著者
濵田 千枝美 蓑田 恒平 三宅 功祐 眞田 彩華 石川 成人 安藤 恒平 真弓 俊彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.41-45, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
12

わが国においてショック充電中に胸骨圧迫を実施すると充電がキャンセルされるAEDが存在するといわれているが,その実状は不明である。また,無脈性心室頻拍の際にAEDが除細動の適応なしと誤判定した症例も報告されているが,AEDのショック適応基準などのプログラムも不明である。今回,それらを明らかにするためにアンケート調査を行った。 結果:AED製造/ 販売メーカー8社から,AED,半自動式除細動器,AEDモード付きマニュアル除細動器合計44機種の回答を得た。そのうち,ショック充電中に胸骨圧迫により充電がキャンセルされる機種が30機種,充電中も胸骨圧迫が可能な機種は14機種であった。また,無脈性心室頻拍の鑑別は各AED製造企業が独自のプログラムを組んでいることが判明した。 今後,さらなるAEDの機種の改善・開発や適切なAED使用方法の周知や対応により,救命率の向上につながることに期待する。
著者
山口 瑞穂
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.65-79, 2019-06-08 (Released:2021-06-05)
参考文献数
39

本稿は、1970年代半ばから1990年代半ばの日本におけるエホバの証人の歴史展開を、宗教運動論や教団組織論の視点から検討し、この時期の発展要因を明らかにする。検討に際し、教団側の刊行物だけでなく教団外からの情報も採用し、世界本部の布教戦略に注意を払った。ハルマゲドン1975年説が期待外れとなり、離脱者の増加という現象に直面した世界本部は、以前にも増して「終わりが近い」ことを強調し、多くの時間を宣教に費やす「開拓奉仕」と称される活動を督励した。日本支部の信者に占める「開拓者」の比率は群を抜いて高く、その多くは非信者の夫をもつ主婦たちであった。エホバの証人の救済観や教義は、日本人には本来受け入れにくいものであったが、「家から家」への戸別訪問による宣教に多大な時間が投じられたことが入信者の獲得と教勢拡大につながった。世界本部と日本支部の強固な関係は、献身的な活動を引き出した看過できない要素となっている。
著者
Tomohito Hamazaki Harumi Okuyama Akira Tanaka Yasuo Kagawa Yoichi Ogushi Rokuro Hama
出版者
Japan Society for Lipid Nutrition
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.67-75, 2012 (Released:2012-04-29)
被引用文献数
1

Almost all Japanese epidemiological studies showed that all-cause mortality was lower in subjects with high serum total or LDL-cholesterol levels. Studies showing the disadvantage of high cholesterol levels included or were likely to include more participants with FH than in the general Japanese population. This also explains why epidemiological studies with elderly people are not able to detect any disadvantage of high cholesterol levels; groups of elderly subjects contain a smaller proportion of vulnerable FH patients who die earlier than those without FH. Meta-analyses of the effects of statins were used to indicate the favorable effects of these drugs, which might be considered as proof that cholesterol has unfavorable effects. However, the absolute effect size of statins on all-cause mortality is rather small, if any. Moreover, studies included in meta-analyses of statins were performed before the new clinical research regulation came into effect in 2005-2006 in the EU, which required clinical trial results to be published even if the data were not favorable for the tested drugs (BJOG 2007; 114: 917, http://www.bjog.org/view/0/index.html). Considering the fact that placebo-controlled clinical trials performed after the new regulation were mostly negative (J Lipid Nutr 2010; 19: 65, http://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/19/1/65/_pdf/-char/ja/), the results published before the regulation were questionable and should not be used as the basis for recommendations for treatment with cholesterol-lowering medications. Because the relative risks of high cholesterol for CHD vary from 5, administering cholesterol-lowering medications to all Japanese individuals equally is not rational; at least women and elderly men need to be carefully re-examined because no or little positive associations between plasma cholesterol and CHD mortality rates have been reported in these groups.
著者
松浦 友紀子 伊吾田 宏正 岡本 匡代 伊吾田 順平
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.11-20, 2015 (Released:2015-07-04)
参考文献数
17
被引用文献数
3

