著者
澤尻 昌彦 野村 雄二 滝波 修一 谷本 啓二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

放射線生物学や環境変異原の研究にメダカが利用され,咽頭歯骨には破骨細胞の存在するため放射線照射後の破骨細胞性骨吸収における変化の解析を試みた。放射線照射メダカの破骨細胞の活性を経時的に計測した。炭素線照射メダカでは抑制され炭素線照射によって破骨細胞の活性は低下することが示された。免疫染色によって破骨細胞誘導因子を確認すると炭素線照射メダカの咽頭歯周辺では破骨細胞誘導因子が阻害されることが示された。
著者
野村 慎一郎
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,環境条件による相分離を利用した新規リポソームDDS(薬剤送達システム)の開発である.研究代表者はリポソーム内で無細胞タンパク質合成を行わせることにより,目的のタンパク質のみを発現させたリポソームが構築可能であることを示してきている.最近,細胞間で相互の物質輸送を担う膜タンパク質・コネキシンをリポソーム膜に発現・提示しうるとの実験結果を得た.この結果を利用し,細胞へのDDSへの利用可能性を求めた.サイズおよび組成の異なるリポソーム環境で膜タンパク質を組み込み,培養細胞に水溶性蛍光色素を非破壊的に輸送することに成功した.またペプチド薬剤をモデルとして細胞内に輸送し,細胞内の遺伝子発現の制御が可能であること,異なるタイプのコネキシンの発現により標的選択性が得られることを示した.
著者
吉田 雅夫 野村 啓一 尾崎 武 中西 テツ
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

モモ,スモモなどサクラ属果樹の類縁関係を明らかにするとともに,これらの果樹がどのように進化してきたかをRAPDマーカー法によって明らかにしようとした。本試験に供試したウメ,アンズ,スモモ,モモは農水省果樹試験場,サクラ,オウトウは山形県園芸試験場で収集,保存している品種・系統を用いた。平成4年度にはウメ,アンズ,スモモなどを供試して,この手法がサクラ属果樹の系統分類と親子鑑定に利用できることを明らかにした。平成5年度は更に品種・系統の数を増やして分析し,ウメ品種では台湾梅,小梅,中梅,大梅,杏梅,季梅の品種群に分類できること,日本のウメは中国大陸から渡来したことを明らかにした。アンズは東アジア品種群と西方品種群に大別できること,スモモは種数が多いが,ニホンスモモ品種群とヨーロッパスモモ品種群に大別できることを明らかにした。ウメ,アンズ,スモモは類縁性が高く,相互に交雑し,品種の進化に関係していることが明らかになった。モモは近縁野生種のP.miraと栽培種のP.persicaなどに分類されたが,品種・系統間の多型性は小さかった。平成6年度はサクラとオウトウの分類を試みるとともに,葉縁体DNAについても分析し,サクラ属果樹の進化について検討を加えた。サクラ属はスモモとモモの仲間,サクラとオウトウの仲間の二群に大別され,両者は古い時代に分化したものと推察された。従来よりサクラの仲間に分類されていたユスラウメとニワウメは,本試験ではスモモの仲間に属することが認められた。サクラの仲間の分類は,阪神大震災の影響で現在中断しているが,今後明らかにして行きたい。
著者
野村 ますみ
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.29-34, 1988-03-15

筆者が,はじめて,『たんぽぽ教室』を訪れ,障害を持つ子どもの母親と出会った時,その陽気で暖かい姿に,強い感銘を受けた。母親たちは,この教室に「なぜ,集まって来るのだろうか?」,「何を求めているのだろうか?」……この2つの疑問が,教室と筆者を強く結び付け,この研究の動機となった。近年,わが国の早期療育の制度や機関が充実されつつある。しかし,それらの相互の連携やシステム化という,新しい課題が出現してきたことも事実である。これは,早期療育のさまざまな実践や活動が重ねられているうちに,各機関が固有の役割を持ち専門化していくと共に,孤立化した状態を呈し始めたものを,再び,統合しようとする課題でもある。