著者
高松 千尋
出版者
日本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

ヨアヒム・フォン・ザントラルトの著書『高貴なる建築・彫刻・絵画のドイツ・アカデミー』(1675-1679年、ニュルンベルク)について研究する。同書は17世紀に出版された画家伝兼絵画理論書であるが、その研究は未だ断片的なものにとどまっている。その資料的価値は近年ようやく認められつつあり、今後美術史研究の一次資料として重要性を強めていくと思われる。本研究ではザントラルトがローマで直接交際した北方の画家たちを対象とし、『ドイツ・アカデミー』中の伝記を他の画家伝と比較することで、その記述内容や芸術観の特質を明らかにする。
著者
浜中 雅俊 東条 敏 平田 圭二 吉井 和佳 北原 鉄朗
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

メロディレンダリングの自動化を達成する.構築するシステムではまず,ユーザが作成中のメロディで変更 したい部分を選択する.すると,タイムスパン木分析器が付近のメロディを分析しタイムスパン木が抽出され る.次に,メロディレンダリングによって,タイムスパン木の構造を維持しながら差し替えできるメロディ候補が複数作成される.そして,メロディ候補が提示されユーザが選択する.これを繰り返していくことでメロディに変更を加え,メロディ全体がユーザの意図に近づいていく.レンダリングシステムは,作曲家の生産性を向上するツールとなることが期待される.
著者
大屋 愛実
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1; GLP-1)は、小腸内分泌L細胞から分泌され、グルコース濃度上昇によって起こるインスリン分泌を増強する。小腸内分泌L細胞は、管腔内の栄養素、特にグルタミンの濃度変化に応答してGLP-1を分泌するが、その詳細な制御機構については、不明である。そこで小腸内分泌L細胞モデルGLUTag細胞における、グルタミン投与時の細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)およびcAMP濃度([cAMP]i)の動態を解析した。その結果、グルタミン投与により[Ca2+]iおよび[cAMP]iが上昇することが分かった。グルタミンは、細胞外Na+と共にナトリウム-アミノ酸共輸送体によって細胞内に取り込まれる。細胞内に取り込まれたNa+は、細胞膜を脱分極させ、細胞内へのCa2+流入を引き起こす。その結果、GLP-1が分泌されると考えられている。そこで、細胞外Na+除去下での、グルタミン投与時の[Ca2+]iおよび[cAMP]i動態を解析した。その結果、細胞外Na+の除去により、グルタミン投与によって起こる[Ca2+]i上昇は抑制されたが、[cAMP]i上昇は抑制されなかった。また、このグルタミン刺激依存的に起こる[cAMP]i上昇は、Gsタンパク質阻害剤の投与では阻害されなかった。今後は、siRNAライブラリーを用いてグルタミン刺激依存的に起こる[cAMP]i上昇に関与する遺伝子の解析を予定している。
著者
今井 正幸 川勝 年洋 佐久間 由香 浦上 直人
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

