著者
牧 雅之
出版者
福岡教育大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1.雌性両性花異株であるカワラナデシコの関東・中部地方の7集団について、両性個体の自家交配率を複数の酵素多型遺伝子座を用いた多重遺伝視座推定法で推定した。調査対象とした集団の雌性個体の頻度は約5%から約50%までの大きな変異を示していた。2.カワラナデシコの両性個体は雄性先熟であるため、自家交配は起きにくいと予測されたが、ある程度の割合で自家交配が起きているこが確認された。この理由としては、同花受粉が起きている可能性と隣花受粉が起きている可能性の両方が考えられる。カワラナデシコは、最盛期には同一個体内で複数の花が同時に咲き、訪花昆虫は位置的に近い花を順々に訪れる傾向があるため隣家受粉が起こりうる。また、雄性先熟ではあるが、袋かけをして、訪花昆虫を排除してやっても、種子を生産しうるので、同花受粉も可能である。どちらの受粉様式が自家交配の主な要因となっているかは今後の課題である。3.集団における雌性個体の頻度と両性個体の自家交配率との間には、強いとはいえないものの、相関関係が見られた。これは近交弱勢や両性型間での種子生産量には集団間で大きい違いがないものと仮定すれば、理論的に予測される結果と一致する。今後、近交弱勢や種子生産量の相対比の集団間の違いがどの程度であるかを推定する必要がある。
著者
喜多 伸一 松本 絵理子 辻本 悟史 野口 泰基 寺本 渉 山口 俊光
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、手指が物体に触れるときの情報処理過程を調べるため、心理学実験と生理学実験を行い,触覚的注意の性質を解明することを目的として遂行した。そのためまず基礎科学に重きを置いた研究として、健常者を対象とした触覚探索の実験を行った。またその後に実世界での応用に重きを置いた研究として、視覚障害者を対象に含めて触地図内の図形の探索実験を行った。これらの実験により、触覚的注意の時空間特性を計測して視覚的注意と比較し、物体触知の能動性を解明した。
著者
冨安 卓滋 松山 明人 井村 隆介 宮本 旬子 大木 公彦 穴澤 活郎 赤木 洋勝
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

イドリヤ川では鉱山地域周辺において、無機水銀の濃度は、鉱山からの距離に伴って減少するが、メチル水銀濃度は、流下に伴い一度上昇した後に低下することが明らかとなった。また、河川底質からの溶出実験により、河川水と底質を一緒に保存すると水中の総水銀濃度は数倍になる一方で、メチル水銀濃度は数百倍にまで上昇する現象が見られた。これは、河川水中メチル水銀の起源として、底質が重要な役割を担うことを示唆するものであった。また、周辺地域への水銀の拡散状況を調べるために、河川底質、川岸土壌、草原土壌、森林土壌表層中の水銀濃度を測定した結果、水銀鉱山に最も近い地点では、河川底質中の総水銀濃度が最も高かったが、下流地点では、草原土壌の総水銀濃度が最も高く、また、メチル水銀濃度は、川から離れるに連れて高くなる傾向が見られた。河川底質、周辺土壌に関して、蛍光X線分析をおこなった結果、河川沿岸土壌、周辺草原土壌は、森林土壌と河川底質の混合層として存在することが明らかとなってきている。これらをふまえて、今年度は水銀の周辺地域への拡散における川による運搬の影響、また、水銀の化学形を明らかにするために、水銀鉱山付近とその約2km下流の2地点において、川岸から山へ向かって約20mおきに各4点、採土器を用いて土壌を柱状に採取した。採取した試料は柱状図を記載し、層ごとに切り分け、石、根などを取り除いた後、チャック付きビニール袋に保存し日本に持ち帰った。現在下流地点の総水銀濃度の測定が終了、水平方向では川岸から2点目に最高水銀濃度が観察され、また、鉛直方向には層毎に大きく水銀濃度が変動することが確認された。これらは、河川の氾濫によって運搬された水銀汚染底質の堆積によるものと考えられる。
著者
柏端 達也 美濃 正 篠原 成彦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