しかし,各地の早期療育の試みが,独自的歴史を持つが故に,この課題の解決は,それぞれの地域性を抜きにしては不可能なことだろう。そこで,筆者は,地域の志ある人々の連携による療育実践の原点ともいえる『たんぽぽ教室』の関係者の発言をとおして,地域の早期療育の課題を明確にしたい。方法として,この教室に参加した親・学生ボランティア・指導員(関係者)のそれぞれの立場から,『たんぽぽ教室』を含めた早期療育についての自由な意見を求め,面接調査を行った。その結果をまとめてみると,(1)子どもと親の双方へのアプローチは,発見から処遇までのいずれの場面においても必要とされているということ,(2)一人ひとりの子どもの健やかな成長への援助を考えた時,各機関の連携が必須の条件となると共に,療育者のしっかりとした考え方と技量が要求されること,(3)早期療育のシステム化には,専門的な機関はもとより,地域に生活する多くの人々の参加と協力が要件となること,の3点が中心的な内容であった。筆者は,親が進んで地域社会と接触を持ち,地域と子どもの橋わたしをすることが大切であり,また,住民が"共に考え,共に生きる"地域になることが,地域療育の未来に求められている姿であることを強調したい。
著者
野村 晃 谷本 善夫 増田 満 河野 公彦 岡 拓真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, no.1, 1994-09-26

国際ディジタル衛星通信方式としてのインテルサットが推奨するIBS(Intelsat Business Services)およぴ, IDR(Intemediate Data Rate)シスチムは約10年が経過し,より高機能な装置が求められている。さらに今回IDRの仕様が改定となり,回線品質向上を目的としたReed Solomon Codingが採用された。本稿では,IBSとIDRシステム共通に使用可能な変復調装置を開発し,実用化したので報告する。
著者
宇佐見 香代 八木 正一 岩川 直樹 庄司 康生 舩橋 一男 野村 泰朗
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

教師は、それぞれの教室で生起する特定的・一回性的な状況と絶えず相互作用しながら、日々授業の創造や学級づくりの問題に取り組んでおり、具体的文脈の中での臨床的実践的な知覚や熟考、判断を基盤にした臨機の活動をその専門性の主軸としている。様々な問題状況のなかで、教師たちがその見識を拡げ葛藤を乗り越えて生き生きとした実践を生み出すためには、この具体的文脈へ教育研究者や将来教師になる学生が共同参加して臨床的研究を進めることが必要とし、その研究成果をまとめた。
著者
白水 博 野村 靖夫
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.45-51, 1997-02

バンドウイルカ(Tursiops truncatus)の2例に接合菌症(Zygomycosis)が発生した。2例とも主症状は, 元気消失, 食欲低下, 湿性雑音を伴う努力呼吸であった。臨床病理学的検査では, 好中球の増加とγ-グロブリン値の上昇がみられた。症例1には, 喉頭を狭窄する鶏卵大腫瘤と気管気管支リンパ節の腫大, 症例2には, 肺と気管に散在する黄白色病巣と気管気管支リンパ節の腫大が認められた。これらの病変部には, 隔壁が乏しく, 直角に分岐する傾向を示し, 太さが一定でない真菌が無数に存在することから, 接合菌症(zygomycosis)と診断された。
著者
藤田 保幸 砂川 有里子 田野村 忠温 松木 正恵 中畠 孝幸 山崎 誠 三井 正孝(三ツ井 正孝) 江口 正
