著者
杉浦 隆
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

酸化チタンは、光触媒などの光機能材料として様々に応用されている。以前の研究において焼結体や単結晶の酸化チタン電極にフォトエッチング処理を行うことで結晶配向に依存した特徴的なエッチングパターンが形成されることを見出している。しかしその場合、表面処理の効果は数百マイクロメートルの厚さの電極の表面のみに限られ、薄膜電極をフォトエッチング処理できれば、光触媒などへも応用も可能となると考えられる。そこで本研究では、酸化チタン薄膜を作製する方法としてチタン板を熱酸化する方法を試み、薄膜の評価を行った。さらに作製した酸化チタン薄膜電極にフォトエッチング処理を行い、その表面構造や光誘起親水特性を評価することで酸化チタン薄膜の作製条件が及ぼすこれらの特性への影響についての検討を行った。フォトエッチング処理をした電極の表面SEM像から、薄膜電極の場合においても酸化チタンの結晶配向に依存したエッチングパターンが形成可能であることを見出した。フォトエッチング処理前後の電極の光誘起親水特性評価を行ったところ、ブラックライト照射下でフォトエッチング処理前の試料は2500分間の照射で限界接触角が70°であったのに対し、処理後の試料は120分間の照射で0°と超親水性を示し、短い照射時間で限界接触角が大きく減少したことがわかった。これはフォトエッチング処理により光誘起親水化しやすい酸化チタンの(100)面が選択的に露出したためであると考えられた。
著者
望月 哲男 亀山 郁夫 松里 公孝 三谷 惠子 楯岡 求美 沼野 充義 貝澤 哉 杉浦 秀一 岩本 和久 鴻野 わか菜 宇山 智彦 前田 弘毅 中村 唯史 坂井 弘紀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ロシア、中央アジア、コーカサス地域など旧ソ連圏スラブ・ユーラシアの文化的アイデンティティの問題を、東西文化の対話と対抗という位相で性格づけるため、フィールドワークと文献研究の手法を併用して研究を行った。その結果、この地域の文化意識のダイナミズム、帝国イメージやオリエンタリズム現象の独自性、複数の社会統合イデオロギー間の相互関係、国家の空間イメージの重要性、歴史伝統と現代の表現文化との複雑な関係などに関して、豊かな認識を得ることが出来た。
著者
杉浦 藤虎 伊藤 和晃
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ロボカップサッカー競技ロボットの作製と開発を段階的かつ継続的な負荷と捉え,より高い課題を学生に課すことで創造性育成教育を行い,その効果をアンケート調査により検証した。その結果,ロボカップ参加学生の問題解決能力や思考方法などの顕著な向上を確認した。一方,世界大会に参加する上で必要な英語運用能力は学生自身が十分でないことを認識した結果となった。今後も学生の興味を引きつける教材・課題を通して,創造性や英語コミュニケーション能力の向上が期待される継続的な機会と環境を学生に提示することが有効であることが示された。
著者
田村 光 阿部 定範 杉浦 功一 前田 真悟 池田 信良 小島 正夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.1662-1665, 2006-07-25
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

