著者
長谷川 修一 山中 稔 野々村 敦子 伊藤 久敏 菅原 弘樹
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東北日本の太平洋側にある松島は,松島湾とその内外にある大小260余りの島々からなる日本三景の一つである景勝地である.長谷川ほか(2008)は,松島周辺の地形,地質を検討した結果,巨大な地すべりによって形成された可能性が高いとの仮説(松島巨大地すべり説)を示した.本研究では松島巨大地すべり説を実証する目的で,東松島市宮戸島において2015年に深さ70mのオールコアボーリングを実施した。また、想定すべり面の上盤側,想定すべり面,想定すべり面の下盤側の3箇所から得たジルコンのU-Pb年代を試みたが,誤差の範囲で一致する15.2 Maを示し、地すべり説を積極的に支持する結果は得られなかった.
著者
榎田 洋一 澤田 佳代 杉山 貴彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

アクリルニトリルは数十年間にわたって U と Sb を含む触媒で合成されてきた,この廃触媒は放射性廃棄物であり合理的処分が必要である.しかし,U は長半減期で化学毒性と放射性毒性のために浅地中への直接処分が難しく, Sb の化学毒性も考慮を要する.従って,触媒担体から U と Sb を除染した後,触媒担体を利用してガラス固化する方法を提案した.目標はシリカ担体の細孔から高収率で U と Sb を回収することと浅地中処分に適切な最終廃棄体とすることであった.成果として,ホウケイ酸ガラスの相分離を利用する方法と Sbを塩化揮発した後に U を回収する方法を考案できた.実触媒に対する実証実験を行い, U に対して 99.3%以上,Sb に対して 97%以上の回収率での除染を確認できた.また,最終廃棄体であるガラス固化体試料について,脱イオン水による浸出試験を実施した結果,浸出液濃度は誘導結合プラズマ発光分光法の検出限界以下である 0.1ppm 以下とできた
著者
中立 悠紀
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本年度は大きく分けて二つの事柄に関して研究してきた。一つは1952年に起きた戦犯釈放運動が、どのようなメディア環境下で行われていたのかということを検討してみた。これは当時の新聞(全国紙と全ての県紙)の社説・論説、掲載紹介された投書を分析することによって、当時の報道の様相と、世論の動向を考察した。また当時よく読まれていた雑誌の上位15誌が戦犯釈放問題と釈放運動をどのように評価し報道していたのかも分析した。分析の結果、新聞の大多数が戦犯釈放運動を支持していたことが分かった。ただし当時の新聞は少なくとも BC 級戦犯を犠牲者とし、この釈放推進を概ね支持していたが、一方で A 級戦犯については依然批判的に見ていた新聞社も多かったし、紙面に掲載された投書でも戦争指導者(A級戦犯)の責任を別個のものとして論じるものがいた。雑誌については戦犯に対して同情的な記事が多数であったことが確認された。もう一つは戦犯が靖国神社に合祀された過程について研究してきた。戦犯釈放運動の中心的機関であった復員官署法務調査部門が、実は靖国神社に戦犯を合祀しようとしていた組織でもあったことが分かった。法務調査部門は 1952 年 4 月の講和条約発効直前から戦犯の合祀を企図し始め、靖国の事実上の分社・護国神社への先行合祀など、靖国合祀のための布石を打っていた。戦争受刑者世話会も法務調査部門と共に合祀を目指し、1954 年に靖国側から将来合祀する旨を引き出した。そして 1958 年 より法務調査部門は靖国神社との戦犯合祀の折衝に実際に臨んだ。しかし筑波藤麿靖国神社宮司は A 級戦犯の合祀に関しては慎重姿勢であった。そのため A 級戦犯は合祀対象から脱落したが、靖国は法務調査部門の要請を受け入れ、1959 年に法務調査部門が調製した祭神名票に基づき、大部分の BC 級戦犯を靖国に合祀した。
著者
伊藤 保彦 浜田 久光 五十嵐 徹 継 仁 福永 慶隆
出版者
日本医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

