著者
石濱 史子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.21-40, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
110
被引用文献数
12

博物館の標本情報や市民調査による観察情報などに代表される、不在情報がない分布データは、在のみデータと総称される。GBIF(Global Biodiversity Information Facility)などの公開データベースの整備により、在のみデータは分布推定に広く用いられるようになり、その成果が保全生物学分野でも幅広く応用されている。しかし、在のみデータに基づく分布推定に際しては、不在情報がないことに起因する特有の注意点が生じる。特に注意が必要なのが、サンプリングバイアスの存在と、バイアスに対応した偽不在(pseudo-absence)の選び方、推定値が分布確率そのものではない場合が多いこと、推定精度の評価指標の値が偽不在の選び方に依存して変わることである。在のみデータに基づく分布推定を、保全対策に適切に活用するためには、これらの注意点とその対処法を十分に理解することが欠かせない。これらの注意点と対処法に関して、蓄積されつつある海外での報告事例を紹介する。
著者
山川 宏
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.AGI-024, pp.05, 2023-08-08 (Released:2023-08-08)

本研究では、物理世界で生存可能な自立型人工知能(AI)システムの開発における技術的ハードルを明らかにする。まず、AIが長期生存を目指す2つの生存シナリオを想定した。まず、2つの生存シナリオを想定した: 長期生存を目標に人間が設計したAIと、自ら生存を目指すAIである。次に、6つの領域にわたる技術的課題の重要なカテゴリーを特定した。そして、それらのカテゴリーに含まれる21の具体的な課題をリストアップし、ChatGPTを用いてその技術的難易度を推定した。その結果、ハードウェア関連の課題では、自律型AIが生存するまでに100年以上かかる可能性があるが、人間の支援により、その時間を大幅に短縮できることが示唆された。ChatGPTの共通知識によるこの評価は示唆的であるが、参照した知識の範囲が2021年9月までと限定されていることも含め、暫定的なものとして扱うべきである。
著者
谷口 守 星野 奈月 富永 透見
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.939-944, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

近年,SNSの急速な発展に伴い,我々の日常生活はサイバー空間へと大きく軸足を動かしている.本研究では,都市に関連する「ツイート」に対しキーワード分析を行うことで,各都市に対して市民が潜在的に抱いている都市像を定量的に明らかにする.分析に当たっては,ツイートが特定のイベントや異なる季節などによって影響を受けることから,その流動性も考慮に入れて分析するものとする.分析の結果,各都市のツイート数は魅力度,人口,季節,イベントの4つによって説明されることが明らかとなった.また各都市に関するキーワードはその内容が異なり,ツイートには都市個性が反映されることが示された.なお,その反映状況は極めて鋭敏であり,その扱いには注意が必要であることもあわせて初めて明らかとなった.
著者
中野 敦行 山口 昌樹
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 2011-04-25 (Released:2017-05-23)
被引用文献数
15

唾液アミラーゼ活性(SAA)は,血漿ノルエピネフリン濃度と相関が高いことが良く知られており,ストレス評価における交感神経の指標として利用されている.ストレス研究への利用を目的として,本研究者らは携帯型の唾液アミラーゼモニターを実用化した.このバイオセンサは,使い捨て式のテストストリップと,唾液転写機構を備えた本体(130×87×40mm^3;190g)で構成されている.分析時間は1分ほどで,迅速なSAAの分析が可能である.本論文は,ストレッサーと唾液アミラーゼの変化量の関連性を定量的に示すことで,エビデンスの構築に資することを目的としている.今まで報告されてきた事例研究のデータを用い,ストレッサーを精神的なストレッサー,精神的・肉体的双方のストレッサー(心身ストレッサー),肉体的なストレッサーに分類した.ストレッサーに起因する唾液アミラーゼ活性の変化量を算出し,ストレッサーの種類で比較した.唾液アミラーゼは,その感度が鋭敏なことから,快・不快の判別が可能であることが示された.特に,急性のストレス評価に有効であると考えられた.このバイオセンサは,測定自体がストレスとなることなく,非侵襲,即時,随時,簡便なストレス計測手法として有効である.
著者
沈 政郁
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.38-51, 2014-09-20 (Released:2015-02-17)
参考文献数
40
被引用文献数
5

