著者
高木 厳 岡田 慶夫 赤嶺 安貞 唐沢 和夫
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, 1975-12-10

我々は気管原発と思われるadenoidcysticcarcinomaの2例を経験した.第1例は47才の男子.昭和38年12月27日他施設で気管内肺癌を気管支鏡下に摘除,病理組織学的にはadenoidcyticcarcinomaであった.術後2年5ヶ月肺転移出現,これらを摘除したが原発巣摘除後5年3ヶ月,喀血にて死亡した.第2例は30才の男子で昭和46年6月15日気管からの出血で緊急手術(気管腫瘍摘出術)施行した.現在食道気管癌形成肺転移を認める.
著者
根岸 洋一 丸山 一雄 高木 教夫 新槇 幸彦 高橋 葉子 野水 基義 田野中 浩一 丸ノ内 徹郎 片桐 文彦 小俣 大樹 濱野 展人 石井 優子 小栗 由貴子 塩野 瞳 秋山 早希 間山 彩 菊池 太希
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,微小気泡(ナノバブル) の一つとして開発してきた超音波造影ガス封入リポソームにデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療用アンチセンスモルフォリノ(PMO)を搭載させたバブルリポソーム(BL)の開発に成功した.さらにBLと超音波照射との併用システムによりDMDモデルマウス骨格筋や心筋へのPMO送達・導入を行うことで,超音波照射部位におけるエクソンスキッピング誘導に伴う顕著なジストロフィンタンパク質の発現回復が可能となることを明らかとした.よって本システムは,DMDの核酸治療において全身筋組織への効率的PMO送達・導入とDMD治療における有用な一手段となると期待された.
著者
坂本 旬 山田 泉 村上 郷子 新井 紀子 菅原 真悟 御園 生純 シヤピロウ ノーマン・P シエラ オフマン・ガーシュ 樋口 浩明 TEP Vuthy 高木 勝正 重松 栄子 中村 優太 佐々木 順子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果は、(1)「NetCommons」による文化探究学習の有効性を検証し、(2)文化探究学習理論を活用した「異文化理解」に国連やユネスコによる「メディア情報リテラシー教育」に関する最新理論を融合した教材の作成とその実践を行ないつつ、(3)日本及びアメリカ、カンボジア、中国の初等・中等・高等教育レベルの学校・大学とのICTを活用した協働的な文化交流学習の有効性を実証したことである。本研究の総括として、国際シンポジウム「文化葛藤時代のメディア・リテラシー教育-国連『文明の同盟』と日本の実践・課題」を開催した。
著者
高木 省治郎 須田 啓一 小松 則夫 大田 雅嗣 加納 康彦 北川 誠一 坪山 明寛 雨宮 洋一 元吉 和夫 武藤 良知 坂本 忍 高久 史麿 三浦 恭定
出版者
The Japanese Society of Hematology
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.2274-2280, 1986

Five patients with malignant lymphoma in whom primary chemotherapy had failed were treated with high-dose chemotherapy using AAABC regimen, total body irradiation, and transplantation of cryopreserved autologous marrow. Complete remission was achieved in all five patients. In these patients, the recurrence of malignant lymphoma did not occur during the follow up time of 2 to 59 months after autologous bone marrow transplantation. Three of them are alive in continuous remission for 33, 49, and 59 months, respectively. In one of these three patients, acute lymphoblastic leukemia developed 44 months after bone marrow transplantation. However, successful chemotherapy resulted in a complete remission of leukemia, he is alive in remission. The remaining two patients died of pneumonia and respiratory failure 72 days and 82 days after bone marrow transplantation, respectively. Our results show that intensive chemoradiotherapy and autologous-marrow transplantation can produce a prolonged remission in patients with malignant lymphoma in whom conventional chemotherapy has failed.
著者
沢田 昭二 大槻 昭一郎 玉垣 良三 吉川 圭二 福田 礼次郎 高木 富士夫 松田 哲 秋葉 巴也
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

