著者
小泉 達寛 山田 寛喜 藤井 智史 長名 保範 宇野 亨
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.7, pp.519-520, 2022-07-01

波浪の観測を目的とした海洋レーダは,通常,垂直偏波で運用される.筆者らは,広い海域を観測できる海洋レーダの特長を生かしたマルチユース化の可能性を検証するため,偏波海洋レーダを開発した.本論文では,そのレーダの概要と実験結果を報告する.
著者
宇佐美 光雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.1179-1183, 2004-09-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
6

広範囲な個別認識応用に向けて,0.4mm角の超小型無線認識(RFID)ミューチップを開発した.このチップの厚さは0.06mmであり,有価証券や各種金券などの紙媒体に適用することを考慮している.適用した半導体プロセスは0.18µm CMOS技術であり,配線総数は3層である.チップ内の128bitのメモリーデータを2.45GHzのマイクロ波で読み取ることができる.最小チップ動作電圧は0.5Vである.このチップは薄型の外付けアンテナに異方導電性接着剤(ACF)にて接続される.今回はさらに,0.4mm角の超小型アンテナを内蔵したミューチップについても述べる.
著者
大瀧 英樹
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.75-89, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
12
被引用文献数
3

わが国では、労働者のメンタルヘルスに対して関心が高まっている。「仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスがある」とする労働者は55.7%に達しており、労働者全体で換算すると、約3,551万人もの労働者が強い不安、悩み、ストレスを抱えていることになる。その多くの労働者が仕事の質や量によってストレスを抱えている。 本稿では、JLPS(東大社研パネル調査データ)を用いて、正規労働者のメンタルヘルスを改善するため、労働時間によるストレスを緩衝する職場環境について分析をおこなった。その結果、男性では、仕事のペースを自分で決める職場が、労働時間によるメンタルヘルス不調の緩衝効果があり、女性では、後輩が先輩に相談する雰囲気のある職場が、メンタルヘルス不調の緩衝効果がみられた。さらに、助け合いや協力などのある職場では、労働時間が長くなると、メンタルヘルス悪化の要因に変化すことが示唆された。
著者
吉見 俊哉
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.19-37, 2015-01-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
42

In postwar Japan, the Olympic Games were organized as "postwar" events in the strict sense of the term-specifically, the Olympic Games not only symbolized the history of Japan's postwar recovery and economic growth, but also the athletic facilities that provided stages for many national dramas were postwar products created by transforming facilities used for military purposes during the war. Many of the national dramas that unfolded on these stages were also products created by shifting the focus of dramaturgy from military heroism to athletic heroism. The term "postwar period" as used here refers to the transition from militarism (war) to peace. In this paper, we first verify that the major facilities for the 1964 Tokyo Olympic Games were constructed on former Japanese military facility sites. Next, we confirm that throughout Japan, after the war many athletic facilities were constructed in places where military facilities were located during the war. Then, we reveal that in the process of returning Washington Heights in Yoyogi to Japan in order to construct facilities for the Olympics, there was a gap between the intentions of the United States and the Japanese government, which was actually seeking the return of the U.S. base in Asaka. In addition, we also confirm that the Oriental Witches and Kokichi Tsuburaya, who played leading roles in the national dramas of the Olympics, were both closely tied to the process through which a poor nation turned itself into an industrialized country-the Oriental Witches as former female workers of cotton mills, and Tsuburaya as a member of the Self-defense Forces from the Tohoku region. Thus, this paper aims to throw light on the continuous elements from the war period of the 1964 Olympic Games.
著者
百木 漠
出版者
経済社会学会
雑誌
経済社会学会年報 (ISSN:09183116)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.161-170, 2016 (Released:2021-04-01)

Marx did not truly predict the blueprint of future society. In general, Marx's idea of communism was proven wrong by the failure of the Soviet Union in the 20th century. However, recent studies have clarified that Marx's ideal future society was not state socialism such as it occurred within the Soviet Union, but an associative society in which various spontaneous associations unite. Marx believed that producer cooperatives were the most important form that an association could take, but also warned that disconnected cooperatives could not overcome capitalism. In order to transcend capitalist society, Marx asserted that various associations needed to unite and form a vast associative society. In order to realize this union of various associations, “fully developed individuals” who positively participate in organizing associations must appear. In other words, Marx's ideal of communist society cannot be realized without the appearance of “fully developed individuals.” Although a united society of associations sounds like a utopia, Marx expected that the “fully developed individuals” would appear through the decrease of labor time and the increase of free time, as Marx argued that individuals can fully develop their abilities and talents by utilizing their free time. Marx wrote that free time would be wealth itself, partly for the enjoyment of the product, partly for free activity in a future society. Therefore, the decrease of labor time and the increase of free time was the decisive element in the realization of his ideal of associative society. By increasing free time, Marx thought, all workers would become “fully developed individuals,” take part in associative action, and finally, actualize an ideal associative society.
著者
内田 さえ 渡邊 一平 矢野 忠 佐藤 優子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-51, 2004-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
66