生命は高分子(タンパク質・核酸)、膜分子(脂質)などのソフトマターと呼ばれる分子の集合体が、それらの構成成分を合成する化学反応ネットワークと連携して増殖していく非平衡システムである。我々は、生命として最も基本的な性質「膜に囲まれたシステムが外部から原料を取り入れて自らのシステムを構築する分子を合成し(代謝)、それら分子群を用いてシステムを複製する(自己生産)、そして複製である子システムも親システムと同じ特性を有する(遺伝)」を持つ最小限のシステム(ミニマルセル)を人工的に構築し、そのミニマルセルの安定性を非平衡熱力学を基に明らかにすることにより生命の誕生の謎に迫る。
著者
森本 元
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多くの動物で雄のみに見られる特徴的な形質は、性選択の結果であると考えられている。だが、一部の鳥類では、若い雄が雌に似た外観、いわば鮮やかな雄と地味な雌の中間的な色彩であることが知られている。本課題では、この地味な羽色がもつであろう同性内選択(雄間闘争)における利益と不利益について研究を行った。その結果、侵入者の色彩の違いに応じて、なわばり所有者の反応(攻撃行動)が変化することを示唆できた。これは、雄の羽色の違いが、雄同士の闘争に信号として機能していることを示唆するものである。
著者
荒 敬 有馬 学 我部 政明 小池 聖一 季武 嘉也 福永 文夫
出版者
長野県短期大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究計画では、「占領期都道府県軍政資料」(MG資料)を収集・公開し、その資料を効果的に利用できる状況をつくることを第1の目標とした。基本作業は、収集資料を(1)地方別・府県別、(2)時系列(その大部は「月例報告(月報)」)に整理・目録化し、(3)さらに政治・経済・教育などの項目ごとに「概要」を作成することである。(1)平成14年度〜16年度にかけて、米国国立公文書館でMG資料を計4回にわたって、基本資料約3万5000枚、関連資料3000枚を収集した。(2)全体会議(ブロック合同会議も含む)は、14年度は3回、15年度は2回、16年度は2回、17年度は1回の計8回開催した。またブロック研究会は、14年度が2回、15年度が6回、16年度は3回の計9回開催した。なお、研究協力者は、分担者を除いて最大時約46名で資料整理と解読、「概要」作成にあたった。(3)資料「コピー」の1セットを国立国会図書館現代資料室に17年度に寄贈した(確認・国立国会図書館主題情報部政治史料課大島康作氏発10月18日付メール「寄贈資料12箱分を昨日受領」)(4)「概要」は県により精粗があるが、「概要」だけで「A4版」2000頁と膨大な量となった。このため、最小限に縮小した。また資料収集の際の「目録」と報告書の「解説」を加えると1500頁以上となった。報告書が大部となるため、詳細目録・概要の掲載を3分の2程度とし、全てをCD-ROMに収録した。(5)研究協力者の大半がMG資料の読解に不慣れのため、地方占領組織、資料読解法、「概要」の様式と統一表記法などについて研究会で学び、また主要な訳語についても検討した。当該研究のための研究者養成の意味も果たした。また本研究計画は、MG資料を公開し、効果的に利用できるようにすることで、占領資料を用いた本格的な地方史・地域史研究を進めるための資料的な基盤整備となり、占領史研究を全体として新たな発展段階へと底上げすることに寄与するであろう。
著者
小谷 凱宣 FITZHUGH W.W 新美 倫子 出利葉 浩司 切替 英雄 西本 豊弘 佐々木 利和 FTIZHUGH William W KENDALL L. POSTER A. G KATZ A. H FITZHUGH W. KREINER Jos POSTER A.G. KATZ A.H. OELSCHELEGER エッチ.デー KREINER J.