症例は, 73歳,男性.平成13年11月胆石にて腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.術中胆嚢が穿孔し,胆汁が腹腔内にこぼれた.摘出胆嚢は肉眼的に腫瘍を認めなかったため,病理検査は,一割面のみに行われたが,明らかな悪性所見は認めなかった.良性胆嚢と判断されたため,胆嚢は特に保存はされず廃棄された.<br> 平成15年6月臍部痛にて当科受診.腹部エコー, CTにて臍のすぐ尾側の腹直筋内に辺縁不整な腫瘤像を認め,切除生検にて腺癌の転移と診断されたため,入院の上,平成15年8月腫瘍を含む腹壁を切除した.腹膜播種を疑う明らかな所見も認めなかった.組織学的に高分化腺癌の転移と診断された.明らかな原発部位を同定することはできなかった.平成16年1月再度腹壁に再発し, 2月より照射施行(58Gy/41回/29日).一旦腫瘍は縮小したものの,再増悪を認めたため,抗癌剤(CDDP+5-FU)を開始したが軽快せず,全身状態悪化し2004年7月死亡した.
著者
杉浦 幸之助 山崎 剛
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,積雪の南限域に相当するモンゴル・ウランバートルの北東に位置するヘンテイ山脈Tuul川上流域に着目して,流域スケールで吹雪が積雪や大気に与える影響を解明するために多角的に研究を行ってきた.吹雪発生の地域特性,吹雪による積雪の削剥特性,近年のTuul川上流域における山岳積雪分布の実態と吹雪の動態及び積雪の有無による土壌の応答を明らかにし,吹雪による積雪の再配分過程の重要性を示した.
著者
西村 可明 田畑 理一 岩崎 一郎 雲 和広 杉浦 史和 塩原 俊彦 荒井 信雄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,ロシアにおいて市場経済化が開始されて十年以上経過した時点で,既に市場経済が成立したといえるのかどうか,経済成長の中長期的展望はいかなるものかについて,経済学的に正確な見解を提示することにある。そのために,(1)1992年以降のロシア経済の発展動向の分析,(2)経済改革の進捗状況の分析,(3)マクロ経済の推移と展望,(4)企業・ミクロ経済制度の考察の課題に,研究分担者・協力者による共同研究を通じて応えようとするものである。我々のある程度結論的な見解は,次の通りである。すなわち,(1)ロシア経済は1992年以降外部から移植された市場経済制度にもとづく経済活動を通じて、持続的な経済成長が確保されるようになっていることから,基本的には市場経済が成立したと見なしうること,(2)その事はミクロレベルでは企業のコーポレートガバナンスの形成によっても裏付けられること,(3)但し金融市場の整備は遅れていること,(4)経済改革の動向は一義的に分明ではなく,自由経済への接近と国家資本主 義的動きとが錯綜していること,(5)ロシア経済は長期的には人口減少の問題を抱えているが,独自のイノベーションなど技術革新が無くても,先進国からの平均的技術の輸入によってキャッチアップしながら成長を続ける巨大な可能性があることの5点に要約できる。この様な見解は,我々の研究成果の中で提示されておりそれは,大別すれば,(1)ロシア・マクロ経済の発展動向と見通しに関するもの,(2)ロシアにおける経済改革の動向に関するもの,(3)ロシアにおける経済体制の現状に関するもの,(4)ロシア企業・金融機関の制度的・実証的分析にかかわるもの,(5)その他に分類することができる。
著者
竹宮 孝子 杉浦 弘子 前原 通代 前原 通代 竹内 千仙
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