これまでの検討の結果、以下のような成績を得た。1)日本医科大学付属千葉北総病院小児科外来においてprospectiveに行った調査では、明らかな基礎疾患を持たない不定愁訴患児140名のうち74名(52.4%)が抗核抗体陽性であり、健常対照群82名中わずか5名が陽性であったのに対して明らかに高率であった(P<0.0001)。2)抗核抗体陽性患児の主訴としては疲労と微熱が多く、消化器症状や起立性調節障害などの訴えは陰性患児に多かった。従って抗核抗体陽性で疲労を訴える患児について“自己免疫性疲労症候群"という疾患概念を提唱したいと考える。3)抗Sa抗体は抗核抗体陽性患児の41.3%に認められ、抗Sa抗体陽性者は陰性者と比べて抗核抗体160x以上の高力価のものが多く、また抗核抗体の蛍光パターンでも1名を除いて全員homogeneous & speckledであるという特性があった。4)抗Sa抗体およびSa抗原の分析としては以下のような性質が明らかになった。a)抗Sa抗体は少くともウシ胸腺抽出液では反応が見られないため、ヒト抗原に特異的である可能性が高い。b)HeLa,Molt 4、ヒト末梢血単核球いずれを抗原としても62kDのバンドは検出されるため、Sa抗原はヒトにおいては臓器特異性に乏しく、広分布している蛋白と考えられる。c)RNA-immunoprecipitation法ではSa抗原に付随して沈降されるRNAは見当らない。以上の様な知見をふまえ、今后再に検討を続けていく計画である。また96年度日本リウマチ学会において以上の成果を発表する予定である。
著者
中村 昭子 和田 浩二 木内 真人 大村 知美 Guettler Carsten
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

小天体レゴリス層での衝突クレーター過程を理解するために、模擬低重力衝突実験装置を開発し、低速度衝突クレーター形成実験を、0.01-1 G の範囲で大気圧下と 10 Pa 以下で行った。クレーター直径は、重力加速度の約 -0.2 乗に比例することがわかった。また、粉粒体層の空隙率の重力依存性に関する経験則を得た。一方、重力が減ってもクレーター直径があまり大きくならない、粒子間力が卓越する場合があることも実験的に示した。一方で、衝突時の放出物量は、反発係数や摩擦係数といったエネルギー散逸をもたらす粒子間相互作用によらないことが数値シミュレーションで示された。
著者
中井 祐一郎 下屋 浩一郎 田村 公江 浅田 淳一 鈴井 江三子 中塚 幹也 新名 隆志 林 大悟
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

出生前診断による選択的人工妊娠中絶について、無記名アンケートによる一般市民の意識を調査した。一般的な人工妊娠中絶については、母体外生存が不可能なことを条件として容認するという者が、男女ともにほぼ2/3であった。非選択的人工殷賑中絶との比較した場合の選択的中絶の道徳的位置付けについては、女性の半数以上がより問題が大きいとした。胎児の選択権については、女性の85%、男性においても75%が認めていないが、権利としては認めないが、状況によってはやむをえないとする回答が過半を占めた。新型出生前診断については、女性の70%、男性でも65%が、妊婦に対する情報提供を限定的にすべきであると回答した。
著者
石戸谷 重之
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

