著者
田代 学 藤本 敏彦
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

健康な日本人若年男性を対象として、一過性の全身運動直後の急性効果および数日間の継続的運動による慢性効果が細胞性免疫機能(ナチュラルキラー細胞活性 : NKA)および局所脳活動にいかなる影響を与えうるかを本研究で調べた。NKAは一過性運動終了後に軽度上昇し、その後低下する傾向を示した。継続的運動後ではNKAが軽度上昇する傾向が観察された。全身運動に伴う局所脳活動とNKAの関係については、急性運動時および慢性運動時の影響に差異が観察された。一過性運動後にNKAの値と有意に正の相関を示した脳領域は、中心後回および前回、上側頭回、小脳半球であり、負の相関を示した領域は前および後帯状回、頭頂葉であった。継続的運動後の安静時測定では、NKAの値と有意に正の相関を示した領域は前頭葉、側頭葉、頭頂葉にわたる広い範囲であり、負の相関を示した領域は側頭葉、後頭葉、小脳虫部であった。また、全身運動前後に心臓、肝臓、筋肉などの各臓器におけるエネルギー消費の再分配がおこっていることも本研究で明らかになった。健常人においてNKAと局所脳活動との間に相関が示されたことは重要な所見と考えられた。前頭葉の活動とNKAの正の相関が継続的運動の実施後のみで観察されたことから、継続的運動後のNKA値の変化に高次脳活動が関係し、側頭極および下前頭回が情報伝達路として機能している可能性が示唆された。本研究において、全身運動による脳-免疫相互作用が明らかになっただけでなく、全身運動により多様な全身機能の調整が起こり、脳が調節機能を発現していることが示唆された。上記の成果により、PETの健康科学への応用がより現実的となった。
著者
三浦 國雄 山里 純一 宮崎 順子 益子 勝 大野 裕司
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、術数学の基礎研究として主要術数書の文献解題を行なうものである。すでに平成17・18 年度の第一期研究において研究報告『主要術数文献解題』を刊行したが、本研究はそれを承ける第二期研究であり、第一期で取り上げることが出来なかった文献(出土術数文献も含む)の解題を試み、すでに本年3 月、『主要術数文献解題 続編』として刊行ずみである。
出版者
一般財団法人日本海事協会
雑誌
日本海事協會會誌 (ISSN:02870274)
巻号頁・発行日
no.231, pp.98-104, 1995

平成7年版鋼船規則及び同検査要領N編に収録された改正について解説したものである.改正された内容は,二元燃料ディーゼル機関及び二元燃料ボイラに関する技術基準の新設(平成6年4月1日施行),国際ガスキャリアコード(IGCコード)の第一回改正の鋼船規則N編への取り入れ(平成6年10月1日施行)及び二次防壁が要求されない貨物格納設備で貨物を運送する場合のホールドスペース等を通過するケーブルについての規定の見直し(平成6年9月1日施行)である.
著者
森下 薫
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.32, no.384, pp.332-335, 1920-11-30
著者
山浦 逸雄 矢島 征雄
出版者
信州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

ヒマワリとケナフを10数本以上育成し,その中から比較的生長の早い数本を選び一週間毎に測定を行った.4月に種を播き,発芽生長後,茎の太さが測定可能になった7〜8頃より測定を開始し,ほとんど枯れた11月まで測定を行った.この間の気象は,アメダス他の観測によったが,平年に比べ特に異常ということはなく,植物の生長は順調だったといえる.根の接地抵抗は植物の生長とともに変化するが,大地の水分量によっても変化する.この影響を除去するため,昨年度には根の接地抵抗を地表に接する円板電極の半径に置きなおす等価半径の概念を導入た.今年度は,新たに測定電流と電圧の位相差に着目して,根の抵抗を複素インピーダンスに拡張して,その変化を詳細に調べることとした.測定実験から植物の根の電気的等価回路は抵抗と容量の並列回路で評価でき,それら相互の量的変化が生長過程を知る上で重要であることがわかった.この変化を表現するために昨年度導入した等価半径を複素数化して,今年度は複素等価半径を新たに定義した.この実数部は等価回路の純抵抗によって支配され,虚数部は等価回路の容量によって支配される.純抵抗の大小は根の全体的な大きさや組織の抵抗に依存する.植物組織において細胞壁や膜の機能が低下したり,壊れると抵抗は低くなる.容量は根と土の接触界面における状況や組織細胞の壁や膜の活性度によって変化する.活性が落ちると容量は低下する.以上の考えのもとに実測した複素等価半径のベクトル軌跡をX-Y平面に描き,生長とともにどのように変化するかを調べた.その結果,ヒマワリ,ケナフとも開花するまでの生長期には,実数部虚数部ともに増加がみられ,それ以後は虚数部の減少が顕著であり,枯れて行く過程で組織が不活性化する様子がよくわかった.植物の生長とともに複素等価半径のベクトル軌跡は概ね時計方向の半円を描くことがわかったことは大きな成果である.
著者
池庄司 敏明 佐々 学 長田 泰博
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.188-196, 1959

