著者
豊村 暁
出版者
東京電機大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では発声や歩行などの運動制御に着目して研究を行った.(1)流暢性促進法を吃音(どもること)に用いた場合,運動制御一般にとって重要な部位とされる大脳基底核が,流暢性促進条件では活性が上昇することをfMRI実験により明らかにした.(2)歩行制御に関して,内的なタイミング生成の場合,大脳基底核が重要であることを示した.(3)実際の発声の音圧と,聴覚フィードバックを経由した発声音声知覚のラウドネスの関係を調べたところ,発声の音圧増加に比べて,聴覚フィードバック音声知覚の増加が大きいことが分かった.
著者
根岸 雅史 投野 由紀夫 酒井 英樹 長沼 君主 高田 智子 内田 諭 金子 恵美子 村越 亮治 奥村 学 工藤 洋路 能登原 祥之 小泉 利恵 石井 康毅 篠崎 隆宏 和泉 絵美 印南 洋 中谷 安男
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

まず、指導タスクとテスト・タスクのうち、CEFR-Jの各CAN-DOディスクリプタに基づくテスト・タスクの開発およびその困難度の検証を優先することを決定した。各CAN-DOディスクリプタに基づく評価タスクの開発としては、2017年度はPre-A1からA2.2を作成したが、2018年度はB1.1からB2.2までのテスト項目の開発と検証を行った。リーディングにおいては、リーディングのテキスト・タイプ、テキスト困難度、タスクについて検討し、修正をした後、テスト・セットを作成した。リスニングにおいては、リーディングと同様、リスニングのテキスト・タイプ、テキスト困難度、タスクについて検討し、修正をしたが、音声の収録およびテストの実施には至らなかった。ススピーキング(発表)・スピーキング(やりとり)・ライティングにおいては、タスクと採点方法について検討し、修正をした後、テスト・セットを作成した。これらのテストをそれぞれ実施し、採点・統計的な分析・解釈を行った。言語処理班では、リーディングやリスニングのテキスト分析の結果に基づき、テキストのCEFR-Jレベルの判定を可能にするプログラムの開発を行い、公開した。さらに、文法のレベル別基準特性を判定を可能にするCEFR-J Grammar Profileを開発・公開した。音声認識では、スピーキング・テスト解答データを追加することで、音声認識プログラムの精度を向上した。2019年3月23日に「CEFR-J 2019シンポジウム in 京都」を開催し、170名余りの参加者があった。このシンポジウムでは、3年間の研究成果の発表をするとともに、CEFR-Jのリソースの活用ワークショップも行った。さらに、CEFR-Jの利用企業や協力校の発表機会を提供した。これらの活動により、CEFR-Jが広く認知され、日本の英語教育の改善に大きく資することができた。
著者
山口 直子
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

【研究目的】CD38遺伝子はオキシトシン合成ニューロンや下垂体後葉からのオキシトシン分泌に関与している。オキシトシンは子宮収縮や母乳分泌に必須のホルモンである。CD38遺伝子多型(4693C>T)を有する遺伝子組換えを行ったCOS-7細胞は、CD38関連酵素活性が50%に低下することが報告されている。そこで総合周産期母子センターに入院した妊婦と児のCD38遺伝子多型(4693C>T)を検索し、遺伝子多型の有無による母児の臨床的背景を明らかにし、遺伝的要因から病的新生児を出生する可能性のあるハイリスク妊婦の診断と治療、および児の予後を明らかすることで、母児の予後の改善に繋げる。【研究方法】当院総合周産期母子医療センターに入院した母親と児の末梢血液リンパ球から核酸(ゲノムDNA)を抽出し、PCR法によりCD38遺伝子を増幅後、RFLP法(Restriction Fragment Length Polymorphism)により、CD38遺伝子多型(4693C>T)を解析するとともに、SNP出現率とSNPを有する母児の臨床的背景を検討する。【研究結果】奈良医大に入院した母子で250名について、CD38のSNP(rs1800561(4693C>T) : R140W)の検出数は、T/C : 16名、T/T : 1名、C/C : 233件であった。すなわち、CD38遺伝子多型頻度は、0.068であった。【考察】一般人のCD38遺伝子多型頻度は、0.003~0.035と報告されている。今回の検討で母子センターに入院する母児は、CD38遺伝子多型(4693C>T)の頻度は一般人よりも有意に高かった。CD38遺伝子多型(4693C>T)が、母子センターに入院する母児の遺伝学的要因の一つと考えられた。
著者
加藤 潤三
