著者
大林 太良 山下 晋司 秋道 智彌 杉田 繁治 竹村 卓二 佐々木 高明 船曳 建夫 石川 栄吉
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1987年6月までに整理された資料に基づき, 100項目の文化項目, 150民族についてクラスター分析を行なった結果, 次のような東南アジア, オセアニア諸文化の分類の樹状図が得られた. この地域の文化は大きく東南アジアマクログループとオセアニアマクログループに2分される. 東南アジアマクログループは, インドシナ=核島嶼群と, アッサム=辺境島嶼部群に分かれる. 更に, インドシナ=核島嶼部群は, インドシナ=華南亜群と東南アジア高文化亜群に分かれる. アッサム=辺境島嶼部群は, 東南アジア穀物栽培民亜群と, 周辺根菜民亜群に分かれる. 他方, オセアニアマクログループは, オセアニア栽培民群と採集狩猟民群に2分される. 後者は主としてオーストラリア原住民より成り, 顕著な下位区分は示していない. ところが, オセアニア栽培民群は, メラネシア栽培民亜群とミクロネシア=ポリネシア栽培民亜群に分かれる. 次に, 同じ資料を用いて因子分析を行なった結果, 4個の因子を認めることができた. 概して因子分析の結果は, クラスター分析の結果を支持しており,ことに東南アジア対オセアニアという二分の傾向, 穀物栽培民対根菜民の対照等を浮き彫りにしている. その後, 1988年1月までに回収された資料に基づき, 238民族のクラスター分析を行なったが, その結果は上述の150民族についての分析とほぼ同様な分類を示している. また, 238民族についても因子分析を実施中である. この他, 文化項目を単位としていかなる項目のクラスターが見られるかについても分析中であり, これらの結果はまとめて正式報告書に発表される予定である. 東南アジア, オセアニア全域にかけての文化分類については, 従来は主観的な分類がもっぱら行なわれていたが, 本研究によってはじめて統計的処理によるほぼ妥当な分類が呈示されたのである.
著者
高橋 伸夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

この研究計画では、生態学的なシミュレーションを使って、さまざまな角度から組織現象の分析を試みている。まず、組織学習を組織内エコロジーとして定式化したJ.G.Marchのシミュレーション・モデルの欠陥と結論の誤りを指摘しつつ、これを再構築している。組織学習とは組織内エコロジーによる組織の適応プロセスであり、組織学習のパフォーマンス向上のためには、組織ルーチンの持続性がある程度必要なのである。同時に、主要研究を、組織学習とはどんな組織プロセスなのか、学習するのが個人ではなくて組織であるとは何を意味しているのかといった観点から整理を試み、組織ルーチンは、個人の手続的記憶を要素としたシステムで、この個人記憶が置き換えられても、要素間の関係パターンについては持続性が生き残り続けるような性質をもっていることを明らかにしている。さらに、複雑系(complexity)の分野を象徴するエージェント・ベースド・シミュレーション(agent-based simulation)を使った分析が試みられる。ここでいうエージェントとは、ユーザの設定したルールに基づいてコンピュータ上で行動する主体を指している。マルチ・エージェント型ではエージェントが複数いて、そのエージェント同士が互いに影響を与え合うことになるので、ルール自体は簡単なものでも、個別エージェントの行動を積み上げた全体では予測できない複雑な動きをすることになる。この研究では、エージェントがより多くの「アイデア」とコミュニケートできるようなポジションを求めて競争する「コミュニケーショイ競争モデル」を開発し、クラスターがどのように形成されるのかをシミュレーションで分析する。イノベーションの分野でよく言及されるT.Allenのゲートキーパーに対応した「大きな」エージェントの機能については特に詳しく調べている。
著者
江原 由美子 樫村 志郎 西阪 仰 藤村 正之 山崎 敬一 山田 富秋 椎野 信雄 坂本 佳鶴恵
出版者
東京都立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