以下のことを遂行することにおいて課題に関するいくつかの成果を得た。すなわち、(1)色彩の存在論における投影説的見解に対する評価。(2)聴覚対象および嗅覚対象の存在論に対する、出来事意味論の観点からの、また共同知覚の観点からの検討。(3)いわゆる「共同注意」に関する体系的な哲学的概念分析。(4)知覚対象と知覚経験に関する可能世界的意味論に基づく理論化可能性の検討と評価。(5)知覚に関する表象説(志向説)のさまざまなヴァージョンに対する理論的評価。
著者
村田 聡一郎
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的はトロンボポエチン投与による血小板増加によって肝障害抑制、肝線維化抑制効果を持続させ、肝細胞癌を抑制することである。ヒト肝癌細胞株にトロンボポエチンを添加し、明らかな増殖効果のないことを確認した。また肝細胞癌の自然発癌モデルであるPten肝臓特異的ノックアウトマウスを用いてトロンボポエチンの肝細胞癌抑制効果を検討した。その結果メスにおいてのみ有意に発癌を抑制したため、トロンボポエチンによる血小板増加効果およびエストロゲン増加作用が考えられた。トロンボポエチンは肝細胞癌抑制効果を有する可能性が示唆された。
著者
安田 喜憲 BOTTEMA S. VAN Zeist W. 大村 幸弘 ZEIST W. Van
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

1988年から1990年の3カ年のオランダ・グロ-ニンゲン大学との共同研究の結果は、以下のような特筆すべきいくつかの研究成果をえることがてきた。1)巨大な氷河時代の多雨湖の発見:トルコ最大の塩湖トゥ-ズ湖の湖岸から1989年に採取したボ-リングコアのCー14年代測定値は、地表下460ー500cmが23440±270年前、940ー970cmが32300+600ー550年前、1570ー1600cmが35850+1150ー1000年前であった。花粉と珪藻分析の結果,20000年前以前のトゥ-ズ湖周辺はアカザ科やヨモギ属の広大な草原であり、当時の湖は淡水でかつ水位も現在より数メト-ル高位にあったことがわかった。これまで湖岸段丘の分布から氷河時代にはアナトリア高原に巨大な多雨湖が存在したという地形学者らの推定を立証した。2)5000年前の都市文明を誕生させた気候変動の発見:ギリシアのホトウサ湿原、コロネ湿原、カトウナ湿原のCー14年代測定、花粉分析の結果から、、都市文明誕生期の5000年前が気候変動期に相当していることを解明した。5000年前以降の気候の寒冷化にともない、ギリシアやアナトリア高原は湿潤化した。これに反して、メソポタミア低地やナイル川低地は乾燥化した。この乾燥化が人々を大河沿いに集中させ、都市文明誕生の契機を作った。またアナトリア高原の湿潤化はユ-フラテス川下流域に大洪水をもたらした可能性が指摘できた。3)アレキサンダ-大王の侵略を容易にした気候変動の発見:カマンカレホユック遺跡の北西井戸より採取した泥土のCー14年代測定結果と花粉分析の結果はCー14年代2160±50年前の層準を境として、周辺の環境が著しく乾燥化することを明かにした。ミダス王墓がつくられたフリギア時代のアナトリア高原は現在よりも湿った湿潤な気候が支配していた。ところが約2200年前のヘレニズム時代以降、アナトリアは乾燥化した。同じ傾向はシリアやエジプトでもみられた。アレキサンダ-大王がなぜかくも短期間にかつ広大な面積を征服できたかは、人類史の一つの謎であるが、この気候の乾燥化がトルコや小アジアの人々の生活を困窮させアレキサンダ-大王が侵略する以前にすでに小アジアからインダス地域の人々は疲弊していた可能性がたかい。それゆえに征服も容易であったのではないかと言う点が指摘できた。4)消えた森林の発見:アナトリア高原やギリシアには、かってナラ類やマツ類を中心とする立派な森が存在したことが、ギリシア・トルコの花粉分析の結果明白となった。またシリアのエルル-ジュ湿原の花粉分析結果はレバノンスギの森が3000年前まで存在したことを解明した。これらの森は全て人間の森林破壊の結果消滅した。5)研究成果の報告会:1991年2月22ー24日、中近東文化センタ-カマンカレホユック遺跡の調査成果報告会を実施した。公開報告会には200名を超える一般参加者があり、大村はカマンカレホユック遺跡の考古学的発掘成果について、安田はアナトリア高原の古環境復元の試みについて発表した。1991年2月27日には国際日本文化研究センタ-での「Environment and Civilizations in the Middle East」と題した公開シンポジウムを実施した。