著者
前田 健一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

防波堤等の防災の構造物は海底や大きな石を積み上げたマウンドなどの地盤で支えられていることから,津波の押し波や引き波が構造物に作用する圧力だけでなく,地盤に波が浸透することにも着目した.その結果,地盤がゆるんで弱くなる液状化が被害を大きくするとともに,いったん構造物を超えた波が再び海面に落ち込む越流によっても,地盤の表面に液状化が発生し,大きく削る洗掘が発生することを明らかにした.さらに,津波襲来前の地震動による液状化の影響を調べ,巨大地震では以上のような液状化の負の連鎖が被害を大きくすることを示すとともに,被害を減らすための対策方法について,地盤工学の立場から提案している.
著者
藤井 さやか
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、地区計画の運用実態を把握し、その実効性と課題を明らかにすることを目的として、以下の調査・分析を行った。1.昨年度実施した地区計画を策定している全国自治体へのアンケート調査の追加分析を行い、今後の地区計画の活用意向に関して、地区計画を積極的に活用していきたい自治体が6割以上を占めていること、活用の対象としては住宅地が主体となることが明らかになった。2.地区計画策定のきっかけとしては、行政の主導に替わって住民からの要望が増えつつある。しかしながら、住民のまちづくりの発意を都市計画決定ができるだけのレベルに高めるには、法令で用意されている都市計画提案制度だけでは地区計画策定の支援制度としては不十分であることが分かった。合意形成の促進や合意確認のための諸手続き(登記簿の収集や確認)、都市計画決定に必要な図書作成等の事務手続き補助のための専門家派遣など、地区計画策定までの様々な段階に応じたきめ細かな支援が必要であることが明らかになった。3.住民発意のまちづくりでは、地域がもとめるまちづくりの質・レベルが、法定都市計画である地区計画で索敵できる内容に留まらないことがしばしば生じている。その場合、地区計画と関連諸制度(まちづくり協定や建築協定など)の連携が重要な鍵となる。地区計画の策定及び運用実績の多い横浜市では、地元との連携によって、より質の高い開発を規制誘導している地区もあり、このような制度連携が有効であるとの示唆を得た。
著者
松田 真希子 林 良子 渡部 倫子 金田 純平
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では日本語教育のためのデータマイニング技術開発を目的に、[1]既存データマイニング技術の日本語教育研究への応用可能性の検討、[2]既存ツールのカスタマイズ、[3]ツール開発、[4]マニュアル開発を行った。その結果、[1]ではKh-Coder,SVtoolsなどを用いた日本語教育研究への応用研究を行い、有効性を示した。[2]では日本語学習者誤用換言対データを約3000対開発した。[3]では日本語学習者アクセントの自動評定技術開発を行った。[4]ではマニュアルを一部Web公開した。学術的成果としては、6件の学術論文の発表、11件の学会発表等を行った。
著者
大津 忠彦 古瀬 清秀 山内 和也 岡野 智彦 前杢 英明 千代延 恵正 千代延 惠正
出版者
(財)中近東文化センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1999〜2000年度:イランにおける外国調査隊の考古学調査活動に関する対外情報の不明朗さから、当初計画したイラン西北部ギーラーン州との共同調査は、イラン文化遺産庁(Iranian Cultural Heritage Organization,以下ICHO)より不可とされた(1999年)。2000年度末にやっと、共同調査実施のためにはその前提として、ICHOと中近東文化センターとの間にイラン遺跡調査に関する「協定書(合意書)」の締結がなされなければならない旨が判明。この間、遺跡への調査目的での立ち入りは禁止となったので、周辺域概観踏査と博物館収蔵品調査に重点を置いた結果、デイラマーン地域に見られるイラン青銅器〜鉄器時代の指標的土器が東方はるかのゴルガーンやダームガーンにおいても認められること、ギーラーン州域ではその存在が疑問視されてきた遺丘がキャルーラズ渓谷内に一基(ジャラリイェ・テペ)あること、ターレシュ地域の石灰岩地帯には200余基の洞窟が存在し、石器、人骨資料採集伝聞があること等々を確認。