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、移住者の地域コミュニティへの適応とソーシャルキャピタルの関連性を検討することを主目的に、移住者とそれを受け入れる側の地元民の双方の視点から検討を行った。本研究の結果、移住者の適応にはソーシャルキャピタル、その中でも特に地元民との強い紐帯が影響を及ぼすことが示された。ただしソーシャルキャピタルのどの側面が重要になるかはコミュニティの地域特性によって異なっており、特に移住者の多い都市部では、地元民との強い紐帯だけでなく信頼感も重要であった。一方、地元民の側からは、彼らの移住者受容には、実際のネットワーク量ではなく、信頼感やポジティブ評価など心理的態度の方が重要であることが示された。
著者
跡見 順子 村越 隆之 平工 志穂 三上 章允 桜井 隆史
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

東京大学教養学部では新入生を対象に必修科目のスポーツ・身体運動を行っている。その科目の一つとして、自分自身の身体を用いて運動を行いながら、運動時の身体変化を科学的に理解することを目的とした「スポーツサイエンスコース」を開講している。約30人の受講生を対象として、生命科学を基本とし、自分自身のからだを通して、また実際に運動することを通して、生命と脳を理解するための、以下の4つの教育プログラムの開発を行っている。1)フィールドにおける呼吸数による至適運動強度の推定を行い、運動に苦手意識を持つ学生にも自分自身のからだの機能を理解させる効果が得られた。2)運動後の脳の活性化を測定するためのプログラムを開発した。パソコンを用いた数分で修了する試験により、脳の活性状態を数値化し、比較検討することを可能としている。3)自分自身のからだを、構成単位である細胞から理解するために、ラットの解剖を行っており、現在、映像コンテンツを作成中である。4)自分自身の身体の動きを理解するために、ゆっくりとした動きを制御する太極拳を実習科目に取り入れ、太極拳について科学的な視点を持って身体の理解につなげる研究を行っている。伝統武術太極拳の脳機能への効果を、近赤外分光法(NIRS : Near Infrared Spectroscopy)を用いて検討した結果、太極拳実施中のOxyHbは対照課題実施時と異なる変化を示すことが明らかになった。1-3の内容をまとめたものを、日本体育学会第56回大会にて跡見、桜井が口頭発表、The American Society for Cell Biology, 44^<th> annual meetingにて跡見がポスター発表を行った。4の内容についてまとめたものを、日本体育学会第56回大会にて平工がポスター発表および共同研究として口頭発表を行った。
著者
中谷 和弘 鶴田 順 石井 由梨佳 坂巻 静佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

海洋における船舶の安全の確保は単に円滑な海運にとってのみならず「国際社会における法の支配」にとって不可欠の重要性を有するものである。本研究においては、国際海峡とりわけ中東からの石油の輸送路として死活的な重要性を有する海峡であるホルムズ海峡の法的地位と同海峡における船舶の航行をめぐる法的課題、免除を享有する軍艦及び政府船舶に特有の安全確保に関する法的課題、海賊問題、原子力船の地位、防空識別圏、船舶の安全を脅かす行為に対する海上での法執行をめぐる課題等について、国連海洋法条約等の国際法及び海上保安庁法等の国内法の双方の観点から、また法解釈・適用にとどまらず立法論的な観点もふまえて検討した。
著者
日置 貴之
出版者
白百合女子大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年度は、明治期を中心とした歌舞伎における戦争表象について、主に後発の演劇ジャンルである新派劇や絵画、小説といった隣接領域の諸芸術との比較の観点から研究を行った。その結果、幕末から明治初期にかけての歌舞伎と絵画(錦絵)が、実際の出来事や戦争、それに関わる人物の実名等をどのように朧化するか、といった点で、非常に類似した表現方法を採っていることや、実名による描写へと移行していく時期にも一致が見られることなどがわかった。また、研究の途中経過をいくつかの研究会等で口頭発表することで、近い分野の研究者からの助言等を得た。また、日本近代文学会秋季大会でのパネル発表においてディスカッションに参加し、同時代の文学諸ジャンルとの類似点・相違点についての考察を深めた。また、明治期の複数の歌舞伎・新派の戦争劇台本の翻刻を進めた(2019年度は勝諺蔵作「日本大勝利」、竹柴其水作「会津産明治組重」の翻刻作業を行った)。この作業は、2020年度も川上音二郎一座(藤沢浅二郎作)「日清戦争」等を対象として継続し、『明治期未翻刻戦争劇集成』(仮)として公表する予定である。また、直接に戦争を描くわけではないが、それと深く関わる作品である「島鵆月白浪」作中に描かれる靖国神社(東京招魂社)に注目し、明治期から昭和期に至る諸ジャンルにおける靖国神社の表象についても調査を進めた。その結果、今後さらに軍歌・紙芝居・ラジオといった昭和期のさまざまなメディアのなかで、歌舞伎の戦争劇・戦時劇を捉えていくことが必要であると考えるに至った。
著者
古庄 知己 福嶋 義光 籏持 淳 松本 直通 三宅 紀子 涌井 敬子 森崎 裕子 渡邉 淳
