著者
齋藤 学
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

名作椅子を用いた"体感型"鑑賞教育プログラムは、一般的な"見る"鑑賞に比べ、生活におけるデザインの働き(形状・素材・色・機能など造形の諸要素の関係性)について理解が得やすく、その学習効果の優れた特性が認められた。また、本プログラムをシステム化し効果的に運用(教材の管理とアウトリーチ)していくためには、地域における学校間の連携と、自治体、公共施設、非営利団体、企業等の支援体制の整備が不可欠となる。
著者
吉田 教明 古賀 義之 阿部 理砂子 小林 和英 佐々木 広光 荒牧 軍治
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.240-246, 1998
被引用文献数
1

非対称フェイスボウの作用および副作用を明らかにし, 本装置の臨床上有効なデザイン, あるいは副作用を削減する方法を究明するために, フェイスボウ形態を変化させた時に, 大臼歯に作用する力系がどのような影響を受けるかについて研究を行った.アウターボウの一側を他側に比べて長くした場合と側方拡大した場合の左右側大臼歯に働く遠心力, 側方力およびモーメントを骨組構造解析法を用いて算出し, 以下の結論を得た.1. フェイスボウの非対称性を増すことで, 片側の大臼歯をより遠心に移動させる効果は大きくなるが, 同時に側方力も増加し, 大臼歯の交叉咬合を生じる危険性が高くなることが明らかになった.2. フェイスボウの非対称の度合にかかわらず, 左右大臼歯にはほぼ同じ大きさの遠心回転モーメントが生じた.従来の研究より, 非対称フェイスボウのもう一つの副作用と考えられていた, 大臼歯の捻転度の左右差を増長するような効果は生じにくいと考えられた.3. 非対称フェイスボウの副作用を削減するために, フェイスボウを極端に非対称に作製することを避けることが推奨される.遠心移動を必要としない大臼歯側のアウターボウ後端をフェイスボウチューブの位置とし, 遠心移動が必要な大臼歯側のアウターボウ後端をその位置からアウターボウに沿って25mmから30mm延長するか, 15mm延長して側方に30mm拡大すると, 非対称フェイスボウの作用と副作用のバランスのとれた効果を発揮するデザインになると考えられた.

1 0 0 0 OA 摂津名所図会

著者
秋里 湘夕
出版者
京都 : 小川太左衛門 : 殿為八
巻号頁・発行日
1796-09

寛政8年(1796)9月,刊 26.2×18.2cm 6巻12冊 一住吉郡: 73丁, 76コマ 二東生郡: 58丁, 61コマ 三東生郡・西成郡: 73丁, 76コマ 四上大坂部: 51丁, 54コマ 四下大坂部: 51丁, 54コマ 五嶌下郡嶌上郡: 66丁, 69コマ 六上豊嶌郡河邊郡: 44丁, 47コマ 六下河邊郡: 45丁, 48コマ 有馬郡能勢郡: 59丁, 62コマ 武庫郡菟原郡: 62丁, 65コマ 矢田部郡上: 43丁, 46コマ 矢田部郡下: 93丁, 96コマ 序: 寛政6年(1794),中山前大納言愛親卿 跋: 寛政8年(1796)8月,秋里湘夕 画: 竹原春朝斎 書林等の記載は有馬郡能勢郡の巻末にあり
著者
乙部 弘隆
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.493-494, 2004-09-05

2004年4月2日に岩手県の大槌湾で結氷現象がみられた。この観測された給氷現象は,夜半の降雨による淡水が河川から大量に流れ込み,表層を覆ったところへ明け方に気温が下がり,雨が雪に変わりシャーベット状の雪泥(Slush)からスポンジ氷(Shuga)になっていく過程と考えられる。東北地方では,たまに,このような現象がみうけられるが,公の記録としては残されていないようなので報告する。
著者
稲葉 哲郎
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