2001年度:6月の「協定書(合意書)」締結をうけて発足した「日本・イラン合同調査団」は、セフィードルード川西岸域における踏査によって26遺跡をデータ化。それらの帰属年代はイラン鉄器時代からイスラーム時代とみられるが、採集資料はすべて表採品であるので時期の細分は比較資料皆無の現状では困難。この意味でも先年確認したジャラリイェ・テペの発掘が有用と判断できる。地勢学的観察によれば、遺跡は概して水の得易い、地滑りによって形成された山の緩斜面や侵食平坦面の縁に分布し、遺跡数の大半を占める古代およびイスラーム期の墓域は、基本的に同じ場所に営まれたらしい。これら墓域に近接の平坦面あるいは緩斜面が、当該地において未確認の古代における生活空間と想定できる。
著者
田村 淳二 高橋 理音
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

独立系統と離島を対象として風力発電機と水素電解槽から成るシステムを検討した。前者では風力機を並列接続してその出力を電解槽に供給するため、直流出力並列回路に対するDC-DCコンバータ制御法を導出し、次に複数の風力機から成る実験システムを構築し、発電機がそれぞれMPPT制御されかつ電解槽に電力を供給できることを確認した。後者ではディーゼル発電機と負荷から成る小規模モデルを構成し、風力機出力を電解槽に供給し、発生水素を燃料電池に入力して電力と熱を発生し、それを負荷に供給するシステムを設計した。このシステムを小規模系統に導入することにより周波数変動が減少し、CO2排出量も低減できることを確認した。
著者
磯川 幸直
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)本研究の出発点は,3次元ユークリッド空間において,その座標軸のどれかに平行に,高さ無限大の角柱ロッドを逐次ランダム充填する問題である.この問題に対して,本研究以前に,充填される領域の大きさが無限大になる極限では,充填密度が3/4に収束し(平均収束の意味で),かつロッドの配置が等方的になることの解析的な証明に成功していた.本研究でははじめに,その結果を高次元(4次元以上)の空間に拡張することを試みた.その結果,未だ部分的な解決ではあるが,次の事柄を発見した:(i)高次元空間のロッドパッキングにおいては,ロッドの高さの次元が空間の次元により決まるある値大きい場合(この場合のロッドをfatと呼んだ)と,ロッドの高さの次元が小さい場合(この場合のロッドをslimと呼んだ)では,パッキングの様態が全く異なること;(ii)4次元空間におけるfatロッドのパッキングではパッキング密度は1または3/4となること,(iii)一方,slimロッドのパッキングでは任意の周期に対して,fatロッドの周期的パッキングでしかもパッキング密度が1となるもの構成できること,を示した.この内容はISMシンポジウム"Packing and Random Packing"(統計数理研究所2006年3月1日〜3日)において発表した.(2)球面上での球帽のパッキングの問題と関連して,球面上のネットワークで分割されたセル(球面多角形)の面積が互いに等しい場合に,ネットワークの周長を最小にする問題を研究した.この問題は,セルの個数nが4,6,12の場合に古くTothが解を与えて以来,研究は進展していない.本研究ではn=5およびn=7の場合に解決を与えた.(3)球面の多角形分割の問題との関連で,正多面体でない凸多面体サイコロを投げたときに各面が着地する確率を求める研究を行った.サイコロをある仕方で投げるとき,各面が着地する確率が,凸多面体をその重心を中心とする球面に射影したときにできる球面多角形の面積に比例することを発見した。この研究では球面ラゲール分割が重要な役割を果たした.(4)有名なペンローズの3角形のように,局所的には3次元立体の投影像であるが,大域的には矛盾を含んでいるような2次元図形の研究を行った.具体的には,アルキメデスのタイル貼りの各辺を4角柱ロッドで置き換えた不可能図形を構成した.