日本では,食肉として流通するニホンジカ(Cervus nippon)の内臓摘出は解体処理場で行うことが推奨されている.それに対してシカ肉の流通が盛んな欧州連合では,肉の品質保持および衛生的観点から,野外での内臓摘出が認められている.本研究では,野外での内臓摘出の導入について検討するため,野外で内臓摘出した肉の衛生状態を明らかにした.調査は従来の方法である解体処理場で内臓摘出した4個体の枝肉と,野外で内臓摘出した10個体の枝肉を用い,肉表面の一般生菌,大腸菌群,O-157,カンピロバクター,サルモネラ,エルシニアについて比較した.野外の内臓摘出は,北海道北部に位置する西興部村で実施した.従来の方法は,北海道西部にある解体処理場のシカを用いて実施した.ふき取り検査の結果,どちらの肉も一般生菌以外は検出されなかった.また,どちらの肉も一般生菌数は汚染の目安となる基準値より低く,とくに積雪期で顕著だった.これにより,野外でも衛生的な内臓摘出が可能であることが明らかになった.ただし,今回実施した野外での内臓摘出は,衛生的な状態を保つためにできるだけ配慮した手法を取っており,衛生管理の正確な知識と技術が必要である.欧州連合の衛生管理をモデルに野獣肉検査資格制度を導入し,捕獲個体の検査体制を整備した上で,野生動物に特化した一次処理方法として,野外での内臓摘出を検討すべきであると考えられた.
著者
武 洲 中西 博
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.150, no.3, pp.141-147, 2017 (Released:2017-09-09)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

アルツハイマー病の原因として「アミロイドカスケード仮説」が広く支持されている.しかし,これまでこの仮説に基づいてアミロイドβ(Aβ)とその関連分子を標的とした多くの薬剤が開発されてきたが,未だ臨床試験によってその効果が証明された根本治療薬(疾患修飾薬)は得られていない.最近,以前から提唱されていたアルツハイマー病の「脳炎症仮説」ならびに「感染症仮説」に新たなエビデンスも加わり,再び注目されるようになってきた.脳炎症に関与するミクログリアの増殖や生存に必要なコロニー刺激性因子1受容体キナーゼに対する阻害薬がアルツハイマー病モデルマウスにおける学習・記憶障害を予防することが発見され,慢性的脳炎症がアルツハイマー病の進行に伴うものではなくその原因となることを示した.一方,アルツハイマー病患者の剖検脳においてウイルス,細菌ならびに真菌などの病原性微生物が検出され,Aβが感染に対する自然免疫としての役割を果たしている可能性も示唆されている.さらに最近,歯周病菌であるジンジバリス菌のリポ多糖類や主要なプロテアーゼであるジンジパインがミクログリアの活性化を介して慢性的脳炎症を誘引し,認知機能障害に関与することが示唆されている.今後,アルツハイマー病の予防法ならびに根本治療法の確立を目指し,「脳炎症仮説」ならびに「感染症仮説」を再評価するとともにこれらの仮説に基づいた創薬も重要になると考えられる.
著者
岩田 千亜紀
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.58-72, 2021-11-30 (Released:2022-02-02)
参考文献数
27

本研究では,2020年に一般社団法人Springによって実施された「性被害の実態調査アンケート」の質的調査の2次分析を行った.その結果,性暴力被害者のニーズを踏まえた相談支援についての課題として,“相談機関のアクセシビリティ(利用しやすさ)”,“相談機関のアクセプタビリティ(受け入れやすさ)”,“相談機関の相談の質”の三つがあることがわかった.そのため,性暴力被害者が相談支援に繋がるためには,物理的アクセシビリティを高めるだけでなく,相談支援の質の向上や,中長期的な相談支援の提供など,包括的かつ総合的な支援サービスへの改善が求められる.性暴力被害者への相談支援におけるソーシャルワーク支援は,著しく乏しい現状にある.今後,ワンストップ支援センターや地域のソーシャルワーカーが,性暴力被害者の生活再建・回復を目指した中長期的な支援の中核になることが必要である.
著者
今里 滋 Shigeru Imasato
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.15-29, 2020-03

2006年度から発足した同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション・コースにおいて複数の大学院生が獣害対策を研究課題としてきた。本論は、その課題の背景となったわが国の獣害対策、そしてその手段としての狩猟について、歴史的経緯、制度の変遷、政策およびガバナンス面での現代的課題を、自ら狩猟・有害獣駆除を行ってきた筆者の経験を踏まえて、考察したものである。井上恒男教授退職記念号退職記念論文(Article in commemoration of the retirement of Professor Tsuneo Inoue)
著者
あしやま ひろこ
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.111-132, 2022-12-22 (Released:2022-12-28)
参考文献数
24