今回の研究においては,1995年の参議院選挙の選挙運動期間中に大学生639名を対象に調査をおこなった。調査票は政治的知識,法定選挙媒体への接触,候補者のテレビ広告の利点と欠点の評価,デモグラフィック要因などの項目からなっていた。接触については,「偶然見た」「自分から進んでみた」という回答を合計したものを接触率とした。候補者の新聞広告への接触率は30%であり,また政党の新聞広告では29%であった。候補者のテレビ政見放送への接触率35%と比べるとやや低いが,政党のテレビ政見放送の接触率24%と比べるとやや高いものであった。今回は単なる接触だけでなく,その媒体についてどれだけ注意を払ったかを尋ねたが,いずれの媒体についても「一応注意をはらった」「かなり注意をはらった」を合計しても回答者の1割ほどにしかならなかった。政治的知識との関連をみたところ,政治的知識の高い層がいずれの媒体にもよく接触をしていた。テレビ広告の利点と欠点については,「ますます選挙にお金がかかるのでよくない」(53%)「お金のある候補者が有利になるのでよくない」(50%)と選挙にお金がかかることへの懸念が多く見られたが,アメリカで話題になっているような対立候補の欠点をあげつらうような広告が放映されることへの不安はあまりみられなかった。一方,利点としては「候補者がどんなひとかよくわかってよい」(39%)「政治に関心を向ける機会が増えるので望ましい」(38%)という意見が多く,候補者をよく知るための手段として評価されていた。評価の規定因としては政治的知識をあらかじめ想定していたが,テレビ広告にお金がかかることについて,政治的知識の高い層で懸念が特に多かった。
著者
渡部 幹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

社会的交換ネットワークの変容とその規定要因となる心理的特性--公正感と信頼感--に焦点を当てた実験研究を行った。社会的交換状況において不公正分配をされた者が、その状況から脱出しようとする傾向を持つこと、そしてそれによりネットワーク構造全体が変容しうることを確かめるための実験を行った。20名程度の実験参加者がコンピュータを介して、資源の取引を行うという状況を作る。この実験では、すべての参加者が相手に対して不利になるようにあらかじめ設定されており、参加は必然的に、取引相手から搾取され、不公正な分配を受け入れなくてはならない状況におかれる。実験では、このような状況にいる参加者が、公平な分配を受けている場合に比べ、コストをかけてでも取引相手からの離脱を望むかどうかを検討した。予測通り、不公正な分配を受けた参加者は、公正な分配を受けた参加者よりも、交換状況から脱出する傾向の強いことが示された。この結果は、2002年12月に米国で行われた研究会にて発表され、その際の議論をもとに、現在、結果のより詳しい分析を進めている。また、不公正・公正な分配そのものを左右する心理的要因を探るために、最後通牒ゲームと独裁ゲームを用いた研究を行った。これらのゲームは、見知らぬ他者と自分との報酬分配に関するもので、公正な報酬分配を行う者に特徴的な感情や行動傾向との関連性を調べるために、日本人被験者を用いた実験が行われた。この結果、「他者一般への共感能力」の高い者が自発的な公正分配を行う傾向の高いことが見出された。この結果は、2001年8月のアメリカ社会学会、2001年10月の日本社会心理学会にて報告された。この他にネットワーク変容に影響を及ぼすもうひとつの規定要因である信頼感について、その醸成に関する実験研究も行われた。この理論的概要と結果は、土木学会誌および2002年の日本社会心理学会にて報告されている。
著者
今井 知正 村田 純一 黒住 真 門脇 俊介 信原 幸弘 野矢 茂樹 宮本 久雄 山本 巍
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