初年度においては文献研究と研究計画の決定のための研究活動をおこない、第二年度においてはその研究計画に基き調査を実施した。最終年度においては、それらをもとに、研究成果を論文化することを主要な課題とし、研究報告書の作成に着手した。本研究の性格上、収集したデータの分析は、今後も継続して行われると思われるが、報告書作成段階において得られた知見を以下に挙げる。第一に、対面的相互行存状況においては、状況内にある参与者の身体(視線、顔、身体の向き、参与者相互の身体配置等)が相互行存進行の上で非常に重要な意味をもっていること。第二に、特定の制度的文脈においては、特定の相互行存的特徴がみられること.第三に、特定の制度的文脈において発生する会話トピックには、一定の範域があり、その範域をコントロールしようとする参与者の実践がみられること。第四に、それらの特定の制度的な文脈における相互行存の特徴は、相互行存参与者の、「協働的達成」として成立していること。これらの知見は、社会秩序それじたいが、行存者の「協働的達成」として成立していることを明らかにしている。社会秩序の「協働的達成」のための身体技術に関しては、その一部を報告書において明らかにしたが、今後さらに詳細な研究が必要である。
著者
中川 洋一
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ムチンは湿潤作用と防御作用をもち、その唾液における重要性は認識されているものの、臨床的な検討は必ずしも多くない。本研究の目的は、ドライマウス患者唾液におけるムチン濃度の測定ならびに、ムチン分泌量と口腔へのカンジダ定着との関連性を調べることである。検討結果から、ドライマウス患者における唾液ムチン量は少なく、また唾液中ムチンはカンジダ定着に抑制に働いている可能性が示唆された。
著者
中西 正恵
出版者
神戸女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

人間の体温調節や快適な寝心地には、ふとんわたの熱・水分・空気の移動特性が関与する。体積の大半を占める空気と繊維、水分からなるふとんわたの熱・水分・空気の移動特性は、構成繊維の性質とその集合状態により、様々に変化するが、本研究では、快適なふとんわた材料の性能設計に必要な熱・水分・空気の移動特性の基礎データを提出することに主眼をおき、各種の繊維充填材料の通気性、みかけの熱伝導率、さらに、着用状態を模擬したモデル実験により、充填材料を通しての熱・水分同時移動特性を測定し、充填繊維素材や充填密度の影響を調べた。その結果、通気抵抗では、特に繊維の太さの影響が顕著にみられ、繊維が均一にランダム配向する繊維塊では、繊維直径の2乗の逆数と通気抵抗との比例関係がみられた。みかけの熱伝導率では、繊維が細いほど小さいが、同じ繊維直径でも羊毛よりもポリエステルのほうがみかけの熱伝導率は大きく、繊維を粒状に絡ませた羊毛は、同一直径の均一なランダム配向する羊毛よりも大きいなど、繊維の熱伝導率、繊維集合構造なども影響を及ぼすことがわかった。また、ふとんわたでは、充填密度が大きくなるほど熱伝導率が小さくなることや、熱板面の放射率を変化させた実験の熱伝導率の比較から輻射熱移動の寄与が大きいことなどもわかった。熱・水分移動特性では、繊維形態、繊維の熱伝導率や吸湿性などの繊維特性も関与し、たとえば、真綿〔絹〕では、顕熱移動は小さいが、水分移動を伴う場合の熱移動量は大きいなど、各種繊維素材の特徴がみられることがわかった。透湿性の測定は、サーモラボIIによる水分蒸発熱の測定による方法をとったが、さらに精密なデータを得るために湿度勾配法による透湿性の測定を検討中である。本研究では、現在のところ、実験結果の整理にとどまっているが、今後、繊維特性及び集合構造をパラメータとした、熱・水分・空気の移動特性の予測へと発展させる予定である。
著者
宮脇 昭 ステファン マアス ヨヒム クリュガー ゲハルト ワグナー アンケア ヤンセン ハソオ モエスター パウル ミュラー 藤原 一絵 村林 眞行 青木 淳一 奥田 重俊 MULLER Paul
出版者
横浜国立大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