著者
今林 修 堀 正広 田畑 智司 高口 圭轉 島 美由紀 舩田 佐央子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、チャールズ・ディケンズの言語と文体の本質的な特徴を解明ための共同研究プロジェクトで、18世紀から19世紀にいたる主要な小説家の全作品を網羅する大規模な電子コーパスを構築し、それとディケンズの全作品、手紙、演説からなる電子コーパスから最新のコンピュータ技術を駆使したデータ分析とフィロロジーに立脚した伝統的で精緻なテクストの読みとを融合させた研究である。
著者
松本 克美
出版者
立命館大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

児童期の性的虐待被害者の支援と時効法改革に関して平成27年度に行った海外調査(ドイツ、韓国)をふまえて、日本との比較における意義、日本法への示唆、立法改革案を整理して、韓国圓光大学ロースクールでのシンポジウムでの報告(平成27年5月)、日本ドイツ学会での報告(同年6月)、東アジア法心理学会での報告(10月)、日本法と心理学会での報告(10月)、日本ジェンダー法学会での報告(12月)にて口頭報告を行った。また平成28年2月にはドイツ、3月には韓国、アメリカで調査を行い、児童期の性的虐待被害の支援システム、NPO法人の関わり、時効法改革に関する刑事法研究者、裁判官、弁護士などの意見などを聞くことができた。ドイツでは民事の消滅時効、刑事の公訴時効ともに、児童期に被った性的被害に関しては、被害者が50歳程度になるまでは、時効が完成しない法改革が実現しており、権利行使や刑事告訴が困難なこの被害の特質への配慮がなされている。また、韓国では、児童期の性的虐待被害については公訴時効が廃止される改革がなされている。アメリカでも州によっては公訴時効を廃止するなどの特別な配慮がなされている。日本では、平成27年3月31日に民法の一部改正案が提出され、そこでは、時効法改革も提案されているが、児童期の性的虐待被害に関する特別な配慮はなされておらず、問題である。こうした問題点を比較法的に明らかにし、日本でも時効法改革に特別な配慮を行うべきことを,後掲の様々な学会報告や論文等の形で公表した。
著者
西村 幸満 酒井 正 野口 晴子 泉田 信行
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「団塊の世代」という日本のベビー・ブーマー(以下、BB)は、人口規模の大きさから戦後一貫して文化的・思想的異質性を強調されてきた。欧米(主に米)が消費の担い手としたのと対照的である。世代の特殊性・異質性を過度な強調は、引退過程にも見られた。本研究は、BB世代の引退過程に注目し、就業分布、健康・介護要因が前後の世代と比較して異なるかを検証した。結果から判断すると、BB世代が特殊な傾向をもつとはいえないが、人口規模の大きさによる社会的な対応は避けられない。法改正による就業延長が規模の効果を吸収したようにみえるが、そもそも引退パターンも前世代と変わらないため、法改正の効果と認めることはできなかった。
著者
伊藤 徹 秋富 克哉 荻野 雄 笠原 一人 昆野 伸幸 西川 貴子 西村 将洋 松隈 洋 長妻 三佐雄 若林 雅哉
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1890年代から1950年代の日本において、知識人や芸術家たちを支えた≪語り≫を主題とする本研究は、哲学、政治学、経済学、文学、建築、美術工芸、演劇などの諸局面で、それが、どのような形で生産され、また消費されていったのか、その具体相を明らかにした。≪語り≫とは、近代化によって従来の生の地盤を掘り崩された後に生じた空隙を埋めるべく創出された、共同的な基礎的虚構群を意味する。本研究は、自己産出的な幻想によって自己を支える構造を、当該の時代の精神史の内に見出した。
著者
西村 秀樹 清原 泰治 岡田 守方
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

