著者
金 セッピョル
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本年度は、主な調査対象であるNPO法人「葬送の自由をすすめる会」において、初めての会長交替による変化が著しく現れた年であった。その変化を捉えるために、既存のメンバーと新しく加わったメンバーとを分けて、インタビュー調査、各種集まりでの参与観察を行った。新しい会長は、今年61才で、70~80代が中心メンバーになっていた会の中では若い世代に属する。また、いわゆるポスト団塊世代であり、これまでの戦争体験者、団塊世代の会員たちとは異なる方向性を持っているようである。既存の会の方向性が、画一的な葬法や家制度、葬式仏教への反発と脱却だったとしたら、新会長が掲げる方針は、より合理主義に基づいている。このような方針に対して既存のメンバーたちが見せる反応や対応を調べると同時に、新しい方針に賛同して集まってくるメンバーたちに対してインタビューおよび、ライフヒストリー調査を行った。既存の世代の特徴が、①遺骨を「撒く」ことにこだわること、②国家・家・仏教といった既存の葬送を大きく形づける社会関係の拒否、③「個」の追求にあるとしたら、現段階で考えられる新しい世代の特徴は、①遺骨を「撒く」ことにこだわらないこと、②当たり前となった「個」である。彼らは、国家、家制度、仏教などが目に見える形で社会全般を支配していた頃とは違い、「個」という考え方が前提となっている時代に生まれ育った。従って既存の世代のように、ある意味、過激な形でそれまでの社会関係を否定する必要はなく、遺骨を「撒く」ことにこだわらないのではないか、という暫定的な結論が導出された。
著者
林田 健一郎 金子 俊朗 竹内 崇 清水 洋彦 安藤 邦雄 原田 悦守
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.149-154, 2004-02-25

ラクトフェリン(LF)は,ミルク,血液など体液中に広く存在する鉄結合性タンパク質で,多様な生理機能を待つことが知られている.本実験では,経口投与したLFが,リウマチ性関節炎のモデルであるラットアジュバント関節炎モデルにおいて,抗炎症及び鎮痛効果を示すか否か検討した.加えて,LFの免疫調節機能の特徴を調べる目的で,同モデルにおいて,LPS刺激によるTNF-α及びIL-10産生に対するLFの効果も検討した.LFを関節炎惹起3時間前から1日1回予防的に投与した場合,あるいは関節炎惹起後19日目から7日間治療的に投与した場合のいずれにおいても,LFは関節の腫脹と疼痛を抑制した.関節炎惹起25日目のラットに,LFを単回投与したところ,用量依存的に鎮痛効果が観察され,この効果はナロキソンによって消失した.また,LFは,連続投与した場合だけでなく,単回投与でも,LPS刺激によるTNF-αの産生を抑制しIL-10の産生を増加させた.以上の結果から,経口投与したLFは,関節炎の炎症と疼痛に対し予防的及び治療的効果を待つことが明らかとなった.更に,LFは,TNF-αの産生を抑制しIL-10の産生を増加させるという性質の免疫調節機能を待つことが示唆された.これらのことから,LFが関節炎に対する天然の治療薬になることが期待される.
著者
長田 年弘 木村 浩 篠塚 千恵子 田中 咲子 水田 徹 金子 亨 櫻井 万里子 中村 るい 布施 英利 師尾 晶子 渡辺 千香子 大原 央聡 中村 義孝 仏山 輝美 加藤 公太 加藤 佑一 河瀬 侑 木本 諒 小石 絵美 坂田 道生 下野 雅史 高橋 翔 塚本 理恵子 佐藤 みちる 中村 友代 福本 薫 森園 敦 山本 悠貴
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究課題は、研究代表による平成19-21年度基盤研究(A)「パルテノン神殿の造営目的に関する美術史的研究―アジアの視座から見たギリシア美術」の目的を継承しつつ再構築し、東方美術がパルテノン彫刻に与えた影響について再検証した。古代東方とギリシアの、民族戦争に関する美術について合同のセミナーを英国において開催し、パルテノン彫刻をめぐる閉塞的な研究状況に対して、新しい問題提起を行った。平成21年開館の、新アクロポリス美術館の彫刻群を重点的な対象とし撮影と調査を行ったほか、イランおよびフランス、ギリシャにおいて調査を実施した。研究成果を、ロンドンの大英博物館等、国内外において陳列発表した。
著者
山田 純平 金谷健一 菅谷 保之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.51, pp.339-346, 2006-05-19
被引用文献数
18

