著者
吉信 康夫 渕野 昌 宮元 忠敏 嘉田 勝 友安 一夫 酒井 拓史 薄葉 季路 松原 洋 König Bernhard
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公理的集合論の研究において, アレフ数2以上の無限基数のもつ組合せ的性質は, それ以下の無限基数に比べて解明されていない点が多い. 本研究では, アレフ数2以上の無限基数のうち比較的小さいものたちのもつ組合せ的性質の, いろいろな強制拡大の下での不変性を詳しく調べた. その結果, 強制公理と呼ばれる集合論のよく知られた一連の公理たちが, どのような種類の半順序集合による強制拡大によってどの程度保存されるかという問題を中心に, いくつかの重要な知見を得ることができた.
著者
壁谷澤 寿海 楠 浩一 有川 太郎 井上 波彦 壁谷澤 寿一 松山 昌史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

鉄筋コンクリ-ト造建築物の縮小試験体が崩壊に至る水理実験を実施して特に地震動による損傷と漂流物による閉塞効果の影響を検証した。2014年度にはピロティ構造の震動実験と孤立波による水理実験を実施し,地震動による損傷が津波による倒壊危険性を増大させることを実証した。2016年度には純ラーメン構造が連続波と漂流物によって倒壊に至る水理実験を実施し,漂流物の開口閉塞効果により大幅に増大する津波荷重を定量的に明らかにした。2015年度,2017年度には静的加力実験を行い,水理実験の試験体の耐力を確認した。以上の実験結果および検討成果を総括して津波避難ビルの設計用津波荷重の評価法を提案した。
著者
深道 和明 佐久間 昭正 梅津 理恵 笹尾 和宏 佐々間 昭正
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、非常に高いネール温度を示しGMR, TMR効果を示す多層膜の反強磁性材料として注目されているγ-Mn系合金およびL1_0型Mn系合金の基礎物性と電子状態を実験および理論の両面から調べることを目的としている。得られた成果を以下に示す。1.γ-MnRh系合金に関する研究Mn_3Rh規則相合金ならびに不規則相合金において磁化、電気抵抗、熱膨脹および低温比熱測定ならびにバンド計算を行った。この合金は、電子状態密度においてフェルミ面近傍にディップを形成することで反強磁性状態を安定化し、高いネール温度を実現していることが明らかになった。また、ネール温度の圧力依存性ならびに体積弾性率を詳細に調べた。2.γ-MnIr系合金に関する研究実用材料として注目されているγ-MnIr不規則相合金の磁気相図を明らかにした。磁気構造と格子歪みが密接に関連していることが分かっているが、fct構造からfcc構造への構造相転移温度と2Qから3Qへの磁気転移温度が必ずしも一致しないことを理論および実験の両面から明らかにした。3.L1_0型MhTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金に関する研究非常に高いネール温度を有するL1_0型MnTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金について磁化、電気抵抗および低温比熱測定、ならびに理論計算を行った。これらの合金系はフェルミ面近傍に擬ギャップを有する非常に特徴的な電子状態を有することが判明した。また、デバイス特性に関わる電気抵抗率の組成依存性を理論計算の結果と併せて、定性的に説明できることを明らかにした。4.L1_0型MnIr合金に関する研究L1_0型MnIr合金の電気抵抗および磁化測定ならびに電子状態に関する研究を行い、他のL1_0型MnTM合金と同様に擬ギャップ型反強磁性体であること、そしてMn系合金のなかで最も高いネール温度を有することを明らかにした。また、この合金系は低温において大きな磁場中冷却効果を示すことが判った。5.交換結合に関する研究γ-MnおよびL1_0型反強磁性合金の交換結合を古典的ハイゼンベルグ模型を用いて解析し、それらの計算結果と実験結果が極めてよい対応を示すことを明らかにした。
著者
仁平 京子
出版者
高崎商科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、日本の少子化と高齢化の同時進行を背景として、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯の消費者行動に対する社会ネットワークとしての家族のくちコミや集団的購買意思決定に着目し、日本型の高齢者マーケティングの理論構築を行うことを目的とする。そして、本研究では、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯において、インターネット上の非対面的くちコミよりも、家族や友人からの伝統的な対面的くちコミの対人的影響力の有用性を検証した。本研究では、家族のくちコミによる社会的効果に着目し、娘や息子、孫などの家族が高齢者(消費者)の購買代理人となるバンク・ショットモデル(購買者・消費者主体不一致型)の理論構築をした。
著者
久保田 哲也 篠原 慶規
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