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、研究代表者らがこれまでに『現代語複合辞用例集』などの形で積み上げてきた複合辞についての記述研究をふまえ、そうしたそれまでの成果を理論的にもまた個別形式の記述においても深めていくことを意図して企画したものであり、補助金の交付期間中にも、(1)複合辞についての従来の研究を見直して、問題点を明らかにするとともに、(2)複合辞各形式についての各論的記述を深める、という点を中心に研究が進められた。まず、第一点の従来の研究の見直しと問題点の明確化という点については、研究代表者藤田により、本研究の初年度に「複合辞の記述研究の展望と現在」と題する研究発表が行われ、現段階の問題点が総括されたほか、研究分担者松木により複合辞研究史についての一連の論文が発表され、学説史の総括が試みられた。第二点の各論的記述の深化については、研究期間内にかなりの成果を上げることができた。具体的に取り上げられた形式は、格助詞的複合辞(もしくは副助詞的複合辞)としては、「について」「において」「をめぐって」「に限って」「によって」(「によっては」との比較を中心に)、接続助詞的複合辞では「として」「からには」「ばかりか」「くせに」「につれて」「にしたがって」「うえで」「こともあって」「ことだし」、助動詞的複合辞としては、「どころではない」などで、それぞれについて各論的研究論文が公にされ、個々の形式の意味・用法に関する詳細な知見が得られた。そのほか、複合辞に関連して、複合辞と助詞「は」の関わりやコピュラ・形式名詞、韓国語・中国語との複合辞的形式の対照などについても研究が進められ、それぞれその成果は論文として公にされた(上記には、研究協力者による研究成果をも含む)。これまでの複合辞研究を記述的に一段深化させるという点で、本研究は相応の成果を上げることができたものと考える。
著者
野村 信威
出版者
明治学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では施設入居高齢者を対象としたグループ回想法を実施し,回想法による認知機能の効果および認知症予防における有効性を検討するとともに,質問紙調査による縦断研究から日常場面で行われる回想が心理的適応に及ぼす影響の検討を試みた。グループ回想法は認知症の症状がない施設入居高齢者に対して週1回の頻度で8回実施した。認知機能への効果を検討した結果,約半数の参加者では改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点の上昇が認められたものの統計的には有意な効果は認められなかった。質問紙調査の結果からは,過去を想起することと想起した過去を語ることに異なる心理的意義が認められた。
著者
兼松 満造 木部 久衛 関川 堅 野村 晋一 沢崎 坦 清水 吉平 大神田 昭雄 瀬野尾 有司
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.56-75, 1968-04-20

山岳の多いわが国では,新たな草地開発はこれらの山岳地帯にその多くを求めなければならない。古くからの慣習の牧野でも標高2,000mぐらいまでは利用されてきている。長野・山梨県下では近年標高1,000〜2,000mの高海抜山岳地帯に近代的な草地の開発・改良が,国の奨励助長策の下に逐次進められつつある。米国ではコロラド州など7,000feet前後の高地もひろく家畜が放牧され,南米アンデスの高地帯やスイスの山岳放牧はより一層の高海抜地で行なわれている。とくに夏季に集中する降雨と急傾斜地の多いことなど外国とそれとは異なった自然条件下にあるわが国の山岳地帯でも,古くからの経験の上に森林の撫育とも併せて,土壌と水の保全に十分留意すれば,標高2,000mぐらいまでの草地の開発と利用は,積極的に推進すべきであろう。わが国の高海抜地帯とみられるこれらの山岳地帯は,冬期間の長さと凛烈な寒気を除けば,むしろ寒さによく耐えるわが国の乳牛,肉牛,緬羊にとって,夏季の高温の強い感作から免れることと,その多くが北方系に属する既導入牧草類の春から秋へかけての生育の季節変動が低暖地に比べて小さいことからも有利な点が多く,このような背景から高層草地は高く評価されるべきであると考える。そこでこれらの高海抜山岳地帯の草地とそこでの放牧家畜について,野外の生態学的ならびに生理学的調査を行なうこととし,草地と放牧家畜との対応関係についての基礎的知見を求め,この種地帯における草地の利用と放牧家畜の管理技術の改善に役立つことを目的としてこの研究を行なった。調査研究の対象草地の概要は表1のとおりである。