本稿では能力が劣るにも拘わらず血縁関係で新規経営者になるという意味での血縁主義がどのような結果をもたらすかについて,日本の同族企業の長期データを用いて実証分析した.学歴を能力の代理変数として利用し,新規経営者をエリートと非エリートに区分して,非エリート親族承継をその他の事業承継タイプと比較した.単純なDID(Difference-in-Differences)分析,幾つかの要因を制御したDID分析,新規経営者になるまでの経験の違いを制御した回帰分析,事業承継イベントをランダム化するための操作変数推定の結果,非エリート親族承継は婿・婿養子承継及び非同族企業の専門経営者承継に比べて経営者交代前後で業績の悪化を示した.
著者
伊藤 理史
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.15-28, 2017 (Released:2018-06-13)
参考文献数
39

本稿の目的は、政治的疎外意識の長期的変化とその規定要因を、コーホート分析によって明らかにすることである。「政治的有効性感覚の低い状態」と定義される政治的疎外意識は、政治参加の減退をもたらす主要な要因として、様々な実証研究が蓄積されてきた。しかし日本における政治的疎外意識の長期的変化とその規定要因については、ほとんど研究されていない。そこで本稿では、「日本人の意識調査,1973~2008」の個票データの二次分析によって、政治的疎外意識の長期的変化の実態、規定要因としての世代効果と時代効果の大きさ、高齢世代と比較した若齢世代の政治的疎外意識の特徴を、明らかにする。線形要因分解と重回帰分析の結果、次の3点が明らかになった。(1)政治的疎外意識は、1973年から1998年にかけて上昇したが、1998年から2008年にかけて低下・停滞する。またその変化の傾向は、世代間で共通する。(2)1973年から1998年までの政治的疎外意識の上昇は、正の世代効果と正の時代効果から生じていたが、1998年から2008年までの政治的疎外意識の低下・停滞は、負の時代効果が正の世代効果を上回ることで生じていた。(3)団塊世代と比べて若齢世代では、政治的に疎外されていると感じやすい。以上の結果を踏まえた上で、世代効果は戦争・民主化体験の有無、時代効果は55年体制崩壊による政権交代可能性の上昇として解釈した。
著者
鈴木 覚
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-22, 2012-01-31 (Released:2021-03-28)
参考文献数
41
被引用文献数
3

9 0 0 0 OA 台湾の口蹄疫

著者
坂本 研一
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.74-75, 2011-07-20 (Released:2013-01-04)
被引用文献数
2
著者
森田 愛子 髙橋 麻衣子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.12-25, 2019-03-30 (Released:2019-12-14)
参考文献数
37
被引用文献数
3 1

本研究の目的は,文章の読解時に,音声化と内声化が文章理解や眼球運動にどのような影響を及ぼすかを検討することであった。黙読時に内声化を行う程度の個人差により,文章理解や眼球運動が異なるかを併せて検討した。実験1では,大学生24名に文章を読ませ,文章内容問題と逐語記憶問題に解答させた。音読,黙読,すべてを内声化する黙読(内声化強制),なるべく内声化しない黙読(内声化抑制)の4条件を設けた。内声化強制条件と内声化抑制条件を比較した結果,内声化によって逐語的な情報を保持しやすくなることが明らかになった。実験2では,大学生23名に,逐語記憶問題を課さずに同様の実験を行った結果,内声化を抑制すると文章内容問題の成績が低下し,内声化が文章理解に寄与することが示唆された。ただし,通常の黙読時に内声化を多く行う者とあまり行わない者に分けて成績や眼球運動のパターンを比較したところ,内声化をあまり行わない者の場合,内声化を抑制しても文章内容問題の成績の低下が比較的小さかった。また,このような読み手は内声化を多く行う者より黙読時の理解成績が高く,黙読時に視線を自由に動かす読み方を有効に利用できていることが示唆された。
著者
秋山 哲
出版者
日本共生科学会
雑誌
共生科学 (ISSN:21851638)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.126-135, 2015 (Released:2019-06-17)
参考文献数
11

Judaism, Christianity and Islam are monotheism. Each religion claims that its God is the real God. When we read the Bible and the Quran carefully however, we understand that the origin of each God is the God of Judaism. Christians believe in the Trinity, which means the God consists of the God of Old Testament, Jesus and the Holy Spirit. According to the Quran, Mohammed thought that the true believer was Abraham and the God of Abraham is Allah. Although three religions have a long history of disputes and struggles against each other, and there still is rivalry in the Middle East between Israel and Arab nations, they have believed in the same God. Therefore, I do not think that symbiosis of the three monotheism religions is impossible. The God himself will intervene into these three religions which believe in him.
著者
熊倉 啓之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.307-310, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
26

