の露出を4ないし5回行うことで14等台の明るさの天体の相対測光観測が0.02等の精度で行えることがわかった。We have conducted an extensive series of tests of the CCD camera which is used at the Cassegrain focus of the 50 cm telescope of Osaka Kyoiku University. Measurements of bias and dark counts, the read-out-noise, and of the linearlity show excellent performances of the camera. We also measured sky counts over the observatory, apparent stellar radius, and the statistical photometric precision of the observing system. The sky brightness is seriouly affected by the city light. The FWHM of the stellar image is, on the average, around 4 arc sec. Photometric precision of +/— 0.02 mag is achieved by the present system in measurements of 14-th magnitude stars.
著者
今井 新悟 伊東 祐郎 中村 洋一 酒井 たか子 赤木 彌生 菊地 賢一 本田 明子 中園 博美 西村 竜一 篠崎 隆宏 山田 武志 家根橋 伸子 石塚 賢吉 ファム ターンソン
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

日本語学習者のための日本語スピーキング能力をコンピュータ上で自動採点するテストシステムを開発した。インターネットを介して受験でき、時間と場所の制約を受けずに受験が可能である。音声認識技術を使い、受験者の発話から特徴量を抽出することにより、自動採点を実現している。項目応答理論を用い、受験者の能力に適合した難しさの問題を出題するアダプティブテストとなっており、少ない問題数で能力の判定ができる。
著者
大久保 つや子 柴田 学 高橋 宏 山田 恭央 栢 豪洋 本田 武司 青野 一哉 川越 昌宜 長岡 成孝 武田 康男
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.1116-1121, 1988-12-28
被引用文献数
3

歯科領域でのカートリッジ方式による局所麻酔において,血液の逆流現象を調べ,注射に際して特別な吸引操作を行わずとも,血液が容易にカートリッジ内に逆流し,残液を汚染することをつきとめた。1. 1.25%ポンタミンブルー液中に,注射針の先端を浸漬した状態でカートリッジ局麻液0.8mlを一定速度で押し出し,加圧を停止し指先をハンドルから浮かせた状態にしたとき,カートリッジ内に逆流してくる色素を定量する逆流模擬試験を行った。市販カートリッジ用注射器7種について比較した結果,7種すべての注射器に逆流が認められた。逆流色素量と頻度からしてFujisawa aspirating syringe>Citoject>Fujisawa type II>JM syringe>Trixylest>BDN carupule syringe>Peri-pressの順であった。また,市販4種のカートリッジについても,逆流現象を比較した。この場合も,1種を除くすべてに高頻度,高濃度の色素逆流を認めた。2. 歯科診療3機関より回収した,使用済カートリッジの残液について,色素結合法による蛋白の定性,定量を行った。324サンプル中85例(26.2%)に蛋白陽性を認めた。3. 使用済カートリッジ残液について,ヒトヘモグロビンを,酵素免疫測定法によって定性定量した。99サンプル中24例(24.2%)に陽性を認めた。以上のことから,局所麻酔用カートリッジでは,注射時に血液が高濃度,高頻度に逆流することが確認されたので,残液を他患者に再使用することは,エイズ,B型肝炎感染防止の立場より,厳禁すべきことが示唆された。
著者
福澤 美佐 嘉村 基樹 国貞 和恵 萩原 淳 本田 久美代 持永 早希子 矢富 義信 原 周司 小野 信文 黒田 健
出版者
日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.499-507, 1998-10-10
被引用文献数
2

A questionnaire survey the patient's views regarding drug information was carried on 941 outpatients from April 24 to May 10, 1997 at Fukuoka University Hospital. As a resutlt that drug information and compliance counseling was found to have been given by physicians (73%). Pharmacists (9%), both(7%) and nurses (3%). Thirty-two% of the patients showed a good understanding of the counseling and could correctly identify their medicines. Most patiens who did not understand their medications very well wanted written information about the effects, side effects and drug interactions of the prescribed medicines. These patients requested physicians (75%), Pharmacists ( 13%) and both (9%) to give the drug information. These results indicate that the present drug counseling to the outpatients is not sufficient. Increasted efforts by pharmacists are therefore still needed to enable patients to obtain appropriate information and thereby improve the overall effectiveness of drug therapy.
著者
湯浅 美千代 小川 妙子 石塚 敦子 内村 順子 本田 淳子 武井 テル
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.50-57, 2007-03

本研究は,入院期間の短縮化が図られている高齢者専門病院の認知症専門病棟での入院長期化の要因と退院支援の内容を看護師の視点から明らかにすることである。老人性認知症疾患治療病棟2病棟及び身体合併症対応精神科病棟1病棟の師長,主任,リーダー業務を行うスタッフ計9名を3名3グループとしたグループインタビューを実施し,質的に分析した。インタビュー対象者が認識していた入院長期化の要因は,【治療に伴う退院目標の遷延】【退院先探索・決定,待機のための時間消費】【家族の退院受容困難】【入院を長期化させないアプローチの未整備】という4つのカテゴリーにまとめられた。また,インタビュー対象者からあげられた退院支援の内容は,【退院できる状態にむけての患者のケアと治療の調整】【退院を促進するための他職種との連携】【チームでのアプローチ】【家族との連携を通した退院準備】【看護職間の連携と教育】【退院を念頭にした調整】【家族のパワーを保つ支援】という7つのカテゴリーにまとめられた。今後の退院支援の課題として,患者自身へのアブローチの充実,家族に生じうる心情を予測した入院・治療計画,退院後の治療継続のシステム,認知症高齢者への治療選択を検討するシステムがあげられた。