著者
高畑 早希
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

本研究は、1940~80年代までの日本において展開された、民話運動及び「民話ブーム」の内実を、文学・文化研究の立場から総体的・複層的に描き出すことを目的とする。本研究を遂行するための具体的な達成目標は以下の二点である。第一に、近年再評価の進む50年代の第1次民話運動及び、そこから派生して今日まで継続する東京中心の運動を、民衆文化運動史のなかで通史的に明らかにすること。第二に、先行研究では看過されていた商業的領域や、広島や宮城などにおいて展開された活動も、広く民話運動・「民話ブーム」の影響圏としてくくることで、民話を中心的問いとした文化的気運の関係性を複眼的に明らかにすることである。
著者
名和 達宣
出版者
宗教哲学会
雑誌
宗教哲学研究 (ISSN:02897105)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.16-29, 2020-03-31 (Released:2020-07-09)

In Japan, no Buddhist sect founder is as popular as Shinran today in terms of the reach of his teachings, which has come to be accepted across all different schools. In relation to this phenomenon, the writer shall try to seek answers to two key questions: 1) why Shinran? And 2) what is the truth of “Shinran” referred to by everyone? With these questions in mind, this paper shall try to uncover a place for sharing between Shinran’s Doctrinal Studies and the Kyoto School based on the thoughts of Soga Ryojin, who has exerted great influence over the doctrinal studies of modern Shinshu Otani-ha. Despite being a researcher of Shinran’s Doctrinal Studies, the writer has chosen to focus on the Kyoto School due to the fact that the philosophers of this particular group have come to learn Shinran’s thinking and devised their own line of thoughts through his key publication, Kyogyoshinsho, as opposed to Tannisho, which was compiled by followers of Shinran and is better known by most people in modern Japanese society. This paper shall seek to explore “The Possibility of Philosophy of Religion in Pure Land Buddhism” by comparing Soga’s interpretation of a passage called “Sangan-Tennyu” from Kyogyoshinsho against the thinking of Hajime Tanabe, Yoshinori Takeuchi, and Kitaro Nishida.
著者
青木 美和 升谷 英子 畠山 明子 髙尾 鮎美 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-31, 2022 (Released:2022-03-14)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,看護師の進行がん患者への積極的治療の推奨とその関連要因を明らかにすることである.【方法】A県内のがん診療連携病院2施設の看護師383名に無記名自記式質問紙調査を実施.2事例への積極的治療の推奨,推奨を決定づける看護師の価値観を尋ね,単変量および多変量解析を行った.【結果】有効回答の得られた300名(有効回答率78.3%)を分析した.治療の推奨には,患者の予後やPerformance Status(PS)を問わず患者の希望や生存期間の延長を重視する看護師の価値観が,予後1カ月の患者には副作用に伴う不利益の回避を重視する価値観が関わっていた.また,予後6カ月の事例には治療を推奨するが,予後1カ月の事例への治療の推奨は看護師の価値観の違いにより二分された.【結論】看護師の治療の推奨には看護師の価値観が関わっていた.看護師は,患者の治療目標を共有したうえで,治療の意思決定のプロセスに関わる必要性が示された.
著者
中條 祐一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会関東支部ブロック合同講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.71-72, 2003-09-05

エオリアンハープは自然風により音が奏でられる弦楽器である。紀元前800年以来伝えられているホメロスの伝説には、ヘルメスが亀の甲羅に乾燥させた腱をはり、風に当ててリラを発明したいきさつが描かれている。またダビデのハープ伝説では、神が風を送って楽器を鳴らしたとされている。これらエオリアンハープを暗示させる伝説を除外してもその歴史は16世紀まで溯り、17世紀にはヨーロッパ中に広まっている。現在では楽器としての認知度は低く、博物館に保存されているもの以外ではネット販売にて購入できるキットがわずかに存在するのみである。日本には浜松の楽器博物館が所蔵する19世紀イギリス製のエオリアンハープが現存する唯一であるが、これをもとに長野県上田市の古楽器作家石井氏が実際に鳴るものを再現している。本研究ではこれを用いて音響解析を行なった。また、風洞や本体の風きり音によるノイズを取り除くため、ピエゾ式のビックアップを内蔵したエオリアンハープを新たに製作し、風速と周波数、調弦した周波数とエオリアンハープの奏でる周波数、弦の種類、太さと周波数などの関係を調べた。
著者
山根 伸吾 青野 颯希
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.88-94, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
5