陸上植物活動に伴う酸素・二酸化炭素交換比(ER)を森林生態系の呼吸・光合成量の分離評価に応用することを目標とし、飛騨高山落葉広葉樹林サイトにおいて土壌チャンバーおよび葉チャンバーにより土壌呼吸および光合成+葉呼吸による ER を観測した。併せて大気中酸素濃度の高精度連続観測装置を開発し、森林内大気中濃度変動における ER を観測した。得られた ER と森林内酸素/二酸化炭素収支の 1 box model とを用いた解析により大気-森林間フラックスにおける ER を推定し、森林内大気中濃度変動における ER との関係を明らかにした。今後は、森林生態系の呼吸・光合成量の分離評価のため、大気-森林間フラックスにおける ER の直接観測による導出が課題となる。
著者
小川 秀司
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ネパールの主にShivapuri Nagarjun国立公園でアッサムモンキー(Macaca assamensis)を観察した.同地域のアッサムモンキーは,他のマカカ属の種と同様に母系の複雄複雌群を形成し,オスはマウンティングや抱き合い行動を行って,その際相手のペニスを触る事があった.また,オスは群れのコドモを抱く事もあった.しかし,タイに生息するアッサムモンキーやアッサムモンキーと近縁なチベットモンキー(M. thibetana)とは異なり,相手のペニスを舐める行動やブリッジング行動(2頭のオトナが一緒にコドモを持ち上げる行動)は,ネパールのアッサムモンキーでは観察されなかった.
著者
肥後 靖 土井 康明 茂里 一紘 岩下 英嗣
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,海上浮体が受ける海震による衝撃荷重を合理的に求めるプログラムの開発を第一の目的と実施した。開発にあたっては,模擬的な海震を発生させられる水槽を製作し,海震実験法を確立すると共に,当該海震実験の結果と開発したプログラムによる計算とを対比し,開発プログラムの妥当性を検証しながら海震のメカニズムについて検討した。その結果,まず海震実験によって,圧力波が水面と水底で共振していることが確認できた。また,本研究で開発した数値計算プログラム(時間領域,周波数領域双方)の妥当性を検証するために,実験によって得られた結果と計算との比較を行い,その結果,理論上第一共振に対応する周波数で,実験においては大きな圧力分布を示さず,第二共振に対応する周波数付近で大きな圧力変動が見られた。この実験の傾向と計算の結果の不一致の原因は,圧力波の伝播速度が水温に依存しており,実際と計算で異なっていること,また,水槽の側壁が振動装置からの隔離が完全ではなく,二次的な振動源となっていることが考えられるが,詳細にはさらなる検討が必要である。さらに,当該水槽を使用して海震荷重計測試験も行ったが,これも側壁の振動が原因と思われる雑音が存在し,理想的な実験結果を得られるにいたらなかった。いずれにしても,未だ実施されたことのない実験のために,色々と解決すべき問題はあるが,今後それらを一つ一つ解消し,目的である海震のメカニズム解明に役立てられるという目処は立った。特に,数値計算の検証という意味で本模擬海震発生水槽はこれから威力を発揮すると期待される。
著者
堀井 秀之 小松崎 俊作 中川 善典
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

東洋町(日本)・ヴェレンベルグ(スイス)・ビュール(フランス)・慶州(韓国)における放射性廃棄物処分地決定プロセスの政治過程分析を通じて,情動的ステップと理性的ステップの2段階で構成される住民の態度形成過程を分析するモデルを構築した.そのモデルを用いて日本の政治過程を再度分析した結果,信頼や恐れ,怒りといった要因が影響する情動的ステップの段階で反対態度が形成されているにも関わらず,交付金等理性的ステップでの影響要因を操作する立地政策が採られていることが本質的課題であると示唆された.
著者
松井 三郎 松田 知成 中山 亜紀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

ダイオキシン受容体(AhR)は、様々な化学物質を認識することが知られている。外因性のリガンドとしてはダイオキシン、PCB、多環芳香族類などが知られている。また、内因性のリガンドとしては研究代表者の研究で明らかになったインディルビンをはじめ、ICZ、FICZ、DIMなどのインドール化合物が知られている。HPLCとバイオアッセイを組み合わせることにより、環境中には、多種類の外因性リガンドが存在することを明らかにした。染色工場の排水や、下水処理水中はAhRリガンド活性を示した。水環境中のAhRリガンドの単離精製をすすめたところ、いくつかの染料を同定した。この中には、赤ボールペンに使われるローダミンB、黄色染料のHydroxybenzo[b]quinophtaloneなどがあった。また、様々な染料の標準品のAhR活性を調べたところ、アントラキノン系の染料にリガンド活性があることを見出した。さらに、様々な食品中のAhRリガンド活性を調査したところ、コーヒー中に数種類のAhRリガンドがあることをつきとめた。内因性または食品由来のインドール系リガンド、インディルビン、ICZ、FICZ、DIMのAhRリガンド活性を比較した結果、インディルビン、ICZ、FICZのいずれにも極めて強い活性が観察された。また、これらのリガンドは自らが誘導するCYP1A1やCYP1A2によって極めて容易に分解されてしまうことも明らかにした。これらの強いAhRリガンドと、ダイオキシンの毒性の違いは、この代謝のされやすさにあると考えられる。さらに、AhRがリガンド依存的にp21の発現を誘導し、細胞周期に影響を与えるメカニズムの一端を明らかにした。
著者
黒木 雅子
出版者
京都学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成24年、日本の複合マイノリティである在日韓国・朝鮮人女性との出会いを通して、キリスト教会での活動や問題などインフォーマルな情報収集を行い、ジェンダー、エスニシティ、キリスト教というカテゴリーだけでは括れない経験の多様性を確認した。平成25年3月に「エスニシティ・ジェンダー・キリスト教と宗教」研究会をたちあげ、研究者による研究と社会変革のための実践の両者を視野に入れ、11回の発表を行った。その結果、新たな問題として経済格差があげられる。これら研究成果の一部は、京都学園大学出版助成を得て平成27年12月に出版予定。また研究会ではミクロネシアとアメリカから日系人研究者を招いて講演を行なった。
著者
静間 俊行
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