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

エーラスダンロス症候群(Ehlers-Danlos症候群;EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする先天性疾患の総称です。現在、6つの大病型およびその他の病型に分類されていますが、これらの分類には当てはまらない患者さんも少なくありません。本研究では、全国からEDSを含めた遺伝性結合組織疾患疑い患者さんを収集し、詳細な臨床的分析と次世代シーケンスを用いた網羅的遺伝子解析により、新たな病型を探索しました。結果、COL5A2遺伝子変異に基づき、乳児期より顕著な皮膚過伸展性・脆弱性、重篤な後側彎症を発症する重症古典型サブタイプなどを発見することに成功しました。
著者
藤 直子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

前年度にライノウイルス感染が呼吸器感染症に与えているインパクトを明らかにすることを目的にした疫学調査より新型ライノウイルスCが優位に高いウイルス排出量を示したり、喘鳴を呈しやすかったりと既存のA, Bと異なる病態が観察された。これらウイルス種による差をin vitroで解析するため正常プライマリーヒト気管支細胞をAir-Liquid Interface (ALI)にて培養し分化する手技を検討・習得した。この細胞を使用しライノウイルスCを分離することに成功した。また正常プライマリーヒト気管支細胞では細胞の分化に3週間の時間がかかりウイルス分離目的で常用するのは非常に困難であった。そこで株化細胞であるcalu-3細胞を使用して短い時間で(1週間)分化細胞を準備し、なおかつその細胞でライノウイルスCが分離できることを発見した。分離したウイルスを使用し、正常気管支細胞及び喘息患者気管支細胞間でウイルスに対する免疫応答に差が見られるのかを解析した。これらの実験系の確立によりライノウイルスCを使った解析が可能になった。より多くのライノウイルスC株を収集・検討するために日本の医療機関にて急性呼吸器疾患と診断されたものの内ウイルス分離陰性であったものについてPCRを用いスクリーニングを行い、ライノウイルスC陽性であったものについて-80℃保存検体を使用し上記の条件で分離に試みた。その結果分離成功には検体中のウイルス量が大きく関わることが明らかになった。ライノウイルスCにて高頻度でウイルス血症を起こしていることが以前までに明らかになっているが、ALIの細胞上においてウイルス排出方向や細胞傷害性についてはライノウイルスAと異なる性状は確認できなかった。ライノウイルスCが既存のA, Bと異なる病原性を持つのか明らかにするため更なる検討が必要である。
著者
東海 正 胡 夫祥 塩出 大輔 内田 圭一 荒川 久幸
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、海洋におけるマイクロプラスチック(MPs)を採集する際に標準的に用いられるニューストンネットの採集特性を明らかにして、MPsの大きさ別の推定密度の精度向上を図り、ニューストンネットによるMPs採集方法の標準化に貢献する。このために、仕様の異なるニューストンネット(ニューストンネットやマンタネット、標準的に用いられる0.33mmやその他目合)の網目選択性を表す特性曲線のパラメータを比較操業実験から推定する。また、回流水槽での実物実験やCFDを用いて、海表面を曳網される際の網内外の流速分布を求め、濾水効率を推定する。これらの結果をもとに、ネット採集数と濾水量からの補正方法を提示する。
著者
小林 春夫 堀江 聡 高橋 英海 仁子 寿晴
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イスラームを代表する哲学者イブン・スィーナー(Ibn Sina=Avicenna,1037年没)の思想の全体的解明に向けて、第一に、彼の主著である『治癒の書』(al-Shifa')形而上学部分を様々な刊本・写本に基づいて精読し、邦訳と注釈を作成した。第2に、ギリシア哲学、シリア語圏の思想、中国思想の専門家とともに同書の成立過程を明らかにするとともに、その思想の後世への影響について多面的に解明した。
著者
青井 伸也 土屋 和雄
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究課題では,ムカデなど多足歩行生物の蛇行生成メカニズムの解明と工学的応用に向けて,次の 4 つのテーマを実施した.1.ムカデの数理モデルに基づく力学特性の把握2.シンプルモデルに基づく力学構造の明確化3.ロボット実験に基づく工学的実証4.ムカデ計測データに基づく生物学的妥当性の検証.これらの結果から,数理モデルやロボットでは,ある速度を超えると超臨界ホップ分岐を介して蛇行が出現し,速度に依存する蛇行の出現や蛇行の振幅や波数の変化などムカデと同様の傾向を持つことが明らかにされた.これらの研究成果をまとめたものは Physical Review E に採録され,更には,Nature Physics の News & Views で紹介された.