現実社会と同じような活動ができる仮想空間としての「メタバース」では、ユーザーは3Dデータ等を自己の「アバター」、すなわち実質的な身体として用いながら生活することとなる。現行のメタバースの中でも自由度が高くユーザーも多いとされるソーシャルVRサービスである「VRChat」では、日本語ユーザーへの既存の調査から、多くのユーザーはアバター用のデータを他者から購入し、加工するかそのままの形で自己のアバターとして用いることが示される。また、ユーザーから人気のある市販アバターの利用規約を分析したところ、殆どで「政治活動」および「宗教活動」が禁止されていることがわかった。この制限は私的自治に関する判例や著作権法、実社会における一般的な契約等に照らしても合理性があると考えられるため、アバターの流通を市場経済だけに任せた場合、多くのユーザーはアバターを購入して利用する場合に、参政権や信教の自由に関連した行為がメタバース上で制約を受けることとなる。しかしこの問題を解消するために、数多く存在する売り手(クリエイター)の意に反して、当該制限を無効とさせるように国家が強制することは解決方法として適切とは言いがたい。精神的自由は国家権力の介入を許さないことが本質であり、公共の福祉による制約は反道徳的・反社会的な結果を生ずる場合にその防止に最小限度において認められる性質のもので、アバターは原理的には誰もが制作可能である以上は利用者の参政権や信教の自由は完全にまでは否定されているわけではなく、クリエイターの思想・良心の自由を一方的に否定することは適当ではないと考えられるためである。また、このような状況でアバターに関する財産権の一部を否定する観点についても、社会全体の利益には結びつかないとも考える。本稿ではこの利益の衝突とでもいえる問題の解決策として、広く国民に対してアバターを自ら作るための技能を習得できるような教育機会の提供と、その手段の提供を保障するという方法を提案する。利用者側が自らアバターを創作できないために他者から購入せざるを得ないという状況こそが根本的な課題なのであるからして、利用者が自らアバターを制作できる状況を国が保障できれば先の問題は解決されると考えられるためである。アバターを自ら作ることができる技能を得られる機会と手段が国民に保障されれば、アバターの売買における私的自治の尊重に対する正当性がより担保され、結果としてクリエイターによる創作文化や経済活動の発展にも寄与するものと考えられる。
著者
杉江 謙一 阿久津 守
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.115-121, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
13
被引用文献数
2

The cultivar cannabis (Cannabis sativa L.) ‘Tochigi-shiro’ has been developed by the Tochigi Prefectural Institute of Public Health and Environmental Science and Tochigi Prefectural Agricultural Experiment Station. It is considered nontoxic and a fiber-type cannabis because of its low concentration of the hallucinogen Δ9-tetrahydrocannabinol (THC). Recently, concentrated forms of cannabis, such as butane hash oil (BHO), have spread globally, and seizures of BHO have increased in Japan. We expect that the use of BHO prepared from Tochigi-shiro may be detrimental to health. However, the concentrations of cannabinoids in Tochigi-shiro have not previously been reported. In this study, the concentrations of THC, cannabidiol (CBD), cannabinol, and tetrahydrocannabivarin in Tochigi-shiro cultivated in Tochigi Prefecture were measured. Further, BHO was produced from the leaves of Tochigi-shiro using commercially available extraction devices to determine the extraction efficiency of THC and CBD. THC was detected in Tochigi-shiro, and concentrations of each cannabinoid differed between plants grown at three sites in Tochigi Prefecture. However, the concentration ratio of CBD to THC was almost the same in plants from all three sites. In BHO, the concentrations of THC and CBD were 6.59% w/w and 35.0% w/w, respectively. This indicates that the concentrations of THC and CBD were approximately 55- and 35-fold greater, respectively, in BHO than in the leaves of plants before butane gas extraction. We confirmed that the concentration of THC in plants was low, whereas the concentration in BHO was high. In the BHO manufactured from Tochigi-shiro, the CBD concentration was five times higher than that of THC. Moreover, CBD can antagonize the psychotomimetic symptoms caused by THC. Therefore, even if BHO produced from this plant was used, the effect of THC would hardly be obtained. Currently, interest in cannabis is increasing worldwide. The traditional industry producing cannabis as a source of fiber may be affected by the theft of Tochigi-shiro. The results of the present study are relevant to prefectural and city governments and cultivators, and suggest the need for additional protection of cultivated fields against theft.
著者
小泉 修
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.116-125, 2016-09-29 (Released:2016-10-17)
参考文献数
59
被引用文献数
1