レーザー光と高エネルギー電子との相対論的コンプトン散乱よって生成される準単色ガンマ線ビームを用いて、カリウム39の光反応断面積測定を行った。光核反応実験は、兵庫県立大学・高度科学技術研究所の電子蓄積リング施設(ニュースバル)において行った。エネルギー約1GeVの蓄積リング電子とNd : YAGレーザーを用いて、約17MeVの最大エネルギーをもつ準単色ガンマ線ビームを生成し、塩化カリウム標的に照射した。使用したガンマ線の強度は、毎秒約0.5〜1×10^6個であった。このガンマ線ビームを、直径15mm、厚さ20mm(2.2g/cm^2)の塩化カリウム標的に照射し、光核反応によってカリウム39を放射化し、ベータ崩壊の後に放出されるカリウム38のガンマ線を、ゲルマニウム検出器を用いて測定した。Eu-152、Y-88標準線源を用いて、ゲルマニウム検出器の検出効率の校正を行った。また、GSOシンチレーション検出器を用いて、入射ガンマ線の強度測定を行った。さらに、モンテカルロシミュレーションコードEGS4を用いて、入射ガンマ線のエネルギー分布を評価した。その結果、カリウム39からカリウム38の基底状態への光核反応断面積として、ガンマ線平均エネルギー15.9MeVに対して、0.5〜1mbが得られた。今後、入射ガンマ線強度のより精密な評価や標的材によるガンマ線の吸収の効果を考慮し、光核反応断面積のより正確な評価を行う予定である。
著者
大野 信忠 琵琶 志朗 水野 衛 呉 旭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

1. 周期的内部構造を有する複合材料の時間依存変形に対する均質化理論を定式化した.この結果,擾乱変位速度が時間非依存の弾性成分と時間依存の粘性成分に分離された.また,ひずみ速度と応力速度の巨視的構成式および微視的応力の発展式が導かれた.2. 上述の理論を一方向連続繊維強化複合材料の横方向クリープ変形および粘塑性変形に適用した.繊維方向の変位に対しては平面ひずみ条件を仮定し,繊維配列としては正方配列と六方配列を考えた.この結果,正方配列では変形挙動の異方性が極めて著しいのに対して六方配列ではほとんど等方的となることが明らかとなった.3. 周期的内部構造が点対称性を有する場合の擾乱変位場の特性を議論し,擾乱変位はすべての点対称点で零となり,かつ点対称条件を満足することを示した.またこの場合,境界条件として点対称条件を使用することができるから,ユニットセルの一部の領域のみを解析すればよいことを指摘するとともに実例を示した.4. 本理論を一方向連続繊維強化複合材料の非主軸負荷粘塑性変形に適用した.繊維配列としては六方配列を仮定した.この結果,非主軸角がわずかであっても粘塑性流動応力は大きく減少するが,非主軸角が45度を越えるとあまり変化しないことが明らかとなった.5. 一方向連続繊維強化ハイブリッド複合材料GLARE2の実験結果を本理論に基づく結果 と比較し,上述の非主軸角依存性が定性的に成り立つことを確かめた.
著者
中山 顕 桑原 不二朗
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