著者
下島 昌幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒトに病原性があるISKウイルスと病原性がないと考えられるSTBウイルスについて、本研究ではその病原性の発現機序と、更に2ウイルス間にある増殖性や病原性の相違の機序を明らかにすることを主目的とする。ISKウイルスおよびSTBウイルスを含めKeterah orthonairovirusの生物学的あるいはウイルス学的解析に取り組んでいる研究者は国内外を通し我々のグループのみであり、本研究なくしてはKeterah orthonairovirusの学術研究は進まない。
著者
鈴木 大
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ニホンイシガメとクサガメは日本に広く生息する.前者は日本固有種であり,後者は外来種である.マイクロサテライトマーカーを用いて,これらの2種と交雑個体の遺伝的構造を調べた.ニホンイシガメにおいては先行研究により2つの遺伝的に異なる系統が存在するとされていた.本研究の結果,先行研究結果を支持し,両系統が遺伝的交流を生じていることがわかった.クサガメ日本列島集団は同じく先行研究より3系統の存在が知られている.本研究では2系統が存在し,さらに一部の個体においては両系統のDNAを保持していることが示された.交雑個体88個体について同様に調べた結果,30個体が雑種1代目,33個体が戻し交雑個体とみられた.
著者
小方 浩明
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

"Models for circular data from time series spectra"のプロジェクトでは、方向統計学で広く知られている密度関数の多くが、時系列解析におけるスペクトル密度関数によって表現できることを指摘し、また、ARMA(p,q)型のスペクトル密度関数から方向統計学におけるかなり一般的な密度関数を提言することを行った。論文は学術雑誌に投稿され、査読者から指摘された実データ解析を行った。具体的には、アメリカの風向データに対して、提案した複数のモデルを当てはめ、AICの意味でベストなものを示した。また、当初はARMA(p,q)の次数がp+q<=2の場合のスペクトル密度関数から方向統計学の密度関数を提案していたが、留数定理を用いることでp+q>2の場合でも正規化定数を計算でき、方向統計学の密度関数を与えることができた。"Frechet-Hoeffding copula bounds for circular data"のプロジェクトでは、二変量周期確率ベクトルのコピュラを考え、その上限(M_a)と下限(W_a)の形を与えているが、当初は「周期確率ベクトルのサポートが2π周期の意味でnondecreasing (nonincreasing) setになっているときにM_a(W_a)を達成する」という流れで証明を書いており、これでは確率変数が連続型の場合のみしか扱えていなかった。そこを、「周期確率ベクトルにおけるコピュラの同値類」という概念を作り、「circularにおけるコピュラ上限(下限)の同値類はM_a(W_a)で与えられる」という流れにすることによって、連続型、離散型を問わず議論することに成功した。
著者
寺林 伸明
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.満州拓殖政策の企画・立案・実施の経過、満蒙開拓青少年義勇軍の募集・訓練・入植・開拓営農の実施経過、および第一次義勇軍の創設から開拓団終焉にいたる経過等に関する基本文献・資料の収集をした。2.第一次鏡泊湖義勇隊開拓団の関係者団体、「鏡友会」会員192名に対して、応募の事情、訓練・開拓・営農の体験、従軍および敗戦後の現地収容あるいはシベリア抑留等の体験を聞いたうえで、現在どのように考えているかなど多角的にアンケート調査を実施した(8〜10月)。3.アンケートの実施結果は、回答数46(うち2名死去のため不明)、転居先不明10、無回答136で、有効回答数は44(22.9%)だった。