糸状虫媒介蚊, 特にアカイエカCulex pipiens pallensの駆除にあたつて, 蚊幼虫, 成虫の室内実験および鹿児島県奄美大島, 愛媛県三崎町での実地試験を行つた.その結果と, 附随して提起されたイエバエのpopulationに関連した二, 三の問題を論じた.1. Culex pipiens pallens, Aedes aegypti, Aedes albopictus, Armigeres subalbatusの幼虫について, 各種殺虫剤の乳剤について, スクリーニングテストを行つた結果, parathionについでdieldrin, 有機燐製剤が有効であつた.さらに水中における残効性を試験したところ有機塩素剤が安定, 有効であつた.2.アカイエカの静止場所とdieldrinの残留効果について室内実験を行つたところ, 比較的暗い, 垂直な面に繋留し, 残留効果については, 薬剤残留面に繋留した蚊の多数が噴霧しない室に入つて死亡することを観察した.3.直接滴下法により蚊成虫の薬剤に対する感受性を調べた結果, 幼虫と成虫の感受性の間に大きな差があることがわかつた.Busvine-Nashの接触法では2時間接触させ24時間後に死亡数を観察する方法が最も良好であつた.4.愛媛県三崎町, 二名津, 松両部落でdieldrinの残留噴霧を行つた.対照地区として両部落から約3km離れた明神部落をとり, 薬剤散布4カ月後直接滴下法でイエバエの薬剤に対する感受性を調べた所, dieldrin, lindaneについて撒布部落のハエは対照地区のものに比較して若干低かつた.しかし, これがdieldrin噴霧によるものかどうかについては判然としない.奄美大島, 網野子, 仲勝両部落でdieldrinの残留噴霧を行つた約4カ月後, 抵抗性の検定を行つたところ, 抵抗性を生じてはいなかつた.5.奄美大島仲勝, 有屋部落において6月30日にdieldrinの残留噴霧を行い, 蚊に対しては, 非常に有効であり, 現地人の話では一夏の間有効であつた.6.愛媛県三崎町二名津部落で行われたdieldrin残留噴霧も蚊には長期著効があつたがイエバエに対する効果は, 大体1カ月であつた.しかし, その後に, イエバエの異常発生があつた.7.奄美大島四部落においても同様な現象があり, イエバエ駆除の為に第2回の薬剤撒布を行つた.その結果第1回撒布でdieldrin, , 第2回撒布でDDTを使用した場合のみ有効であつた.しかし, その理由は, イエバエのdieldrinに対する抵抗性の増大によるものとは認められず, むしろ撒布量の少なかつたことに問題があるようである.
著者
福長 将仁 田淵 紀彦
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

動物ミトコンドリアゲノムは37 の遺伝子とひとつの制御領域から成っているものが多い。またこれらの遺伝子構成は比較的保存されていて大きな変化はない。しかしAcariformes に属するダニ類では遺伝子構成が再編されていることが我々の検索から明らかになったのでこの上目に属するダニ類を網羅的に検索、系統的関係を調べた。その結果この上目に分類されるダニ類においてミトコンドリアゲノムは独自の進化を遂げたことが推察された。
著者
長瀬 啓介 長谷川 鎭雄
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.321-326, 1995-05-25