生体組織における有効熱伝導率に対する血流速度の影響を検討すべく実験を行った.被験者の腕を,カフを用いて一定の圧力で締め付けることで,血行を制御した.血流速度を血流レーザードップラーで測ると共に,サーモグラフィ,熱電対およびリアルタイム血流画像化装置を用いて,周囲温度,皮膚表面温度およびPerfusion Unit 値の計測を実施した.併せて,我々が導いた生体組織の伝熱の式を用い,マルチスケール解析モデルに基づく数値シミュレーションを実施した結果,シミュレーション結果と計測結果との間に良好な一致を見た.これらにより,実験と理論の両側面から,血行が生体組織の温度場に与える影響を明らかにした.
著者
浅川 誠
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本年度は2年計画の最終年度としてサイクロトロンレーザ発振実験及び実験結果の解析を行い、以下の成果を得た。●サイクロトロンレーザー発振実験(1)自発放射光のスペクトルを測定した。今回の実験条件である磁束密度1T、磁場長3m、電子ビームエネルギー150MeVでは、電子はソレノイド磁場を通過する間に半回転しかサイクロトロン旋回しない。サイクロトロン共鳴波長は100μmであるにも関わらず、自発放射光はテラヘルツ波帯からミリ波帯にかけて非常に広帯域なスペクトルを示した。(2)光共振器を構築し発振実験を行った。電子ビーム伝送系のミスマッチングのためレーザー光は飽和には至っていないが、自発放射光強度の500倍程度にまで出力が増大した。●数値シミュレーションによる実験結果の解析(1)自発放射光の時間波形及びスペクトルを計算し、実験で得られたスペクトルと比較した。半回転のサイクロトロン旋回を行う電子からのサイクロトロン放射光は、共鳴周波数にかかわらず電子ビームのパルス幅と同程度の時間幅を持つ半周期電磁波を発生することが分かった。半周期電磁波とは通常の電磁波のように電場が正負の値をとらず、正値(あるいは負値)のみを取る電磁波の事を言う。シミュレーションで得られたスペクトルは、実験結果とよく一致しており、観測した放射光は半周期電磁波であると考えられる。(2)一次元の増幅シミュレーションコードを開発した。このコードにより、放射光が電子と相互作用するたびにそのパルス幅を狭めてゆき、飽和レベルに達する時には1psの極短パルスになることが分かった。この時スペクトルはより高周波側に広がり、相当量のテラヘルツ成分を持つようになることが分かった。以上の結果は超相対論的な電子ビームからのサイクロトロン放射を利用することでテラヘルツ帯の超短パルス/大出力光源が実現可能であることを示すものである。
著者
奥乃 博 中臺 一博 公文 誠 糸山 克寿 吉井 和佳 佐々木 洋子 昆陽 雅司 合原 一究 鈴木 麗璽 加賀美 聡 田所 諭
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究では,ロボット聴覚ソフトHARKの「聞き分ける技術」を基に,自然環境・災害現場でも通用するように,豊富な機能拡充・高性能化と応用に取り組んだ.HARKはWindows版提供により9万件弱のダウンロードがあった.多人数インタラクション,音楽共演ロボットの可能性を示し, iGSVD-MUSICの開発によるUAV用音源定位の頑健化,索状ロボット用に姿勢推定・音声強調の開発により,レスキューロボットへの音利用の可能性を示し,さらに,カエルの合唱の解明,野鳥の鳴交解析のためのHARKBirdの開発と実地検証により音響生態学への可能性を実証し,ロボット聴覚の多面的展開のための基礎技術が確立できた.
著者
高橋 智聡 シャムマ アワド
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

