著者
町田 哲
出版者
鳴門教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、阿波の山間地域を素材に、近世日本の山村における生業と流通の構造について、(1)山村における所有と生業の実態、(2)山村の村落共同体における社会的関係、(3)モノを通じた流通構造(都市との関係構造)という 3 つの地域史的視角から解明した。藩の山林制度や請負制の実態解明を通して、山林資源の枯渇状況や、地域における山林利用のありかたとその変容、さらには山村と城下町徳島・巨大都市大坂との関係等を具体的に解明したことで、近世阿波の多様な山村特性の一端を把握することができた。
著者
原田 隆史 高久 雅生 小野 永貴 杉岡 秀紀 真山 達志 逸村 裕 江草 由佳 岡部 晋典 小泉 公乃 山本 順一 安形 輝 桂 まに子 岸田 和明 佐藤 翔
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,「資料」「来館者」「非来館者」「知の拠点」「図書館制度・経営」という5つの観点を研究する5 つのグループを設定して,日本の公共図書館全体を対象とする大規模な質的・量的調査を実施する。これによって日本の公共図書館に関して,それぞれの機能・サービスの基準とし,規模や地域経済など,図書館の状況に応じたベースラインを明らかにする。本研究により日本の公共図書館すべてに適用可能な評価パッケージを開発可能にすることが可能になると考えられる。
著者
本堂 毅 鈴木 哲 村瀬 雅俊 北條 祥子 石堂 正美
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2009

日常環境レベルでの電磁場が生物及び人体に対して与える影響について,細胞及び人体レベルでの研究を行い,低周波磁場の細胞への影響を,コメットアッセイ解析等の定量評価から明らかにした.疫学研究では調査に用いる問診票を確立した。また,身体レベルでの愁訴を研究に活かすために,科学的不確実性(不定性)を伴う知見の専門家・非専門家間でのコミュニケーションが成立するための基礎的条件を明らかにした.
著者
草桶 秀夫
出版者
福井工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本の代表的なホタルであるゲンジボタルおよびヘイケボタルは、ND5遺伝子の塩基配列に基づく種内変異と分子系統解析によって、遺伝的変異が大きく、高い遺伝的生物多様性をもつことを明らかにした。特に、ゲンジボタルでは、ハプロタイプ間の分子系統関係からハプロタイプの生息地を推定する手法を確立した。この手法は、人為的に移植されたゲンジボタルの場合、どこから移植されたかを推定するのに有用である。
著者
渡邉 英徳
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

これまでのデジタルアース・アーカイブの研究成果を活かして,インド洋大津波のデータ,企業ビッグデータのデジタルアーカイブを作成し,公開した。加えて,ニューラルネットワークを用いた自動色付け技術を用いて,マスメディア(朝日新聞社,沖縄タイムス,岩手日報社)の所蔵する災害アーカイブなどの資料をカラー化し,取材・時代考証を踏まえた補正を加えたものを,ソーシャルメディア(Twitter,Facebook)で発信する実験を行なった。毎日,その日付に起きた出来事にまつわる画像をアーカイブから選定し,カラー化したものを発信した。各々の着彩写真は数千〜数百回リツイート・シェアされ,年度内のインプレッション数は合計6000万回となった。カラー化写真に対して,ユーザからは多数のリプライ・引用リツイートがあり,写真への感想,時代考証,撮影地の特定など,さまざまなコミュニケーションが創発した。その結果,写真の撮影地や被写体の詳細が判明するなど,資料内容の特定への寄与もみられた。さらに,カラー化した写真をもとにして,若者たちと災害の当事者が語り合い,交流を深めるワークショップを,広島原爆・東日本大震災をテーマとして開催した。このことにより,ローカルなコミュニティ形成に貢献した。カラー化写真およびワークショップは,朝日新聞朝刊一面(6/23)をはじめとするTV・新聞などのマスメディアで多数取り上げられ,年度内に34件の報道があった。こうした反響を受け,カラー化した写真を,日本新聞協会主催の展覧会「よみがえる沖縄1935」などで展示した。
著者