本論文では画像上の点列に楕円を当てはめる問題を最尤推定として定式化し、KCRの下界との関係を述べる。次に、その数値解法としてFNS法、HEIV法、くりこみ法のアルゴリズムを述べ、ガウス・ニュートン法を追加する。そして、シミュレーションおよび実画像を用いてこれらの反復解法の収束性を実験的に比較し、反復の初期値や当てはめる楕円弧の形状への依存性を明らかにする。This paper studies numerical schemes for fitting an ellipse to points in an image. First, the problem is posed as maximum likelihood estimation, and the relationship to the KCR lower bound is stated. Then, we describe the algorithms of FNS, HEIV, and renormalization, to which a new method based on Gauss-Newton iterations is added. Using simulated and real image data, we compare their convergence properties and reveal their dependence on the initial value for iterations and the shape of the elliptic arc to which an ellipse is to be fitted.
著者
小島 順治 牧野 昭二 羽田 陽一 島内 末廣 金田 豊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, 1995-03-27

マルチメディア時代の到来を迎え、遠隔地と通信しているにもかかわらず、あたかも同一の室内にいにような会話ができることや、マイクロホンやスピーカーの位置を意識しないで会話ができるシームレスな音響空間の実現が望まれている。NTTでは、適応アルゴリズムなどの音響信号処理の研究成果を活かし、適応追随性や同時通話時の性能に優れた高性能音響エコーキャンセラを開発したので報告する。
著者
南 知惠子 高嶋 克義 平野 光俊 松尾 睦 坂川 裕司 近藤 公彦 猪口 純治 金 雲鎬 西岡 健一 森村 文一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、小売企業の成長を支える組織基盤の構築プロセスを解明することを目的とする。集権的な意思決定による成長戦略と分権的組織による組織能力の向上による成長戦略との併存を想定した。国内外の複数事例分析及び、全国の小売企業を対象とする質問紙調査を実施した。事例研究では、小売及び製造小売企業において、トップマネジメント主導の大規模投資による成長戦略を確認し、ビジネスモデルの類型化を行った。実証研究では、企業の革新性の正の影響に加え、組織基盤として情報システムの統合の影響が収益性に影響を与えることが明らかになった一方で、地域レベルでの標準化戦略は業績に負の影響を与えることが明らかになった。
著者
寺澤 康子 安達 美佐 金子 伸子
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.127-134, 2011 (Released:2012-02-01)
参考文献数
4

In this report, we show the process, the feature, and the outline of the personalized health education program based on a behavior metrics approach. According to the program, we conducted the health education for 6 months for the subjects of specific health guidance for “motivational support” and “active support”. The changes from baseline of weight, waist circumference, consciousness and behavior were examined including a trial to perform Adachi's Type Specific Education. From the results, feasibility of the type specific education was suggested. In the discussion, issues for further study was discussed.