脳機能および中枢神経疾患に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、当該領域のレビューを行った。基礎研究における動物実験のレビューでは、麻酔ラットへの鍼刺激による大脳皮質および海馬の血流量に及ぼす影響とその機序を中心に紹介した。ヒトを対象とした基礎研究のレビューでは、fMRI、脳磁気図、脳波 (事象関連電位) などを指標とした鍼の効果に関する知見が総括された。また、中枢神経疾患に対する鍼灸の効果に関するレビューについては、脳血管障害後後遺症に対する鍼治療の有効性について総括すると共に、痙性抑制あるいは廃用症候群の改善によるQOL向上の可能性についても考察した。
著者
金澤 伸雄
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.107-113, 2017 (Released:2018-08-29)
参考文献数
30

ハンセン病はらい菌による感染症であるが、伝染病ではなく、むしろ宿主の免疫状態や反応によって病像が決まる「免疫病」とされる。同時に、「遺伝病」ではないが、宿主の遺伝的素因も大きく関与する。本稿では、免疫異常の病態を2つの「免疫ベクトル」で二次元的に展開し、筆者がこれまで経験してきたサルコイド様肉芽腫性病変を伴う原発性免疫不全症、遺伝性自己炎症性疾患であるブラウ症候群、鑑別が重要なサルコイドーシスなどとともに、類結核型とらい腫型のハンセン病をその平面上に位置付けることにより、これらの対比を明確にした。確かにハンセン病は先進国では消えゆく疾患であるかもしれないが、免疫学にかけがえのないモデルを提供し、その進歩に大きく寄与した。免疫抑制剤の進歩による再帰感染のリスクという新たな問題も出現し、現代においてなお、「古くて新しい」この疾患の存在意義は大きい。
著者
嶋津 拓
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.56-70, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
33

この20年ほどの間に,言語教育の世界において,「言語政策」と言われるものが注目を集めるようになってきた。その背景には,単一言語主義や単一言語状態を是認する考え方への反発,さらには,そのような考え方を追認するような新自由主義的発想への異議申立があるものと考えることができるのだが,言語政策が注目を集めるようになったのと並行して,「言語政策研究」というディシプリンも認知されるようになってきた。本稿では,かかる言語政策研究について,なかでも日本語教育に関連する言語政策研究について,その現状を概観する。また,将来的な課題について考えてみたい。
著者
坂口 明子 任 智美 岡 秀樹 前田 英美 根来 篤 梅本 匡則 阪上 雅史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.77-82, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
10 15

味覚障害は原因がさまざまであり, 各原因別での改善率や治療期間, 経過の報告は多くない. 今回, われわれは味覚障害患者1,059例を原因別に自覚症状の改善率, 治癒期間について検討した.1999年1月から2011年1月までの12年間に味覚外来を受診した味覚障害例1,059例 (男性412例, 女性647例, 平均年齢60.0歳) を対象とした.全例に問診, 味覚検査 (電気味覚検査, 濾紙ディスク法), 採血 (Zn, Fe, Cu), SDS (Self-rating Depression Scale, 自己評価式抑うつ性尺度) を施行し経過を追った. 治療は亜鉛製剤, 鉄剤, 漢方薬, 抗不安薬などの内服を症状, 程度に応じて行った. また, 自覚症状の程度をVAS (Visual Analogue Scale) により評価した.味覚障害の原因分類では特発性が最も多く192例 (18.2%) であった. 次いで心因性が186例 (17.6%), 薬剤性が179例 (16.9%) であった. 転帰が確定し得た680例で自覚症状の改善率は, 感冒後64/92例 (70.2%), 鉄欠乏性31/35例 (88.6%), 亜鉛欠乏性85/116例 (73.3%) と比較的良好であったが, 外傷性は2/12例 (16.7%), 医原性は13/33例 (39.4%), 心因性は46/100例 (46.0%) と低かった. 平均治癒期間は, 薬剤性で約10カ月間と鉄欠乏性や感冒後と比較すると, 約2倍長期間に渡った. また症状出現から受診までが6カ月以上の例に対し, 6カ月未満の例では改善率が良好で, 回復までの期間は前者が後者と比べると有意に長かった (p<0.05).
著者
西原 正和
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.10-17, 2023 (Released:2023-08-10)

目的:ホソバオケラは,生薬蒼朮の基原植物で,日本には江戸時代に渡来し,佐渡においても栽培されており,サドオケラという名前が残っている.しかし現在,佐渡において,植物としての「サドオケラ」だけでなく,その言葉自体を聞いたことがないという者がほとんどで,庭先で先祖が植えたとされる株がそのままの状態で残っており,その植物がホソバオケラということを初めて知るような状況である.そのため,なぜこのような状況に至ったのか,さらに詳細な調査を行うこととした. 方法:過去のホソバオケラに関する書物,文献,報告を再調査するとともに,佐渡の地域史,歴史書物等を調査した.また,これらの調査の中で得られた,佐渡においてホソバオケラを知っていると思われる関係者や現地の漢方生薬取扱薬局への聞き取り調査を,2019 年から 2022 年に行った. 結果:昭和期以降,佐渡におけるホソバオケラは,太平洋戦争中に供出されたことや,その後,増産を行うがホソバオケラの表面に析出したヒネソールやβ-オイデスモールなどの成分の結晶をカビと誤認されて廃棄され失敗に終わったこと,原種圃場の取り組みがうまくいかなかったことなどにより,現在は大規模な栽培が行われていないことを確認した. 結論:佐渡のホソバオケラは,昭和期にも栽培,出荷されていたが,その後の取り組みがうまくいかなかったことから,佐渡内ではその存在を知る者がほとんどおらず,このままでは佐渡内に現存するホソバオケラは消滅する可能性があることが明らかとなった.
著者
西本 和平 植田 智裕 兒玉 隆之
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.579-589, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
38