西村 直子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

古代インドでは牛を中心とする牧畜生活が行われており, 多彩な乳製品が基本食物とされていた。仏典にも多くの乳製品が登場し, 醍醐を最上とする重要な比喩表現も散見する。しかし, それらの具体的な製品について, 加工法の解明と同定は課題として残されたままであった。本研究ではヴェーダの祭式文献(中心となるものはB. C. 800-600年頃)から知られる以下の発酵乳製品について, 加工法の解明と同定を行い, その神話的宗教的意義と共に言語的側面からも精査した:ダディ(dadhi= 酸発酵乳), サーンナーィヤ(samnayya= 酸発酵乳と加熱乳の混合物), アーミクシャー(amiksa=カッテージチーズ様凝固発酵乳), パヤスヤー(payasya=amiksaに同じ), アータンチャナ(atancana=発酵または酸化促進剤), ヴァージナ(vajina=ホエイ)。
著者
木塚 俊和 亀山 哲 小野 理 三上 英敏
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は前年度に引き続き将来的な耕作放棄地の有効利活用策の提案を目的とし、以前農業利用されており、現状において、適正な利用が図られるべき土地であるにも関わらず長期間に渡り利用されていない土地(未利用農地と定義する)の分布と面積の実態把握を行った。具体的には、釧路湿原流域を対象に衛星画像解析を行い、農地区画(農地ポリゴン)内の土地被覆割合を4つのカテゴリー(未利用農地、森林、畑作地、牧草地)別に計算し、各カテゴリー別の占有率を地図化した。結果として得られた地理情報を基に、実際の湿原周辺部において、より具体的な未利用農地の土地利用転換案について検討を進めた。未利用農地における栄養塩浄化量の解明については、前年度に引き続き現地調査区における水位、水質等の観測を継続した。これまでの観測データに基づき調査区の栄養塩収支の解析を進めた。その結果、地表流入・流出が調査区の水収支の大部分を占めており、隣接河川の増水の影響を受けていることが考えられた。また、栄養塩の流入・流出量も河川増水時に大きく増加することが分かった。さらに、未利用期間が異なる他の圃場においても水質調査を行い、2か所の未利用農地を対象に地表水や地下水の栄養塩濃度を比較した。釧路湿原周辺の未利用農地の発生状況や栄養塩動態についてこれまで知見が限られていたため、本研究により、未利用農地の今後の有効利活用を検討するための貴重なデータを取得することができた。本研究成果の地域への活用を図るために、対象地域の村役場、酪農家、釧路湿原自然再生協議会の事務局等を訪問して、研究結果を報告するとともに、未利用農地の今後の有効利活用策について協議した。
著者
北中 幸子 磯島 豪
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

小児期にビタミンDが不足すると、乳児けいれん、O脚、低身長、運動発達障害などを呈するビタミンD欠乏症を発症する。環境因子の変化により近年患者数が増加しているが、環境因子だけで説明できない例も多く、遺伝性素因の検討を行った。その結果、ビタミンD受容体、ビタミンD結合蛋白、NAD合成酵素の多型に対照群と有意差がみられた。さらに特定のハプロタイプの関与が強く認められた。さらに、臨床的にビタミンD欠乏症の経過を呈する症例に遺伝性くる病が明らかとなり、遺伝子解析の有用性が明らかとなった。
著者
吉富 啓之 戸口田 淳也 金 永輝 河本 宏 増田 喬子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究ではHLA B27陽性の強直性脊椎炎患者3名からのiPS細胞の樹立に成功した。さらにHLA B27の病的意義を解析するため、CRISPR-Cas9を用いて遺伝子編集を行い、2例の疾患特異的iPS細胞からHLA B27の発現を欠くiPS細胞の樹立に成功した。現在HLA B27が骨・軟骨分化維持機構を修飾する機構について投稿準備中である。さらにT細胞が慢性炎症病態に及ぼす影響を解析し、血清反応陰性関節炎の対照疾患としての血清反応陽性関節炎である関節リウマチ検体においてCD4陽性T細胞からCXCL13産生を誘導する新たな転写因子としてSox4が病態に関わることを示した。
著者
若山 照彦 岸上 哲士 長友 啓明 大我 政敏 水谷 英二