なお、アンケート調査時に無回答だった2名については、その後の聞き取り調査で面談でき、回答がえられた。4.アンケート結果によって第二次の聞き取り調査をおこなうため、9〜10月に回答内容について仮集約作業をおこない、聞き取り対象者を抽出した。5.11月、兵庫県・長崎県在住の元1次義勇隊員と鏡泊学園関係者など、9名の聞き取り調査を実施した。あわせて、関係者から鏡泊学園の関係印刷物を収集した。6.2月、愛知県・千葉県・埼玉県在住の元1次義勇隊員・補充団員・農業指導員など、4名の聞き取り調査を実施した。あわせて、関係者から『満州開拓史』、鏡友会の『鏡泊の山河よ永久に』および会員有志の『賭けた青春』、満州国農事試験場関係者の文集等々を収集した。7.札幌郡広島町、上川郡愛別町在住者2名の聞き取り調査を実施した。
著者
池田 浩士 村上 勝彦 玉 真之介 田中 学 坂下 明彦 川村 湊 馬 興国 劉 立善 劉 含発 衣 保中 黄 定夫 梁 玉多 山室 信一 森 久男 我部 政男 井村 哲郎 蘭 信三 徐 明勲 歩 平
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、旧「満州」へ送り出された日本人農業移民の実態を総合的に解明し、日本の近現代史のひとこまを新たな視覚から再構成することを目的としたが、とりわけ次の諸点で成果を収めることができた。1.「旧水曲柳開拓団」の生存者たち、及び入植現地の中国農民生存者たちからの聞き取り調査と、日中双方の関係農村のフィールドワーク調査によって、日中農民の接触実態や土地収用とその後の営農状況等について、多くの証言と、それを裏付けるデータを得た。2.農業技術、雇用状態等、日中双方の農業史における未解明の領域で、具体的な実態を解明するための多くの手がかりを得た。3.稲作地帯である入植地の朝鮮族農民、さらには朝鮮半島から「満州」へ送り出された朝鮮人農民に関する調査研究を、韓国の研究者および中国の朝鮮族出身研究者たちとの共同作業として重点的に進め、未開拓のこのテーマについての証言とデータを多数得た。4.「満蒙開拓団」政策の形成と実施の過程に関する資料の探索・分析に努め、この政策を推進したイデオローグたちの役割を、思想史の中に位置付ける作業を行った。5.「満蒙開拓団」を、政治・経済・農業・軍事などの次元にとどまらず文化の領域における問題としてもとらえ、文学・報道・映画・音楽などとかかわるテーマとして考察した。これによって、日本国民の感性の中へ「満州」と「満蒙開拓団」が浸透していった実態の一端を解明することができた。6.聞き取りとフィールドワークの記録を、ビデオテープ、音声テープに大量に収録したが、生存者がますます少なくなっていくなかで、これらは重要な歴史的ドキュメントとなるであろう。
著者
矢崎 一史
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

ABCトランスポーターは高等植物において大きな遺伝子ファミリーを形成し、シロイヌナズナでは123種の遺伝子が見いだされている。本研究においては、シロイヌナズナに22種類存在するABCBタイプのトランスポーターの内、AtPGP4(AtABCB4)とAtPGP21(AtABCB21)を取り上げ、これらが植物体におけるオーキシンの軸方向への移動にどのように関与しているか、分子レベルでその輸送能を解明することを目的とした。これまで、AtPGP4が根端と根の表皮細胞で強く発現し、IAAの根端からの求基的輸送に関与することを明らかにした。今年度は、AtPGP4と最も相同性の高い類似遺伝子AtPGP21に関して解析を行った。Promoter::GUS植物体の解析により、AtPGP21はAtPGP4の発現が全く見られない根の中心柱で発現していたが、それが内鞘細胞特異的であることが明らかになった。根以外では、葉や花弁など側方器官の付け根で強く発現していた。また幼植物体に限っては葉肉細胞でも強い発現が認められた。このタンパク質に特異的なペプチド抗体を作製して、膜の分画とウエスタンブロットにより局在膜を調べた所、細胞膜局在であることが明らかとなった。シロイヌナズナの膜画分を用いて検出されたバンドは140kDaであり、糖鎖などの修飾はないものと思われた。IAA感受性の酵母変異株を用いて、AtPGP21を発現させ、AtPGP21のオーキシン輸送機能の解析をIAAの感受性試験にて行った。その結果、コントロールに比べ、AtPGP21を発現させた形質転換酵母株は、それぞれIAAおよびIAAアナログの5-FI存在下でより高い感受性を示した。このことは、AtPGP21がAtPGP4と同様、取り込み方向にIAA分子を輸送していることを示唆している。