目的;病歴上に記録された, 気管支鏡検査前に行われた説明の現状を明らかにする。方法;筑波大学付属病院呼吸器内科診療グループで1991年4月1日より1992年3月31日に施行された気管支鏡検査例の病歴119例を調査の対象とした。病歴上の, 気管支鏡検査前に行われた検査に関する説明の記録の存否と, 目的, 手技, リスク, 代替方法に関する記録の内容を調査した。結果;説明に関する記録は全検査例の63.0%にあたる75例にみられた。目的・手技・リスクの3領域について説明が記録されていた例は, 35例であった。記録された説明項目は一定ではなかった。考察;説明の質を維持する目的では, 説明の記録率は必ずしも十分とはいえないと考えられた。記録内容の不均質を改善し説明の質を向上するために, 説明内容と記録の標準化が必要であると考えられた。
著者
藤井 俊勝 麦倉 俊司 奥田 次郎 森 悦朗 鈴木 麻希 森 悦朗 鈴木 麻希 麦倉 俊司 奥田 次郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ヒトの記憶については心理学的・神経科学的な研究が数多く行われてきていたが、記憶の間違い-つまり、記憶として想起はできるものの内容が正確ではない場合-のメカニズムについては不明な点が多い。本研究ではヒトの脳活動を間接的に測定することができる脳機能画像法と、脳損傷患者を対象とした神経心理学的研究によって、ヒトの脳でどのように誤った記憶情報が表象されるのかを検討した。記憶を司る内側側頭葉に対して、記憶を制御する前頭前野が影響を与えていることや、内側側頭葉と感覚情報を処理する感覚皮質の関連が明らかとなった。

1 0 0 0 OA 範国記

出版者
京都大学附属図書館
巻号頁・発行日
2006-09-25

[重要文化財],[平松文庫],第三門/ノ/2,
著者
清 雄一 本位田 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.678-688, 2009-03-25

大規模なセンサネットワークでは,個々のセンサがセキュリティ侵害を受けやすい.セキュリティ侵害を受けたセンサは,嘘のイべント(不正イべント)を発生させるのに利用される.この攻撃は,イべントの受け取り手を混乱させるだけではなく,個々のセンサの有限のエネルギーを消費させる.多くの既存研究が提案されており,それらはネットワーク内で不正イベントを検知することが可能である.だが従来の既存研究では,小さなしきい値(例えば5)以内のセンサノードがセキュリティ侵害を受けた場合にのみ適用可能であるという制限があった.近年,この制限を克服した手法がいくつか提案されているが,それらは,データを収集するシンクが固定されている状況でのみ適用可能であるという別の課題をもつ.本論文では,シンクが移動するセンサネットワークにも適応可能な手法を提案する.同時に,多くのノードがセキュリティ侵害を受けても,高いセキュリティを保つことを目標とする.本手法が,従来の手法と比較して不正イべントをより早く検知できることを数学的な解析を行うことにより示す.
著者
阿部 修士
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではまず健常被験者を対象として、虚再認と嘘の神経基盤を機能的磁気共鳴画像法による実験で検討した。嘘は虚再認に比べ前頭前野の活動が高く、また虚再認は嘘に比べ内側側頭葉(右海馬前方)の活動が高いことを報告した。嘘の神経基盤についてはパーキンソン病患者群を対象とした神経心理学的研究を行い、前頭前野が重要な役割を果たすことを報告した。さらに、これまで行ってきた研究成果をまとめた総説を発表した。
著者
大薗 博記