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は、クローンマウスの研究において念願だったF1以外の卵子からのクローン作出に成功した(Tanabe et al., Reproduction 2017)。最も安く購入できるICR系統の卵子が利用可能となっただけでなく、系統間で卵子の初期化能力を比較することが可能となった。また、核の保存限界を明らかにする研究では、国際宇宙ステーション内で宇宙放射線に長期間曝したフリーズドライ精子であっても顕微授精によって産仔を得ることが可能であり、精子核に対するDNA損傷はわずかであることを初めて証明した(Wakayama S. et al., PNAS 2017)。この成果は主要な全国紙およびNHKなどのテレビで報道されただけでなく、海外でも広く紹介された。またこの研究において、ダメージを受けた精子核は卵子内で修復されていることを明らかにした。糞由来細胞核からのクローンマウス作出の試みでは、安定した核の採取に成功し、卵子内で移植した核のDNA修復が確認されたが(投稿中)、現時点で初期発生には成功していない。一方、活性化した卵子内の核の変化および初期化については、今まで生きたまま観察することは出来なかったが、今回我々は、zFLAPという新技術を開発し、生きたままダメージを与えずに核の変化を観察することに成功した(Ooga & Wakayama PlosOne 2017)。核移植や胚移植のためには、卵子や胚を保護するだけでなく顕微操作において卵子や胚を固定するために透明帯が不可欠である。そこで、人工卵子が作出できた場合のために、人工透明帯の開発を行ったところ、アガロースで作られたカプセルであれば透明帯の代替品となることを明らかにした(Nagatomo et al., Scientific Reports 2017)。
著者
次山 淳 松村 恵司 松村 恵司 次山 淳 池田 善文 梅崎 恵司 江草 宣友 小畑 弘己 神崎 勝 北野 隆亮 木村 理恵 小泉 武寛 小林 義孝 栄原 永遠男 芝田 悟 関口 かをり 高橋 照彦 田中 大介 永井 久美男 濱崎 真二 降幡 順子 古田 修久 松崎 俊郎 松村 恵司 宮崎 貴夫 森岡 秀人
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

3カ年にわたる研究により、銅銭を基軸に据えた貨幣制度の導入が、中国式都城の建設と一体的に企画され、富本銭が発行された歴史的経緯が明らかになった。和同開珎の発行時には、銭貨の規格性を維持しつつ発行量の増大を図るために、鋳銭体制の整備と鋳銭技術の改良が図られていること、地金貨幣である無文銀銭を駆逐するために和同銀銭が発行されるなど、7世紀末から8世紀初頭にかけての貨幣関係記事が、名目貨幣である国内通貨の定着に向けた一連の貨幣政策として整合的に理解できるようになった。
著者
川瀬 晃道 TRIPATHI SAROJ RAMAN TRIPATHI Saroj Raman TRIPATHI S. R.
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、汗腺のミリ波・テラヘルツ波帯でのアンテナとしての機能を検証することにより、生体とミリ波・テラヘルツ波の相互作用について明らかにすることである。そこで本研究では汗腺がヘリカルアンテナとして機能した場合軸モードとノーマルモードについて調べた。昨年の研究では汗腺の軸モードで共振周波数 442±72 GHz という値を得たが本年度は特にノーマルモードに着目し、共振周波数の計算を行った。そこでまず汗腺の様々なパラメータ例えば汗腺の直径、巻き数、長さ等の情報を得るためOptical Coherence Tomography (OCT) を用い32人の被験者に対して計測を行った。その結果平均直径は 95μm、平均長さは304μmと平均巻き数は5であった。これらのデータの基に汗腺がノーマルモードで機能した場合約 130GHz 付近で共振する可能性があるという結果を得られた。
著者
小林 好紀 川井 安生 山内 秀文 土井 修一 則元 京 佐々木 光 OHTA Shosuke ITO Ryosuke 三浦 泉
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