強い地震の場合には森林斜面の崩壊が予想されるが、その場合の森林地上荷重および根系の影響を明確にし、山地斜面の安定に対する地震時の森林の影響を明らかとした。同時に、地震後の強雨が森林斜面安定に与える影響、つまり、震後の強雨時における、地震動および地震で生じた亀裂や森林の影響とその影響の持続期間を解明し、崩壊危険箇所調査や警戒・避難など災害対策に応用できる崩壊発生危険雨量=警戒避難基準雨量も明確とした。さらに、地球温暖化にともなう豪雨の増加が心配されており、地震振動の基準雨量への影響を比較検討し、警戒避難システムの改良を考える上で有意義な成果を得た。
著者
亀井 一
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、18世紀後半ドイツの諷刺作家ジャン・パウル、リヒテンベルク、ヒッペルのテクストを取り上げ、テクストの主体という観点から、作者とテクストの関係を考察した。本研究で、テクストの主体というのは、広い意味で、客体としてのテクストに対する発話者をさし、その主体が実在しているのか、虚構なのかは、さしあたって問わないことにする。語る主体は、登場人物、あるいは、語り手としてテクストに現われるが、テクストの作者とは区別される。テクストの主体は、作者をとおしてテクストに入り込んだ他者であるかもしれないし、作者のなかにある無意識(他者)であるかもしれない。たしかに、テクストは作者によって書かれたものであるが、書かれたものは、しばしば、作者の意図を超えたなにものかになっている。テクストの主体と作者のあいだのズレはここから生じる。本研究で取り上げた作者たちは、自分がテクストに書き込んだ「わたし」に他者を見出し、それぞれの観点からテクストの主体を主題化することになった。ヒッペルが社会との緊張関係のなかで、自己と書く主体のあいだの亀裂を明確に意識していたとするならば、ジャン・パウルはテクストの虚構性との戯れのなかで、ヒッペルと同じ問題に直面した。ジャン・パウルは、自己の真実を追究してゆくなかで、作者としての自己が虚像の「わたし」であることを認めざるをえなかった。一方、リヒテンベルクが銅版画解説において目指していたのは、本来、虚構化ではなく、銅版画の厳密な再現だった。にもかかわらず、そこに恣意性が生じるのは、視覚芸術の記号体系と物語の記号体系の構造的な差異によると考えられる。本研究では、ラファーター、ジャン・パウルの図像解説テクストとの比較分析で、テクストの主体が意識化されてくる過程を追跡した。
著者
鈴木 晃仁 脇村 孝平 杉田 聡 橋本 明 飯島 渉 杉田 米行 加藤 茂生 廣川 和花 渡部 幹夫 山下 麻衣 永島 剛 慎 蒼健 ヨング ジュリア 香西 豊子 逢見 憲一 田中 誠二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

疾病・病者・医者の三つのエージェントが会して構成される「医療」という動的な場は、どのような歴史的な構造を持つのか。疾病環境の変化、人々の病気行動の変化、そして医療者の科学と技術の変化の三つの相からなる医療の構造変化は、近現代の日本の変化とどのような関係があり、世界の中の変化とどう連関したのか。これらの問いが、急性感染症、スティグマ化された疾患、帝国医療の主題の中でとらえられた。
著者
今村 詮 藪下 聡 大作 勝 斉藤 昊 諌田 克哉
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