【目的】本研究では,歩行イメージを時間的空間的に変化させた際の脳内神経活動性について,脳波解析により検討することを目的とした。【方法】対象は健常若年者8 名であり,歩行イメージの速度を変化させる時間的変化条件と歩行方向を変化させる空間的変化条件の下,脳波microstate segmentation 法により,それぞれの特徴的な脳内神経活動領域を検証し,時間的空間的変化時の特性を検討した。【結果】歩行イメージにおいて時間的空間的変化時に共通して補足運動野および楔前部に優位な神経活動を認めた。時間的変化では前頭眼野および上頭頂小葉,空間的変化では前頭眼野,前頭極および上頭頂小葉にそれぞれ優位な神経活動を認めた。【結論】歩行イメージを時間的空間的に変化させた際には,異なる脳領域が活動することが示唆された。歩行イメージを最適化された介入手法として用いる場合には,時間的および空間的特性を考慮していく必要性が示された。
著者
松本 和也 河内 茉帆 森繁 優衣 品川 葵 沼田 美里 杉原 迅紀 吉村 耕一
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.137-143, 2019 (Released:2020-01-14)
参考文献数
27

本研究では、バーチャルリアリティ(VR)映像を用いて、周りに人が居る状況や屋外を散歩する状況を擬似的に体験することにより、ストレス緩和や気分状態改善が得られるか否かについて実験的に検証した。具体的には、被験者に暗算計算作業によるストレス負荷を課した後で、VR映像の視聴による介入を行い、緊張やリラックスの評価のための脳波測定と質問紙による気分状態評価を行った。その結果、周りに人が居る状況と独りの状況の比較実験では、VR視聴の介入中に脳波の緊張値の低下がみられた。気分状態評価による気分障害の程度には差を認めなかった。屋外の散歩と室内の比較実験では、VRによる散歩映像の介入終了後に、脳波の緊張値の低下とリラックス値の増加が認められた。また、室内のVRでみられた気分障害が散歩のVRではみられなかった。これらの結果から、VR映像の視聴(例えば、VR散歩)は、入院患者や自宅療養者の手軽なストレス緩和法として期待できる。
著者
末次 一博 白石 秀子 泉 愛子 田中 弘 芝 篤志
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.44-56, 1994-06-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

A large variety of microorganisms such as Propionibacterium acnes and Staphlococcus epidermidis exist on the human skin surface, forming a skin microbial flora. This flora is likely to influence the skin surface defence and the skin surface condition. This report covers the correlation between the skin microbial flora and the skin surface condition.We found that the larger numbers of P. acnes are concerned in the worsening of skin surface condition. The skin condition closely correlated to the amount of free fatty acids on the skin, and also we found that the larger quantity of the free fatty acids leads the worsening of skin surface condition. These results suggest that the lipase of P. acnes may hydrolyze triglycerides on the skin surface into the free fatty acids which irritate the skin.On the other hand, we found that both S. epidermidis itself and the peptides produced from various proteins by S. epidermidis have high antioxidative activity. This result suggests that S. epidermidis protects the lipids on the skin from oxidation caused by e. g. ultraviolet rays.From these results we suggest that P. acnes make worse the skin surface condition, whereas S. epidermidis serves an important function of prevention of the worsening of the skin condition by harmful lipids peroxides.
著者
植松 光夫 平 啓介 奥田 章順
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.517-527, 2003-07-05 (Released:2008-04-14)
被引用文献数
2

我が国の独自技術で開発したUS-1A大型飛行艇(水陸両用)は,波高が3m以上の荒天下においても離着水が可能な世界一の性能を有している。飛行艇の最大の魅力は,航空機でありながら海上に着水でき,短時間で広範囲の海域の観測が可能な点にある。シンポジウムでは,海洋にかかわる各分野(海洋物理,海洋生物,海洋化学,水産海洋,衛星海洋)での飛行艇を利用した観測やそれに必要とされる観測装置の開発などについて議論し,飛行艇による大気・海洋観測の実現に向けての具体的な提案を行った。また,多くの研究者が船舶と同様に利用できるように飛行艇の性能や特徴を説明した。お互いの特徴を補完した船舶との同時観測や,飛行艇にしか出来ない観測などについての運用についてなども含め,本報告にまとめた。