回復期リハビリテーション病棟にて,調理にデマンドを述べた脳卒中患者に,AMPSとACQ-OPの結果に基づき,調理練習を継続的に実施した.週に1回の頻度で,クライエント(以下,CL)と共に,メニューと目標をそのつど設定して取り組んだ.その結果,AMPSのADL運動能力測定値は0.7 logits,ADLプロセス能力測定値は0.2 logits,ACQ-OP測定値は0.6 logits改善した.両評価を用いることで,作業遂行上の問題をCLと共有しやすくなり,継続的に目標に反映させた介入を展開することに役立った.AMPSとACQ-OPを作業療法プロセスに取り入れることによる効果を検証するために,さらなる事例の蓄積が望まれる.
著者
Norio Niwa 丹羽 典生
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.189-268, 2018-10-31

本稿は,日本の四年制大学における応援団を事例として,応援組織の変化と現状を分析するものである。依拠するデータは,各大学応援団が刊行する印刷物や大学の学友会関連の情報,応援団関係者が運営するホームページやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどに散在する各種の情報を中心に筆者が集約・整理した。それらの分析を通じて,以下3 点のことを示した。ひとつめが応援団の起源と拡大について。国公立大学応援団のほとんどが戦後の大学改革と時期を同じくして第二次世界大戦後に起源をもつのに対して,私立大学の古くからある応援団はそうした断絶の影響をあまり受けていないこと。また,ベビーブーム世代の進学期に大学の量的増大に合わせて多くの大学で作られるようになったこと。ふたつめは,応援団の質的変化で,応援団の典型的な型とされることもある三部構成(リーダー部,チアリーダー部,吹奏楽部)は,もとの多機能的な応援団が機能分化とジェンダー構成の変化を経た結果,比較的近年生み出されたものであること。そしてみっつめに,応援団の多くは体育会所属であるが,一定数が独立団体的な位置づけにあることである。
著者
冨岡 華代 北野 文理 北田 善三
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.88-93, 2015-08-26 (Released:2017-01-27)
参考文献数
8

Cyanogenic glycoside, amygdalin (AM) and its degradation products, benzoic acid (BA) and benzaldehyde (BAL) in rose family plants were measured utilizing high performance liquid chromatography (HPLC). Liqueur was cleaned in an InertSep NH2 cartridge, and other samples were cleaned in an InertSep C18 cartridge and an InertSep NH2 cartridge. The three components were not detected in any sarcocarp. AM was detected in seeds of loquat, apricot and cherry in the range of 1.35〜28.80 mg/g, and BAL was detected at 0.48 mg/g in seeds of apricot. AM and BA were detected at 0.83 mg/g and 0.10 mg/g in tea processed from loquat seed.
著者
近藤 宏 藤井 亮輔 矢野 忠 福島 正也
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.49-55, 2019 (Released:2020-05-20)
参考文献数
26