私は,動物界で最も単純な刺胞動物の散在神経系の構造・機能・発生を分子レベルから個体レベルにわたり総合的に研究してきた。そしてその知見を他の集中神経系(哺乳類に至る背側神経系と昆虫や軟体動物頭足類に至る腹側神経系)と比較して,神経系進化の一番底から,2つのルートを眺めて,神経系の起源と進化を考えてきた。その結果,現在,「発達程度は低いとしても,刺胞動物の散在神経系は,神経系の要素の全てを持ち合わせている」と考えている。この点は,中枢神経系に関しても同様ではないかと予想している。この総説では,散在神経系の研究より見えてきた神経系の起源と進化について議論する。
著者
赤澤 威
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.517-540, 2010-03-31 (Released:2017-08-18)

アフリカで誕生したホモ・ハイデルベルゲンシスがネアンデルタールと新人サピエンスの最後の共通祖先である。ヨーロッパ大陸でハイデルベルゲンシスからネアンデルタールという固有の系統が誕生する20万年前、アフリカでは現代人の祖先集団、新人サピエンスがやはりハイデルベルゲンシスから生まれる。新人サピエンスは10万年前からアウト・オブ・アフリカと称される移住拡散を繰り返し、ユーラシア大陸各地に移り住み、その一派はヨーロッパ大陸にもおよび、その地に登場するのが新人の代名詞ともなっているクロマニョンである。ヨーロッパで共存することになった入植者クロマニョンと先住民ネアンデルタールとの間にどのような事態が生じたか、結末はクロマニョンの側に軍配が上がり、ネアンデルタールは次第に消滅して行き、絶滅した。この結末については考古資料、化石、遺伝子の世界で明示できるが、なぜ新人に軍配が上がったのか、両者の間には一体何があったのか、何が両者の命運を分けたのか、誰もまだ答えをもたない。このネアンデルタール絶滅説の検証に取り組み、数々の成果を挙げたのが"Cambridge Stage 3 Project"(T.H.van ANDEL&W.DAVIES eds.2003 Neanderthals and modern humans in the European landscape during the last glaciation)である。Stage3とは6万年前から2万年前のこと、ヨーロッパ大陸は最後の氷期に当たり、同時にクロマニョンの入植そしてネアンデルタールの絶滅という直近の交替劇の起こった時代である。本プロジェクトは、交替期の気候変動パタンとそれに対するネアンデルタールとクロマニョン両者の適応行動の違いをみごとに復元した。この研究によって交替劇の存在を裏付けるデータは着実に蓄積され、交替劇がいつ、どこで、どのような経過をたどって進行したか、少なくともヨーロッパ大陸を舞台とする交替劇に関する記述的部分は具体化され、交替期における旧人社会と新人社会の間の相互作用の概略が見えてきた。本稿は、同プロジェクトの成果を参考にしながら、ヨーロッパ大陸を舞台にして、両者はいつ、どこで、どのような経緯をたどって交替していったか、その概略を述べ、そこから交替期の時代状況に対して両者の採った適応行動の違いを考察し、交替劇の原因に迫ってみたものである。
著者
鈴木 宏昭 横山 拓
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.4-15, 2016-06-20 (Released:2016-09-05)
参考文献数
42

本稿では,組織の中に蓄積された暗黙知の明示化,公共化に関わる困難を認知科学的に分析する.その困難は,意識化すら不可能な知識が存在すること,言語が断片的であるがゆえに状況の復元に十分なパワーを持っていないことに由来する.こうした困難を克服するためには,知識を,場の中でマルチモーダルシミュレーションによって生み出され,改変され続けるものとして捉えることが必要とされる.また状況や身体の情報を豊かに伝える象徴的言語の利用も知識の伝達には有効である.
著者
馬場 まみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.715-722, 2009 (Released:2012-03-28)
参考文献数
39