自然主義をめぐる哲学的思考の歴史的遺産を再検討したうえで、現代の哲学的自然主義をめぐる論争状況を直接に主題化し、根本的な論点について、各研究者がそれぞれの立場から検証作業を行なった。その結果、現代的な自然主義と反自然主義の対立を一挙に解消することはできないとしても、いくつかの重要な成果が得られた。(1)認識論的自然主義はアプリオリな知識を説明し得ないとされてきたが、暗黙的概念了解と想像による概念連結を根拠として、自然主義的立場においてもそうした知識が説明可能であるという見解が得られた。(2)色彩概念は長らく物理的説明に委ねられ哲学的アプローチに乏しかったが、現象学やウィトゲンシュタインの知見を参照することで、色彩概念が自然主義的還元を許さない多次元性をもつことが示された。(3)自然主義批判の立場はまた、哲学の基礎付け主義や強い意味での正当化要求と、極端な自然主義や懐疑論が裏腹の関係にあり、それらのいずれもが、人間の実践的世界における自由や合理性、真理や正・不正の経験の「内在性」に基づくことを示すことによっても展開できる。(4)ウィトゲンシュタインの後期哲学にも、通常の自然主義とは異なる、人間の「自然誌的」過程における実践に意味や規範の前提を求める「超越論的自然主義」が見られる。(5)日本思想史における「倫理」の位置づけ、現代世界における「公共哲学」の可能性などを問う中で、自然主義の限界を明らかにする作業も行なった。
著者
原口 弥生
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、2005年夏に米国で発生したカトリーナ災害に関する環境影響の総合的把握と、災害に由来する環境問題への政治的社会的対応について、特に人種関係に留意しつつ明らかにすることを目的として研究を行った。とくに、複合災害の事例として住宅地における石油流出事故、災害廃棄物をめぐる環境正義運動、生態系サービス機能に着目した湿地保全運動、復興過程における住民の居住する権利と都市の防災力向上とのジレンマなどについて実態を把握し、考察を進めた。
著者
池田 恵子
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本における災害被害の男女差の実態を解明し、防災サイクルをジェンダー分析の手法により検討し、防災サイクルのジェンダー課題に関する情報を整理して提示することである。本年度は、昨年度の調査結果に基づいて、女性のおかれた状況(ライフサイクル、家族構成、ケア従事状況、年齢など)と災害の段階(緊急救援、生話再建・住宅再建、地域復興)の両方を考慮した、災害におけるジェンダー課題に関する分析マトリックスを作成した。それぞれの災害フェーズにおいてとりわけ脆弱性の高い女性はどのような女性であるか、特に重視しなければいけないジェンダー課題は何かを明らかにした。移住女性(非日本語話者)やセクシャルマイノリティーに関しては、情報が少なく、今後の災害におけるジェンダー課題の検討において、見落としがちになる可能性があり、注意を要することが把握された。これらの情報を基に、災害サイクル全体の実際的・戦略的ジェンダー課題を抽出し、ジェンダー課題が改善されるための条件を抽出した。都市部(神戸市)と農村部(長岡市)におけるジェンダー課題(とりわけ戦略的ジェンダー課題)の違いを分析した。これらのジェンダー課題に対処するために、防災行政や防災の自主組織において、どのような対策が取られているかについて、先進事例(大分県、横浜市、富士市など)の取り組みについて、まずは行政や市民団体の法令や行政措置に関する出版物などを収集し、不明な点に関しては担当部署に電話・電子メールにて確認し、災害におけるジェンダー課題に対応するために必要でかつ実行可能性が高い方策について検討した。
著者
飯田 幸彦 泉沢 直 石原 正敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-44, 1987-12-01

昭和62年4月1日、14日の寒波の襲来により場内の気温が氷点下に低下したため、麦類の幼穂及び出穂直前の穂が凍死した。そこで、場内の麦類について、早晩性の違いによる品種間差や収量への影響について調査した。
著者
Asada Shin′ichi Ono Masato
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
Applied entomology and zoology (ISSN:00036862)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.581-586, 1996-11-25
被引用文献数
5

Buzz-pollination of tomato (Lycopersicon esculentum MILL) by four native species of Japanese bumblebees (Bombus hypocrita hypocrita PEREZ, B. ignitus SMITH, B. ardens ardens SMITH, and B. diversus diversus SMITH) was examined. A high (84-100%) fruiting rate and almost no puffy fruit )0-7%) resulted from pollination by the Japanese bumblebees. There was no difference in the pollination efficiency between the imported non-native bumblebee (B. terrestris) and Japanese bumblebees. Pollination of tomato crops using native bumblebees is recommended because there are no ecological risks.
著者
中牧 弘允 村上 興匡 石井 研士 安達 義弘 山田 慎也
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度は、入社式、新入社員研修と社葬に焦点を置いて調査をおこなった。入社式と新入社員研修については大阪のダスキンで、一燈園とのつながりを明らかにした。社葬については、ソニーの社葬を調査し、国際色豊かな演出の中にソニーの企業としての特色と盛田会長のカリスマ的創業者としての性格を明らかにした。また、大成祭典、一柳葬具総本店といった葬儀社においても調査をおこない、社葬と社員特約の歴史的変遷を跡づけた。平成12年度は、前年度に引き続いて入社式、新入社員研修、社葬を追跡調査したほか、社内結婚についての調査もおこない、公と私の場が入り交じった日本独特の会社文化を明かにした。社葬と会社特約については、大阪の大手葬儀社である公益社を新たに調査した。平成11・12年度を通じて、九州の酒造関係の地場産業における儀礼調査、京都の伏見稲荷神社における会社儀礼の調査をおこない、伝統産業と宗教の関わり、会社ならびにサラリーマンの強化儀礼について研究をおこなった。それぞれの調査を総合して、報告書として「サラリーマンの通過儀礼に関する宗教学的研究」を作成した。
著者
川田 順造 MAXIMIN SAMA BOUREHIMA KA 真家 和生 竹沢 尚一郎 嶋田 義仁 KASSIBO Bourehima SAMAKE Maximin
出版者
東京外国語大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1986