1.QCDジェットや重いクォ-コニウムなど摂動論的方法が有効な領域において実験との一致をみているQCQ(量子クロモ力学)が、非摂動的効果が重要となる領域において、どのようにカイラル対称性が自発的に破れる相に移行し、カラ-自由度が閉じ込められてハドロンを構成するか、その機構を理論的に明らかにすることを本研究の中心課題とした。2.この方向に沿って、非摂動効果を含む問題を取扱う新たな手法として、格子ゲ-ジ理論、ア-ベリアン射影、逆転法などを用いた方法が開発され、相移転機構や閉じ込めなどの具体的問題に適用された。3.QCDの低エネルギ-有効理論と考えられる非線型シグマ模型とQCDとの関連を明らかにするとりくみもおこなわれ、またこの模型におけるソリトン解すなわちスカ-ミオンによって核子をはじめとするバリオンとその相互作用の研究が引きつづいておこなわれ、またカイラル・バッグ模型にもとづいて核子の諸特性および核力の導出がおこなわれた。4.格子ゲ-ジ理論にもとづいてQCDから電子計算機を用いて直接QCD系の相構造、ハドロンの質量スペクトル、レッジュ軌跡の勾配などを求めるとりくみは、新しい計算方法の開発と電子計算機の大型化、高速化によって、一層信頼性の高い結果が得られ、当初の結果の抜本的な見直しがおこなわれた。この方向の研究は計算機の進歩とあいまって今後引きつがれる。5.QCDを含めた相互作用の統一を求める研究、標準模型を超える試みも活発におこなわれ、100GeVおよびこれを越える実験結果がえられつつある状況の中でCD不変性の破れ、トップ・クォ-ク質量予測などの研究成果も挙げられた。また宇宙初期の創成過程とかかわって有限温度QCDにもとづくクォ-ク・グル-オンプラズマ,高密度核物質の研究にも新たな知見が加わった。
著者
白木澤 佳子 高木 利久
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.144-151, 2011 (Released:2011-06-01)
参考文献数
8
被引用文献数
7 4

(独)科学技術振興機構(JST)はライフサイエンス分野のデータベース統合を推進するため,平成23年4月1日にバイオサイエンスデータベースセンター(National Bioscience Database Center: NBDC)を設置した。NBDCは,「データベース統合化のための戦略の立案」「ポータルサイトの構築・運用」「データベース統合化基盤技術の研究開発」「バイオ関連データベースの統合化の推進」の4つを活動の柱とし,ライフサイエンス分野のデータベースを統合してデータの価値を最大化することにより,日本の利用者,さらには世界の利用者に貢献できるデータベースセンターとなることを目指す。
著者
李 廷秀 浅見 泰司 高木 廣文 下光 輝一 梅崎 昌裕 山内 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、国内で初めて客観的な物理的環境指標による居住地域環境が人々の身体活動行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。研究初年度の文献研究の結果、複数地域の複数集団を対象とすること、居住地域環境因子としては客観的、主観的な種々の因子についての検討が必要であること、身体活動については各種構成要素(移動・余暇・総身体活動)を包括的に網羅した検討が必要であることが明らかになった。身体活動に影響を及ぼす可能性のある居住地域環境の評価法としては、物理的環境をGIS(Geographic Information System)を用いた客観的な方法による実測で評価する方法と、住民の主観的認知指標調査法によって評価する方法を提案することができた。作成したGISデータベースによって、地域環境指標(世帯数、道路総延長、土地利用状況など)を対象者ごとに数値化することが可能であった。住民側の環境認知を評価する質問紙としてはAbbreviated Neighborhood Environment Walkability Scale(ANEWS)日本語版を作成し、国際比較も可能とした。住民の日常身体活動量は加速度計、歩数計等を用いた客観的な測定と、身体活動量調査票(International Physical Activity Questionnaire)による方法を用いて、その妥当性を検討した。文化的・社会的背景の異なる国内地域として、都心部1ヶ所、地方都市2ヶ所において、身体活動を推進する物理的環境要因について検討した。居住地域環境と身体活動との関連は、地域や性別による違いがみられた。住民の身体活動を推進する都市基盤整備には、地域の特性を活かした進め方が必要と考えられた。さらに、個人の行動パターンを時間、位置、身体活動レベルの3つの側面から関連づけて分析するために、小型GPS(汎地球測位システム)と加速度計を同時に装着し、GISとともに3つのデータを統合する方法を提案した。今後はこのシステムを利用することで都市の土地利用分類ごとの身体活動パターンの特徴を明らかにし、健康増進につながる都市空間創造の基礎データを蓄積することが可能になる。
著者
井村 賢治 川原 央好 松尾 吉庸 窪田 昭男 福沢 正洋 鎌田 振吉 高木 洋治 岡田 正
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.815-821, 1990