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究計画に関連するアイヌ・コレクションは、北米と西ヨーロッパに所蔵されている。このほかに、アイヌ資料はロシア各地の博物館に所蔵されていることは広く知られている。平成7年度より、ロシア国内のアイヌ資料調査が千葉大学・荻原眞子教授らのグループにより開始され、その研究成果がまとめられつつある。ロシア資料の調査結果と北米・西欧における研究成果と合わせることにより、海外のアイヌ・コレクションの全体像とアイヌ物質文化に関する新知見が得られよう。この一連の研究はさらに、北方地域の一民俗に関わる博物館資料の悉皆調査という初めての試みであり、現代文明の影響を受けて変容した北方狩猟民文化に関する研究資料の再検討という意味で、優れて現代的意義を有する。本研究計画による研究成果に、とくに北太平洋地域の研究者が一致して注目しているゆえんである。そして、本研究計画は、欧米の北方文化研究者が立案している「ジェサップ2計画」の先駆的役割を果たしつつある。西欧と北米のアイヌ資料との比較の試みを通して、欧米の研究者がアイヌ研究と資料収集に特に関心を抱いた知的背景が明確になってきた。西欧のアイヌ文化の研究者は、広義の自然史学(基礎科学)の枠組みの中で知的訓練を受けていることが指摘できる。このことが、アイヌ文化の伝統が維持されていた時期に調査収集が行われた事実と相まって、学術的に質の高いコレクション収集を可能にした背景である。さらにフランツ・フォン・シ-ボルト以降、「高貴な野蛮人」、「失われたヨーロッパ人」、「消滅しつつある狩猟民」としてのアイヌ民族文化への関心が、アイヌ研究を推進した。19世紀半ば頃から提唱された「アイヌ=コーカソイド仮説」は、欧米諸国民と研究者のアイヌ文化へ関心をいっそう高め、ドイツとアメリカにおけるコレクション収集を加速した。アイヌ文化を含む北方狩猟民文化研究の動きは、第一次大戦勃発とそれにともなう社会変化のために停止した。日本人研究者による本格的なアイヌ文化研究とコレクション収集の努力は、第一次大戦以降にはじまったことが浮き彫りにされてきた。前年までの在米アイヌ資料の調査の遺漏を補うために、シカゴ(シカゴ大学とフィールド自然史博物館)とニューヨーク(アメリカ自然史博物館)で補充調査を実施した。なかでも、シカゴ大学図書館特別資料部所蔵のフレデリック・スターのコレクションにふくまれる映像資料(スライド類)お精査し、さらに、写真類も入手したことにより、スターが収集したアイヌ関係資料の全容がほぼ判明してきた。すなわち、スターは明治末の10年足らずの間に、アイヌ資料を約1,200点、アイヌ関係映像資料を約100点、そのほかに膨大な量の未公表フィールドノートと往復書簡類を残していることが解明できた。スターが収集したアイヌ資料の数は北米の総資料の約40%を占め、世界的にもきわめて大きなアイヌ・コレクションの一つといえる。また、彼の残した未公表資料は貴重な背景資料であり、アイヌ文化研究史においても重要である。スターのアイヌ関係資料の集大成が緊急の課題である。最後に、スミソニアンの極北研究センターにおいて、アイヌ文化に関する特別展覧会の準備が開始されたことは注目に値する。これは本研究計画の成果が展覧会企画の契機になったもので、研究成果の相手国への還元につらなる。また、ジェサップ北太平洋調査開始から百周年を記念する国際学会が1997年秋にアメリカ自然史博物館で開催される予定であり、また、「ジェサップ2計画」(1897-1903に行われたF・ボアズによるジェサップ北太平洋調査時に収集された未公表の諸資料の整理公表の事業)が始まる予定である。新たなる眼で北方諸文化の資料を再整理し、変容しつつある先住民文化の理解の促進とアイデンティティ確立に資するものである。これは、本研究計画、アイヌ資料悉皆調査の目的と一致するものである。
著者
久万 健志
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