1 0 0 0 OA 日語指南

著者
金井保三 著
出版者
丁酉社
巻号頁・発行日
vol.1,
著者
玄 武岩 渡邉 浩平 金 成玟 鈴木 弘貴 崔 銀姫 北見 幸一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、メディアコンテンツの流通における生産および受容の二つの側面から、東アジアにおける越境的な放送空間の構築について実践的に考察した。生産面においては、2001年に始まった「日韓中テレビ制作者フォーラム」に直接かかわりながら調査を行い、その意義と可能性を考察した。受容面においては、東アジアにおける大衆文化コンテンツの越境を、産業、文化、消費、歴史認識など包括的なアプローチをとおして考察し、その過程における排除と変容、現地化と再創造の文化的意味を明らかにした。
著者
金子 正秀
出版者
電気通信大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

顔特徴・顔印象の定量的解析手法を利用した顔認知機能の解明について、以下の研究を行った。1.2つの異なる顔に対する似ているか否かの判断に係る顔認知親子の顔の類似性に対する主成分分析による定量的比較に関して、年齢印象操作による方法と顔部品特徴による方法を検討した。年齢印象操作による方法では、子供の顔に対して大人への年齢印象操作を行った上で親(大人)の顔と比較することにより、親子の顔を直接比較する場合に比べ、類似性評価の精度を向上することができた。顔部品特徴による方法では、子供と大人(親)の2つのグループに分け、各々の固有空間で顔特徴解析を行うことにより、各グループの中で入力顔特徴を定量化した。定量化された顔特徴を言葉による顔特徴記述に置換え、顔部品ごとの類似比較を行い、その結果を統合することにより親子の顔の類似性を柔軟に評価できるようにした。また、車のフロントフェースについて、各部品形状、配置に関する固有空間を求め、人間の顔に対してと同様に、対話的に特徴解析、特徴操作を行うための基礎的システムを構築した。2.顔の3次元形状に対する認知の仕組みの解明ステレオ画像計測により顔部分の3次元形状を取得するシステムの整備を行った。また、正面顔とは異なる典型的な例として横顔を取上げ、主成分分析を用いて横顔特徴の定量的分析を行った。正面顔に対してと同様の横顔特徴解析ツールの構築を進めた。また、どの主成分にどの様な横顔特徴が表れているのかを調べた。3.顔特徴・顔印象の定量的解析及び顔画像生成ツールの機能の拡充Bag of Words手法を顔による個人認識及び表情認識に適用する方法を考案し、従来の認識手法に比べて撮影条件の違いに頑健でかつ認識性能が高いことを実験により確認した。また、GPGPUによる並列演算を利用して顔特徴点の検出処理の高速化を図り、顔特徴点の検出から似顔絵生成までを実時間で行えるようにした。
著者
金井 勇人
出版者
埼玉大学国際交流センター
雑誌
国際交流センター紀要 (ISSN:18816479)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.15-24, 2009-03