著者
高梨 啓和
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、様々なリン除去技術の中で、設置面積が小さく維持管理が容易であり、汚泥生成量が少なく、他の除去技術に比べて低濃度のリンを除去・回収可能な吸着法に着目し、従来より検討例が多く、安価で比較的吸着容量が大きい活性アルミナを、硫酸アルミニウムで処理した吸着剤を用いた検討を行った。その結果、硫酸アルミニウムで処理することにより、吸着容量はほとんど増加しなかったが、連続通水可能倍率は大幅に増加し、処理効果が認められた。これは、硫酸アルミニウムが加水分解してプロトンを生成し、細孔内および吸着カラム内のpHを吸着に適してpHに低下させたためと考えられる。そこで、pHの影響を検討した結果、pHの影響は大きく、リン酸イオンの解離状態が変化して平均電荷が変化することと、吸着剤の表面電位が変化することの両方が影響していた。以上より、本吸着剤がpHの自己調整機能を有することが連続通水可能倍率を増加させた理由と考えられる。また、本吸着は、リン酸イオンと硫酸イオンとのイオン交換であった。通常、活性アルミナによるリン酸イオンの吸着は、表面水酸基とのイオン交換と考えられているが、本吸着剤では、表面水酸基が予め硫酸イオンに置換されているため、硫酸イオンとのイオン交換になったと考えられる。さらに、本吸着剤の吸着等温線、粒内拡散係数を求め、吸着カラムの設計に必要な値を得た。また、吸着容量に対する共存イオンの影響を検討し、ヒ酸イオン、炭酸イオン、珪酸イオンが主な妨害イオンとしてあげられた。これに対し、カルシウムイオンは、中性〜弱アルカリ性域においてリン酸イオンの吸着量を増加させる効果が認められた。これは、リン酸イオンの解離が進行しているpH域において、カルシウムイオンがリン酸イオンの見かけの平均電荷を減少させる効果があることによるものと考えられる。
著者
高木 智久 吉川 敏一 内藤 裕二 吉田 憲正 古倉 聡
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ヒト炎症性腸疾患患者(潰瘍性大腸炎・クローン病)をはじめとした炎症性疾患に対する革新的な新規治療法の開発の試みとして一酸化炭素ガス(Carbon monoxide:CO)吸入曝露装置の開発、ならびに同装置を用いたCOガス吸入療法の効果の検討をマウス実験腸炎モデルに対して行った。1,CO曝露装置は研究協力者の森田亨(東京高圧株式会社)とともに行った。その概ねの構造は1000ppmのCOガスを純空気により分割希釈することによる濃度調節法を選択し、マウスゲージを収納できるアクリル製の大型の閉鎖飼育容器に曝露する方法をとった。ガスの排気は安全性を高めるため開放系の外気に希釈廃棄することとした。この装置を用いて検討したところ持続的に安定した一定濃度のCOガス曝露が可能になり、以降の検討に耐えうるものが完成した。2,マウス実験腸炎モデルとしてTrinitrobenzesulfonic acid(TNBS)腸炎モデルを用いた。その結果、COガス曝露群では非曝露群に対して有意に病変の形成が抑制されていた。また、大腸粘膜内の好中球浸潤や炎症性サイトカイン産生もCOガス曝露群にて有意に改善を認めており、COガス曝露による抗炎症効果が確認された。3,他部位の炎症病態におけるCOガスの効果を検証するために、代表的な関節炎症モデルであるマウス関節炎モデルを用いてCOガス吸入の効果を検証した。その結果、COガスの吸入により有意に関節炎の発症が抑制された。このことより、COは腸管炎症だけでなく関節炎においても充分に抗炎症効果を発揮するものと考えられた。以上の検討から、COガスによる腸管炎症を含めた炎症病態における炎症性御効果が明らかとなった。