新しい都市生態系の科学的研究法を, 国際的視野から生態工学的に確立し, 相互の現地調査による良好な都市環境の保全, 積極的な創造についての比較研究の成果や実績の討議を行うことによって, 日本ならびに世界の都市環境の保全, 創造について科学的な基礎と指針を提供することを目的としている.都市生態系と自然環境の診断, 回復研究の対象都市域として西ドイツザールランド州の州都ザールブルッケン地区と日本の横浜地区を中心に, さらに東京沿岸域を主な研究対象地区に選定した. ザールブルッケン地区では, P.ミユラーグループの長い間にわたる都市環境指標として有効な生物を使った環境モニタリングの現地協同研究を行った.また横浜地区では研究代表者らが10数年来実施し, 国際的にも広く評価されはじめている潜在自然植生図を基本とした環境保全林形成による都市生態系回復状況について, ヨーロッパ各地の研究例との比較考察が現地で行われた.ザールブルッケン地区ならびに浜横をはじめ東京湾岸沿いの両大学の現地協同調査・研究の結果は, 1988年2月23ー24日横浜国立大学で実施された「都市域における人間生存環境の回復と創造」で集約されたように多面的に新知見が得られている(研究発表参照).とくに西ドイツの研究者によって最初にその理論が発表された潜在自然植生(Tuxen,R.;1956他)の概念を空間的に具現した潜在自然植生図は, 従来ヨーロッパでは, 田園景観域を対象に研究, 図化されていた. 従って応用面でも利用が農林地, 牧場などの潜在生産性の判定, アウトバーン沿い斜面の環境保全林, 保全緑地に限定されてきた憾みがあった.今年(1987)度にヨーロッパの都市域の潜在自然植生の判定, 図化の研地協同研究の結果, 日本ですでに東京湾沿いの照葉樹林帯はもとより, 北海道の夏緑広葉樹林帯から沖縄まで潜在自然植生図化と, その基礎に形成された郷土林;環境保全林の創造, その後の生長実績からヨーロッパ各地の都市域での潜在自然植生図化が十分に可能であることが明らかにされた.また生物モニタリングシステムによる都市域環境の診断については, 日本でも, より本格的に, いわゆる"ミュラーシステム"の適用のための今後の研究推進の必要性が確認された.
著者
小田 眞幸
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では報道資料や新聞記事、専門家の発言、一般市民へのネットへの投稿、さらに広告等の映像資料について批判的ディスコース(言説)分析を行った。分析の結果, 外国語(英語)教育に関する「パブリック・ディスコース」が一般の共通知識となり、個々の学習者の外国語学習観に影響を与えて行く過程において一定の規則性があることがわかった。これをもとに外国語教育政策が施行される際におこる諸問題を抽出し、学習者に対処法を提案する
著者
望月 智之 秋田 恵一 宗田 大 関矢 一郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

1. 腱板停止部(上腕骨大結節)において、棘上筋が停止していると考えられていた部位に棘下筋が停止していることを明らかにした。2. 腱板断裂には棘上筋が最も含まれていると考えられてきたが、棘下筋が断裂に最も関与している可能性が高いことを示唆した。3. 上記の結果を踏まえて、腱板断裂をより解剖学的に修復する手術方法を発表した。
著者
石川 清
出版者
愛知産業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

