著者
中村 有里 長谷田 真帆 西岡 大輔 雨宮 愛理 上野 恵子 近藤 尚己
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-118, (Released:2022-07-29)
参考文献数
40

目的 人とのつきあいのわずらわしさなど対人関係上のストレスから対人関係や社会的場面を避け,たとえ危機に陥っても他者に援助を求めない傾向が若者を中心に見られている。他者に援助を求める行動には,子ども期に両親に援助を求めた経験が関係することが報告されている。しかし,家族への援助の要請が難しい場合でも,近隣住民との関係の中で,他者に援助を要請するようになることも考えられる。そこで本研究では,子ども期の両親への援助要請の経験と成人期の対人関係の忌避傾向の関連における地域交流の経験による効果の修飾の有無を検討した。方法 名古屋市の18~39歳を対象にした調査より,1,274人のデータを分析した。修正ポアソン回帰分析を用いて,子どもの時に父親・母親に対して援助を要請した経験,小・中学校の時の地域行事に参加した経験,およびこれらの交互作用項による対人関係の忌避の割合の比を男女別に算出した。年齢・両親の最終学歴・子どもの時の母親の就労状況および主観的経済状況,もう片方の親への援助要請経験を調整した。また,援助を要請した経験,地域行事に参加した経験それぞれの有無別に対人関係の忌避の状態にある者の割合の予測値を算出し,効果の修飾の有無を評価した。結果 父親への援助要請経験と地域行事への参加経験の交互作用項を入れた多変量解析および算出された予測値からは,地域行事への参加経験による効果の修飾は男女とも観察されなかった。母親への援助要請経験に関しては,男性で,地域行事への参加経験による効果の修飾が観察され,母親への援助要請経験があり,かつ地域行事への参加経験があった場合は,なかった場合の予測値よりも低い傾向があった。女性では,地域行事への参加経験による効果の修飾は観察されなかった。結論 対人関係の忌避を抑制する上で,とくに男性では,子ども期の母親への援助要請経験があった場合に,地域行事への参加経験があることの重要性が示唆された。親からの適切な援助を得ることに加えて子どもの地域交流を促すことで,将来の社会生活で困難に陥るリスクを緩和できる可能性がある。
著者
安元(森) 加奈未
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.344-344, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
5

ハチミツは,私たちの食卓でも身近な食品であるが,植物毒が混入したハチミツによる中毒事故は世界中で多数報告されている.特に,野生のハチミツを食べる風習のあるトルコの黒海沿岸では,ツツジ科植物に含まれる有毒成分グラヤノトキシンの混入による中毒が頻出している.また,ニュージーランドでも19世紀後半から有毒成分の混入による中毒事例が多数報告されており,その原因は現地で“tutu”と呼ばれるドクウツギ科の低木Coriaria arboreaに含まれる成分で,精神撹乱・記憶喪失などの症状を引き起こす急性神経毒のツチン(1)であると考えられてきた.ハチミツへのツチンの混入は,tutu の樹液を吸う昆虫が分泌する甘露をミツバチが集めることによるとされるが,一方でツチンのみを対象として安全性を評価する方法の妥当性や未解明成分の有無などの疑問も長年残されていた.本稿ではニュージーランドのツチン汚染ハチミツに含まれる更なる成分が,Larsenらによって明らかにされたので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Sutherland M. D. et al., J. Sci. Technol., Sect. A, 29A, 129-133 (1947).2) McNaughton D. E. et al., HortResearch Client Report, No. 24884 (2008). http://maxa.maf.govt.nz/sff/about-projects/search/L07-041/technical-report.pdf3) Larsen L. et al., J. Nat. Prod., 78, 1363-1369 (2015).4) Fields B. A. et al., Food Chem. Toxicol., 72, 234-241 (2014).5) Wouters F. C. et al., Angew. Chem. Int. Ed.Engl., 53, 11320-11324 (2014).
著者
赤松 加寿江
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.68, no.567, pp.139-144, 2003-05-30 (Released:2017-02-09)