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、顔情報が信頼関係の構築にどのように寄与するかについて検討することを目的としている。21年度は、主に下記の研究を行った。これまでの研究から、笑顔が真顔に比べて信頼を得ることが指摘されてきた(Scarleman et al., 2001)。本研究では、この笑顔の効果の文化差に着目した。実際に、Yuki et al.(2007)は、幸福の情動判断において、日本人は目が笑っているかどうかに注目しやすい一方、アメリカ人は、口が笑っているか否かに注目が行きやすいことを示している。同様の効果は、信頼性判断においても見られるかもしれないと、考えた。そこで、本実験では、顔の上半分(目周り)の笑顔強度、下半分(口周り)の笑顔強度、及び笑顔の左右対称性という、笑顔の3つの要素が信頼性判断に及ぼす影響の目米差を検討した。実験では、アメリカ人と日本人の参加者が、複数の日米の顔写真(これらの顔写真については、事前に上下の笑顔強度及び左右対称性が評定されていた)について、信頼性の判断を行った。重回帰分析の結果、顕著な文化差が認められた。日本人参加者は、左右対称的であるほどより信頼する一方、上下の笑顔強度は信頼性判断に影響しなかった。対照的に、アメリカ人参加者は、上下の笑顔強度が強いほどより信頼するが、左右対称性は影響しないという結果が得られた。この違いについては、日米の表示規則の違いや認知様式の文化差の観点から考察された。なお、この研究については、Letters on Evolutionary Behavioral Scienceにて、査読後受理され、現在印刷中である。
著者
吉岡 秀克 松尾 哲孝 住吉 秀明 調 恒明 浜中 良志 二宮 善文
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究において以下の結果を得た。1.マウスV型コラーゲンα3鎖遺伝子の転写調節及び機能解析オリゴキャップ法により遺伝子の転写開始点を決定した。主な転写開始点は翻訳開始点約100bp上流に存在した。次に、この転写開始点上流約L8 kbの遺伝子断片をクローニングし、この遺伝子の基本プロモーター活性を検討した。基本プロモーターは転写開始点上流約300bpの領域に存在した。さらにゲルシフトアッセイ法により、BS1(-130〜-110)、及びBS2(-190〜-170)の領域にDNA/タンパク複合体の存在が認められ、その中でBS2に結合する転写因子はCBF!NF-Yと考えられた。プロα3鎖のN末の23個のアミノ酸よりなる塩基性セグメントが存在する。この塩基性のセグメントに骨由来細胞に対する細胞接着活性がある。このペプチドへ細胞が接着するとアクチンファイバーが形成され、これはRhoキナーゼ阻害剤であるY27632で阻止された。2.III型コラーゲンα1鎖遺伝子の転写調節解析ルシフェラーゼアッセイの結果、ヒト遺伝子のプロモーターの-96〜-34に最小の転写活性が見られた。ゲルシフトアッセイにより、-79〜-63の領域には複数の因子が結合することがわかった。以前より報告されている因子(BBF)は細胞によって、その複合体を形成する因子の槽成が異なると思われた。3.マウスXXIV型コラーゲンα1鎖遺伝子の転写調節解析XXIV型コラーゲンは最近、見出されたコラーゲンであり、主に骨に発現するが、その発現量は非常に少ない。今回、このプロモーター領域のDNAをクローニングし、転写調節機構の解析を行った。その結果、骨肉腫細胞を用いた実験により、このプロモーターにはc-Jun、CREB1、ArF1、ATF2が結合していることを見出した。
著者
佐伯 卓也 小宮山 晴夫 中嶋 文雄 沼田 稔 佐々木 盛男
出版者
岩手大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