昭和初期においては、力石には労働様式と関連した「通過儀礼」的な意味はすでにうすれてしまっていたようである。概しては、祭りのとき、相撲大会のとき、お宮の掃除のときなど若い衆が集まった際に、「力比べ」「力試し」「力自慢」の「遊び」としておこなわれていたと言える。すなわち、「伝統的身体」は、かつてのように農耕という労働様式と有機的に関連するものではなくなっており、「遊び」「レクリェーション」のなかでその威力を発揮するものになってしまっていた。こうした変容は、明治政府のスローガン「富国強兵」「殖産興業」を推進していくために講じた「身体の近代化」政策-学校体育の普及・運動会の普及-によると同時に、それと並行して生じた農業技術の向上、科学肥料の供給、生産の集約化等による「伝統的身体」の変質あるいは意義喪失といった社会過程にも負うている。こうして、昭和初期には、身体は近代化されていた。一方で力石を担いで遊んでいたが、他方では町や部落、学校の運動会が盛んで、「躍動」「すばやいロコモーション」「方向転換」「整列行進」になじんでいたのである。戦後は、力石はこの「レクリェーション」からも姿を消し、現在では香北町や香我美町で年一回のコンテストとして残存するにすぎない。これは、村落構造の崩壊(例えば、力石の担い手である若い衆が減り、若者宿が消失していったこと)や他のレクリェーション(野球・相撲・芝居・浄瑠璃など)の普及といった社会過程を背景にしていると考えられる。今回の聞き取り調査は、今や風化してしまいそうな力石の実態を記録にとどめることができたというところに、最大の成果があったと思っている。
著者
山本 建郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

アリスティデス・クィンテリアヌスの『音楽論』全三巻を翻訳し、詳しい注釈を付した。それによって、これまで不明として不問に伏せられていたいくつかの点に決着をつけ、古代ギリシアの音階理論のほぼ全容を明らかにした。
著者
大嶽 秀夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

行政改革は、「小さい政府」、「民間活力の応用」、「規制緩和」などをスロ-ガンとして行われたものである。ところが、その実施過程ならびに結果において、コ-ポラティスト的性格が強く現れるというパラドックスが見られた。例えば、電電公社の民営化を通じて、自由化や規制緩和が促進されたことは言うまでもないが、他方で、民営化の過程ならびにその結果において、コ-ポラティスト的特徴は一層強まった。第一に、全電通は、電電三法の国会審議に対し、総力を挙げて圧力行使を行ったが、その過程で従来からの社会党を介した影響力のチャネルばかりでなく、自民党との直接の接触のル-トを開拓、利用した。全電通が、単なる労働条件や雇用の問題を超えて、産業政策についての自らの主張を確立し、それを代表させるチャネルを確立していったという意味で、(メゾ)コ-ポラティズムへの一歩であるといってよい。また、自民党の側も、それまでの労働組合(特に総評系労組)の政治参加のアクセスを拒否する態度から、政治参加を容認、奨励するあり方へ転換した。転換した。この意味でも、日本政治が、行政改革を通じてコ-ポラティズムに一層近付いたと解することができる。他方、経営との関係でも、全電通は、民営化に関して経営者との利害を一致させ、むしろ積極的に民営化を推進したと言って過言ではない。全電通の主張は、経営側とほとんど同じものであり、いわば経営側の尖兵として政治活動を行ったのである。この(ミクロ)レベルでも、自由主義的改革は、コ-ポラティズム的労使協調を一層促進させたのである。また、電電公社の民営化は、一人の解雇者も出さずに実現された。実は、カッツェンシュテインの分析したスイスやオ-ストリアの例が示すように、(国際的)自由化は、国内のコ-ポラティズムを生み出す基礎たりうるのであり、この例と比較すれば、日本が特に特異な構造を示しているというわけではない。「国益」ないしは「企業の利益」という観点が貫徹すれば、国際市場、国内市場における競争のために労使が協力するのは当然のことであるからである。この観点に立てば、ミクロ・レベルのコ-ポラティズムが自由主義的改革によって一層進行したことは何等驚くべきことではない。
著者