Anthropometric measurements of 171 postoperative children, who had radical operations for neonatal surgical diseases from 1974 to 1985 in our institutions, were performed. Twenty-two percent of those out-patient children were classified as stunted (H/A<95%), and 26% as wasted (W/H<90%) according to Waterlow's classification. About 40% of the children had mild protein-energy malnutrition, although theier visceral protein status was preserved. In paticular, wasting was noted in patients with congeital esophageal atresia, abdominal wall defects and Hirschsprung's disease, while stunting was noted in patinets with congeital duodenal atresia. The usefulness of H/A and W/H for evaluating the long-term prognosis of post-operative children is discussed.
著者
井上 美津子 浅里 仁 池田 訓子 小林 聡美 佐々 龍二 高木 裕三 朝田 芳信 大嶋 隆 小口 春久 田中 光郎 前田 隆秀 宮沢 裕夫 藥師寺 仁 渡部 茂 真柳 秀昭 鈴木 康生 下岡 正八 野田 忠 渋井 尚武 進士 久明 田村 康夫 土屋 友幸 大東 道治 香西 克之 西野 瑞穂 木村 光孝 本川 渉 藤原 卓 山崎 要一 吉田 昊哲 丸山 進一郎 嘉ノ海 龍三 品川 光春
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.561-570, 2005-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

小児に対する歯科用局所麻酔剤の安全性を明らかにするため日本小児歯科学会の委嘱により,臨床における使用実態と不快事項の発現に関する調査を行った.大学病院小児歯科および個人小児歯科診療所より4,145名分のデータが収集され,以下の結果を得た.<BR>1.局所麻酔を用いた治療は0歳から20歳以上の幅広い年齢層に行われていたが,12歳以下の者が約90%を占めていた.<BR>2.全身疾患やアレルギー体質を有する小児は調査対象児の2割以上を占め,また局所麻酔が初めての小児が16.2%であった.3<BR>.小児の治療において,局所麻酔はコンポジットレジン修復などの修復処置にも多用されていた.<BR>4.局所麻酔薬剤としてはリドカイン製剤が多く用いられており,投与量は1.0ml以下が多かったが,1.8mlを超えた例も3%程度みられ,追加投与により総量が増える傾向がみられた.<BR>5.術中,術後の不快事項は,それぞれ108名(2.6%),109名(2.6%)にみられた.不快事項の内容は,麻酔の奏効不良による疼痛や麻痺による違和感・不快感の訴えや,麻痺の残存による咬傷などが多くを占めていた.<BR>6.局所麻酔薬剤の副作用を疑わせる熟睡や軽い呼吸困難,悪心などの症状は,術中に3例,術後に6例ほどみられたが,いずれも重篤なものではなかった.
著者
崔 虎南:著 高木 和子:訳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.779-789, 2002