イタリア・ルネサンス期の建設活動における職人組織の様態を把握するために,まず初期ルネサンスに職能としての建築家像が形成されていく過程を明確にした.十四世紀フィレンツェのドメニコ派修道院サンタ・マリア・ノヴェッラでは修道院内の職能分離によって早くから呼称されていた「建築家」がその技術的な水準の高さから,やがて公共建築や大聖堂のヴォールト架構等の助言者として修道院外においても活躍するようになる実態を明らかにし,十五世紀前半においては,世俗の職人組織の中から,異なったタイプの3人のマエストロ,フィリッポ・ブルネレスキ,ミケロッツォ・ディ・バルトロメオ,アントニオ・ディ・マネット・チャッケリがが「建築家」と呼ばれるようになったかを,彼らが携わった建築現場の様態を示す建設記録とルネサンス期の市民的人文主義者による建築に対する論述の中に現れる記述表現の変遷を文献学的な側面から検証し,職人組織の中でのその職能の分化過程に見出し,建設職人組織の様態の相貌を明らかにする手掛かりとした.中世期の都市停滞期に喪失した建築家像が十五世紀に入ってアルベルティの『建築論』の中で再び構築されていったが,同時に現在なおイタリア都市の性格を物質的に規定し続けている建築の文化的地平が都市機能充実の気運によって営まれた建設活動の中で培われた技術と職人組織とその建設法のシステム化によって支えられたことをさらに裏づけた.ルネサンスの都市化現象に通底した芸術生産活動における組織編成の変容とその過程を射程することによって,ルネサンス期の芸術文化,都市文化の相貌を正確にすることとした.イタリアの中世末期から初期ルネサンス期にかけての職人工房における組織的制作の手順を多次元的に把握することを試みた.
著者
山下 正男
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究の成果の一部は、平成5年1月27日京都大学人文科学研究所刊行、山下正男編『法的思考の研究』の巻頭論文「法的思考とはなにか一義務論理学の効用性一」において発表された。本論文はそれに先だって自分で開発した義務論理学を、実際の法的諸問題に適用し、義務論理学の効用性を験証したものである。そして以下はその効用性のあらましである。(1)義務論理学もしくは法論理学は日本の現行憲法はもちろん民法、刑法をはじめとするすベての法文に適用可能である。ただし憲法前文は適用範囲から除かれる。(2)義務論理学と事実論理学とが互いに還元不能であるということから、法体系が事実学およびイデオロギーから独立しているという主張を正当化することができた。(3)いままでの法文の基本用語はホーフェルドによって提案されたものが用いられていたが、それを改良することができた。(4)法律で便宜的に使われ続けてきた構成要件なるものの論理学的身分を解明することができた。(5)いわゆる概念法学というものの素性をはっきりさせることができた。(6)法延論爭の基本構造を義務論理学と実験論理学を組みあわせることによって解明することができた。(7)いわゆる法的三段論法が欠陥品であること、そしてそれに代わる義務論的仮言三段論法(法的推論)を使うベきであることが提案された。以上7点のほか、義務論理学の応用範囲は今後とも、さらに拡大されることは疑いないと考える。
著者
清水 昌 片岡 道彦 小林 達彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

(1)土壌より分離した糸状菌Mortierella alpina 1S-4をグルコースを主炭素源とする培地で培養すると、菌体中に著量のアラキドン酸含有油脂を蓄積することを見いだした。本菌を用いてアラキドン酸含有油脂の蓄積量増大に関する培養条件の検討を行った。炭素源としてグルコースと共にオリーブ油、パーム油などのオレイン酸含有油脂を併用すると、菌体油脂中の不飽和脂肪酸の割合が著しく上昇することを見いだした。また、培養時間の延長、窒素飢餓条件下でグルコースなどの炭素源の添加は、アラキドン酸含量の上昇に寄与した。最適条件下でのアラキドン酸生産量は約5g/lに達した。(2)本菌のアラキドン酸生合成経路の解明を行った。その結果、本菌ではグルコースから生成したステアリン酸が不飽和化と鎖長延長を繰り返してアラキドン酸へ至ることを生合成経路の各中間体を単離することにより明らかにした。(3)アラキドン酸生合成に関与するΔ5不飽和酵素反応について検討を加え、本反応の特異的阻害剤が天然物中に存在することを認めた。ゴマ種子、ウコンの抽出物から阻害剤の単離を試み、それぞれセサミン関連リグナン化合物、クルクミンを単離・同定した。(4)上記のゴマ種子抽出物またはウコン抽出物を本菌の培養液中に共存させて培養を行うと、Δ5不飽和化反応が抑制され、アラキドン酸の前駆体であるジホモ-γ-リノレン酸が蓄積することを認めた。最適条件下での生産量は3.2g/lであった。
著者
福地 信義 木原 和之 土井 康明 豊貞 雅宏 若菜 啓孝 篠田 岳思 小川原 陽一
出版者
九州大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