大嶽 秀夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究は, 戦後日本と西ドイツの防衛政策の展開を, アメリカ政府の軍事政策との関連を一つの焦点におきながら研究する計画の一環である. 二年度にわたる今回の研究では, 両国の再軍備とその展開過程を実証的に分析し, 相互に比較することが中心となった. とくに, 日本の再軍備に関しては, インタビューや資料発掘を通じて, これまで明きらかにされていなかった再軍備政策の様々な側面が解明できたと考える. 報告諸第一部では, その成果として, 一九五〇年七月のいわゆるマッカーサー指令の背景はなんであったか, それが日本政府にいかに受け取られたか, また, マッカーサーや吉田の長期的再軍備構想はいかなるものであったか, その構想が警察予備隊から保安庁へ改組にどう実現したか, などを明らかにした. さらに, 第二部では, これまで研究者に利用されたことのない山本善雄文書を主として使いながら, 旧海軍グループが海上自衛隊の再建にいかなる役割を演じたかを詳細に検討した. 続いて第三部では, 保守党政治家による積極的再軍備論の主張の登場の背景とその展開を分析した. ここでは, とくに芦田, 石橋, 鳩山などいわゆる「リベラリスト」がなぜ, 再軍備論を通じて日本政治の最右翼に位置することになったかを詳しく検討した. ついで, 野党, 即ち日本社会党とドツ社会民主党の再軍備政策の比較を研究成果としてとりまとめた. 即ち, 第四部では, 一九五〇年代におけるドイツ社会民主党の防衛, 経済政策上の「転換」を日本社会党との比較を通じて検討した. さらに, 第五部では, 日本の右派社会主義者の防衛論を検討し, 西ドイツと同様の「転換」に失敗したのはなぜかを分析した. 以上のことから明らかなように, 本研究は, もう一つの特色として, 再軍備を単なる防衛政策の問題としてではなく, 広い政治対立の一側面としてとらえ, その対立のイデオロギー的, 政治文化的背景を検討したところに特徴があろう.
著者
久留島 典子 林 譲 本郷 恵子 柴山 守 有川 正俊 山口 英男 遠藤 基郎 木村 直樹 山家 浩樹 馬場 基 山田 太造 近藤 成一 小宮 木代良 古瀬 蔵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

前年度に引き続き東大史料編纂所歴史情報システム(以下、SHIPSと略記)が擁するDB群から、各DBに格納された人物情報を抽出し、人物情報レポジトリへとデータ移行を推進した。レポジトリへ移行を可能とするDB数もさらに2つ増加し、計19種へと拡大することで、総登録データ数は約42万件に達した。前近代における人物情報を総覧する環境が整いつつあり、これを軸として、地理情報・史料典拠情報・史料目録情報といった情報との連接を視野に入れたところである。SHIPS-DBから人物情報レポジトリを参照・応答するAPIについては、前年度に構築したシステムを基盤として、より詳細な応答を実現するモジュールを「新花押データベース」内に実装した。花押を記した人物を比定するために、随意にレポジトリ参照が可能となったことは、より正確な情報蓄積を進めるうえで極めて有効と言ってよい。また人物レポジトリを直接検索するためのインターフェイス(「人名典拠サービスモジュール」)が安定的に運用されるに至り、多様な検索に応答しうる環境が整備されつつある。蓄積データのシームレスな運用という観点からは、前年度に引き続き、人物情報レポジトリ総体のRDFストア化を推進し、検索結果をRDF形式で出力するためのAPIの安定運用を実践することで、オープンデータ環境への移行を目指した。地理情報レポジトリについては、外部参照用APIの運用を開始し、国立歴史民俗博物館の「荘園データベース」との連携を実現した。
著者
服部 哲 柴田 邦臣 庄司 昌彦 松本 早野香 吉田 仁美
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、発話や聴覚に障害があったり認知に障害があったりするため、コミュニケーションや活動の見通しを立てることが困難であったりする人を支援するためのタブレット・アプリを開発した。本アプリの基本機能は、音声認識システムによって単語を認識し、それに対応する写真やイラストを順番に並べて表示することであり、これによってコミュニケーションや予定の見通しを支援する。本研究では仙台市のNPOと協力し、本アプリの評価実験を行った。その結果、本アプリの有効性が示唆された。これらの成果は、これまでデジタル・メディアから縁遠いと思われてきた高齢者・障害者のコミュニケーションの質を高めうると思われる。
著者