韓国の図書館は韓国電子サイトライセンスイニシアチブ(Korean Electronic Site License Initiative, KESLI)と名付けられた強力なコンソーシアムを構成することによって,冊子体ジャーナルの収集活動とは異なる,電子ジャーナル購入の団体交渉の力を持つに至った。KESLIは,急速に発展した電子ジャーナルのサイトライセンスを,コンソーシアムベースで出版社や情報プロバイダから購入することにより,外国の学術情報の流入を拡大しようという試みとして韓国で開発された画期的なプログラムである。2001年10月末現在,合計246のメンバーが,購入したい出版社の数と同じ数のサブ・コンソーシアムを自主的に形成し,その結果学術情報の使用レベルはKESLI以前と比較すると平均で6倍も高まった。KESLIは国家デジタル科学図書館(National Digital Science Library, NDSL)プロジェクトの下で遂行されており,このプロジェクトの目的は外国の学術情報へのワン・クリック総合ゲートウェイ・サービスを提供する国家的なデジタル図書館を作ることである。2001年5月16日に開始されたNDSLサービスにより,KESLI参加機関の利用者は,様々な出版社やベンダーから提供されるライセンス処理済みの電子ジャーナルを,自らのデスクトップから単一のインタフェースでダウンロードできる。
著者
内藤 林 森 淳彦 箕浦 旨彦 高木 健 別所 正利 一色 浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

次の研究成果を得た。1)船首可動翼の制御について考察を深め、可動翼を制御するための入力信号を明確にすることが必要であることから、船首船底圧力を制御信号に選定することにし、その可能性を調べる実験を行った結果、船首船底圧力と、翼への流入迎角の間には明確な相関関係があることが実験的にも明らかになった。船首船底圧力の計測は容易であり、圧力計測装置は安価なことから、良い制御信号であるとの結論を得た。2)船首船底圧力と、翼への流入迎角の間の周波数応答関数(A)を求めた。更に、その結果を使い時間領域のインパルス応答関数(A)を求めた。それを使い、規則波中で予測した流入迎角と、その実測値を比較し、船首船底圧力を使って船首翼への流入迎角を十分な精度で予測できることを示した。3)船首船底圧力を使って不規則波中における船首翼制御の初歩的な検討を、下記の手順で計算機シュミレーションを行い、検討した。(1)船首翼が最も推力を出す場合の、船首船底圧力と翼への流入迎角の間の周波数応答関数(B)を求める。(2)それの時間領域の表現である、インパルス応答関数(B)を求める。(3)船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(B)から求められた信号をリファレンス信号とし、船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(A)から求められた信号の差を補償する制御回路を設計した。(4)船首固定翼の場合と可動翼の場合について推力を計算比較した所、可動翼にすることで固定翼が発生する推力の1.5倍以上の効果があることがシミュレーション上で確認できた。(5)翼への流入迎角が15度以上になった時、翼は失速するが、その影響は統計的等価線形化手法を使って考慮した。本来、失速しないように制御することが可能であり、今後その制御法を考察する。4)船首翼を制御することで、推力発生だけでなく大幅な横揺れを軽減できることを昨年の研究で示した。更に、コンテナー船等の場合、ラッシングレスコンテナーにすることの可能性について検討を行い、その可能性が大きいことを示した。これはアンチローリングフィンは船体中央に設置することよりは、改良を加えて船首に設置する方が、よりフィンの有効性を拡大することになり、効果的であることを示すものである。5)波エネルギーの有効利用の可能性をより一層広げるために、船首にムーンプールを作り、そこに設置したウェールズタービンでエネルギーを吸収し、それを船内電源に利用する方法に関する基礎的検討を行った。ムーンプールを作るために船内空間を一部使用することになる経済的損失との兼ね合いがあるが、一つの大きな可能性を示すものである。
著者
高木 相 藤木 澄義 谷口 正成 鈴木 伸夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.112, pp.65-72, 2000-11-30
被引用文献数
2

本研究は、交通問題でもっとも重要かつ関心事である交通渋滞の生成と解消の過程を明らかにし、交通信号制御の適正化を計るための交通シミュレータの開発を目的としている。本文では、交差点における車両群の挙動を、車両の時空間特注(t-sダイヤグラム)で定式化する。一つの交差点に着目して、車両群の挙動をt-sダイヤグラムによりモデル化し、車両の挙動を規制するパラメータと交通流の関係をショックウエーブ論から導出する。交差点に入る車両群と出る車両群の入出力関係を定式化して、渋滞の生成、解消の時空間特性を明らかにする。シミュレータ開発のために必要なパラメータ群と必要な関係式を取りまとめて示す。A traffic congestion problem is one of the most annoying things in today's motorizied society. However, since the traffic behaviors are so difficult to analyze, no adequate counter measures have yet been applied to solve it. In this paper, the authors show analytically the behaviors of vehicles passing thorough single intersecting point which is controlled by a traffic signal, for that the time-space (t-s) diagram is used as a model and the shock wave theory is applied. The results of the analytical formulations may become a base to a practical road traffic simulation.
著者
無敵 剛介 高木 俊明 津田 英照
出版者
久留米大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