シンポジウムには北海道から九州まで52名の研究者の参加があり、ZEISTは“Origin and development of plant cultivation in the Near East",BOTTEMAは“Vegetation and environmentin the prehistoricーearly historic period in the Eastern Mediterranean"の発表をおこない安田が総括した。6)単行本の刊行:研究成果をいくつかの論文に発表するとともに、研究成果を広く一般に普及するため単行本を刊行した。安田は5冊、大村,ZEIST,BOTTEMAはそれぞれ各一冊刊行した。なを公開シンポジウムの報告はJapan Reviewに特集として英文で報告の予定である。
著者
海老原 史樹文 鍋島 俊隆 髙田 耕司 阿部 訓也 間宮 隆吉
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

抗うつ薬の評価法として用いられる尾懸垂試験における無動行動を制御する遺伝子Usp46を中心として、マウスの行動障害に関わる遺伝要因及び遺伝と環境との相互作用について分析し、その生理生化学的メカニズムを解明することを目的とした。その結果、Usp46は脳の様々な領域で発現し、GABA神経系を介して多様な行動に影響を及ぼすことが示された。また、Usp46変異マウスはストレスに対して脆弱であり、養育活動も低下するが、適正な養育活動を受けて成長すると、正常な養育行動が発現することが明らかになった。
著者
星野 貴俊
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は不安障害における認知的動態として見られる記憶の機能低下について検討したものである。記憶のうち,これから使おうと意図して保持された情報をワーキングメモリと呼び,情報処理の根底を支え,高次認知機能を実現する記憶作用と見なされている。本研究では,不安によってワーキングメモリ機能が(平常時より)障害される様態を検討している。不安はワーキングメモリに直接影響しているというよりは,注意制御機能を介してワーキングメモリ機能を障害しているという知見を一貫して見出した。特に,特性不安(パーソナリティ)は刺激駆動的な注意の作用を強める方向に調整しており,(記憶)課題とは無関連な刺激に対して処理を促進する一方,状態不安(情動)は目的志向的な(意識的な)注意の制御を困難にしていた。さらに,これら2種類の不安には交互作用が見られ,特性不安も状態不安もともに強い場合に,葛藤解決を含む実行機能系の遂行低下が観測された。また,記憶パフォーマンスとの関連においては,特性不安,あるいは状態不安単独の効果は見られず,両者の交互作用として,注意の切り替えを要するような事態において,パフォーマンスの低下が見られた。すなわち,不安は注意の切り替え(attention switching)と呼ばれる実行機能を害することによりワーキングメモリ・パフォーマンスを低下させていることが示唆された。これらのことから,不安障害に見られる認知・記憶機能への障害の動態は,一次的に注意システムを歪曲する形で発露していると考えられた。さらに,これへの心理療法的対処としては,ABM(Attention Bias Modification;注意バイアス修正法)が提案されているが,パーソナリティ要因か情動要因かによって注意への影響は異なり,またこれらは交互作用をもつことから,現在の単純なABM法パラダイムをさらに精緻化していく必要があると考えられる。
著者
佐原 眞 小池 裕子 松井 章 西本 豊弘 中野 益男
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

1982年以来,我々は原始・古代遺物に遺存する残存脂質の試行的研究を開始して,上器・石器の用途の解明,墓の認定を行い,原始古代の環境を復原するための「残存脂質分析法」を開発した。しかし,脂肪酸とステロ-ルを中心とした分析のみでは方法が確立したとはいい難い。そこで,現生資料の脂肪酸およびステロ-ルの組成に関するデ-タベ-スを作成するとともに,新たに免疫学的な方法を導入して動植物種を精密に特定して,原始古代の衣・食・住の生活復原の精度を高めるための基礎研究を行った。その結果,次の事が明らかにされた。1.肪肪酸とステロ-ルの化学組成による石器の用途の解明馬場壇A遺跡・富沢遺跡(旧石器時代)から出土した石器の用途を現生資料の脂肪酸・ステロ-ル組成を集積したデ-タベ-スから解明した。