これら3草地のほか,心拍数の計測と気象要因と泌乳量の変動に関する調査のため信州大学附属農場(標高770m)および東京大学附属牧場繋養のホルスタイン種の泌乳牛,心拍数の計測と行動調査のため扉牧場の牛群が夏季放牧される鉢伏牧場(標高1,800〜1,900m)も調査の対象とした。1.上記3草地は豪雪地帯を除くわが国の中部山岳地帯の気象を代表するhomo-climatic zoneにあるということができよう。すなわち調査の結果では年平均気温6〜8℃,年降雨量1,400〜1,600mm,気圧823〜890mbで,夏季最高気温が28℃を越えることは稀であり,一方冬期の最低気温は往々-15℃以下となる。気温較差が年間を通じて大きく,相対湿度は年間を通じて高く65%以上で,降雨量は5,6,7および9月に多く,11〜4月の間に少ない。8月はやや乾燥気味で草の生長がやや停滞する。冬期の寒気はきびしいが,積雪量が1mを越えることは稀であった。なお年間を通じて晴天の日は紫外線量が大きく,6,7および8月に濃霧や驟雨が多い。2.このような気象環境のもとで,草地植生の質と量の季節的変動は,低暖地にみられるような夏季の高温障害の度合は著しく軽減され,適切な放牧管理のもとでは,放牧期間を通じてとくに質的に高い水準を維持している。このことは牧草草地で一層顕著であるが,自然草地でも秋の後半の急激な質的低下を除けば同じような傾向であった。冬期における扉牧場の笹葉は夏季に比べてやや劣るが,なお比較的高い質的水準(C.P.10%以上)を示した。3.霧ケ峯牧場野草と扉牧場の笹葉刈取り試料の分析の結果,微量元素はいずれも低い値(Co-0.16,Cu-1.4〜7.6,Zn-18.1〜30.8ppm)を示した。しかし霧ケ峯牧場で隣接した同じ土壌で石灰および燐酸を多投し,かつN,PおよびK肥料を施用して造成した牧草地の刈取り試料は前者の約倍量(Co-0.33〜0.39,Cu-11.9〜14.0,Zn-47.8〜68.8ppm)の微量元素を含むことが明らかとなった。なおこの傾向はMoについても同様であった。4.標示物質法による扉牧場およびキープ農場での7回の放牧採食量の調査で,前者の昼間放牧では充分採食されていないこと,一方優良な牧草草地であるキープ農場の全放牧では満足すべき採食量を示した。5.なお放牧採食量と草の質と行動形の調査から算出したrt/gt値の間には,草生密度がとくに低くない限り,明らかに相関関係のあることが認められた。6.放牧行動形の連続調査の結果,乳牛群のそれぞれ異なる行動形の遷移は,それぞれの草地ごとにおおむね一定のパターンを示し,個体調査の成績もこれと同調した。いずれの場合でも,盛夏の候ですら放牧採食形は昼間に強く反覆していること,夜間に強い反芻形が集中することが観察された。なお放牧乳牛群の日間の遷移は律動的であったが,気候条件の急変とくに降雨,降雪が,このリズムを撹乱する要因であることが明らかとなった。7.上に述べた採食量と放牧行動形の調査成績から,放牧用諸施設のうち牧柵,門扉および牧道の整備が,管理労力の節減とも関連し,放牧草地のより効率的な利用のための制御を容易かつ確実ならしめるため極めて重要であることが示唆された。8.放牧草地の植生の質と量ならびに草地土壌の性質に対応する放牧牛の血液性状の季節的調査の結果,とくに自然草地である霧ケ峯牧場と扉牧場では,主として冬期の良質粗飼料の不足に基因すると考えられる血糖値の低下(平均値霧ケ峯-5頭-26.5mg/dl,扉牧場-12頭-28.0mg/dl)が認められ,さらに前者では血中βカロチン含量の著しい低下(平均207μg/dl,最低値60μg/dl)が冬の末期にみられたことは,両牧場の冬期間の良質粗飼料確保の重要性を示すものであろう。なお笹の純植生地たる扉牧場の放牧牛群は蛋白質,カロリー源の摂取不足は霧ケ峯牧場の場合と同様であるが,冬期にも積雪下でなお緑色を保つ笹葉の摂取が,血中のβカロチン含量のかなり高い水準(14頭の平均413μg/dl)を示していることから,わが国に多い笹の冬期飼料としての価値は高く評価されるべきであろう。9.