著者
松本 健佑
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2022年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.106, 2022 (Released:2022-03-28)

本研究の目的は,地方選挙が同時に行われると国政選挙の投票率が上がるのかを検討することである.2004~2013年の参議院選挙が地方選挙と同時に行われた際にどの程度投票率が上昇したのか,差の差法によって分析した.分析の結果は以下の3点にまとめられる.第1に,地方選挙が同じ日に行われると平均で6.65ポイント参議院選挙の投票率が上がる.第2に,都道府県レベルの選挙よりも市区町村レベルの選挙が同時に行われたときの方が参議院選挙の投票率が大きく上がる.第3に,市区町村レベルの選挙については,首長選挙よりも議会選挙が同時に行われたときの方が参議院選挙の投票率が大きく上がる.また,同日選挙の効果は地域によって異なるのかについても分析した.その結果,市区町村レベルの選挙が同時に行われる場合は,農村的な地域であるほど参議院選挙の投票率が上がることがわかった.
著者
篠宮 紗和子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.193-214, 2019-06-30 (Released:2021-04-01)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本研究は,LD(学習障害)の文部省定義(1999年)の作成過程において「中枢神経系の機能障害」という生物学的原因論がどのように採用されたのかについて,文部省定義に関する行政資料と回顧文書から明らかにした。 本研究の社会学的関心は,病の原因論が選択される過程で,生物医学モデルとその他のモデルがどのように並存するのかというものである。先行研究では,LDは医療化(=生物医学モデルの浸透)の事例として研究されてきた。しかし,当時の医学研究ではLDの生物医学的原因の有無を確認できたのはLD児の3割であったほか,治療法も未確立であった。また,LDは当時教育概念と言われており,医学からはある程度独立した概念であった。LDが必ずしも生物医学モデルによって把握できなかったという事実を踏まえてLDという現象を説明するには,単に生物医学モデルの浸透の事例としてではなく,病を捉えるモデルが多様化するなかでその概念や原因論が争われた事例として分析を行う必要がある。 分析の結果,文部省の議論では生物学的原因論を明記するアメリカ案と障害の社会モデルに基づいたイギリス案が検討されたが,①LDが通常の教育では指導できない存在であることを強調でき,②新たに増加する障害児の数が比較的少なく現場の混乱が少ないという利点から,アメリカ案が選択されたことがわかった。当時の社会・制度的状況が考慮された結果,イギリス案は適切ではないと判断されたのである。
著者
牧野 良成
出版者
日本女性学研究会
雑誌
女性学年報 (ISSN:03895203)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.41-62, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
57

フェミニズムの歴史が語られるとき、〈波wave〉という概念に頼った区分の方法がしばしば用いられる。典型的には、1960年代なかばから70年代初頭にかけて運動が高まりをみせた時期が、19世紀なかばから20世紀初頭にかけての〈第一波〉に次ぐ〈第二波second wave〉と捉えられる。遅くとも1960年代アメリカにさかのぼるこうした用法については、〈第三波〉なる自称が現われた90年代以降の英語圏では、批判的な検討が始まっている。同時代の運動の昂揚とともに運動史への関心もまた高まる現在、日本語圏においても〈波〉概念が帯びる文脈性を踏まえたうえで歴史記述の方向性を探る必要は増していると思われる。そこで本稿では、1970年代以降のフェミニズムの歴史が語られるとき、日本語圏では〈波〉という区分がいかにして用いられてきたかを検証する。注目すべきは、70年代にはアメリカなど諸外国の動向を紹介する文脈で用いられていた〈波〉概念が、80年代なかばには日本語圏の動向をも指し示すものへと転じたことである。ここからは、女性学‐フェミニズムの観点を打ち立てるべく奮闘した者たちが、地域や争点を異にする同時代の運動や先行する運動をにらみながら選び取った、自己呈示と戦略とでも言うべきものが読み取れる。
著者
伊藤 裕子 相良 順子 池田 政子 川浦 康至
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.276-281, 2003-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
27
被引用文献数
32 22

In this study, a subjective well-being scale was developed, and its reliability and validity evaluated. The Subjective Well-Being Scale (SWBS) had twelve items which covered four domains. It was administered to 1005 adults and 520 college students. Results indicated that for the students, college life satisfaction and self-esteem had positive correlations with SWBS score. For the adults, marital satisfaction, workplace satisfaction, and household income satisfaction had positive correlations with the score. These findings showed considerable constructive validity for SWBS. In addition, internal consistency was sufficiently high, indicating the measure's high reliability. SWBS may be a simple but reliable and valid measure, and it is useful for examining subjective well-being of both adults and college students.
著者
山本 康友
出版者
公益社団法人 日本不動産学会
雑誌
日本不動産学会誌 (ISSN:09113576)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.49-53, 2014-06-25 (Released:2017-01-23)
参考文献数
10
著者
崔 銀姫
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.93-108, 2012-12-31 (Released:2017-02-04)