【緒言】視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師がその技術を活かし、ヘルス キーパーとして企業に雇用されている。しかし、企業内に開設された施術所の状況、ヘルスキー パーの正確な人数や業務の詳細について全体を網羅した基礎的資料はみられない。本研究の目的 は、全国の保健所に登録された施術所情報から企業内に開設された施術所の所在地等を明らかす ることである。 【方法】全国の保健所から収集されたあはき業に係る都道府県ごとの施術所名簿データ(76,505 件) から名称、所在地、業務の種類を抽出し、データベースを作成した。データベースから法人企業 のみをスクリーニングした。さらにWeb 検索エンジンを用いて当該企業を照合し、企業内に開設 された施術所を有する企業名と産業分類を特定した。集計は、届出施術所数、企業数、都道府県 別数、企業の産業分類、業務の種類について行った。 【結果】届出された施術所数は、282 件であった。その内、53 件が異なる所在地で複数の届出をし ていた。そのため企業数は200 件であった。届出をした業務の種類は、あん摩マッサージ指圧の み135 件(47.9%)が最も多かった。都道府県別での所在地では、東京都147 件(52.1%)が最も 多く、次いで、大阪府48 件(17.0%)であった。産業分類別では、情報通信業92 件(32.6%)が 最も多く、次いで製造業19.1%であった。 【考察】大企業の本社が多い都道府県は東京都と大阪府である。大企業の本社数が多いために、企 業内に開設された施術所が大都市に集中しているのではないかと考える。 【結語】全国の保健所に登録されている施術所情報から、企業内に開設されたあん摩マッサージ指 圧・はり・きゅう施術所の開設数、所在地、企業の産業分類、業務の種類を明らかにし、基礎的 資料を資することができた。
著者
山口 薫 山路 永司
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.275-280, 2013
被引用文献数
1

学習能力の高いサルによる獣害対策の一環として,2005年度から特区制度を利用し,犬を活用した取り組みを始めてから8年が経過した。その後,動物愛護管理法に基づく基準が改正(2007年)されて,訓練した犬を放し飼いにすることが法的に可能となり,一気に全国に広まった。現在,全国で393頭(農林水産省,2011)の犬が主にサル対策として活動している。人に代わって,執拗に山へサルを追い上げる犬を活用して益々頭数を増やす自治体もあれば,打ち切りもあってばらつきがみられる。先行研究では,イヌの追い上げの有用性の実験(小金澤,2008),ニホンザルの追い払いの実態(吉田ら,2006),追い払い犬を技術面から捉えたもの(市ノ木山,2012),野生鳥獣対策ツールとして犬を利用して検証(矢口,2009)など,電気牧柵やネットの改良と同様の科学的視点から犬の有用性を考察している。また被害住民意識に基づいたサルの追い払い対策(中村ら,2007),集落ぐるみでサルを追い払い,農作物被害軽減の効果を検証(山端2010,東口ら2012)など,人による追い払いに着目した研究はあるが,犬の飼育者の特に地方自治体担当者や地域住民の評価を分析したものは少ない。また犬側の動物の福祉に配慮した考察や,ペット動物として飼育しながら活動する問題点への考察はほとんどない。そこで本研究では,東日本地区の全容把握と,最も事業を推進している長野県南木曽町の忠犬事業の飼育者への聞き取り調査をもとに分析し,提言を行うことを目的とした。なお「追い払い」事業は,犬がサルを本来の住処へ戻すことだが,その実施には「犬を好きか嫌いか」といった感情面の対立が伴いやすい。その課題も含めて検証した。
著者
外山 美樹 湯 立 長峯 聖人 三和 秀平 相川 充
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.17059, (Released:2019-06-20)
参考文献数
42
被引用文献数
1

Correlations between the type of regulatory focus orientation and performance levels were investigated from the perspective of conserving cognitive resources. University students (N = 64) participated in the experiment. They were induced to have a promotion- or prevention-focused orientation and were required to conduct a lower priority task followed by a higher priority task. Results indicated that when the prevention-focused orientation was activated, participants did not spend much effort to achieve lower priority tasks and the performance level was lower compared to when the promotion-focused orientation was activated. It was considered that the intention for conserving cognitive resources increased because the prevention-focused participants knew that they would be engaging in a higher priority task in the future. Conversely, these same participants demonstrated higher performance in higher priority tasks implemented later, compared to when the promotion-focused orientation was activated. The above results suggest that cognitive resources are allocated intentionally under prevention-focused conditions.
著者
本橋 正成 羽生田 栄一 懸田剛
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.1142-1150, 2011-08-15

In our complex world, it is important that participants build a language and design forms from their opinions and feeling. We introduce to importance and core process of a pattern language and a project language. We bridge to discuss style of organization and culture in this century.
著者
チェ ウォンソク
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
周縁の文化交渉学シリーズ3 『陵墓からみた東アジア諸国の位相―朝鮮王陵とその周縁』
巻号頁・発行日
pp.3-13, 2011-12-31