Rbヘテロ型マウスは、甲状腺C細胞において、正常アレルの欠損により、腺腫を生じる。このマウスでN-ras遺伝子を追加欠損すると、Rb欠損C細胞腺腫が悪性転換する。RbN-ras二重ヘテロ型マウスに生じたC細胞腫では、Rb正常アレル欠損に続いて、N-ras遺伝子座のLOHと悪性化が観察される。N-ras野生型Rb欠損C細胞腺腫を詳細に解析したところ、多種のDNA損傷応答因子と、セネセンスマーカーの発現を観察した。N-rasホモ型マウスから生じた腫瘍において、これらはことごとく、発現消失した。RbN-ras両欠損C細胞株に野生型N-rasを導入すると、DNA損傷、セネセンスが誘導され、ヌードマウス皮下移植腫瘍は良性組織型を示した。この細胞では、導入野生型N-Rasが等分子数活性化型(V12)の約5分の1程度活性化され、p130がヒストンメチル転移酵素と結合していた。V12導入細胞では、セネセンスは誘導されず、このような結合も見いださなかった。次に、Rb欠損時のN-Ras活性の亢進の機構を調べるために、RbN-ras両欠損マウス由来C細胞株にRbを急速導入、細胞周期変化が誘導される前にmRNAを回収、マイクロアレイ解析を行った。その結果、Rasの活性調節に直接に関わるあるファミリーがRbによる発現抑制を受けることが判明した。これらのプロモーター領域に、E2F結合配列とともに、E2Fの影響を受ける転写因子の結合配列を多数見いだし、ChIP解析、ルシフェラーゼ解析により、これらが、発見した遺伝子群の転写制御に必須であることを確認した。さらに、Rbヘテロ欠損と同時に、p16Ink4a,p19ARF,ATM,Suv39h1のいずれかをホモ型欠損する二重ノックアウトマウスコホート群を作製し、腫瘍表現型を解析した。以上により、我々は、Rb失活細胞の癌化を阻止する重要な生体防御機構を見つけた。
著者
綱川 秀夫
出版者
東海大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究では,隣接した複数のセクションにおけるDRM方位デ-タから,地磁気方位・相対強度を推定する新たな方法を用いて,房総半島における海成層(BMC,BMH,BMYセクション)に記録されたブリュンヌ・松山逆転を解析した.その結果と,これまでに得られている地磁気反転のデ-タとを比較した.さらに,地磁気永年変化との共通性を考察し,非双極子磁場の成因について物理的モデルの可能性を考察した.例えばBMC・BMY両セクションでは方位変化にパタ-ンの類似性はあるものの大きな時間のずれがある.BMCの方がBMYより伏角では約100年,偏角では約200年早く変化している.このようなずれは,両セクションの時間分解能の差異や堆積速度の見積り誤差などでは説明できない.しかし,堆積物の残留磁化はある時間幅の地磁気を重畳したものであるという見地から検討すると,もしBMCの方がより長い時間幅の応答関数をもっていれば,BMYよりも早い時期に磁化の変化が現われてくることになる.そこで,本研究代表者による新しい解析方法を,3つのセクション(BMC・BMH・BMY)に記録されたブリュンヌ・松山逆転時のDRM方位デ-タに適用した.結果的に収束解が存在し,房総地域のブリュンヌ・松山逆転時約900年間にわたる地磁気3成分変化が推定できた.この推定結果とブリュンヌ期地磁気永年変化とを比較してみると,双極子磁場g_1^0と2種類の非双極子磁場主役を占めていたことを示唆する.
著者
瀧田 輝己 田口 聡志 太田 康広 福川 裕徳 上枝 正幸 武田 史子 椎葉 淳 矢澤 憲一 奥田 真也 原田 保秀
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、我が国でも重要な課題といえる内部統制報告制度およびその監査制度の意義ないし制度的な効果について、理論研究、規範研究、実証研究、および実験研究という4つの研究方法からアプローチすることを目的とするものである。そして、具体的な検討対象である内部統制監査制度の意義や効果を各方法論から多面的に分析していくだけでなく、各研究方法の根底にある基本的な立場を明らかにし、究極的には、監査研究における各研究方法の相互理解ないしコラボレーションの可能性を模索していくことを目指すものであった。3年間のプロジェクトの結果、多面的な方法論から、ワークショップ開催、学会発表、論文執筆をおこなうことができた。