話し手が、他人の談話を引用してそこに登場する自分自身を表現するとき、指示語を使用することがある。そのとき、どのような指示語を選択するだろうか。このような興味を抱いたのが、本稿の執筆の動機である。本稿では、「-いつ」系の指示語(こいつ、そいつ、あいつ)を取り上げて考察を行う。これらの指示語は、引用した他人の談話内で、どのように選択されるのだろうか。結論を述べると、引用された談話内では、自身を指すのに「こいつ」「あいつ」が専ら用いられる。一方、「そいつ」は用いられない。これは、コソアの(非)直示性に関わっていると考えられる。また、「こいつ」と「あいつ」では、話し手の伝えたいニュアンスが異なる。
著者
金子 仁子 標 美奈子 増田 慎也 宮川 祥子 三輪 眞知子 渡邊 輝美 及川 智香子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、青年期の人々が容易に学習機会の得られるインターネットを使用して、子育てをバーチャルに体験しながら、人を世話することの楽しさや人間として成長していくことを実感でき、また人間関係の取り方を学べる子育て学習支援プログラムの開発である。まず、大学生を対象に子育ての経験、子育てのイメージに関する質問紙調査を行った。525名のデータについてクラスター分析を行った結果、子育てに関して5つのタイプに分けられ、学習内容の興味関心もそのタイプによって違いがあった。ドラマ部分の作成は、研究者メンバーの話し合いから導き出した、「12の意図」(子育ての生活のイメージ、子育ての楽しさ・子育ての大変さ、予測していなかったできごとへの対応、子どもの成長を実感(2歳まで)、子どもとのコミュニケーションの取り方、仕事を続けていく母親の子育てについて等)により、その内容を考えさせるものとした。ドラマはフラッシュを用いて漫画を動画化し5話のドラマとしてウェブサイトから配信した。ドラマの配信は平成18年6月から行い平成19年3月までの10ヶ月間のアクセス数は985件で、視聴するための登録者は35名で、うち6割が学生であった。ドラマの内容についてはウェブサイト上のアンケートでは第1話では、仕事との育児の両立を考えながら視聴していることがわかり、また、第2話では結婚・出産・育児についてのことが最も印象に残ったとしていた。このドラマの評価のためのグループインタビューを行った。その中で、学生達は乳児期の育児、仕事と育児の両立について関心が高いことが明らかになった。このドラマを見ることによって、大学生は仕事と育児の両立について具体的にイメージすることができたと考える。登録者同士の交流を図るため掲示板を設けたが記載する人は少なく、登録者を増やすための、ウェブデザインの改良等が必要である。
著者
細羽 竜也 金子 努 越智 あゆみ
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,若年層の精神科医療へのアクセスの実態を明らかにし,支援プログラムを作成することであった.大学生の精神科医療への態度を検討したところ,そのイメージは否定的であり,専門性の高さには期待が高いが,家族や友人にくらべると利用には回避的であった.また,相談支援の場で共感性が低い対応を受けると開示意欲が低下することもわかった.最後に支援プログラムを評価させたところ,支援についての自己決定が尊重れることが精神科医療へのアクセスを高めるために重要であることが示唆された.
著者
外間 ゆき 東盛 キヨ子 金城 須美子 桂 正子 宮城 節子 尚 弘子 福田 亘博 知念 功 玉那覇 直
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1985

1.研究目的 昭和60年ー63年度の4年間、沖縄の長寿者の食生活と生活状況について聞き取り調査を行ない、その利用食品の中から特徴のあるものの食品分析と動物実験による生理的効果を検証して、長寿と食生活との関係を考察することを目的とした。2.方法 (1)聞き取り調査は80歳又は85歳以上、総数168人、本部町・与那城村・知念村・那霸市・粟国村・伊江村・伊是名村の7地区で家族構成、日常生活、食生活、栄養素・食品摂取、身体状況について行った。(2)食品分析は豚肉、海藻、味噌の一般成分、微量成分について行った。(3)動物実験は豚肉料理、海藻、茶を飼料として脂質代謝への影響をみた。3.結果 沖縄の長寿者達は転居が殆んどなく、持ち家率が95%と高く三世代同居が多く、家族にも長寿者が多かった。日常生活においては睡眠を充分とり、軽労又は運動を積極的に継続し、精神的なゆとりを持つよう心がけ、食事は一日三食、腹八分を心がけ、過度の飲酒、喫煙をつつしんでいた。栄養素摂取率では所要量に対し、エネルギーは80ー86%、たんぱく質は73ー81%でビタミンAとビタミンCは100%を超えて摂取していた。食品群別摂取量は穀類、野菜類、大豆製品、魚介類の順に多かった。穀類エネルギー比は50ー53%で脂肪エネルギー比は25ー26%であった。豚肉料理志向は強い。ゆでこぼし、あく取りを行う長時間加熱調理によって豚肉の脂質、コレステロール量は減少した。脂肪酸組成はパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸が主であった。動物実験により"アシティビチ","中身の吸物"には脂質代謝改善効果のあることがわかった。ひとえぐさはβーカロチン、ビタミンCを含み抗酸化性が期待され、おごのりには脂質代謝改善効果が期待される。そら豆及びそてつ味噌のアミノ酸組成は普通味噌に比べて劣らなかった。香片茶にも脂質代謝改善効果が期待される結果を得た。