2.糞石による縄文人の食生活の栄養化学的評的価里浜貝塚・鳥浜遺跡(縄文時代前期)等9遺跡から出土した糞石の残存脂質から縄文人の摂った食物を明らかにした。主要な食事メニュ-は13種類あり,木の実,魚介類,海獣,鳥獣を組合せたバラエティ-に富む食物を摂っていた。一日約2250Kcal(9980kJ)と理想的なエネルギ-を摂り,糖質,たんぱく質,脂肪のバランスも良く,p,Ca,Fe等の無機成分やビタミンB^1・B^2も豊富で栄養化学的にも現代人が目標にしている値に近く,縄沢人の健康的な食生活がうかがえた。3.酵素抗体法(ELISA法)による土器棺と胞衣壺の同定原川遺跡(弥生時代中期)の土器棺,田篠中原遺跡(縄文時代中期末)・平城京右京三条三坊一坪(古墳時代前期)等縄文から近世までの6遺跡から出土した胞衣壺と推定される埋設土器を免疫手法のELISA法を用いて調べた。ヒト胎盤特有の糖鎖を持った古代糖脂質が検出されることから,埋設土器は土器棺と胞衣壺と認定された。
著者
原 秀成
出版者
図書館情報大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、1945年から1990年までの『朝日新聞』の投書欄「声」欄を分析の素材として、投書を寄せた人・投書を掲載された人の年齢による分散の長期的な変化を調査し、もって現代の新聞の高齢化社会に対する対応の解明を試みた。そのために第一に、「今月の投書から」「ことしの投書から」など朝日新聞社の発表した投書応募者の年齢・性別・職業など属性別の投書応募件数を、縮刷版を用いて集計をした。同時に、投稿規定を調べ新聞社の投書応募の条件の変化を調査した。第二に、1960年から1990年までの国勢調査のある5年ごとに、掲載された投書の全数調査をした。調査対象項目は、投書欄に掲載された投書者の年齢・性別・職業であり、これを5歳ごとに区分けし標準コ-ホ-ト表にのせた。この集計結果を、『人口動態統計』の「年次・性・年齢別人口」で割った値によりコ-ホ-ト分析を行った。第三に、朝日新聞社が行った読者分析、新聞紙面に掲載されなかった投書についての資料、高齢化社会についての調査報告などと照合し、調査結果を補強した。これらの結果、次のことを明らかにしえた。(1)60歳代の投書応募者、投書掲載者の単位人口あたりの件数は1960年から1990年に至まであまり変化していない。投書欄における掲載数の増加は、主に高齢者の人口増加を原因とするものである。(2)これとは対照的に、1990年における20歳代の単位人口あたりの投書応募者数は、1965年におけるそれの約半数に減少している。(3)新聞社は、1970年頃、20歳代の投書掲載を抑制し60歳代の投書を優遇して掲載していたが、1990年には年齢により掲載を特に操作している形跡はなく、特別なテーマを投稿規定で設定してもいない。これらの結果から、新聞社は1990年には高齢者からの投書という情報行動の増加を容認し、生涯教育の一つの場としての機能を自認しているという解釈が成り立つ。
著者
長谷川 信
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、通信機工業の勃興期であった明治期を対象に、沖牙太郎と岩垂邦彦の企業者活動に焦点を当てることによって、当該期における通信機ビジネスの特徴を明らかにすることである。本研究は、まず、沖電気の創立者である沖牙太郎の企業者活動について分析した。これまで沖牙太郎は、「技術国産主義」を掲げる経営者として海外企業との競争的な側面が注目されてきた。しかし、ウエスタンエレクトリック社が日本に派遣した社員・カールトンの書簡などから沖牙太郎の行動を再検討すると、沖牙太郎はウエスタンエレクトリック社との提携に合意しており、提携が成立しなかった要因はむしろウエスタンエレクトリック社の判断にあったことが明らかになった。また、沖牙太郎はウエスタンエレクトリック社製品の輸入を中心とした輸入ビジネスを積極的に推進し、それによって通信機ビジネスの成長が可能になったのである。このように、沖牙太郎の金業家活動は、従来の「技術国産主義」という範囲では理解できない、柔軟かつ積極的な内容であった。一方、日本電気(NEC)の創立者である岩垂邦彦は、沖牙太郎のビジネスとウエスタンエレクトリック社との仲介役を果たしつつ、独自のコンサルティング能力によってウエスタンエレクトリック社の信認を得て、最終的には、ウエスタンエレクトリック社の子会社である日本電気の設立を任された。沖牙太郎が創業した沖商会と岩垂邦彦が創設した日本電気は、競争と協調のなかで通信機ビジネスの発展をもたらした。通信機ビジネスの発展は、沖牙太郎と岩垂邦彦という2人の異なったタイプの企業家の存在が、相乗効果を持つことによって促進されたのである。なお、本研究の成果の一部については、企業家研究フォーラム全国大会(2004年7月4日)において報告をおこなった。