研究目標は、本科学研究費補助金(一般研究B)研究成果報告書にも記したが、教育現場でのパソコンのいかなる設置状態(教室に1セットから生徒1人につき1セットのランシステムまで)でも実現できて、伝統的な授業の教師の役割をあまり変えずに教師の個性が十分発揮できてそれでいて教室のハプニングにも臨機応変な対応ができるスタイルのパソコン利用の授業、非CAI的授業のソフト開発、非CAI的授業そのものの研究、あわせて、学生や附属学校の教師も参加しての教師教育、とくに学生の教師教育にあった。このためのパソコンソフトは、この期間に開発したのが23点、それ以前に代表者が開発したのが19点あるので、合わせて42点になる。このうち、29点は実際に附属中学校で、1年、2年の生徒を対象にして授業実践を経ている。教師教育については、非CAI的授業のソフトは、内容にもよるが、1単位時間のソフト開発時間が5時間ぐらいのものもあり、開発しやすい。このソフト作成技術とそれを利用した授業実践技術のマニアルにまとめた。さらに小学校算数教育のためのVTR教材を作成した。また、大学数学そのものの理解を助けるためのソフト作成も試み、今後の教師教育の課題の糸口をつかんだ。研究期間に開発したソフトの一部を、東北大学理学部、山形大学教育学部、八戸工業大学に提供、さらに現場関係では、岩手県総合教育センタ-にも提供した。また、ソフトや新しい知見は日本科学教育学会、日本教育工学会、日本教育情報学会、日数教数学教育論文発表会等で公表した。期間中の発表論文数は25本(報告書に記載)、以前の論文を合わせると関係論文数は57本あり、合計82本である。
著者
内田 照雄
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、測定時間の大幅な短縮をはかりかつ分光強度パターンと蛍光寿命パターンを同時測定するため,光源の二重振幅変調と高速撮像素子としてのイメージインテンシファイヤーの利得変調方式を併用した検出器内部ヘテロダイン検出法を考案し,その理論的解析を行なった。さらに,装置の試作を行い、装置の動作確認を行なった。まず、イ)高速撮像素子としてのイメージインテンシファイヤー、ロ)レーザ、ハ)2台のAO変調器、ニ)3種類の変調用正弦波発信器,ホ)タイミング回路、ヘ)I.I.の蛍光面画像撮像用CCDカメラ、ト)パソコンからなる装置の試作を行った。レーザとしては小型空冷アルゴンイオンレーザを用い、2個の直列に配置したAO変調器を二重に正弦波変調を行い、蛍光試料を変調励起する。この変調信号とわずかに異なる変調信号でイメージインテンシファイヤーの利得変調を行った。2個のAO変調器(No.0とNo.1)のうちNo.1のAO変調器はNo.0のAO変調器(変調周波数 f_0=20.0000MHz)とイメージインテンシファイヤーの利得変調周波数(f_2=19.9990MHz)の差の周波数(f_1=1kHz)の正弦波で変調される。たとえ,f_0,f_2の周波数が時間的に若干変動してもf_1は常にf_0とf_2の差となるように,ミキサー回路を用いた。この結果CCDからは,No.1のAO変調器による変調をOFFにすることにより,通常のDC蛍光像が得られる。また,No.1のAO変調器による変調がONの状態におけるCCDの蛍光像から,OFF時の蛍光像信号を差し引くことにより,蛍光寿命情報すなわち蛍光寿命パターンが一括して得られる。アクリジンオレンジ等標準蛍光試料測定により,nsオーダの蛍光寿命が計測可能であることが分かった。蛍光像信号のSN比向上が今後の課題である。
著者
深港 豪
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では、真の単一分子デバイスの実現に向けて、情報を読み出す光とスイッチを行う光刺激がそれぞれ独立に作用する "非破壊読み出し"機能を有するフォトクロミック蛍光スイッチング分子の開発をめざした。紫外領域でのみフォトクロミズムが起こる不可視型ジアリールエテン分子を開発し、その不可視型ジアリールエテンと蛍光色素を連結した分子を用いることで、分子内電子移動を利用した可逆的な蛍光スイッチングおよび完全な非破壊読み出しが達成できることを実証した。
著者
田中 克典 田中 延亮
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究対象地である落葉林では、雨季の始まりとその期間の変動によって落葉林の着葉期の長さが変わり、その年々変動が著しいことが明らかになった。昨年度は落葉林の大気-植生-土壌内の熱・水環境を再現できる大気-植物-土壌間の蒸発散のモデルが開発された。本年度はこのモデルによる対象地の熱・水環境の再現と数値実験を通じて、落葉林の蒸発散の季節・年々変化と着葉期間のメカニズムを調べた。これらの再現実験では、葉面積指数の季節性を考える場合と一定にした場合を仮定して行われた。現実と異なり葉面積指数を一定にした理由として、土壌水分が著しく減少する乾季においても、光合成による二酸化炭素吸収が可能であるかを検証するためである。ここでは、調査で得られた葉面積指数のピーク時の値、土壌の水利特性や土壌の深さを考慮した。葉面積指数の季節性を考慮した実験では、3年間の土壌水分の観測結果が十分再現され、モデルで計算された蒸散が蒸散の指標となる樹液流速の季節性とよく一致した。また、この再現実験によって、蒸発散のピークが雨季に現れるなどの熱・水交換の特徴が抽出され、着葉期間中、二酸化炭素の吸収を持続できることがわかった。一方、葉面積指数を一定にした場合では、乾季に二酸化炭素の吸収を持続できず、逆に放出し、葉を通年維持できないことが示された。これは、土壌水分の減少とともに気孔が閉じ、蒸散による葉温のコントロールが失われ葉温が上昇し、呼吸活動が活発になるためである。また乾季から雨季に移っていくなかで、純光合成の値が放出から吸収に転じる時点と春分の日以降に展葉した年での展葉期がよく一致した。一方、雨季が終わって、完全落葉する少し前の時点で純光合成の値が吸収から放出に転じることが示された。この数値実験により研究対象である落葉林の成長期間における予測可能性を示した。現在これらの成果は論文に纏められ、英文誌に投稿中である。