溶存有機物が多く含む河川水中の各鉄化学種濃度は高く、特にフミン物質蛍光強度と真の溶存鉄濃度との関係が見られ、河川水中のフルボ酸が3価鉄と溶存有機錯体鉄を形成していることが明らかになった。また、河川起源溶存フルボ酸鉄錯体は海水と混合しても比較的安定に存在していることを示し、河口域から沿岸域への溶存鉄を運ぶ重要な役割を果たしている。フルボ酸鉄錯体を多く含む河川由来溶存鉄を添加した沿岸性植物プランクトン-栄養塩培地では、細胞密度及びクロロフィルa濃度が急激に増加した。これは、河川水中のフルボ酸鉄錯体が海水と混合すると、フルボ酸鉄錯体から生物利用可能な溶存無機3価鉄イオンが徐々に解離し、それが植物プランクトンに摂取されたためと考えられ、河川の影響ある沿岸域の高い基礎生産を維持していると考えられる。
著者
笹月 健彦 黒木 登志夫 渋谷 正史 黒木 登志夫 宮園 浩平 高井 義美 月田 承一郎 笹月 健彦 田原 栄一 菅村 和夫
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

「がん生物」領域は、がんの基礎研究からヒトがんを材料とする臨床研究まで広い範囲をカバーし、計画研究(1)5班、計画研究(2)28班、公募研究63班の計96班、研究者数229名と総括班より構成された。この特定領域では、がんの生物学的特性を明らかにすることによって、がんの予防、診断、治療に貢献することを目的とする。遺伝子発現の調節、シグナル伝達、細胞の増殖と分化、細胞死、細胞の構造と機能、細胞間相互作用、生体内ホメオスタシス維持機構など、生命科学のもっとも基本的な問題、およびヒトがんの特性、浸潤・転移などのがん固有の問題を、以下のように研究対象として設定し、研究を推進した。A01. 細胞の増殖・分化・細胞死 A04. 浸潤・転移A02. 細胞の構造と機能 A05. ヒトがんの特性A03. 細胞間相互作用平成11年度は、以下のような活動を行った。(1)「がん生物」ワークショップ:「がん生物」に属する全ての研究代表者が参加して自由に討議し、研究の一層の進展をはかり、さらに研究資料の交換、共同研究の設定を促進することを目的として、ワークショップを開催した。平成11年度は、「がん特定領域研究(A)代表者会議に連動して、7月12日、研究代表者による研究発表を行った。これを一つの機会として各研究者間の交流、研究協力の実がはかられた。(2)研究成果の公表「がん生物」の分野で卓越した研究成果を挙げている研究者を選び、文部省がん重点公開・合同シンポジウムでその成果を発表した。本年度で、平成6年より開始された「がんの生物学的特性の研究(がん生物)」は、6年間が終了することになったが、「がん生物」で行われてきた研究は卓越しており、来年度より開始される新しい特定領域研究の方向性を与えることとなった。
著者
西尾 俊幸 小田 宗宏 李 秋夢 篠崎 佑子 高橋 愛実
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

各種糖質加水分解酵素の糖転移作用を利用してN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を構成糖として含む特殊構造オリゴ糖を合成し、それらのプレバイオティクス機能について評価を行った。その結果、以前に量産法を確立したN-アセチルスクロサミンを原料として用い、新規な6種類のGlcNAc含有オリゴ糖を合成することができた。これらのオリゴ糖は、ヒト腸内細菌由来の善玉菌であるビフィズス菌の中で特定の種を選択的に増殖させることが分かった。従来のオリゴ糖プレバイオティクスはこのような選択的ビフィズス菌増殖能が無いことから、今回合成したものは新しいタイプのプレバイオティクスとして開発できる可能性がある。
著者
石井 豊 稲生 啓行 荒井 迅 寺尾 将彦 鍛冶 静雄
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究の目的は、virtual reality 技術を用いて4次元空間を直感的に理解するための可視化方法や4次元対象物を自然に操作できるようにするためのデバイスを開発することにある。中でも、複素2次元力学系が生成するジュリア集合を可視化することでその幾何的性質を観察し更に数学的に有用な予想を引き出すことに、この研究の意義があった。また高次元空間におけるデータセットの「形」を理解するための雛形としても、本プロジェクトの重要性があると考えられる。今年度はコロナ禍の影響で国内・海外出張ができず、メールやslackなどでのやり取りを通して研究を進めた。前年度までに、4次元空間を可視化するための virtual reality デバイスである Polyvision を開発したため、今年度は、この Polyvision を用いた心理実験に向けた準備を進めた。具体的には、Polyvision を用いると被験者の4次元空間認識が向上するかを定量的に測定するための実験タスクをいくつか試験的にデザインし、その実装を行った。しかし通常の3次元空間では容易なはずのタスクが対応する4次元タスクになると急激に困難になるため、現在は(数学的な素養が必ずしもあるとは限らない)一般的な被験者が十分こなせるようなタスクを設定している途中段階にある。そのほかに特筆すべき実績としては、VRを用いた高次元認識に関する(主に数学的な立場からの)研究集会を分担者の稲生が開催し、好評を博すとともにその後の研究の進展に大きな刺激を与えた。
著者
藤高 和輝
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