本稿は,朝鮮王陵の分布・立地・配置の特徴と,景観の造成・管理に見られる風水的要素について,歴史地理的に検討したものである。また景観の形態をはじめ,王陵の立地・形成をめぐって展開した政治権力集団の様相にも注目している。これらは朝鮮王陵が朝鮮史の産物であり,中国の明清代の陵とは異なる文化要素が存在していることを示している。 朝鮮王陵は都城とその郊外に分布しているが,過半数以上が20-40里以内にあり,特に北東と北西に集中している。これは,新羅や高麗王陵の分布よりも広範である。立地は,小盆地の山麓に造営される傾向にあり,平地や丘陵地に位置する新羅王陵や,山腹に位置する高麗王陵とは異なる。こうした朝鮮王陵の立地傾向は,風水的要素が反映したものと思われる。次に同じ陵域内における王陵の距離は300m 前後が多く,紅箭門(陵入口)から陵までの距離は,おおむね150~200m 前後である。配置は南向が絶対的である。また陵寝は,緩斜面の自然地形に盛り土をして造成され,明堂水は自然地形の水の流れに合わせて作られた。 朝鮮王陵の景観は,王朝の権威かつ象徴であった。王陵の立地選定や遷陵は,王室や王族,王と臣下,臣下が勢力伸張を図る手段となり,彼らはその名分として風水説を利用した。 風水は,朝鮮王陵の造成過程,景観築造に多大な影響を与え,王陵は風水地理の原理にもとづいて位置や配置,陵域景観が造営された。王陵の管理は国の法典で定められ,管理状況は毎年定期的に王に報告された。朝廷においては,王陵の管理をめぐり,風水的原理を固守する風水官僚と,経世的実用論理を重んじる儒臣の意見が対立し,調整される場面も見られた。韓国風水史の視点からみると,朝鮮王陵における風水は,政治集団の社会的属性を反映した言説であったと言えよう。 朝鮮王陵関連の歴史遺産として,王陵を風水的に再現した特殊地図である「山陵図」が注目される。山陵図は,陵域を構成する景観要素は写実的に,山水は風水的に描かれるなど,風水情報が詳しく表現されている。

3 0 0 0 OA 人倫訓蒙図彙

著者
[源三郎 絵]
出版者
珍書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第1-7巻, 1915
著者
鮫島 輝美
出版者
公益財団法人 集団力学研究所
雑誌
ジャーナル「集団力学」 (ISSN:21854718)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.33-61, 2010

本研究は、現代医療の欠陥として、医師-患者関係における2つの問題点を指摘した上で、フィールドワークで接した医師と住民の姿を理論的に考察することを通じて、それら2つの問題点を克服する方途を提言しようとするものである。まず、第1節では、現代医療の2つの問題点として、①患者という人間ではなく、患者の「病気」だけが医療の対象とされる傾向があること、②病気の専門家である医師と患者の間に、「強者-弱者」の関係が形成される傾向があることを指摘する。さらに、それらの問題点を、フーコーの言う「生-権力」が閾値を超えて過度に強化された帰結であることを論じる。次に、第2節では、筆者のフィールドワークに基づき、2つの問題点を克服する実践例を紹介する。第3節では、まず、「生-権力」概念を、大澤の規範理論に基づき再定位する。すなわち、「(a)原初的な規範形成プロセス → (b)規範の抽象化 → (c)規範の過度の抽象化 → (d)原初的規範形成フェーズへの回帰」という一連の規範変容プロセスにおいて、「生-権力」の形成・強化は(b)の最終段階、「生-権力」の過度の強化は(c)に対応することを論じる。それに対して、上記の実践例は、(d)原初的規範形成フェーズ((d)の段階)を具現化したものであり、したがって、過度に強化された「生―権力」を原因とする上記2つの問題を克服する方途を示唆するものと考察される。
著者
鈴木 博
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.249-263, 2019-11-01 (Released:2020-02-13)
参考文献数
64