本稿では,1950年代の日本における「観光アイヌ」の誕生をめぐって全国的な流行と社会的なブームに至るまでの歴史を,近代後半からおよそ60年間(1899年の「北海道旧土人保護法の制定」〜1959年の『コタンの人たち』)の時代における「観光アイヌとは何か」の問題を中心に,単なる「差別」と「同化」の問題に帰結させるのではなく,20世紀初期から半ばのメディアの空間の成立と変容をメディア文化論の視点から鳥瞰的に検討することで,「覧(み)せる/観(み)られる」といった身体を媒体にした経験のなかに隠れていた歴史社会的意味とその変容を考える。考察の結果,第1期の時代(1899年〜1926年)において,アイヌにとってはそうした博覧会の主催者たちの欲望への理解には至らず,「観られる」アイヌの身体の方向性は異なったものであった。その後,第2期の時代(1927年〜1945年)になるとアイヌの大きな変化としては,「民族意識の高揚」とアイヌ自らが各種の著作物を出版したことであった。その後の第3期(1946年〜1959年)の戦争が終わってから1959年までの特徴は,「観光の介入」による変化があった。「観光アイヌ」とは,さまざまなファクターが相まった60年間のなかで「観られる」アイヌとして風景化されていたといえる。
著者
山下 勝 西光 伸二 稲山 栄三 吉田 集而
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.818-824, 1993-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

1. 回分発酵式口噛醪においては, 特別な酵母集積法を使用しない場合, 酵母の増殖に約5日, 発酵に約5日, 合計10日位の醪日数を必要とし, 短時日にアルコールを生成することはなかった。しかし, 前醪利用方式や連醸方式を利用すると, 3~5日の短時日で1~5%のアルコール生成が可能となった。大部分の口噛酒は, 後者の方法を利用していたものと推察できた。2. 唾液アミラーゼ活性に男女間の有意差はなく, 男女別口噛醪でも生成アルコールに有意差はなかった。3. 口噛時間3分で精白生米では約2%, 精白蒸米では約6%の還元糖が生成した。また, この3分間の口噛の間に, 口噛前米量の約200~300%の唾液が加わることが認められた。4. 口噛酒に関与する微生物としては, 唾液中に数十/mlの酵母と107/mlの乳酸菌が常に存在し, 発酵に関与した。この他に, 生米を使用した場合には, 生米中の酵母 (102~103/ml) が発酵に関与した。男女が学生は全般に唾液中の酵母数が少なく, 発酵性酵母を持っていない人も半数位認められた。唾液中の酵母数は個人差が大きかったので, 朝のハミガキの影響はないか調べたところ, ハミガキの影響は少なく, 酵母数の少ない人は常に少ない傾向が認められた。5. 生成した口噛酒は, デンプン質が多く残存しているために泥状を呈し, 酸が多いために多少すっぱめであり, アルコール量は1~5%位と少量であった。
著者
若林 昌子 杉光 一成
出版者
日本テスト学会
雑誌
日本テスト学会誌 (ISSN:18809618)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.19-35, 2016 (Released:2019-05-25)
参考文献数
21

試験問題公開の是非の判断については,特に公的試験においては様々な考えがあり,試験に関わる立場や試験に対する価値観の違いを考慮して議論されることはあまりなかった.本研究では,わが国の公的試験の例として,情報公開制度において試験問題を対象とした複数の事例について調査し,俯瞰して考察することにより,試験問題公開の判断基準を得ることを目的とした.その結果,次の5つの観点が得られた. 1) 過去の試験問題の公開を透明性確保の必要条件とするかどうか,(2) 将来の試験のために,過去の試験問題を再利用するかどうか,(3) 過去の試験問題を活用した試験対策を許容するかどうか,(4) 新しい試験問題を開発するための労力増加を受容するかどうか,(5) 過去の試験問題の情報を管理しているかどうか.これらの観点においては,試験に関わる立場や試験に対する価値観の違いによって判断が異なっていることから,試験問題公開の判断基準になると考えられた.
著者
小野 章昌
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.780-785, 2014 (Released:2020-02-19)

エネルギー・ミックスの本格的な検討が求められている我が国にとって,将来を託せるエネルギー源の見通しを得ることは何にもまして重要と言えよう。再生可能エネルギーについては導入先進国であるEU諸国,とりわけドイツの実情を知ることが一番の近道である。
著者
眞壁 優美
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.237-240, 2013 (Released:2014-09-17)
参考文献数
6

鶏肉,豚肉および牛肉を用いて,食肉の食感に及ぼす塩分濃度および市販塩の種類の影響について基礎的な検討を行った.塩分濃度の影響については,塩分濃度の増加に伴うゲル強度の変化は食肉によって異なったが,いずれの食肉においても塩分濃度が増加するにつれて保水性は増した.市販塩の種類の影響については,牛肉において,ゲル強度および収量に対する塩の塩化ナトリウム純度の影響が見られたが,鶏肉および豚肉においては影響が小さかった.従って,いずれの食肉においても,塩を添加することにより,脂肪の分離や肉汁の溶出を防ぐことが分かった.また,塩を添加することにより,牛肉は食感の変化があまりないのに対し,鶏肉については,かまぼこのような弾力性のある食感を,豚肉については柔らかい食感を得られることが示唆された.
著者
梅谷 凌平 後藤 晶 岡田 勇 山本 仁志
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.31-38, 2020-11-30 (Released:2020-11-30)
参考文献数
58