木材乾燥の前処理として古くから行われている水中貯木処理が、乾燥性や水分透過性の改善に寄与する理由を科学的に解明し、難乾燥材とされるスギ材の実用的な乾燥前処理技術として利用するために、6年間に及ぶ長期間の研究を行った。得られた結果は以下の通りである。(1)水中微生物の木材への活性水中貯木過程において、3ヶ月ごとに貯木池より回収したスギ素材丸太内における水中微生物の消長を追跡観察した。その結果、水中および散水貯木の開始とともに、まず辺材含水率が増加し、続いて移行材のそれが増加し、18ヶ月後には心材含水率が約150%近くまで増加し、水中微生物を含んだ貯木池の水分が丸太内部まで浸透したことを意味している。(2)貯木処理開始とともに辺材への水中微生物の侵入が観察された。移行材への浸入は貯木処理開始後2週間で観察され、辺材および移行材へ水中微生物が容易に浸入することが明らかになった。しかし、心材への浸入にはばらつきが見られた。水中貯木期間の長期化に伴って、すなわち、水中微生物の素材丸太中への浸入に伴って、参謀内のデンプン粒の減少、有縁壁孔の崩壊など木材組織に変化が生じた。(3)水中あるいは散水貯木処理期間に比例して、遠心分離機による脱水性の向上が見られた。とくに辺材と心材におけるそれの増加が大きく、含水率増加、組織構造の変化と関連があることが推測された。しかし、繊維方向あるいは放射方向のいずれにおいても吸液量の大きな増加は見られなかった。(4)長期間にわたって水中貯木されたスギ丸太内から7種類の水中微生物が観察され、それらが細胞内容物の消滅あるいは有縁壁孔壁の崩壊に関与している様子が確認された。水中微生物をスギ材にアタックさせると乾燥性が改善されることが明らかになった。とくに3年以上の貯木処理によって乾燥速度が著しく増加した。水中貯木期間の増加に比例して乾燥速度が増加した。とくに、48ヶ月以上の処理によって乾燥日数は約1/2に短縮された。(5)乾燥期間が長くなることによって、材色の変化が観察された。明度が向上するが赤みが減少し、また、黄味が増加した。したがって、長期間の貯木処理はスギ特有の心材色を失うことになる。しかし、長期間の水中貯木処理による強度の低下はほとんど観察されなかった・
著者
根岸 一美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1923年から1935年まで関西に在住したオーストリア人音楽家、ヨーゼフ・ラスカと、彼が宝塚少女歌劇の管弦楽団員たちとともに創設し、指揮者として定期演奏会活動を展開した宝塚交響楽団に関する研究において、当該研究期間に力点を置いたのは、とりわけ作曲家としてのラスカの活動と意義を解明することであった。この目的のために、毎年、オーストリア国立図書館音楽部門(ウィーン)、ウィーン市立州立図書館音楽部門、およびリンツ・ブルックナー音楽院を訪ね、自筆譜・筆写譜・出版譜を複写ならびに写真撮影し、そうして得られた資料をもとに、音楽家たちや、音楽学専攻で楽器の演奏力を有する大学院生等に演奏してもらい、CDを作成し、作品研究のための資料整備を進めた。主な作品は《万葉集歌曲》、《日本組曲》、《7つの俳句》である。また、すでに神戸女学院で入手していた《詩編第13篇》の筆写譜についても、演奏とCD作成を行った。これらのほか、ラスカの伝記作成にむけて資料の収集に力を注ぎ、王立ミュンヘン音楽院時代の学内演奏会の曲目内容や彼自身の演奏曲目などについても重要な情報を得ることができた。美学会での各種発表においては、ラスカの作品の歴史的意義と美的特性について論じた。研究代表者の仕事を通じてラスカの名前が比較的知られるようになり、2002年9月には宝塚歌劇団の管弦楽団によって《日本組曲》が部分的ながら演奏され、ラスカと宝塚交響楽団の活動の意義が改めて見直されるにいたった。
著者
野尻 宗子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

我が国の高齢化率は年々上昇しており,平成30年高齢社会白書によると 65歳以上人口は、3,515万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も27.7%である.高齢化による合併症の増加に伴い多剤併用(polypharmacy)が生じやすくなっており,多剤併用による医療費の増大と同時に有害事象の増加が懸念されている.本研究では,60歳以上の高齢者を対象として睡眠薬・抗精神病薬での多剤併用と骨折リスク,睡眠時無呼吸症候群患者の睡眠薬使用実態についてレセプトデータ(National DataBase)を用いて調査する.