放牧飼育牛の心機能についての一部の基礎知見を得るため,野村が創案したビート・メーターを牛体に装着して,放牧行動形別のできるだけ多くの個体について数多くの計測を行なったが,その結果,心拍数の個体差が大きいこと,しかし行動形別の心拍数は,個体ごとに休息形から放牧採食形へと(より大きい運動量の行動形へと)規則正しい増加を示すこと,各放牧行動形間の心拍数の変動の幅がジヤージー種牛がホルスタイン種牛に比べて狭かったことが認められた。これらの知見は牛の放牧飼育(育成-とくに高海抜草地)の意義と,放牧のため余分に必要とするカロリー推計への道を招くものであろう。10.低地から上記の高海抜草地に移動した乳牛は,ジャージー種牛,ホルスタイン種牛ともに高地到達時から数か月の間,赤血球数の明らかな増加を示したが,おおむね8〜12か月後には正常値となることが認められた。このことはこの程度の高地には乳牛は生理的によく適応し得ることを示唆するものと考えられる。11.同じく心機能に関して,高層草地に馴化したとみられるキープ農場のジャージー種泌乳牛32頭および信州大学附属農場のホルスタイン種泌乳牛12頭について行なった心電図検査の結果,注目すべき所見として,より高層のキープ農場の牛が信州大学附属農場の牛に比べ一般に高電位であり,とくに心電図のT波の電位がより高くQ-T間隔が長いことである。このような心電図所見の解釈についてはなお,今後の研究に待たなければならない。
著者
高木 英至 野村 竜也 杉浦 淳吉 林 直保子 佐藤 敬三 阿部 年晴
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究課題の成果は大別して次の4つのカテゴリーに分けることが出来る。第1は、本研究課題で用いた手法、特に計算機シミュレーションの社会科学における位置づけに関する、方法論的ないし哲学的な位置づけである。従来の例を整理しながら、計算機シミュレーションは数理モデルほど厳密ではないものの、柔軟で適用範囲の多い方法であること、特に進化型のシミュレーションに可能性が大きいことを見出した。第2は単純推論型の計算機シミュレーションの結果である。この部類の成果は主に、エージェント世界でのエージェントの分化を扱った。野村は、ハイダー流のPOXシステムのメカニズムを仮定したとき、一定の確率で2極分化した集団構造を得ることを、解析ならびにシミュレーションによる分析で見出している。高木は、限界質量モデルを距離を定義した空間に展開することで、より一般的なモデルを提起している。そのモデルから、エージェント間の影響力の範囲が近隣に限定されるとき、エージェントのクラスタ化や極性化が生じることを見出した。第3は進化型の計算機シミュレーションの成果である。エージェントの戦略が進化するという前提での計算結果を検討し、社会的交換ではエージェントの同類づきあいによって一定の「文化」が生じ得ること、さらに協力のために信頼に基づく協力支持のメカニズム、安心請負人による協力支持のメカニズムが生じ得ることを見出した。第4はゲーミング/シミュレーションの手法に基づく成果である。林らは、人間被験者を用いたシミュレーションにより、地域通貨という公共財が普及するための条件を、ある条件のもとで特定している。杉浦はCross Roadというゲーミングを被験者に行わせることを通して、集団レヴェルの特性が出現する過程の記述に成功した。
著者
愛甲 英寿 野村 建太 青木 健一 鎌倉 友男 酒井 新一 JOLY Vincent
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.470, pp.35-40, 2008-01-22
被引用文献数
3

オーディオ信号で振幅変調された有限振幅超音波の自己復調効果を利用したパラメトリックスピーカは,超指向性音響システムへの応用が有望である.いままでに,このスピーカは技術開発されてきたし,実用に供してきている.しかし,まだいくつかの課題が残っている.特に,音質の不十分さや電気から音響への低変換効率についての改善は,更なるパラメトリックスピーカの応用に是非必要である.われわれは,前者の課題に対して,ウィーバ(Weaver)のSSB方式を用いたダイナミックなキャリヤ変調を提案する.本レポートは,プロトタイプのウィーバ変調器を用い,歪みとリニアリティの観点から,理論的および実験的に,差音など2次波の音場特性を議論する.