While 'theater' is defined as a building exclusively used for performing arts, 'theatrical space' is defined as a place for various purposes, such as spectacle and theater activity. Compiling previous studies on the theatrical spaces in the Renaissance reveals that they have been discussed from various points of views, although architectural point of view is hardly found after 1980s. I clarify that the theatrical spaces in the Renaissance have unique characteristics which is different from theater buildings on the social roles and appearance. Thus, it is necessary for the further study to add the architectural point of view and the theatrical space may have to be reconsidered.based on the relationship among architect, confraternity and stage setting.
著者
椙山 正孝
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
金属表面技術 (ISSN:00260614)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.323-328, 1959-09-20 (Released:2009-10-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
横尾 謙一郎
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.34-37, 2020-06-01 (Released:2020-07-02)
参考文献数
9
著者
漆畑 文哉 吉田 淳 平野 俊英
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.174-186, 2022 (Released:2022-07-08)
参考文献数
29

To clarify the learning effect of classes using granular models, a model of concrete objects in which learners can represent and manipulate thermal phenomena dynamically, and an animation that shows the representational operations were created. Using these, we conducted a class on how water heats up (convection), analyzed the learners’ expressive manipulations to explain thermal phenomena, and investigated whether the convection concept was formed. The results indicated that some learners changed their convection concept into a scientific interpretation after the explanatory activity using the model and animation. Therefore, the results suggest that learning to manipulate scientific representations using animation with models is effective in promoting the elaboration of convection concepts.
著者
椙山 泰生
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.81-94, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
68

知識のグローバルな分散という状況下では,製品開発において,国境を隔て,地理的にも離れた場所で発生する知識を移転,展開する方法の開拓が重要な焦点となる.本稿では,既存研究を簡単にレビューした上で,知識の粘着性概念をこのグローバル化する製品開発を分析する視角として提唱する.その上で,今後の研究課題として,粘着性のメカニズムに関係する四つの方向性が示される.
著者
杉山 大樹 圓尾 拓也 信田 卓男 石川 剛司 金久保 佳代 斑目 広郎 茅沼 秀樹 菅沼 常徳
出版者
一般社団法人日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.8-13, 2010 (Released:2010-02-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

肺指症候群と考えられた猫5例の臨床所見について検討を行った。肺原発巣に伴う呼吸器徴候は5例中1例のみで見られ、ほかの4例では呼吸器症状は全くみられなかった。播種転移部位は、主に、指、体表部筋肉、皮膚であった。5例の中央生存期間は60日(12~125)であり、呼吸器徴候を伴い死亡したものは1例のみであった。これらの臨床所見から、本病態における治療として、肺葉切除は意義が低いことが示唆された。また、転移病変は全身に存在することから、断指をはじめとする外科的治療は残存する指や肢の負重増加により動物の生活の質をさらに低下させる可能性が示唆された。
著者
依田 柊 野元 彬久 高橋 好斗 尾方 壮行 田辺 新一
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和元年度大会(札幌)学術講演論文集 第6巻 温熱環境評価 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.85-88, 2019 (Released:2020-10-31)

人体体温調節モデルJOS-2を用い、暑熱環境における熱中症リスクを評価した。はじめに、夏季屋外にて被験者実験を行い、実験で得られた生理量データをもとにJOS-2の予測精度を検証した。次に、都市における代表的な暑熱環境適応策をいくつか取り上げ、適応策による熱中症リスクの低減効果を、JOS-2の生理量予測値を用いて、代謝量別に検討した。
著者
川浦 一晃 本田 宗吉 副田 二三夫 白﨑 哲哉 高濱 和夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.130, no.5, pp.699-705, 2010-05-01 (Released:2010-05-01)
参考文献数
46
被引用文献数
18 18

We have previously found that antitussive drugs inhibit G protein-coupled inwardly rectifying potassium (GIRK) channel currents in brain neurons. Potassium efflux through GIRK channels causes membrane hyperpolarization, and thus plays an important role in the inhibitory regulation of neuronal excitability. Because GIRK channels are coupled to various G protein-coupled receptors including monoamine receptors, antitussives are possible to affect the levels of various neurotransmitters in the brain. Many currently available antidepressants have been developed based on the monoamine theory for the etiology of depression. We hypothesized that new drugs such as tipepidine may lead to changes in the balance of monoamine levels in the brain resulting in improvement in symptoms of depression. Therefore, we investigated whether or not the drugs have antidepressant activity in the animal models. Male Wistar rats (200-240 g) were used. Tipepidine, cloperastine and caramiphen significantly reduced the immobility in forced swimming test (FST) using normal rats. All drugs had little effect on loco-motor activity. The effects on the forced swimming were inhibited by treatment with AMPT, but not PCPA. Tipepidine also inhibited hyperactivity in olfactory bulbectomized rats. Interestingly, tipepidine also significantly reduced the immobility in FST using ACTH-treated rats which is a model of depression resistant to treatment with antidepressants. Given these results together with cumulated findings, it is suggested that tipepidine may have a novel antidepressant-like action, and that the effect may be caused at least partly through the action on the catecholaminergic system in the brain.
著者
本川 弘一
出版者
Tohoku University Medical Press
雑誌
The Tohoku Journal of Experimental Medicine (ISSN:00408727)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1-2, pp.119-129, 1949-10-31 (Released:2008-11-28)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