もともとの研究計画をほとんど達成し、且つこれまでの研究成果をほぼ公表することができた。とりわけ、ゲイル・サラモン『身体を引き受ける――トランスジェンダーと物質性のレトリック』(以文社)の翻訳出版を達成できたことが大きな成果である。他には、「感じられた身体--トランスジェンダーと『知覚の現象学』」(立命館大学人文科学研究所紀要)、「「曖昧なジェンダー」の承認に向けて――ボーヴォワール『第二の性』における「両義性=曖昧性」」(『女性空間』)、「インターセクショナル・フェミニズムから/へ」(『現代思想』)など、多くの論文を公表する機会を得た。以上を通して、トランスジェンダーの「生きられた経験」を哲学的に研究する「トランスジェンダー現象学」の導入・深化を行った。トランスジェンダーの経験をよりリアルに捉える分析枠組みを提示することで、「哲学・倫理学」の学問分野のみならず、社会学や心理学、ジェンダー・スタディーズ、クィア理論などより広い分野に貢献することができたと自負している。今後は、特別研究員のあいだに行った研究を一冊の書籍にまとめ、研究成果をさらに社会に発信・公表していきたい。
著者
橘野 実子 大久保 真道 陶山 恵 松中 義大 大島 武 鈴木 万里
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

大学の英語教育においては、コミュニケーション能力を伸ばすためプレゼンテーション演習など多様な活動が取り入れられる傾向にある。しかしメディア芸術作品の英語によるプレゼンテーションについては、指導方法が確立されていない。本研究では、望ましいプレゼンテーションの要素に関するデータを収集分析し、メディア芸術分野のプレゼンテーション技術向上のための指導方法の開発を目指す。研究方法としては、メディア芸術各分野で求められる語彙・言語表現の調査、発表スタイル調査、海外での実態調査を実施し、指導プログラムを作成する。その案に基づきプレゼンテーション技能向上指導を実施し、その効果を測定し、さらに改善を図る。
著者
野口 映
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

セツキシマブはEGFRを標的とした抗体薬であるが、その作用機序は解明されているとは言い難い。本研究は、ジェネティクス、エピジェネティクス、immunologyといった多方面から解析する事で、セツキシマブの作用機序解明を試みた。次世代シークエンサーによる遺伝子変異解析では、対象とした細胞においてEGFRの有意な変異はなく、HRAS変異が一部の細胞でみられる程度であった。エピジェネティックな検討では、ある種のHDAC阻害剤との併用により、EGFRのmRNA値の上昇を認め、セツキシマブ感受性を獲得するものがみられた。特に影響の強くみられた細胞では、形態的に細胞間の結合性の低下がみられた。
著者
山田 健三
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

平安時代から三種の文字種を使用し続けている日本語において、「平仮名」概念には、その成立期から現在に到るまで、様々な変容があったことが、これまでの研究によって、ある程度語られてきている。一つの書記システムの三種の文字が使われる以上、それぞれに価値変容があることは当然考えられるが、本研究は、その中でも2つの社会変動時期にスポットを当てて、それぞれの時代にいて「平仮名」がどのように認識されていたかを確かな証拠を以て明らかにすることを目的としている。二つの時代とは「近世末~近代初期(幕末明治期)」と「近代終期(戦後期)」である。
著者
栗林 裕
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