62年度は前年度に行った第1回の現地調査の総括にあてられた. 現地調査には, 交付申請書に記した日本側4名, マリ側2名のほか, 日本側2名(山口大学講師安渓遊地, 東京大学教務補佐員中村雄祐), マリ側1名(マリ高等師範学校教授サンバ・ディアロ)が部分的に現地参加し, 報告書作成にも加わった. 現地調査第1年度の研究実積の概要は下記の通りである.1.物質文化の観点からみたニジェール川大湾曲部地方の特質(研究分担/川田順造):この地方は, 古くから北アメリカのアラブ・イスラム文化とサハラ以南の黒人アフリカ文化の大接点の一つであり, 両文化の相互交渉から数々の独自の文化が形成された. それらのうち文化史上重要な(1)騎馬文化, (2)織物と衣服の文化, (3)楽器, 特に弦楽器の発達と専門化した世襲の楽師集団, (4)非焼成の練り土によるモスクなどの大建造物等について, 系譜の解明と型式分類を試みた.2.身体技法と技術(研究分担/川田順造, 真家和生):身体の形質的・生理学的特徴・自然条件, 文化的条件に従って, 地域・社会により異なる身体技法は, 伝統的技術や物質文化と深いかかわりをもっている. 本研究では, この地方に顕著に見いだされる身体技法のうち, (1)両足をのばしたままの深い前倒姿勢による作業の意義, (2)頭上運搬と歩容の関係, (3)作業台としての足の使用及び足の技巧的使用について分析した.3.牧畜民社会の生態学的基盤と階層分化(研究分担/嶋田義仁):この地域で有力な牛牧民フルベ族の社会は, 氾濫原の稲作民などとの間に共生関係を作ってきた. その共生関係と自然条件との関わり, フルベ社会の階層分化のあり方を検討した.4.漁民・狩猟民と農耕民の共生関係(研究分担/安渓遊地):ニジェール川の大湾曲部には, 漁労とともにカバなど水生動物の狩猟も行ってきたボゾ族という集団がいる. 彼らと農耕民をはじめとする他の近隣集団との関係は, この地方の社会・文化を理解する一つの鍵となる. 安渓がこれまで長期間の調査を行ったザイール東部の漁民社会の研究成果をふまえて, 基本的な問題設定と検討を行った.5.市街地における小家畜飼育(研究分担/サンバ・ディアロ):この地域の都市に定着した牧畜民の中には, ヤギ, ヒツジなどの有蹄類小家畜を飼育するものが多い. この研究では, かつてのバンバラ王国の王都だったセグーにおける「都市的牧畜」の様相を, 実態調査によって明らかにした.6.ニジェール川大湾曲部デルタにおける漁業の変遷(研究分担/ブーレイマ・カシーボ):この地域の漁業は, 19世紀末のフランスによる植民地以前から現在まで大きな変遷を経ている. かつての大規模な集団網漁から, 原動機付き小型船, 個別化した小型の漁具による漁法の個別化, 漁業権の国有化, 組合の形成, 流通の組織化などがもたらした変化について具体的事例に基づいて分析した.7.漁民の技術的・社会的変化と宗教的変化(研究分担/竹沢尚一郎):この地域の漁民社会には, 水の精霊の信仰と, その儀礼を司り, 漁業権も掌握している「水の主」の制度があった. 漁法の個別化と漁業水域の拡大, 漁業権の国有化等によって, 水の主の存在が無力化され, 水の精霊への信仰も変化した. イスラムの侵透はこうした変化と呼応して, 漁民ボゾ族の宗教・儀礼体系を変えつつある.8.バンバラ族における結社(研究分担/マキシマン・サマケ):ニジェール川大湾曲部西部地方の農耕民であるバンバラ族の社会には, 入社式を伴うさまざまな結社が存在する. この研究ではその一つである「コテ」結社について宗教的側面とともに, 社会の下部組織としての機能を, 現地調査に基づいて分析した.9.村落社会における楽師の社会的位置(研究分担/中村雄祐):ニジェール川大湾曲部地方の社会には, 専門化した世襲の楽師集団がある. この研究は, サン地方での調査に基づき, 彼らの社会的役割, 歌による賛美という職能と, 社会によって彼らに公認されている物乞いとの関係を分析した.以上, 今回の調査では, 多面的な共生社会でありながら, 従来その多面性が明らかにされていなかったニジェール川大湾曲部のとくに西部諸地方の社会について, いくつかの重要な側面を, まだその第一歩ながら解明することができ, 国際学界の視野でも新しい貢献をなしえたと思われる. 今後この方向での調査研究を深めるとともに, ニジェール川大湾曲部の中部・東部にも研究対象を拡大してゆく考えである.
著者
遠藤 珠紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題は、朝廷官司の構造およびその変遷を追い、朝廷全体の政務運営システムについてまとめることを志すものである。殊に中世朝廷の文書・人事行政の基幹を担った外記局、宮中の日常品の調達を担った宮内省管下の諸官司に注目し、その中世的体制の在り方・いわゆる「官司請負」の実態、成立時期などを明らかにした。またその基礎作業として各官司の補任状況の一覧化を進め、中世史研究の遂行に必須である史料類の収集・解読、紹介に努めた。
著者
寺下 貴美 中場 貴紀 布施 善弘 小笠原 克彦
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.811-817, 2004-06-20