Electrical energy per unit time of brain waves was measured on elec-troencephalograms of man and animal, and the following law was estab-lished with regard to the distribution of energy in the electroencephalo-gram, namely: ƒ(ε)dε=1/-εe-ε/-εdε, where ƒ(ε)dε represents the probability that energy ε lies between ε and ε+dε, and -ε the mean energy. To deduce this law theoretically from plausible assumptions, a statistical theory was advanced. An important conclusion from this theory is that the utilizable energy of the brain must be kept constant at its maximum, and this inference seems to be consistent with experimental evidence on brain metabolism: It can be explained also from this theory that the mean energy of brain waves increases under unfavorable conditions such as oxygen deficiency, narcosis etc.
著者
松峯 笑子 舟生 日出男 鈴木 栄幸 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.103-108, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

我々の身の回りは科学に関連する情報で溢れているが,全ての科学情報が正しいとは限らない.より良い意思決定のためには,科学ニュースを正確に読み取る科学メディアリテラシーが必要であるが,未だ注目されていない.それを受けて筆者らは,「科学メディアリテラシーを俯瞰するチェックリスト」を活用した教育実践をデザインし,少人数を対象として試験的に実施した.そこで挙がった改善点から,今回より多くの学生を対象として,チェックリストが科学ニュースの評価に与える影響を確かめた.実践の結果,チェックリストが,科学ニュースを評価する際の批判的視点を持つ指標となり,科学ニュースの評価に影響を与えることが分かった.また,科学やメディアの認識が低く,事例を肯定的に捉える学生がチェックリストを使用したタイミングで批判的視点を持っていたことから,科学ニュースを正確に読み取るために必要な認識の補助的な役割を果たしていると考えられる.
著者
臼井 智子 増田 佐和子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-22, 2012 (Released:2012-12-28)
参考文献数
8

RSV 感染症により入院治療を行った24例のうち,急性中耳炎を合併した18児を対象とし,年齢,重症度,臨床症状,鼓膜所見,検出菌や治療,経過を検討した。RSV 感染に合併した急性中耳炎児の初診時月齢は,0 ヵ月から 3 歳 5 ヵ月,平均12.3ヵ月,中央値11.5ヵ月であった。2 歳以上に比べ 2 歳未満で有意に中耳炎の合併率が高く,軽症は 7 例,中等症は 3 例,重症は 8 例であった。抗菌薬投与や鼓膜切開術を行わずに急性中耳炎が治癒したものは 2 例のみであり,軽症,中等症の 4 例で翌日に増悪を認め,そのうち 1 例は治癒後にも再燃を認めた。上咽頭からは12例,中耳貯留液からは 1 例で細菌が検出されており,重症度や経過との関連は認められなかった。細気管支炎により入院での全身管理を要する RSV 感染は低年齢児に多い。中耳炎を認めた場合,翌日に悪化することもあるため,軽症であっても連日の注意深い観察と小児科医との連携が必要であると考えられた。
著者
黒澤 忠弘
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.509-513, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)
参考文献数
12

放射線は,その特性を生かしてさまざまな分野で活用されています.特に放射線治療や診断といった医療分野,また非破壊検査や滅菌といった工業分野で幅広く利用されています.これら放射線の利用においては,放射線の発生源のみならず,放射線の計測技術も重要な要素となっています.本稿では,医療,工業分野における放射線利用の現状や将来の展望,またそれぞれに必要となってくる放射線計測について紹介したいと思います.
著者
谷 修祐 小嶋 光明 小野 孝二 伴 信彦 甲斐 倫明
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第54回大会
巻号頁・発行日
pp.249, 2011 (Released:2011-12-20)