The purpose of this research is to clarify the process leading to the widespread use of the school uniforms and their role.The study is done in relations to the social situation after World War II.The results show that school uniforms were made mandatory at public junior high schools in the 1960s for economic reasons.The policy was effective in keeping order in schools.Uniforms were regarded as a convenience by both teachers and parents. In the 70's, uniforms were useful in controlling school life. Teachers forced students to wear uniforms.Some students refused to wear them. School uniforms were worn because teachers and parents regarded them as necessary, and the role of school uniforms changed.
著者
築山 宏樹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1_283-1_305, 2015 (Released:2018-06-10)
参考文献数
53

This study investigates the effect of legislator behaviors on electoral outcome using the panel data of 47 prefectural assembly elections in Japan from 1975 to 2007. In particular, we focus on two legislator strategies to influence public policy under the institution of the Japanese local government: party control of the local governor through electoral support and bill introduction on their own. Theoretically, legislator behaviors would affect electoral fortune, whereas electoral forecast would affect legislator strategies. To address such an endogeneity problem, we adopt the Arellano–Bond estimator for dynamic panel data. The results controlling the endogeneity indicate that parties increase their electoral margins when affiliating with the governor and that the number of bills introduced by parties has no effect on their electoral margins. Furthermore, we discuss that the difference of the effectiveness between the two legislator strategies is caused by the institutional feature of the Japanese local government, where the governor dominates the policy-making process.
著者
三浦,耕吉郎
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.20, 2014-12-10

日本の原子力政策の渦中で産声をあげ,東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故以降も,その多義性と曖昧性を武器に「原発の安全神話」や「放射線安全論」を人びとの心のなかに浸透させていく役割を担ってきた「風評被害」という言葉。本稿では,「風評被害」という名づけの行為に着目しつつ,現代日本社会におけるこの語にまつわる複数の異なる用法を批判的に分析し,その政治的社会的効果を明らかにする。第1には,「風評被害」という用語が,(1)生産者側の被害のみに焦点をあて,消費者側の被害や理性的なリスク回避行動をみえなくさせている点,及び(2)安全基準をめぐるポリティクスの存在やそのプロセスをみえなくさせている点である。第2には,「放射能より風評被害の方が怖い」という表現に象徴される,健康被害よりも経済的被害を重視する転倒が原子力損害賠償紛争審査会の方針にも見出され,本来の「(原発事故による)直接的な被害」が「風評被害」と名づけられることによって,放射線被曝による健康被害の過小評価や,事故による加害責任の他者への転嫁がなされている点。第3には,「汚染や被害の強調は福島県への差別を助長する」という風評被害による差別への批判が,反対に,甲状腺がんの多発という事実を隠蔽することによって甲状腺がんの患者への差別を引き起こしている,という構造的差別の存在を指摘する。
著者
山本 祐司
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.650-656, 2016-08-20 (Released:2017-07-20)
参考文献数
33

糖尿病患者数は増加の一途をたどっており,Ketogenic diet(KD)はその独自性や特殊性から薬剤治療と異なる治療食としての効果が期待されている.また,癲癇やがんへの効果も報告されつつあるが,KDの生体にどのように作用し,影響を与えるかについての生化学的・分子生物学的な報告が少ないことと相まって,KDの使用には疑問が残らざるをえないのが現状といえる.また,KDが生体に及ぼす影響についても多くが事象論にとどまっているが現状である.本稿では,KDの作用メカニズムとして近年の報告を紹介し,その有効性をエビデンスに基づいて示したい.
著者
鈴木 健二 古家 靖士 若松 俊輝
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.17, no.36, pp.739-744, 2011-02-20 (Released:2011-06-20)
参考文献数
14

The purpose of this paper is to report the survey of the department store in a local city implementing extension and reconstruction for increasing in floor area and improvement in function. Some results show as follows : (1)There is much room to extend upward, because the building was built as low-layer-building. So extensions were done not only to horizontal direction but also vertical direction. (2)While existing buildings were used as the department-store, changes of usage made differences of floor-height and floor-level in the building. (3)Although air-conditioning-systems were changed in 1970-1990s to keep up with the revisions of law, increasing in floor area and improvement of equipments are consisted by some means or other.