軽量構造船は構造材がアルミ合金であるため、火災時には溶融・発熱燃焼が起こる危険性があり、軽量構造船特有の防火対策が不可欠である。このため、アルミ合金の船における火災伝播現象のシミュレーションと防火対策の等価性評価のための評価法の提案を行った。主な研究成果は次の通りである。(1)火災伝播現象シミュレーションのための数学モデル軽量構造船を対象に、火災時に破損孔を生じる可能性のある場合について火災伝播の様相を調べるために、火災現象の状態方程式と船内区画をリニアグラフで結合によりモデル化し、可燃物の燃焼特性、ガスの発生、熱および気流に関する状態方程式により火災現象の数学モデルを構築した。これにより火災伝播現象の数値シミュレーションのための計算法を確立した。(2)軽量構造船の火災伝播状態形状を簡易化した3層甲板客船モデルおよび単胴型高速船の延焼状態について計算を行い、壁体の破損温度、防熱材厚さおよび火災荷重と火災拡大の関係を明らかにした。また、壁体に破損が起こる場合の火災の拡大要因は、破損孔による酸素補給の有無と熱移流であり、防火構造の防熱性能と耐熱強度が問題であること、特に発火区画での火災減退期までの熱封鎖の可否が火災拡大の分岐条件となることを示した。(3)防火対策の等価性評価のための手法評価対象を評価する際に、代替項目により優れた特徴のみを問題視する代替的評価と欠点のないものを選好する補完的評価がある。このような多面性問題に対して、評価選好基準にBelief測度あるいはPlausibi-lity測度のようなFuzzy測度を用いた多基準分析法による代替性・補完性評価の手法を提案した。
著者
二宮 祥一 楠岡 成雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、拡散過程X(t)のと関数fが与えられた時に期待値E[f(X(T))]の値を数値的に求める問題(弱近似問題)を、楠岡近似と呼ばれる新しい近似手法によって解決する方法を確立することであった。楠岡の研究により楠岡近似は既存の近似手法である、Euler-丸山近似に比して非常に少ない次元の数値積分によって近似を実現することが可能であることが示されていた。積分次元はMonte Carlo法を用いる限りにおいては、計算量に対して中立的であるので劇的な高速化は期待出来ない。しかし、quasi-Monte Carlo法は積分次元が小さくなると非常に高速になることが知られている。これらの事実から楠岡近似をquasi-Monte Carlo法と組み合わせることにより計算の高速化が期待されるが、現実の問題に適用する為には以下の様な未解決の問題が在った。1.汎用的な楠岡近似オペレータの構成の困難2.楠岡近似にquasi-Monte Carlo法を適用する方法の確立3.現実の問題に適用しての実証例の不在本研究は全ての問題を解決することに成功した。1.に関しては、本研究の開始時点に於いては計算機による記号計算によりオペレータを記号的に求めてそれを計算機上のプログラムに変換するというアプローチを考えていたが本研究で記号計算を経ずに常微分方程式の数値解法を用いる方法が発見された。これにより、非常に汎用性の高いプログラムライブラリが可能となるので、楠岡近似の実用化については決定的な成果であると考えられる。更にこの方法は、高次元正規分布とBernoulli列によって実現されるのでquasi-Monte Carlo法が自然に適用可能である為、2.も同時に解決している。3.については、この新しいアルゴリズムをファイナンスの問題に適用し、800倍という驚異的な高速化を実現した。
著者
宮里 心一
出版者
金沢工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

海岸部に立地する鉄筋コンクリート橋における上部工の形状が、飛来塩分の付着量に及ぼす影響を、実験的に検討した。すなわち、寸法および凹凸に相違を設けた4種類の供試体を、人工飛来塩分発生装置や人工降雨装置に暴露し、付着した塩分量を測定・比較した。その結果、上部工底面の凹部への巻き込み現象や上部工側面の雨水による洗浄効果に着目して、最も塩分が付着する部位を解明できた。
著者
秋葉 昌樹 中根 真 熊谷 保宏
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、補助金を得た2年間、次に掲げる研究目的により進めてきた。すなわちその目的は、演劇的手法及びエスノメソドロジー分析に基づき、教育・社会福祉領域における反省的実践家をコミュニケーション能力の観点力ら支援するための教育研修の方法論およびネットワーク実践の具体的なモデルを提示することにあった。今日、子ども、福祉援助対象者を取り巻く急激な社会的変化に伴い、教職及び福祉専門職の役割とあり方が問われるようになってきており、教職・福祉専門職のモデルとして反省的実践家モデルが注目されはじめている。しかし、反省的実践は、コミュニケーションプロセスに埋め込まれているがゆえに、その構造・機能・意味については、日常的実践のなかで実践家が「見て知っているが気づかないseen but unnoticed」(H.Garfinkel)ことも少なくないと考えられる。上述の観点から、本研究では、教育社会学(秋葉)、社会福祉学(中根)、応用演劇学/演劇教育学(熊谷)の専門家による学際的共同研究を軸に、実践家自らが日頃のコミュニケーションプロセスを演劇的手法を通じて再体験・再創造し,反省的実践の構造・機能・意味について方法論的アプローチする研修方法を開発するとともにその研修ネットワークを構築することを狙いとしてきた。本研究を進めるにあたっては、全体のコーディネートを秋葉が担当しつつも、具体的には、以下の体制で進められた。教育実践家を対象とする演劇ワークショップ(研修ネットワーク)については秋葉および熊谷が担当し、社会福祉実務家を対象とする研修については中根が担当した。熊谷はまた、演劇ワークショップの枠組を考案するとともに、様々なウェブベースのコミュニケーションツールの試行および開発にあたった。
著者
米林 甲陽 児玉 宏樹
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