本研究は,海外における割合指導に関する先行研究を分析し,日本の割合指導との違いを明らかにして,今後の割合指導の改善への示唆を得ることを目的とする.まず,海外の割合指導に関する先行研究を,(1)パーセントの概念に関する研究,(2)パーセントの理解を支援する図等に関する研究,(3)パーセント問題の解決と指導に関する研究,の3点に焦点を当てて分析した.分析の結果,日本の割合指導との違いに基づく指導改善への示唆として,(1)パーセントを分数と関連付ける,(2)100マス図を活用する,(3)帰一法等による方法を扱う,の3つの示唆を得た.
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.272-281, 2019-06-01 (Released:2019-12-01)
参考文献数
37

Crowdsourcing is a newer labor portal where anonymous workers earn small amount of money for completing Web-based tasks. Recent research investigating human behavior often recruit workers through these platforms to ask them to participate in online survey and experiment. To make it short, the advantage of crowdsourcing is that it enables researchers to collect empirical data at relatively lower economical, human,and temporal costs. However, it is also known that some professional survey takers who repeatedly participated in academic survey tasks are likely to show satisficing —behavior in which workers do not pay attention adequately to research materials. In addition, internet-based research practice has other concerns specific to ethical consideration in online data collection, including presenting proper post-survey debriefing and maintaining ethical level of compensation. Present article outlined a state of the art of internet-based research in the domain of social sciences, indicated both strong and weak point of the online study, and suggested possible future direction in cognitive studies with crowdsourcing.
著者
佐々木 まなみ 田口 雄也 田上 恵太 押切 華映 前嶋 隆弘 中條 庸子 金澤 麻衣子 佐藤 麻美子 布田 美貴子 井上 彰
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.97-104, 2022 (Released:2022-08-26)
参考文献数
26

【目的】緩和ケアチームで介入する患者の栄養学的問題点を明らかにし,緩和ケアチームにおける管理栄養士介入の効果を調査する.【方法】緩和ケア診療加算・個別栄養食事管理加算を算定した症例を後ろ向きに調査し,①介入時の栄養学的問題点と介入内容,②Verbal Rating Scale(VRS)で評価した介入前後の食に関する苦悩,③エネルギー摂取量を調査した.【結果】患者年齢(中央値)66歳,①介入時の栄養学的問題点は「エネルギー摂取量不足」56例,介入内容は「食事形態変更」53例と最も多く,②食に関する苦悩はVRS(中央値)3から2へ改善し,③エネルギー摂取量は753 kcal±552 kcalから926 kcal±522 kcal/日と有意に増加(p<0.01)した.【考察】緩和ケアチーム管理栄養士の介入は,食事に関する苦悩を軽減させ,エネルギー摂取量を増加させる一つの要素になる可能性が示唆された.
著者
松田 涼 世古 俊明 隈元 庸夫 佐藤 佑太郎 濱本 龍哉 吉田 英樹
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2024-001, (Released:2023-08-18)
参考文献数
26

【目的】脳卒中者の等尺性脚伸展筋力(以下,脚伸展筋力)と等尺性膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力)と歩行自立度との関連を検討し,重度の麻痺を呈する脳卒中者への下肢筋力評価の一助を得ること。【方法】対象は脚伸展筋力と膝伸展筋力測定が可能な初発の脳卒中者51名とした。筋力測定には牽引式徒手筋力計を使用し,脚伸展筋力測定は背もたれ付きの椅子に深く腰掛けた座位とし,測定下肢を前方に置いた椅子の座面に挙上させ,膝関節屈曲30度位にて施行した。なお,膝伸展筋力測定はベルト固定法にて実施した。歩行自立度評価にはFunctional Ambulation Category(以下,FAC)を用いた。脚伸展筋力と膝伸展筋力の関連および麻痺の重症度を制御変数としたFACと各筋力値の偏相関分析を実施した。【結果】脚伸展筋力と膝伸展筋力は高い正の相関を認め,偏相関分析にて麻痺側脚伸展筋力および膝伸展筋力がFACと中等度の正の相関を認めた。【結論】脳卒中者の脚伸展筋力は膝伸展筋力と同程度に歩行自立度を反映することが明らかとなった。