著者
たら澤 邦男 藤森 研司 森谷 就慶 尾形 倫明 千葉 宏毅 三澤 仁平
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本は超高齢・多死社会を迎え、国民が希望する場所で最期を迎えるための条件整備が急がれる。国民の55%は自宅で最期を迎えることを希望する一方、死亡場所の74%は病院であり、がんによる病院死は83%とさらに高い。がん患者について、病院死症例を多く含む病床機能と終末期医療の実態は明らかにされておらず、在宅看取りが多い地域にはどのような病院機能があるか解明されていない。そこで本研究は、在宅看取りの高低に対し同一地域の病院機能が与える影響を明らかにすることを目的とする。目的達成のためNDBレセプトデータ、官公庁公開データを併用した分析を行い、地域で実現可能な在宅看取りの普及啓発のあり方を検討する。
著者
渡邉 公太
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、戦間期日本の国際連盟外交の実態を、外務省内の「連盟派」と呼ばれた外交官たちの活動を通じて明らかにするものである。国際法・条約解釈に関し、「連盟派」たちはいかにして日本の国際協調と満蒙権益の維持という重大な外交目標を両立しようとしたのか。本研究はこれまで本格的な検証がなされることのなかった「連盟派」を、国際情勢の変化にいかなる法理論でもって対応しようとしたのか考察し、当該時期の日本の「国際協調」の実態をとらえなおす。
著者
遠藤 康男 只野 武 中村 雅典 田端 孝義 渡辺 誠
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

遠藤らの研究成果に基づく仮説“筋肉疲労が筋肉組織からサイトカインのinterleukin(IL-1)を遊離させ,この因子が筋肉組織にヒスタミン合成酵素のHDCを誘導し、持続的なヒスタミンの産生をもたらし,顎関節症などにおける筋肉痛を引き起こすのではないか?"を検討し,以下の結果を得た.(1)マウスの大腿四頭筋と咬筋を電気刺激すると,刺激の強さに比例してHDC活性が増加する.(2)強制歩行(筋肉運動)により、大腿四頭筋のHDC活性は歩行時間に比例して増加する.(3)筋肉でのHDC誘導に肥満細胞(ヒスタミン貯蔵細胞)は関与しない.(4)抗ヒスタミン剤のクロルフェニラミン(CP,ヒスタミンH1受容体の遮断薬)と,これまで臨床的に使用されてきた消炎鎮痛薬(プロスタグランジン合成阻害薬)のフルルビプロフェン(FB)について,顎関節症患者への臨床効果を比較した.CPでは,肩こりや頭痛などの併発症状の改善も含め,約80%の患者に対し改善効果が認められ,一方,FBでは改善効果は約40%であり,副作用の胃障害のため,投与中止のケースも生じた.CPでは,副作用はよく知られている眠気だけであった.(5)IL-1をマウスに注射すると,種々の組織でヒスタミン合成酵素のHDCが誘導されるが,大腿四頭筋および咬筋においてもHDCが誘導される.IL-1による筋肉でのHDC誘導は,電気刺激や運動の場合よりも速やかに起こり,IL-1は1μg/kgの微量の用量でHDCを誘導する.(6)マクロファージや血管内皮細胞は免疫学的刺激により,IL-1を産生することが知られる.筆者らは筋肉疲労もIL-1の産生をもたらすのではないかと予測し,IL-1の抗体とmicro ELIZA systemを用いて,血清中のIL-1の測定を試みたが,検出出来なかった.そこで,筋肉組織について,組織化学的にIL-1の検出を試みた.その結果,筋肉組織にはIL-1のβ型が存在し,毛細血管にも分布するが大部分は筋肉細胞のミトコンドリアに分布し,非運動時にも存在することを発見した.IL-1βは不活性な前駆体として合成され,酵素のプロセシングにより活性型に交換され細胞外に遊離されると言われる.従って,この発見は上記の仮説を補強する。しかし,非運動時の筋肉ミトコンドリアでの存在は予想外の発見である.(7)従来より疲労物質と考えられてきた乳酸が筋肉のHDC活性を調節する可能性は少ないものと思われる.(8)運動による筋肉でのHDC誘導の程度は,性差や年齢差,トレーニングの有無,マウス系統の違いなどで異なる.高齢マウスでは高いHDCの活性が誘導され,また,トレーニングはHDC活性の誘導を抑制する.以上の結果より筋肉疲労について次のメカニズムが想定されるに至った,IL-1β前駆体(血管内皮細胞および筋肉ミトコンドリアに分布)→運動に伴うミトコンドリア活性化/プロセシング酵素の活性化→活性型IL-1βの遊離→IL-1βによる血管内皮細胞の刺激→血管内皮細胞におけるHDCの誘導→ヒスタミン産生と放出→細胞脈の拡張,血管透過性亢進,筋肉痛(警告反応)→血液・筋肉細胞間の物質交換亢進/休息→疲労回復.また,本研究において,抗ヒスタミン剤は顎関節症の治療に有効な手段となることが示唆され,さらに,筋肉ミトコンドリアでのIL-1βの発見は,IL-1βによる筋肉細胞の調節という新たな研究の展開をもたらした.