水道水中に生じる「トリハロメタン」は、水中フミン物質を起源として水道水の前塩素処理や塩素殺菌によって生成するとされている。しかし、天然水中に存在する「フミン物質」は、生体成分とその分解成分から化学的、生物学的に合成された「難分解性有機物」である。また、天然水中にはフミン物質以外に多量の非フミン物質が共存しており、極めて多様な低分子有機物の混合物である。天然水の塩素処理によって生成するトリハロメタンは、難分解性有機物であるフミン物質ではなく、易分解性の非フミン物質から生成すると考えた方が妥当である。本研究は天然水から分離したフミン物質と、もとの天然水についてトリハロメタン生成能を比較して、トリハロメタンの前駆物質が非フミン物質であることを実証する。淀川水系の4河川(木津川、宇治川、桂川、淀川)の環境基準点において経時的に採水を行い、非イオン性樹脂DAX-8を用いる分画法で、疎水性酸(フミン物質)画分、疎水性中性画分、親水性画分に分離した。各画分と原水を、トリハロメタン生成能の測定条件で塩素処理し、ヘッドスペース法でGCMSを用いてトリハロメタン濃度を定量した。水中フミン物質の大部分はフルボ酸であった。各試水から生成したトリハロメタンの大部分はクロロホルムであった。淀川水系河川のクロロホルム生成能は13〜22μg/Lであった。原水とフルボ酸のクロロホルム生成能を比較した結果、フルボ酸の寄与率は15〜24%であった。フルボ酸は溶存有機物の13〜28%をしめることからフルボ酸からの寄与が選択的に高いとはいえない。しかし、クロロホルム生成能の大部分はフルボ酸以外の画分に起因しており、トリハロメタンの主要な前駆物質はフミン物質ではなく、非フミン物質であることが実証された。
著者
伊藤 美千代
出版者
順天堂大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では、全国規模の無記名自記式質問紙調査により、炎症性腸疾患患者の職業発達の実態を明らかにした。難病をもちながら働くための職業発達は「無理なく働ける仕事内容、職場の選択」「症状や障害による仕事遂行への影響」「職場における困難への対処法の存在」など12項目の因子から構成され、それぞれの因子が地域における就労支援や家族支援、頼りに出来る人の存在などの環境要因と関連を有していた。
著者
佐藤 久美子 梶川 祥世 庭野 賀津子 皆川 泰代
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

第1に、英語の絵本の読解力に優れた子どもは、英単語の音のみならず、読み手の声の調子、絵、背景的知識、推測力など様々な学習方略を使い、内容を統合的に理解する過程が明らかになった。一方、読解力が弱い子どもは、絵にのみ集中する傾向があり、他の読解方略を有効に使うことができない、という特徴を明らかにした。第2に、母親と子どもの対話を分析し、発話力の高い子どもの母親は応答タイミングが早く、発話時間が短く、話しかける時はゆっくりと話すという特徴を見出した。こうした読み方が、子どもの理解力を促進することが解明された。
著者
森田 直子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1970年代に入るまでは低級文化と見なされていたコミックスの文化的認知について、芸術、教育、文化的機構などとの関係から考察するものである。まずコミック作家が経験した文化的闘争の最古の一例として、19世紀スイスの作家ロドルフ・テプフェールの経歴をとりあげた。かれの理論的テクスト等の分析から当時におけるコミックスの文化的認知の困難さとその背景を明らかにした。また、現代の日本とフランスについて、コミックスと諸芸術の関係、子ども観、教育制度などの違いをふまえ、文化的認知度をはかるための有効な方法論を吟味するとともに、今後の国際的なコミックス研究のありかたについて提言も行った。