60,6年度の研究により光ファイバーを利用して術中安全に忠実度の高い中心静脈圧波測定装置を開発したことから、右心房圧波の拡大記録によりelectromechanicalな分析を行うことができた。その結果、術中心拍動下に体循環平均圧(Pms)の理論値をmicracomputerにより算出し、その経時的変化を追究する方法を検討し、その臨床的有用性につき検討した。PmsはTNG投与により49±5%に減少し、修飾ゼラチン液の急速輸液ではcontrolの101±10%まで回復した。動・静脈キャパシタンス比(CV/CA)は、TNG投与によりcontrolの140±31%まで回復した。また、右心房圧波X谷-Y谷の圧差の変化は右心房Conduit機能と関連し、TNG投与で79±14%に低下し、修飾ゼラチン液の急速輸液では106±22%まで回復した。肺血管抵抗値はTNG投与によりcontrolの70±24%に減少し、その後の修飾ゼラチン液急速輸液ではcomtrolの96±40%まで増加してきた。一定量(5ml/kg)輸液時の中心静脈圧の変化値(Y谷)より静脈系容積弾性率(Ev)を求め、さらにCVP圧波の心血行力学的分析により算定したPms値およびCV/CA値より有効循環血漿量(Q)の理論値が算出され、その値は41.33±8.58ml/kgであった。心室収縮末期容量とEmax(Suga,H)とで規定される一回拍出量(S.V.)はS.V.=Preload-(Afterload)/(Emax)の式で表わされる。そこで、Preloadを輸液により上昇せりめると、一定のAfterloadに対する心室の適正なPump機能の維持がEmax(心筋収縮力)によって支えられることをTNG投与ならびに急速輸液時の右心機能の応答から確認し、静脈還流機構の術中管理の観点から静脈還流抵抗(【G_(CO)】,【G_(VR)】の循環生理学的概念に新しい見解を加えた。
著者
高木 博志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近代日本・朝鮮の文化遺産をめぐる諸相を明らかにした。とりわけ、史蹟・名所をめぐる社会とのつながりや、語られ方の近世・近代の変遷といった文化遺産保護の社会史、あるいは「帝国」における文化遺産をめぐる政治力学に力点をおいた。具体的には、古都奈良・京都における古代顕彰のありようを、明治維新期から20世紀まであとづけた『近代天皇制と古都』(岩波書店、2006年、全320頁)をまとめたほか、近世から近代への名所の変遷を、桜や古典文学を題材に論じた。朝鮮半島の桜の植樹については、アルバイトにより『京城日報』などからデータを集め、帝国における桜の位相を論じる研究を準備している。また豊臣秀吉にかかわる歴史観や史蹟の顕彰を、日韓の近現代史にあとづけた。また研究報告書では、奈良女子高等師範学校「昭和十五年度大陸修学旅行記文科第四学年」(奈良女子大学所蔵)の全文(生徒のくずし字)を翻刻した。「大陸修学旅行」の記録は、日本だけではなく韓国・中国・アメリカなどの研究者にも関心が高く、翻刻の成果を広めたい。とりわけ朝鮮・満州の史蹟名勝・戦跡をたずね、古都奈良・京都における文化遺産をめぐる学知を、大陸においても「実地踏査」することによって修学することに注目した。本研究の研究成果報告書は、6章立てのオリジナルな論文で構成されているが、近年中に単著として(近代文化財史論(仮題))として出版したい。課題としては、文化遺産の日本・朝鮮における行政史的研究が残った。