著者
中山 文 成田 静香 野村 鮎子 濱田 麻矢 西川 真子 松尾 肇子 林 香奈
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究の目的は、現代中国の中国文化(文学・演劇・映画など)に表れたジェンダーを明らかにすること、および文化の根底にある中国人のジェンダー観念を歴史的に考察することであった。我々は、平成15年度〜16年度(2003年4月〜2006年3月)にかけて、これをテーマとする研究会を計22回開催し、平均して毎回14〜15名の参加者を得た。2004年3月7日の国際シンポジウム「中国演劇におけるジェンダーの表象」では、パネリストとして、中国から中国の女性演劇である越劇の監督である楊小青氏、中国戯劇家協会の重鎮で『中国戯劇』の副主編である黎継徳氏を迎え、日本側からは中山文(神戸学院大学)、伊藤茂氏(神戸学院大学)、細井尚子氏(立教大学)が加わり、中国の越劇と日本の宝塚との比較やジェンダーの表象について討論した。また、2005年6月25日〜26日には、日中の女性演劇の比較をテーマとする国際シンポジウム「男らしさ・女らしさの作り方-越劇と宝塚」を開催した。宝塚からは、草野旦氏(演出家)・磯野千尋氏(宝塚歌劇団専科、男役)・一原けい氏(宝塚歌劇団専科、女役)、越劇(中国の女性演劇)からは、楊小青氏(演出家)・陳雪薄氏(杭州越劇院、男役)・周俊氏(杭州越劇院花旦、女役)を迎え、実演を交えて、一般にも広く公開した。このほか、研究会では、中国のジェンダーを歴史的に考察するための入門書『中国女性史入門-女たちの今と昔』(人文書院2005年3月)を編纂・出版した。この書は、中国女性の歴史を、婚姻生育・教育・女性運動・労働・身体・文芸・政治ヒエラルキー・信仰の8つのテーマに分けて解説したもので、すでに書評などで高い評価を得ている。
著者
野村 亨 WOLLNIK H. MEUSER S. ALLARDYCE B. SUNDEL S. 稲村 卓 RAVN H. 中原 弘道 松木 征史 HANSEN G. D'AURIA J.M. 永井 泰樹 篠塚 勉 藤岡 学 和田 道治 池田 伸夫 久保野 茂 川上 宏金 福田 共和 柴田 徳思 片山 一郎 NITSCHKE J.M BARNES C.A. KLUGE W.K. BUCHMANN L. BARMES C.A. MEUSEV S. D´AURIA J.M. SUNDELL C.
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は,原子核反応で生成するさまざまな短寿命の不安定核種を,その場で分離・選別し,さらに加速して二次ビ-ムとして実験に供する技術の開発とそれによる先駆的研究の実施であった。上記の実験技術は,現在世界的に注目されている先端的技術で,原子核物理学と関連基礎科学分野に全く新しい研究手法を導入するものと期待されている。本研究では,以下の研究課題を設定し,東大核研を軸にして,欧米の主な関係大学・研究所と共同開発・研究を実施した。その成果は,国際会議等に発表するとともに,論文として雑誌に報告されている。A.大効率・高分解能オンライン同位体分離器(ISOL)の開発・・・不安定核のその場分離・選別(ア)大効率ISOLイオン源の開発CERN(スイス)とTRIUMF(カナダ)等と共同開発を実施。表面電離型,FEBIAD型,ECR型イオン源を試作し,さまざまな不安定核原子のイオン化効率を測定。その結果を踏まえてイオン源の改良を行った。アルカリ金属元素については40%以上の大効率イオン化に成功した。また,ビ-ムバンチングについても成功した。(イ)超高質量分解能ISOLの光学計算M/ΔM【greater than or similar】20,000のISOLイオン光学系の設計を,東大核研・東北大・ギ-セン大学(独)の共同研究として実施。機械精度や放射線ハンドリングの観点から,そのフィ-ジビリティを検討。その成果は,東大核研の不安定核ビ-ムファシB.不安定核ビ-ムの加速技術の開発(ア)世界の現状の調査・検討不安定核ビ-ムの加速は,唯一例としてベルギ-の新ル-バン大学でサイクロトロンによって試験的に実施されている。そこでの現状を調査の上,CERN(スイス),GANIL(仏),TRIUMF(カナダ)等の加速計画を吟味し,種々の加速器の長所・短所を明らかにした。この結果は次の(イ)に反映されている。(イ)分割同軸型RFQリニアックの開発電荷質量比の極めて小さい,入射エネルギ-の非常に低い重イオンリニアックの設計・開発を東大核研で行った。そのさい,GSI(独)とTRIUMF(カナダ)の研究者に詳細な検討・批判をあおいだ。試作した分割同軸型RFQリニアックは順調に稼動し,世界的な注目を集めている。