診療用放射線の防護に関して,医療法施行規則の一部を改正する省令が関係告示とともに公布され,平成13年4月1日から施行された.さらに,国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の取り入れにより空気中,排気中,排水中の放射性同位元素の濃度限度が改められ,新濃度限度に対応した算定法が通知された.これらにより医療現場における放射性同位元素の使用実態に則したものとなったが,新法令への移行には煩雑で実務的な処理を伴っているのが現状である.当院では平成12年6月より医療情報システムの開発会社(ベンダー)に依らずに単独でWorld Wide Web(以下,WWW)を用いたシステム(以下, Webシステム)による患者情報システム,入院患者台帳システム,DICOM Imagingシステム,検査オーダ・エントリ・システムを開発し運用している.特に,検査オーダ・エントリ・システムではモダリティごとの検査依頼,照射録等の作成・管理などを運用している.法改正に伴い当院でも新濃度評価の下で記録簿様式の変更が必要となった.そこでわれわれは業務の簡素化を図るため,放射性医薬品の入荷・使用・在庫・調剤・廃棄・帳票等の管理を一括して行うことを目的としたシステムの開発を行った.今回,当院で運用しているWebシステムを拡張し,患者情報と検査内容のデータが共有できる放射性医薬品管理システムを構築したので報告する.
著者
木下 航一 小西 嘉典 勞 世 川出 雅人 村瀬 洋
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.4, pp.721-729, 2011-04-01