著者
伴野 豊 藤井 博 河口 豊 日下部 宜宏 竹村 洋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源開発研究センターに保存される世界最高水準のカイコ突然変異体の有効利用と効率的保存を目的として行った。その目標は次の3点にあった。1、DNAレポジトリーの確立(遺伝子資源の有効利用)2、精子レポジトリーの構築(効率的保存)3、遺伝子資源の情報発信(情報レポジトリー)上記3項目に関する達成度は以下の通りである。(1、DNAレポジトリー)約450系統を網羅するDNAレポジトリーを計画通り構築した。各系統に関して10個体を個別に保存し,系統内の多型解析を必要とする研究にも対応したレポジトリーとなり、既に国内・外の研究に活用されている。これまでは研究者が飼育を必要としていた為に利用が限定されていたが桑の確保などの必要がなくなり、利用が拡大している(2、精子レポジトリー)本課題では精子を採取する過程と人工授精の過程に極めて高度なテクニックを有する為に、研究分担者である竹村が開発した技術を扱う事が可能な人材の育成に時間を要した。このために目標の全系統の精子レポジトリー構築には至らず、30系統に留まった。今後、技術の改善に努める必要がある。(3、情報レポジトリー)2005年3月までに報告されたカイコの突然変異遺伝子に関する情報の収集を行った。その結果、カイコ突然変異遺伝子に関しては2005年3月までに報告されている全てについて遺伝子記号,遺伝子名,形質特徴,文献引用が一覧出来るデータベースを構築し、「カイコ突然変異体利用の手引き2005」を刊行した。以上,DNA,精子,情報という3つ事項のレポジトリー化が計られ,カイコ遺伝子資源を効率的に活用・保存できる基盤が出来上がった。
著者
溝井 泰彦 福永 龍繁 足立 順子 藤原 敏 上野 易弘
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.人に於けるエタノールの初回通過効果の有無を調べる為、被験者をアルデヒド脱水素酵素(ALDH)アイソザイムの欠損者と正常者に分け、空腹時に体重当り0.1g及び0.4gのエタノールを経口及び経静脈投与した。0.4g/kgを投与した場合、血中エタノール濃度は直線的に減少した。血中アセトアルデヒド濃度は欠損者でのみ上昇した。経口投与した時の血中エタノール濃度は経静脈投与の場合よりもかなり低く、血中エタノール濃度曲線下面積は経静脈投与に比べ正常者に於いて13%、欠損者に於いて22%減少した。0.1g/kgを経口投与した場合、血中エタノール濃度は曲線的に下降した。曲線下面積は経静脈投与に比べ経口投与した時は正常者に於いて35%、欠損者に於いて33%減少し、エタノールの初回通過効果の存在が示された。曲線下面積の減少の割合は少量投与の場合に大きく、初回通過効果はエタノール少量投与によって明瞭に認められるものであった。2.食事後に0.1g/kgのエタノールを経口投与すると、ALDH正常型・欠損型被験者共に血中エタノール療度は空腹時に比べて有意に低くなり、曲線下面積は空腹時の経口投与に比べ著しく減少した。欠損者の血中アセトアルデヒド濃度は食事後投与の場合に高くなった。エタノール吸収の遅れ・吸収効率の低下と共に肝血流の増加とそれに伴うエタノール代謝の亢進が考えられた。3.健常者12人に0.1g/kgのエタノールを経静脈投与し、血中エタノール濃度曲線をMichaelis-Menten型酵素反応を消失過程に持つone compartment open modelで解析した。エタノール濃度の最高値は2.8mMから9.4mM迄分散し、非線形最小二乗法で求めたKm値、Vmax値には大きな個人差があった。エタノールが体内に拡散する速度と拡散スペースの容積もエタノール代謝の重要な要因であることが判った。
著者
中畑 正志 内山 勝利