C.不安定核ビ-ムによる核物理・天体核物理学の研究(ア)レ-ザ-による不安定核の精密核分光GaAs,AlGaInPなどの固体結晶中に, ^<75>Br, ^<114m>In等の不安定核を打ちこみ,レ-ザ-による光ポンピングにより,娘核( ^<75>Seや ^<114>In)のスピン偏極を実現した。固体中の不安定核のスピン偏極は世界的に稀な成功例である。さらに,RADOP法により,娘核の核磁気能率を精密に測定した。これは,CERN(スイス)との共同研究である。(イ)不安定核の天体核反応率の測定東大核研・理研・GANIL(仏)との共同研究として宇宙における重元素合成機構において,不安定核の天体熱核反応に役割の研究を実施。 ^<13>Nの熱核反応率の測定に成功した。上述の研究成果の多くは,平成3年度に開催された国際会議(原子核・原子核衝突に関する第4回会議,於金沢;第2回放射性核ビ-ム国際会議,於新ル-バン大学[ベルギ-];第12回EMIS会議,於仙台等)の招待講演として発表されている。また,国際誌等に論文として報告した。本研究成果は国際的な反響をよび,東大核研の研究プロジェクトにその結果が活用されたばかりでなく,CERN(スイス),TRIUMF(カナダ),LANL(米)等の研究所から共同研究が期待されている。
著者
塩谷 捨明 野村 善幸 星野 貴行 酒井 謙二 片倉 啓雄 仁宮 一章
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、東南アジア各国の乳酸菌研究者及び菌株のデータベースを構築することによって、乳酸菌の実用化に向けた相互利用・共同研究を促進させることを目的としている。平成16年度には次年度に向けた予備的な調査を行った。そして平成17年度は「海外調査」ともに「データベース作成とデータ登録」を行った。本研究では、ベトナム、マレーシア、フィリピン、モンゴル、インドネシア、タイにおける大学及び研究機関を中心に訪問し、調査を進める一方、研究者への協力を依頼した。なかでもインドネシアで開催されたアジア乳酸菌学会では多数のアジア乳酸菌研究者の集まる中、本調査の趣旨説明と協力要請を行うことができた。また、日本生物工学会では、韓国、タイ、ベトナム、フィリピンより乳酸菌研究者を招聘しシンポジウムを開催し、乳酸菌研究の相互理解をさらに促進することができた。以上より、合計約30名の研究者情報、および、30株程度の乳酸菌株情報が得られた。一方、各国の乳酸菌研究者及び菌株データを集計・整理するためのデータベースの作成に当たっては、充実すべき調査項目等を議論した上、フォーマットを決定した。データベースについては、ホームページ上にてアクセス・入力可能なフォームを完成させデータ入力準備完了となった。東南アジアの乳酸菌研究者情報に加えて、国内の研究者ならびに乳酸菌株情報を登録した。現在、データベースには、350超の菌株情報とその所有者等の情報が登録されている。
著者
河野 俊行 小島 立 早川 吉尚 大杉 謙一 久保田 隆 松下 淳一 早川 眞一郎 佐野 寛 野村 美明 神前 禎 中野 俊一郎 多田 望 西谷 祐子
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本領域は平成16年度に開始し平成21年度が最終年度であった。しかし全体の取り纏めのために本補助金を申請したところである。その取り纏め事項の主な事柄としては、全体の取り纏め的業績発表と、集積した判例データの今後の活用方策を明らかにすることの二点であった。前者については各班の代表者による分野別レポートを取り纏め、Japanese Yearbook of International Law 53巻に掲載されたところである。後者については、1001件の判例英文データを取りそろえたプロジェクトはこれまでになく、このデータの価値を維持するためには新判例を継続的に翻訳して加えてゆくことが必要となるところ、領域終了後補助金なしでそれを可能にするための方策が必要であった。そこでそのための方策として、民間企業にデータを移管し、営利ベースで継続することが最も持続性が高いと判断された。そこで複数の民間業者と協議を重ね、本報告書執筆時点では一社に絞られた。2008年の経済危機の影響でリーガルビジネスは多大な影響を受けた。この経済危機と日本政府が導入した破たん企業救済策がリーガルビジネスに与えた影響は大きく、それを踏まえた持続可能な営利ベースのモデルの協議に予想以上の時間が必要となった。ほぼ1年かけて試行錯誤してきたが、ようやく形が見えてきたところである。また最近、この企業のアメリカ本社の担当役員とテレカンファレンスを行い、さらに協議を進めえたところである。