カシュカイ語はトルコ語と同じチュルク語南西グループに属していながら、特異な統語法を持つ言語である.統語法のみ近隣言語であるペルシア語から借用し、語彙はチュルク語系のものを用いるような統語的言語変化はチュルク語全体の中でも少数派である.非トルコ語研究者にとっても興味深いカシュカイ語の言語資料を広くアクセス可能な形で提示し、知識の共有を進めていくことで理論的研究と記述的研究の連携を図ることを目的として3 年間の研究成果を著書としてまとめた.
著者
石田 竜弘 異島 優 清水 太郎
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

タンパクや核酸など高分子医薬品の低侵襲的投与法として経皮投与技術の開発が切望されている。最大のバリアである皮膚の角質層を突破させるため、透過促進剤やマイクロニードルの活用、超音波や電気などの物理的な刺激を利用する方法などが提案されてきた。しかし、高分子医薬品の透過に成功した報告は乏しく、実用化に進む可能性のある技術の開発は未達である。イオン液体は陽イオンと陰イオンからなる常温で液体の物質であり、その特徴的な性質から、新たな電池材料や溶剤としてなどグリーンケミストリーの素材として活用されてきている。しかし、医療応用に向けた試みは行われていない。本研究の目的は、イオン液体をキャリアとし、皮膚角質層の突破という最も大きな課題を一気に解決するための高分子医薬品の低侵襲的投与法を開発することである。本年度はモデル抗原としてインスリンを用い、in vitroでの皮膚透過性試験を行った。その結果、ある種のイオン液体と混合することで、インスリンの皮膚透過性が飛躍的に向上することが確認できた。次いでin vivoでの皮膚透過性試験を行った。その結果、インスリンが角質層を透過し、血中ににまで移行していることを血糖降下作用によって確認した。現在、がんペプチドであるWT1を用いて同様の検討を行っているが、同様に良好な結果が得られつつあり、当初の目的である画期的な低侵襲性の経皮型がんワクチンの開発に繋げていく予定である。
著者
藤田 幸一 今村 真央
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

大きく2つの成果が上がった。第1に、京都大学東南アジア地域研究研究所に「ゾミア研究会」を立ち上げ、2年の研究期間内に内外の研究者を招へいして計24回の研究会を開催し、研究ネットワークの構築を行った。「ゾミア研究会」は東南アジア学会の学会員などに広く知れ渡り、また海外にもよく知られる存在となり、今もなお他財源を利用して継続している。第2にまだ予備的段階にとどまっているが、中国、ミャンマー、インドの3つの異なる国家領域に分かれて住むカチン族の社会経済的現況、その形成に至った歴史的背景、今後の発展の展望等を、現地実態調査に基づき明らかにした。
著者
伊藤 博士 中野 佑樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

太陽内部におけるスピンフレーバー振動模型はローレンツ不変性を破り、電子ニュートリノが反電子ニュートリノへ振動すると予想されている。これによる太陽からの反電子ニュートリノ流量に対して、太陽標準モデルによる流量は無視できるが、従来検出器で検出するためには新たな技術が必要である。本研究はSK-Gd実験を用いて反電子ニュートリノの検出効率を従来から10倍以上改善する。4年間のSK-Gdの運用でローレンツ不変性を破る新物理を探索する。本研究を達成するために以下の項目について遂行する: SKデータを用いたBG推定, シミュレーション開発, 太陽磁場の解析, 系統的な不確定性誤差の評価。
著者
呉羽 真 近藤 圭介 一方井 祐子 稲葉 振一郎 神崎 宣次 寺薗 淳也 吉永 大祐 伊勢田 哲治 磯部 洋明 玉澤 春史
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、宇宙科学技術の社会的インパクトを明らかにし、またその発展に伴って社会が直面する諸課題と対応策を特定することを通して、宇宙科学技術と社会の望ましい関係性を構想することに取り組む。このために、「宇宙文化」、「宇宙と持続可能性」、「宇宙科学技術コミュニケーション」、「宇宙開発に関する社会的意思決定」の4つのテーマに関する研究を実施する。