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アリストテレスの哲学の基礎的語彙の多くは、「可能と現実」「実体」などのように、現在では哲学の基礎概念となっているばかりでなく日常用語にまで浸透している。そうした語彙をアリストテレスがどのような意図で提示し、またその後西欧においてどのように継承され受容されてきたのかを改めてたどり直すとともに、19世紀の西欧における支配的な解釈の影響下にある日本における受容と翻訳のあり方をその問題点を確認し、あらたな翻訳の可能性を検討した。
著者
高橋 文
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ebony遺伝子というメラニン生合成系酵素をコードする遺伝子の5'領域の変異がその遺伝子の発現量を変化させることによってショウジョウバエの交配相手選好性に直接関与しているかどうかを明らかにするという内容である。ebony遺伝子は、神経系でも発現しており、自然集団内のebony遺伝子5'領域の変異は、表皮細胞での発現量及び脳での発現量を変化させていることが明らかとなった。脳での発現量の変異は交尾行動に影響することも明らかとなり、ebony 遺伝子5'領域の変異が行動の違いと結びついていることを示唆する成果が得られた。
著者
五島 正裕 坂井 修一
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

情報漏洩は情報化社会が本質的に抱える問題であり、技術的な解決が必要である。マイクロプロセッサの制御方式を含めて情報漏洩を検討している研究は少ない。データがどのように扱われるべきかは、本来プログラムが任意に酌量することではなく、データそのものに付加されるべき属性である。その上でプログラムがデータをどのように扱うかを監視することができれば、プログラムの出所に関わらず、情報漏洩防止を実現することができる。このような情報フロー追跡は計算コストが膨大なことから、これまであまり検討がされてこなかった。我々はマイクロプロセッサの処理スループットを向上させる研究を数多く行ってきており、情報フロー追跡を利用して情報漏洩を防ぐことは少ない性能オーバヘッドで可能であると考えている。本研究では柔軟かつ堅牢な情報漏洩防止アーキテクチャの実現を目指す。すべてのデータにはどのような使用を許可するかというライセンス条件が付加される。ライセンス条件は、プログラム中のデータ処理において、ソースからディスティネーションへと伝播し、情報漏洩を検出し、プログラムを停止させることができる。本年度は、分岐によって生じる暗黙的情報フローによる情報漏洩をも防止できるプラットフォーム技術を提案した。この方式に則れば、たとえアプリケーションに脆弱性があったとしても、情報漏洩を完全に防止することができる。
著者
笠間 浩幸
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

幼児期の子どもの砂遊びについて、同一の幼児に対する発達的な視点からみる継続観察、保育者の関わりと砂遊びの変化・発展の様子、保育者の砂遊びに関する意識と保育カリキュラムにおける砂遊びの位置、さらに砂場の保育文化史的視点及び遊びの環境構成論からの研究を行った。その結果として幼児期における砂遊びの特徴と砂場という遊び環境構築の重要性について明らかにした。また保育者の役割と遊びの発展についての解明を行った。
著者
森岡 卓司 仁平 政人 高橋 秀太郎 野口 哲也 山﨑 義光 高橋 由貴
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1945年1月~1946年8月までの東北六県県紙、及び全国紙二紙における文芸欄及び文化活動に関連する記事の悉皆調査を行い、東北地域における文化活動の特質を見通すための資料的基盤を形成した。帰郷を含む疎開において生じた具体的な接触を通じて派生した文学的活動の動態について地方雑誌を中心として調査分析を行った。その結果として、モダニズム文学と地域性との関わり、疎開文学者の地域的な活動の実態など種々の具体相が明らかになり、背景にあった地域主義とナショナリズムとの関係についても新たな知見を得た。
著者
浜口 博之 西村 太志 林 信太郎 KAVOTHA K.S. MIFUNDU Wafu NDONTONI Zan 森田 裕一 笠原 稔 田中 和夫 WAFULA Mifundu ZANA Ndontoni WAFULA Mifun ZANA Ndonton KAVOTA K.S.