Upstream reciprocity refers to a person who has received help helping a third person instead of the person who helped him/her. It is observed widely but lacks a theory explaining its mechanism. Theory suggests that upstream reciprocity cannot maintain stable cooperation. Here we examine the possibility that the strength of a belief in a just world, which is a cognitive bias, drives upstream reciprocity. We test the effects on upstream reciprocity of a belief in a just world by conducting an upstream reciprocity game based on a trust game. The results demonstrate that upstream reciprocity is explained by a belief in immanent justice, a subconcept of a belief in a just world. These results shed light on a mechanism that explains why upstream reciprocity is observed in the real world.
著者
松井 剛
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.87-99, 2013-03-20 (Released:2013-10-17)
参考文献数
35
被引用文献数
5

本論文は,「癒し」という流行語が社会に波及する中で生じた意味創造プロセスを,20年分の雑誌記事タイトル8033件のテキスト分析を通じて明らかにする.特に注目をするのは,マーケティングを通じて新しい言葉が普及する一方で,こうした言葉の流行に乗る形でマーケティング努力の模倣が生じるという相互作用である.またブームが生じた理由を説くメディアの「理屈づけ」が,こうした相互作用を強化する可能性も指摘される.
著者
平野 浩彦
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.235-244, 2017-12-31 (Released:2018-02-15)
参考文献数
7

日本の認知症の患者数は462万人との報告がなされ,今後もその数は増加することが推定されている.そういったなか,平成27年1月に国家戦略として7つの柱からなる認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が発表された.二つ目の柱である「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」に,歯科医師への具体的なアクションとして「認知症対応力向上研修」の実施が提示された.さらに今後も「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」に向け,認知症の人が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるために,歯科医師としての役割が求められることになろう.
著者
坂口 修平
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.69-87, 2004-02-01 (Released:2004-01-28)
参考文献数
77
被引用文献数
5 8

Despite the remarkable progress in intensive care medicine, sepsis and shock continue to be major clinical problems in intensive care units. Septic shock may be associated with a toxic state initiated by the stimulation of monocytes by bacterial toxins such as endotoxin, which is released into the bloodstream. This study describes the role of oxidative stress in endotoxin-induced metabolic disorders. We demonstrate that endotoxin injection results in lipid peroxide formation and membrane injury in experimental animals, causing decreased levels of free radical scavengers or quenchers. Interestingly, it was also suggested that tumor necrosis factor (TNF)-induced oxidative stress occurs as a result of bacterial or endotoxin translocation under conditions of reduced reticuloendothelial system function in various disease states. In addition, we suggest that intracellular Ca2+, Zn2+, or selenium levels may participate, at least in part, in the oxidative stress during endotoxemia. On the other hand, it is also suggested that the extent of endotoxin-induced nitric oxide (NO) formation may be due, at least in part, to a change in heme metabolic regulation during endotoxemia. However, in our experimental model, NO is not crucial for lipid peroxide formation during endotoxemia. Sho-saiko-to is one of the most frequently prescribed Kampo medicines and has primarily been used to treat chronic hepatitis. We report that Sho-saiko-to decreases the rh TNF-induced lethality in galactosamine-hypersensitized mice and protects mice against oxygen toxicity and Ca2+ overload in the cytoplasm or mitochondria during endotoxemia. We further suggest that Sho-saiko-to shows a suppressive effect on NO generation in macrophages stimulated with endotoxin and that it may be useful in improving endotoxin shock symptoms.
著者
金澤 敬
出版者
Japan Cartographers Association
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.13-20, 2000-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
16
著者
東宮 昭彦
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.281-294, 2016-06-30 (Released:2016-09-12)
参考文献数
105

Recent developments in the understanding of magma chambers (reservoirs), pre-eruptive magma processes, and the conditions that lead to volcanic eruptions are reviewed mainly from a petrological point of view. A “magma reservoir” consists of inner “magma chamber (s)” filled with eruptible magma containing less than ca. 50% crystal, and outer “mush” region with more than ca. 50% crystal. Most of magma reservoirs are in a state of mush, so that “rejuvenation” or “remobilization” is necessary before eruption. Magma can erupt if its viscosity is less than ca. 106 Pa s. More viscous magma can erupt only after a precursory eruption of less viscous magma, such as a hybrid magma between the viscous magma and a less viscous mafic magma. In this context, pre-eruptive magma viscosity, i.e. magma viscosity at the magma reservoir, is an important measure to evaluate magma eruptibility. Dating for whole mineral or even its local point (e.g., zircon age) and diffusion analysis for various types of minerals (e.g., magnetite, olivine, pyroxene, and plagioclase) have revealed timescales of pre-eruptive magma processes. Eruption triggers, such as injection of high-temperature magma, are inferred to occur days to months before the eruption in many cases. Magma residence times, during which the magmas are in eruptible conditions, are years to decades for typical magma systems, but may reach hundreds of thousand years for large caldera systems.