遺伝性不整脈は,心筋活動電位を形成するイオンチャネルとこれに関連する蛋白などをコードする遺伝子変異によって発症する疾患の総称である.1957年にQT延長症候群が初めて報告され,現在ではカテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群,QT短縮症候群,早期再分極症候群,進行性心臓伝導障害も遺伝性不整脈とみなされている.若年突然死の主要な原因であるが,早期発見と介入により予防しうる.遺伝子解析の進歩により,原因不明であった失神,突然死に遺伝性不整脈の診断がつき,個々により適した管理,治療が行われるようになってきている.近年,日本循環器学会のガイドラインも改訂された.これも踏まえて本稿では,QT延長症候群,QT短縮症候群,カテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群について述べる.
著者
亀山 郁夫 白井 史人 林 良児 沼野 充義 甲斐 清高 野谷 文昭 梅垣 昌子 藤井 省三 高橋 健一郎 齋須 直人 望月 哲男 番場 俊 越野 剛
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ロシアの作家フョードル・ドストエフスキーの文学のもつ世界的意義について、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンをキー概念としつつ、主に2つの観点から解明する。Ⅰ、アレクサンドル二世暗殺を頂点とする19世紀ロシアの社会と人間が陥った危機の諸相とドストエフスキー文学の関連性を、歴史、宗教、文学、人間の観点から明らかにし、Ⅱ、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンが、世界諸地域の文学及び表象文化(映画、演劇、美術ほか)にどう受け継がれ、再生産されたかを明らかにする。後者の研究においては、「世界のドストエフスキー表象」と題するデータベース化を目指している。
著者
沼野 充義 三谷 惠子 松里 公孝 柳原 孝敦 青島 陽子 小松 久男 乗松 亨平 楯岡 求美 井上 まどか 亀田 真澄 下斗米 伸夫 坂庭 淳史 池田 嘉郎 湯浅 剛 阿部 賢一 安達 祐子 加藤 有子 平野 恵美子 羽場 久美子 柴田 元幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ソ連解体後のスラヴ・ユーラシアの変容と越境の様々な様相に焦点を合わせた包括的な研究である。グローバル化時代の世界情勢を考慮に入れ、新たな研究の枠組みの構築を目指した。代表者および19名の分担者の専門は、地域的にはロシア、ウクライナ・コーカサス・中央アジア、中・東欧から、東アジアや南北アメリカに及び、分野も文学・言語・芸術・思想・宗教・歴史から政治・経済・国際関係に至るまで人文社会科学全体にわたる。このようなグループによる超域的・学際的アプローチを通じて、国際学会の組織に積極的に関わり、日本のスラヴ・ユーラシア研究の国際的発信力を高めるとともに、この分野における国際交流の活性化に努めた。
著者
渡部 裕 南野 徹
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.86-94, 2015 (Released:2016-03-25)
参考文献数
32
被引用文献数
1

カテコラミン感受性多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia : CPVT)は,交感神経活性を高める精神的ならびに肉体的なストレスによってVTを発症する遺伝性不整脈症候群の一種であり,現在までにいくつかの原因遺伝子が明らかとなっている.これらの遺伝子の変異は,筋小胞体に存在するリアノジンレセプターからの異常なCa2+の放出により,CPVTをきたすことが共通している.臨床像としては,器質的に心臓は正常であり,運動や感情の高まりによって誘発される心室不整脈による動悸や失神,心肺停止が特徴である.心房細動や心室不整脈が高頻度で見られるものの,一拍ごとにQRS波の軸が180°変化する二方向性VTが特徴的であり,診断に有用である.交感神経活性によって誘発されるVTは心室細動へ移行することがあり,心停止が初発症状である症例もしばしば見受けられる.安静時心電図は正常であり,診断に際しては画像診断による器質的心疾患の除外と,運動やストレスによって出現する不整脈が重要である.治療には,β遮断薬やフレカイニドが用いられる.植込み型除細動器は,心停止歴のある症例やβ遮断薬が不整脈の抑制に不十分な症例で適応となるが,突然死の予防効果は不完全である.