著者
深町 はるか
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

口臭の原因物質としてメチルメルカプタンや硫化水素といった揮発性硫化物が注目されている。これらの揮発性硫化物は口腔内細菌がメチオニンを基質としてメチルメルカプタンを、またシステインを基質として硫化水素を産生することが分かっている。特に、歯周病患者からは歯周ポケットの深さに比例して呼気中から高い濃度の揮発性硫化物が検出される。本研究では歯周病患者の歯肉縁下プラーク中の細菌であるPorphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum,およびTreponema denticolaに着目し、揮発性硫化物産生酵素をコードする遺伝子をクローニングし、これらの酵素学的な性質を解析した。現在までに、P.gingivalis, F.nucleatumおよびT.denticolaのメチオニン分解酵素、F. nucleatumのシステイン分解酵素を単離精製した。メチオニン分解酵素の性質としては、P.gingivalisとT.denticolaのメチオニン分解酵素のKm値を比較した結果、メチオニンに対する親和性はT.denticolaが極めて高いことが分かった。また、菌体から産生するメチルメルカプタン量をガスクロマトグラフィーで比較した結果、T.denticolaが口腔内に存在する程度の低濃度のメチオニンからメチルメルカプタンを高産生することが分かった。また、揮発性硫化物の発生を抑制するという報告のある塩化亜鉛について、P.gingivalis, F.nucleatumおよびT.denticolaの揮発性硫化物産生に対する抑制効果を解析した。まず、全菌体をから産生されるメチルメルカプタン量をガスクロマトグラフィーで測定した結果、産生されるメチルメルカプタン量は塩化亜鉛量に依存して抑制され、P.gingivalis, T.denticolaは10ppm, F.nucleatumは100ppmでメチルメルカプタン産生が完全に抑制された。つぎに、P.gingivalis, F.nucleatumおよびT.denticolaの組換えメチオニン分解酵素を用いて塩化亜鉛による酵素活性の抑制をみたところ、すべての酵素ともに、100ppmの塩化亜鉛でメチオニン分解酵素が完全に阻害されることから、塩化亜鉛によるメチオニン分解酵素の阻害がおこりメチルメルカプタンが産生されなくなることが明らかになった。
著者
本間 希樹 加藤 太一 植村 誠 野上 大作 秦 和弘 大島 誠人 笹田 真人 田崎 文得 秋山 和徳
出版者
国立天文台
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

巨大ブラックホールの直接撮像のため、スパースモデリングを用いた電波干渉計の超解像技法を開発した。それを既存の実データに応用して超解像が可能なことを実証し、M87の巨大ブラックホールの最も近いところでジェットの根本を分解することに成功した。また、巨大ブラックホールの直接撮像を目指す国際ミリ波VLBI網の観測を2017年4月に初めて実現した。そして、開発した手法によりブラックホール撮像可能な分解能が得られ、巨大ブラックホールの直接撮像が実現できるレベルに到達していることを示した。さらに、スパースモデリングの手法を天文学の様々なデータ解析にも応用し、この手法の有効性を幅広く示した。