野口 武悟 植村 八潮 岡山 将也 高岡 健吾 中和 正彦 成松 一郎 深見 拓史 松井 進
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、アクセシブルな電子書籍の製作と提供をめぐる国内外の動向を把握したうえで、日本国内においてアクセシブルな電子書籍を安定的に製作・提供し得るプロセスを検討し、アクセシブルな電子書籍の普及に向けての提案を行うことを目的とした。具体的には、(1)アクセシブルな電子書籍の製作・提供をめぐる国内外の動向を調査し、参考となる情報・事例の収集、(2)出版・図書館・利用者の三者で共同し、アクセシブルな電子書籍を安定的に製作・提供し得るプロセスの検討、(3)出版・図書館・利用者の三者で、アクセシブルな電子書籍の普及に向けてのあり方の考察・提案を行った。
著者
三浦 麻子 森尾 博昭 折田 明子 田代 光輝
出版者
関西学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

オンラインコミュニティでの社会知醸成過程を解明するため,1990年代に多数の利用者を集めた著名なコミュニティ(ニフティサーブ)のアーカイバルデータを分析した.特に心理学フォーラムを分析対象とし,6つの会議室のログをほぼ完全に発掘することに成功した.質量両側面からの分析の結果,利用者の質的差異がコミュニティで醸成される社会知の質に影響していた可能性が示唆された.また,書き込みと応答のコミュニケーションをネットワーク分析によって視覚化したところ,ネットワーク指標に応じてコミュニケーション構造が質的に異なることが示された.フォーラム参加者の名乗りについても探索的に分析した.
著者
堀内 正昭
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、2004年に発見された仮議事堂(初代国会議事堂:竣工1890年)の図面をきっかけに、関連文献の収集と分析を通じて仮議事堂を建築史的に復元考察しようとするものであり、研究期間中に日本建築学会を中心に計6件の論文を発表した。まず、今回発見された図面は仮議事堂の実施原図であること、工事中に設計変更がなされて竣工したことを明らかにした。また、当初の煉瓦造から木造に変更かつ縮小されたが、原案を設計したパウル・ケーラーのプランニングが継承されていたことを明らかにした。次に、わずかに遺された写真や明治期の錦絵をはじめとする絵画資料ならびに類例建築から、仮議事堂の小屋組は、当時わが国で「ドイツ小屋」と呼ばれていた技法を用いて、それをタイ・バーで補強した混合構造で造られていたと考えられること、その構法は、同時代のドイツに建てられた祝典会場のそれに酷似していたこと、それは第1回帝国議会開催に間に合わせるという工期の問題があったからに他ならず、双方とも仮設建築であったことに起因することを明らかにした。さらに、仮議事堂の屋根葺き材についてはこれまでスレート葺きと推察されてきたが、本研究では、当時のドイツでこの種の仮設建築にアスファルト・ルーフィングを用いた例が複数あり、わが国では時期的にルーフィング仕様が可能であったことから、工事の最終段階で変更がなされた可能性の高いことを考察した。こうした研究成果を通じて、期間中にとくに貴族院議場とその周辺の50分の1の模型を製作した。唯一遺された仮議事堂の外観写真を参考に、この模型を使ってとくに複雑な起伏を見せる議場周りの屋根伏せを復元的に考察するとともに、建物全体の屋根形状を明らかにした。
著者
福場 良之 辻 敏夫 林 直亨 三浦 朗 山岡 雅子
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

昼食後の眠気による作業効率低下対策として知られている短時間仮眠が,その後の運動パフォーマンスやそれを支える基礎的な生理機能に与える効果について,包括的かつ実践的な検討を行った。結果として,1)昼食後に睡眠ステージ2までの浅い短時間仮眠(napと呼ばれ,10-20分程度)をとると,覚醒したまま安静で過ごすよりも,スポーツ競技時に必要と想定される脳の情報処理能力や視力に正の効果がありそうであること,2)昼食後に睡眠ステージ4まで含む1時間程度のより深い仮眠をとると,安静やnapをとる過ごし方よりも,無酸素性最大発揮パワーに正の効果がありそうであること,の2点が示唆された。