カイニン酸(KA)は痙攣とともに脳内海馬の神経細胞傷害を引き起こす。本研究では、KAが血管内皮細胞に膜型プロスタグランジンE(PGE)合成酵素(mPGES-1)とアストロサイトにPGE_2レセプターEP3を誘導することを発見した。そして、合成されたPGE_2はアストロサイトのEP3を活性化し、アストロサイト内のCa^<2+>を上昇させグルタミン酸の流出を増やし、神経細胞傷害を悪化させることがわかった。これは血管内皮細胞による新たな神経細胞傷害制御メカニズムである。
著者
高木 英至 野村 竜也 杉浦 淳吉 林 直保子 佐藤 敬三 阿部 年晴
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究課題の成果は大別して次の4つのカテゴリーに分けることが出来る。第1は、本研究課題で用いた手法、特に計算機シミュレーションの社会科学における位置づけに関する、方法論的ないし哲学的な位置づけである。従来の例を整理しながら、計算機シミュレーションは数理モデルほど厳密ではないものの、柔軟で適用範囲の多い方法であること、特に進化型のシミュレーションに可能性が大きいことを見出した。第2は単純推論型の計算機シミュレーションの結果である。この部類の成果は主に、エージェント世界でのエージェントの分化を扱った。野村は、ハイダー流のPOXシステムのメカニズムを仮定したとき、一定の確率で2極分化した集団構造を得ることを、解析ならびにシミュレーションによる分析で見出している。高木は、限界質量モデルを距離を定義した空間に展開することで、より一般的なモデルを提起している。そのモデルから、エージェント間の影響力の範囲が近隣に限定されるとき、エージェントのクラスタ化や極性化が生じることを見出した。第3は進化型の計算機シミュレーションの成果である。エージェントの戦略が進化するという前提での計算結果を検討し、社会的交換ではエージェントの同類づきあいによって一定の「文化」が生じ得ること、さらに協力のために信頼に基づく協力支持のメカニズム、安心請負人による協力支持のメカニズムが生じ得ることを見出した。第4はゲーミング/シミュレーションの手法に基づく成果である。林らは、人間被験者を用いたシミュレーションにより、地域通貨という公共財が普及するための条件を、ある条件のもとで特定している。杉浦はCross Roadというゲーミングを被験者に行わせることを通して、集団レヴェルの特性が出現する過程の記述に成功した。
著者
杉浦 秀一 山田 吉二郎 根村 亮 下里 俊行 兎内 勇津流 貝澤 哉 北見 諭 坂庭 淳史 川名 隆史 室井 禎之 渡辺 圭 今仁 直人 堀越 しげ子 堀江 広行 斎藤 祥平 山本 健三
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、ロシア・プラトニズムという観点から19-20世紀のロシアの文化史の流れを再構築することである。本研究では20世紀初頭の宗教哲学思想家たちを分析し、彼らが西欧で主流の実証主義への対抗的思潮に大きな関心を向けていたこと、また19世紀後半のソロヴィヨフの理念はロシア・プラトニズムの形成に影響を及ぼしたが、彼以前の19世紀前半にもプラトニズム受容の十分な前史があったことを明らかにした。したがってロシア・プラトニズムという問題枠組みは、従来の19-20世紀のロシア思想史の図式では整合的に理解し難かった諸思想の意義を理解し、ロシア文化史を再構築するための重要な導きの糸であることを確認した。
著者
杉浦 一成 槇原 靖 八木 康史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.42, pp.187-194, 2007-05-15
被引用文献数
2

本研究では、全方位カメラから得られる複数方向の歩容画像を用いた個人認証手法を提案する。最初に背景差分により全方位画像列からシルエットを抽出する。それをパノラマ展開し、時空間の歩容シルエットボリューム(GSV)を得る。次に GSV から算出した歩行周期に基づいてフーリエ解析を行い、周波数領域特徴を抽出する。また全方位カメラを用いることによる観測方向の変化を利用して、複数の基準方向を設定し、各基準方向と歩行周期を基に複数方向の特徴を抽出する。認証時には、入力と辞書シーケンスに対する同一方向同士の特徴間距離を算出し、それらを統合して照合を行う。最後に15人の被験者の5方向を含むシーケンスに対して個人認証実験を行い、本手法の有効性を確認した。We propose a method of gait identification based on multi-view gait images using an omnidirectional camera. We first transform omnidirectional silhouette images into panoramic ones and obtain a spatio-temporal gait silhouette volume (GSV). Next, we extract frequency-domain features by Fourier analysis based on gait periods estimated by autocorrelation of the GSVs. Because the omnidirectional camera provides a change of observation views, multi-view features can be extracted from parts of GSV corresponding to basis views. In an identification phase, distance between a probe and a gallery feature of the same view is calculated, and then these for all views are integrated for matching. Experiments of gait identification including 15 subjects from 5 views demonstrate the effectiveness of the proposed method.
著者
森下 恵造 杉浦 英雄 河村 裕一
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