顔画像に対して,高速で高精度に形状モデルフィッティングを行う手法を提案する.形状モデルのフィッティング手法は多数提案されているが,顔画像に対するフィッティングは影や表情変化などのノイズの影響を受けやすく,高精度な結果が得られにくいという課題があった.また多数の繰返し演算を必要とするため,リアルタイム処理の実現は難しかった.我々はこれらの課題に対して,(1)形状モデル上でのサンプリング点の構造的配置,(2)特徴量による形状パラメータの摂動量推定,を行うフィッティング手法を提案する.(1)によってノイズの影響を受けにくい局所特徴量を有効に活用でき,影や表情変化などに対する頑健性が向上する.また(2)によって特徴量から一度の行列演算で形状パラメータの修正量を求めることが可能となり,処理時間が削減できる.公開データベースによる実験の結果,従来手法と比較して約20倍の高速化を実現しつつ,影や表情変化などのノイズのある顔画像に対して従来手法を上回る検出性能を示した.
著者
裴 寛紋
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度から取り組んでいた、宣長の朝鮮への視座という問題にかんしては、上代文学会の学術誌『上代文学』102号(2009年4月)に、「『古事記伝』が作った「皇大宮の始り」の物語-「韓国」は「空国」なり-」として掲載されたことに続いて、次に、韓国学会に向けての発信を試みた。2009年4月18日、韓国外国語大学(韓国ソウル市所在)で開かれた韓国日語日文学会春季学術大会における口頭発表は、そうした目論見の切り口であった。報告の題目は「「韓」の痕跡と否定-宣長を読む立場から-」とし、上記の投稿論文の前提になる問題意識、すなわち、「韓」をめぐる論争に焦点を絞ったものである。要は、宣長の時代の知識人にとって、「韓」そのものは主題や関心事ではなかったこと、彼らが意識していたカラとはあくまで「漢」であったことを、当代の一般認識(彼らの「常識」)の検討から明らかにした。そのカラに対する強い反発ないし克服が、宣長の「皇国(ミクニ)」という問題につながっていることは、いうまでもない。『古事記伝』が、「原典」としての『古事記』に求めた「皇国」の「古代」の意味を、そこに見出すことができる。以上の内容は、「本居宣長の「韓」-近世日本の古代論-」として、韓国日語日文学会の学術誌『日語日文学研究』第70輯2巻(2009年8月)に投稿し、掲載された次第である。
著者
鰐淵 秀一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度の研究成果としては、まず植民地時代フィラデルフィアにおける自発的結社の生成の中心的人物であるベンジャミン・フランクリンの『自伝』を史料として、都市社会における公共性について自発的結社と個人の関係という視点から論じた論文である「商業社会の倫理と社会関係資本主義の精神:『フランクリン自伝』における礼節と社交」と題して、『アメリカ研究』第45号(2011年3月発行)に発表した。ここでは、フランクリン個人の活動の分析を通じて、図書の貸借のような私的な個人の社交が公共性、すなわち都市における公共図書館の設立に至る過程が見出され、自発的結社とそれが体現する公共性が礼節と社交という商業的イデオロギーに基づくものであったことを明らかにすることが出来た。また、1750年の自発的結社の一つである教育機関フィラデルフィア・アカデミーの創設を当時の都市社会的コンテクストのなかで検討した研究報告を、2010年8月6日に北九州アメリカ史研究会(於福岡大学)で発表し、研究者たちとの活発な意見交換を行うことが出来た。この研究は論文の形式にまとめられ、現在『史学雑誌』に投稿中である。また、昨年度予定していたアメリカ合衆国への調査旅行を今年度三月に実現し、フィラデルフィアでの史料調査と共に初期アメリカ史の指導的歴史家との研究に関する情報交換を行い、研究課題の総括と共に今後の研究の方向性を得ることが出来た。フィラデルフィアではペンシルヴァニア歴史協会およびアメリカ学術協会での史料調査を遂行した。ここでは、研究課題の一つである植民地都市における自発的結社と植民地政府との関係を明らかにするための基本的な史料として、フィラデルフィア市会の議事録等の複写を入手した。これにより、これまでに収集したペンシルヴァニア植民地議会議事録や植民地参事会議事録等と共に、植民地都市の公的領域における政府と市民的組織の関係を考察することが出来た。
著者
大谷 雅夫 川合 康三 宇佐美 文理 大槻 信 伊藤 伸江 森 真理子 齋藤 茂 金光 桂子 緑川 英樹 森 真理子 齋藤 茂 大谷 俊太 深沢 眞二 楊 昆鵬 愛甲 弘志 乾 源俊 浅見 洋二 中本 大 神作 研一 長谷川 千尋 中島 貴奈 日下 幸男 原田 直枝 小山 順子 福井 辰彦 稲垣 裕史 伊崎 孝幸 竹島 一希 中村 健史 好川 聡 橋本 正俊 二宮 美那子 檜垣 泰代 川崎 佐知子 有松 遼一 畑中 さやか 山田 理恵 本多 潤子 大山 和哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

室町時代の和漢聯句作品を広く収集し、それらを研究分担者ほか研究会参加者が分担して翻字し、『室町前期和漢聯句資料集』(2008年3月)、『室町後期和漢聯句資料集』(2010年3月)の二冊の資料集を臨川書店より刊行した。また、その中の二つの和漢聯句百韻を研究会において会読した上で、詳細な注釈を作成してそれを『良基・絶海・義満等一座和漢聯句譯注』(臨川書店、2009年3月)および『看聞日記紙背和漢聯句譯注』(臨川書店、2011年2月)として出版した。