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

この研究は,(1)ホットスポット火山の多いアフリカ大陸の深部構造の解明,並びに(2)ニアムラギラ火山のマグマ活動調査の2項目に大きく分けられる.1990年度の現地調査は予定通り実施され,当初の目的は達成された.1991年度は,現地調査の最中の9月23日にザイ-ルの首都キンシャサを中心に政情不安に端を発した暴動が起こり,日本大使館の退避観告に基づき調査を途中で中断し,隣国に緊急避難しそのまま帰国する結果となった.このため,この年度の調査事項の実施については,不完全なものにならざるを得なかった.以下,2年間の研究実績を項目別に分けて簡潔に示す.1.広帯域地震観測.0.05秒〜370秒に渡って一様な感度を持つCMGー3型とパソコンを用いた地震波収録装置を,1990年度はザイ-ル東部のルイロ地震観測所(LWI)に設置した.1991年度は,キンシャサ効外のビンザ気象局の地下地震計室(BNZ)に設置したが,最後の調整の直前に暴動が起こり,一部未完な状態のまま今日まで観測は続けられている.従って,地震計の再調整を含む良好なデ-タの取得は今後の課題として残された.この観測と並行して実施してきたアフリカ大陸下の深部構造については,(イ)アフリカ直下でコア・マントル境界(CMB)が盛り上がっていること,(ロ)マントル最下部のD"領域ではS波速度が3〜5%遅いこと,逆に,アフリカ大陸の外では数%速いこと,並びに,(ハ)コア表面の温度は,アフリカ大陸を含むA半球がその反対側の太平洋を含むP半球より数10mケルビン高温であること,などが明かとなった.これらの結果はアフリカ大陸に於いてホットスポット火山の密度が高い理由の解釈に重要な手がかりとなる.2.火山性地震・微動観測.1990年度は,CRSN(ザイ-ル自然科学研究所)の定常観測点(4点)の他に,8月13日〜11月29日まで火山地域内で8点の臨時地震観測を実施した.11月20日にこの地域では過去最大のM4の地震がニイラゴンゴ火山南方10kmに起きた.観測結果はこの地震により火山性地震やマグマ活動は励起されず,逆に地溝帯中軸の地震が活発化した事が明らかにされた.また,ニアムラギラの側噴火(キタツングルワ)のストロンポリ式噴火に伴う地震は火口直下0.2〜0.5kmの深さに集中し,その発震機構はマグマの噴出時に働くほぼ鉛直下方のSingle Fo
著者
本川 達雄 松野 あきら
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究の最大の成果は、カルシウムイオンがキャッチをひきおこすことを強く示唆する結果が、はじめて得られた事である。シカクナマコの体壁を、無刺激でキャッチしていない状態と、高濃度のカリウムイオンを含む人工海水でキャッチ状態にしたものとを、ピロアンチモン酸存在下で固定して、電子顕微鏡で観察した。キャッチしていない状態では、ピロアンチモン酸の沈澱は、2種類の細胞の中に観察された。大きなvacuoleを持った細胞のvacuole中と、0.2-0.6μmの楕円形で電子密度の高い顆粒をたくさん持つ細胞の顆粒の中とである。分析電子顕微鏡(EDAX)の分析により、これらの沈澱はカルシウムを含むことが分かった。一方、顆粒中の沈澱には変化がなかった。以上の結果は、vacuole中からカルシウムが放出されることによりキャッチが引き起こされることを強く示唆しており、キャッチ結合組織の機構を理解する上での、重要な発見といってよい。もう一つの成果は、ヒトデの腕のかたさとその変化を、はじめて定量的に記載し、この変化が、キャッチ結合組織によることをほぼ確実にしたことである。腕のかたさは曲げ試験を行い、梁理論を適用することにより求めた。腕の形態学的研究から、腕の形と断面二次モ-メントを記載する関係式をつくり、これをもとに、たわみ量からかたさ(ヤング率)を産出する式をもとめた。アオヒトデのかたさは、刺激をくわえない状態では8MPaであった。機械刺激により、かたさは3倍に増加した。かたさはイオン環境により大きく変わった。これは、体壁の結合組織がキャッチ結合組織であり、これがかたさの変化を引き起こしていることを示唆する結果である。ヒトデにもキャッチ結合組織の存在することがほぼ確実になった。