放射線によって引き起こされるC3H/HeNマウスの急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia: AML)は、低線量でのヒトの白血病リスクを考える上で重要な実験モデルである。AMLを起こしたマウスの造血幹細胞では2番染色体の欠損およびその染色体に存在するSfpi1遺伝子の突然変異が確認されており、これらは骨髄の分化に重要な役割を持つPU.1の転写を抑制してAMLの発症に至ることが考えられている。しかし、AMLにおけるSfpi1遺伝子の突然変異について、ほとんどは点突然変異に起因し、その主な変異であるC:GからT:Aへのトランジションは自然突然変異によって生じるため、放射線によって発症する白血病のリスクを考えるためには2番染色体の欠損以外に放射線が自然突然変異率への影響を考慮する必要がある。自然突然変異は細胞が分裂する際に低確率で生じるものであるため、造血幹細胞を頂点とした各造血細胞の動態、および放射線の影響によってその動態がどのように変化するかを考慮することが重要である。本研究ではC3H/HeNマウスを用いた放射線照射実験より得られた造血幹細胞そして前駆細胞の分化、分裂のパラメータを元に、造血組織の各種動態を数理モデルで表し、各細胞数の時間的変化、およびその分裂回数をシミュレーションによる計算で求めた。また、Sfpi1遺伝子の自然突然変異確率に着目し、シミュレーションで得られた結果をもとに放射線によるマウスAML発症リスクを計算し、実験データと比較したので報告する。
著者
吉田 稔 久保 涼子 三迫 智佳子 鈴木 志乃舞 工藤 綾香 蜂谷 紀之 安武 章
出版者
一般社団法人 日本微量元素学会
雑誌
Biomedical Research on Trace Elements (ISSN:0916717X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.170-175, 2013 (Released:2013-10-29)
参考文献数
13

This survey aimed to determine the levels of mercury in the scalp hair of residents of Hachinohe City in relation to their fish/seafood consumption to assess the risk of methylmercury exposure among the population. A total of 363 individuals (73 males and 290 females) residing in Hachinohe City (Aomori, Japan) provided scalp hair samples and completed a questionnaire. The geometric mean levels of mercury in the scalp hair were 2.52 and 1.91 μg/g in males and females, respectively, and 1.36 μg/g in females aged 15-49 years (n=80). The percentage of females of this generation with a hair mercury level above 2.2 μg/g (corresponding to the WHO's provisional tolerable weekly intake for methylmercury) was 21%, which was lower than the mean of 25% for residents of 10 regions across Japan. The Hachinohe residents consumed a mean of 108 g/day of fish/seafood (which was higher than the mean of 80.2 g/day for the overall Japanese population), consisting mainly of salmon, squid, mackerel, saury, and Atka mackerel. These results demonstrated that the hair mercury level of the residents of Hachinohe City was not so high as the higher consumption of fish/seafood compared with the national average, indicating that the risk of methylmercury exposure through increased fish/seafood consumption among Hachinohe City residents is not particularly high compared with the national level.
著者
吉田 航太
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.385-403, 2018 (Released:2019-05-12)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本論文は、インドネシア東ジャワ州スラバヤ市で日本人技術者が開発した廃棄物堆肥化技術の事例を通じて、インフラ/バウンダリーオブジェクトというテクノロジーの二つのモードの差異を明らかにするものである。スーザン・L・スターのインフラストラクチャーの議論はバウンダリーオブジェクト論と連続性があり、前者は後者の発展型とされる。しかし、両者の間には解釈の対象としての象徴と、実践の対象としての道具という断絶が存在しており、インドネシアでの開発事業で 新たに誕生した生ゴミ堆肥化技術の事例の分析からこのことを明らかにする。スハルト政権崩壊後に発生した埋立処分場の反対運動をきっかけに、スラバヤ市は深刻なゴミ問題に悩まされた。これに取り組む開発プロジェクトが開始され、日本人技術者が開発したコンポスト手法がひとつのテクノロジーとして結実するに至った。このテクノロジーはスムーズに開発に成功したが、その後のインフラ化で困難に直面している。この事例から、スター的な協働のネットワークが長期の時間性に耐えなければならないという問題を抱えていること、テクノロジーが確固とした象徴的価値を獲得しなければならないことを議論する。