サブバンド間遷移光吸収が観測できる多重量子井戸を作製するためには表面平坦性、界面急峻性の良い薄膜作製法の確立が重要である。このためには原料ガス(アンモニア、トリメチルガリウム)を基板と水平に、熱対流を押さえ、原料を基板に押圧するためのガス(水素、窒素)を基板と垂直に導入する常圧ツーフロー型有機金属気成長法が最適と考えた。この方法を用いて高品質なGaNを作製することに成功した。この方法で最も大きな影響を及ぼすのは押圧ガス菅と基板の角度である。押圧ガス管の軸と基盤の角度はほぼ垂直であるが、押圧ガスが約1℃原料ガスの方向を向くように設定しなければならない。最適角度に設定すると横方向成長速度の大きい、大きく綺麗な六角錘や六角柱が積層した連続膜になる。しかし最適角度から0.05度ずれると六角錘が欠けた状態になり、0.3度ずれると連続膜とならず島状成長となり、0.7度もずれるとGaNは全く成長しなくなる。上記の結果は原料流速が45cm/s、押圧ガス流速20cm/sの場合である。最適角度は原料流速に依存し、流速が大きくなるほどより傾けなければならない。原料ノズルは基板と平行がよい。下向きになると基板中央では良い膜ができるが、下流側では成長しなくなる。上記の最適角度は原料ガスの基板上での滞在時間を大きくし、アンモニアの分解効率を高め、反応性窒素を効率よく基板に供給する配置となっている。加圧ツーフロー型有機金属気相成長法を用いて、今後短波長サブバンド間遷移発光の研究を続けていく予定である。
著者
吉元 洋一 勝田 治己 長谷川 博一 杉浦 昌己 宮川 博文 古川 良三 青山 賢治 三橋 俊高
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.321-328, 1988-07-10
被引用文献数
4

脳卒中患者87例に対し, Brunnstrom Stageと姿勢反射機構検査を行い, 以下の結論を得た。1. 上・下肢Brunnstrom Stageと本検査得点の比較では, 全てのStageにおいて健側との間に有意な得点差を認めた(下肢StageI : p<0.05, 他は全てp<0.01)。2. 上・下肢StageIIとIIIの比較では, 健側及び麻痺側共に有意差を認めた(p<0.01)。3. 上肢StageVとVI, 下肢StageIIIとIV, IVとV, VとVIの麻痺側間の比較において有意差を認めた(p<0.05)。4. Brunnstrom Stageと本検査得点の相関係数は, 上肢健側r=0.555, 麻痺側r=0.825, 下肢健側r=0.613, 麻痺側r=0.872と中等度以上の相関関係を認めた。
著者
杉浦 浩子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.精神障害者の「生きる能力」を構造化構造化を試みるために,精神科デイケア利用者に面接調査を行った。調査内容は勝田モデルの枠組みに従い,(1)生産の技術に関する能力(2)人間の諸関係を統制したり調整したり変革したりする能力(3)自然と社会についての認識の能力(4)世界の状況に感応し表現する能力を調査した。デイケア利用者では,(2)の能力不足を感じる人が多く,この能力の向上が社会復帰意識を高めると考えられた。2.一般の人々の精神障害者の「生きる能力」評価一般の人々が精神障害者の「生きる能力」をどのように評価しているかを明らかにするため,4つの能力を細分化し,質問紙を作成した。一作成した質問紙を用い,M大学1年生138名と中高年層94名に調査を実施した。(1)精神障害者の「生きる能力の評価」:全体で評価の低かった能力は,人間関係の能力の中の「協調性がある」「リーダーシップがとれる」「トラブル時の対応」であった。また,生産技術の能力の中の「新たな技能や資格の習得」「長時間の勤務」も低かった。逆に高かったのは,表現する能力の中の「芸術への関心」「芸術的表現」であった。中高年層と大学生を比較すると,中高年層の評価の方が有意に低かったのは,認識の能力の中の「学力」「知能」,生産の技術の中の「家事労働」であった。学生の評価の方が有意に低い項目はなく,中高年層の方が偏見が強いことが明らかとなった。(2)精神障害者との社会的距離と「生きる能力」の関連:「生きる能力」の評価の低い人は,社会的距離の多くの項目で「受け入れにくい」と答えていた。また,人間関係の能力の評価の低い人は,社会的距離の友人・職場で「受け入れにくい」と答えた人が多く,社会的距離での受け入れと「生きる能力」の評価には,関連性がみられた。
著者
田尾 龍太郎 羽生 剛 山根 久代 杉浦 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.595-600, 2002-09-15
被引用文献数
8 12

ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の多くの栽培品種は, 他の多くのバラ科果樹類と同様にS-RNaseの関与する配偶体型の自家不和合性を示す.しかしながら, 中には自家和合性の品種も存在し, これらの品種はいくつかの点で自家不和合性品種に比べて優れている.我々は, 以前の研究で, ウメの自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(S_f-RNase遺伝子)を見い出した.今回は, 自家和合性品種である'剣先(S_fS_f)'と自家不和合性品種の'南高(S_1S_7)'のS-RNaseを比較検討することでS_f-RNaseの性質を明確にしようとして, 以下の実験を行った.'剣先(S_fS_f)'と'南高(S_1S_7)'の花柱からcDNAライブラリーを構築し, S_f-, S_1-, およびS_7-RNaseをコードするcDNAをクローニングした.これらcDNAより推定されるS_f-, S_1-, およびS_7-RNaseのアミノ酸配列にはT2/S型RNase特有の2つの活性中心とバラ科植物のS-RNaseに共通してみられる5種類の保存領域が存在した.RNAブロット分析を行ったところ, ウメのS-RNase遺伝子は, 他のPrunus属のS-RNase遺伝子と同様に葉では転写されておらず, 花柱のみで転写されていることが明らかになった.また, '剣先'のS_f-RNase遺伝子と'南高'のS-RNase遺伝子の転写産物量に差異は見いだされなかった.花柱粗抽出液の2次元電気泳動を行ったところ, S_f-RNaseは他のS-RNaseと同様の分子量や等電点, そして免疫学的特性を持つことが示された.本研究の結果は, ウメのS_fハプロタイプの個体の示す自家和合性はS_f-RNase遺伝子に強く連鎖したpollen-S遺伝子の作用によって生じている可能性を示唆するものであろう.
著者
丹羽 佐紀 山下 孝子 大和 高行 小林 潤司 杉浦 裕子 Niwa Saki Yamashita Takako Yamato Takayuki Kobayashi Junji Sugiura Yuko
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 人文社会科学編 (ISSN:03896684)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.145-223, 2008

2006年1月から2007年7月にかけて、鹿児島在住の英国近代初期演劇研究者の仲間たちが集まって、月に1回の割合で、エリザベス1世時代の劇作家、ジョージ・ピールの『ダビデとバテシバ』の輪読会を行なった。一連の翻訳は、その輪読会の成果である。ジョージ・ピールは彼の劇作品に様々な題材を取り入れており、『ダビデとバテシバ』は、聖書のサムエル記下の記事を題材として扱ったものである。劇のあらすじは、基本的には聖書の中に書かれた内容と同じであるが、その描き方にはかなりの相違点が見られ、ピールの独自性が顕著である。翻訳に際しては、毎回、担当者が準備してきた試訳を全員で細部にいたるまで議論、検討し、その都度必要に応じて修正した。それを、丹羽佐紀が取りまとめて文体の統ーを図った。従って、原文の解釈については5名の共訳者が等しく責任を負い、訳文の文体および表現については、主に丹羽に責任がある。解説と訳注の執筆は、丹羽が担当した。
著者
杉浦 志保 繁桝 博昭 北崎 充晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.143, pp.1-5, 2006-06-29

両眼視野闘争の空間的コンテクスト効果については,同化が優位に知覚されるとする報告と,対比が優位に知覚されるという相反する2つの報告がある。本研究では,これらを統合的に理解するために,方位と運動に関する空間的コンテクスト効果の時間特性および空間特性について調べた。その結果,提示時間が長くなるにしたがい対比効果は減少した。一方,網膜偏心度については,方位では偏心度の増加に伴い対比効果が増加したのに対し,運動では偏心度の変化にともなう対比効果の変化が見られなかった。この結果から,両眼視野闘争において同化が生じるためには,ある程度の時間が必要なことが示唆された。一方,偏心度の効果が方位と運動とで異なることから,それぞれの知覚モジュールにおける空間相互作用の結果が両眼視野闘争の処理に利用されていることが示唆された。