本研究は、昭和61年度、62年度、63年度の3段階に分けて進められた。以下に各年度毎の進展状況を示す。1.昭和61年度.この年度は、まず、繰り込み摂動法を拡張ヒュッケル法のレベルで定式化し、それに対応するプログラムを作成した。そして、ポリアセチレンの炭素の一個がチッ素原子におきかわった系(いわばソリトンの系)、ポリアセチレン系ードーパント系、ポリアセチレン鎖間相互作用系に適用した。そしてこの各々の系に対する信頼性を、通常の拡張ヒュッケル法による強い結合の近似での計算との比較によって調べ、充分に高いことをたしかめた。2.昭和62年度.前年度の満足すべき結果を基礎にして、この繰り込み攝動法を、電子間反発積分をあられに含めたAb Initio SCF法の摂動理論へ拡張し、定式化した。また、この定式化にもとづいて、高分子の摂動項をくりかえし解くAb Initio法のプログラムを作成した。このような系に対する定式化およびプログラム作成は、世界で初めてなされたことを強調したい。そして、水素分子が一次元的に配列している仮想的な高分子系に適用し、十分信頼性の高い結果を得たが、系によっては収束に問題のある場合があることがわかった。3.昭和63年度.前年度の研究の結果、収束に問題があることがわかったので、これを摂動項を部分的に変分的に取り扱う方法、および大行列式を小行列式に分割してよい零次の項を求める方法によって、うまく対応できることを示した。以上、3年間にわたって繰り込み摂動論を発展させ、体系化に成功し、信頼性が充分に高い結果を与えることがわかった。今後、これを具体的に高分子設計に用いていく予定である。
著者
渡邉 信 中嶋 信美 河地 正伸 彼谷 邦光 加藤 美砂子 宮下 英明 白岩 善博
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は将来のBotryococcusを用いた石油代替資源開発に資するため、Botryococcus炭化水素生産代謝経路の生合成経路やその調節機構並びに大量増殖機構に関わる生物学的・化学的研究を行った。その結果、1)鉄成分が細胞やコロニーの形状、そしてオイル生産に与える影響が大きいこと、2)Botryococcusの63株の生産する主要炭化水素は直鎖アルケン型(race A)、トリテルペン型(race B)、テトラテルペン型(Race L)および上記3つの型のいずれにも属さない種々の構造のものが含まれるマルチ型タイプに分類されたこと、3)BOT-70はMEP経路を使ってテルペノイドを合成していること、4)炭化水素合成時にはSAMサイクルが活性化されていること、5)B.brauniiの大量発生には亜熱帯地域の夏季の成層形成・日照が重要であり、また窒素分濃度の高い水域にはB.brauniiはほとんど出現しないこと、6)細胞増殖が飽和する以上の光エネルギー(40μmol photons/m^2/s)が光合成生産を介して炭化水素生産等の物質生産に振り分けられていることが示された。
著者
中垣 俊之 三枝 徹
出版者
公立はこだて未来大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

生物システムは天与の情報機械であり、その動作原理の解明は、基礎科学として興味深いばかりでなく、また新規情報技術の創成にもつながり社会的にも重要である。本研究では、単細胞生物である粘菌変形体を主なモデル生物として、その情報処理能力、特に時間記憶能の最も基本的なあり方を実験的に評価し、情報処理のアルゴリズムを考察した。細胞レベルで既に周期的なイベントの予測と想起の能力があること、それは代謝反応の多重リズム的な運動から表れることをつきとめた。同様な能力が、原生生物界から動物界、植物界にいたるまで広く共通して見られることを示唆できた。
著者
原田 一孝 前田 健悟 岡崎 宏光 宮本 光雄 吉永 誠吾 杉 哲
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

子ども達の興味・関心が高く,実用的価値の高い製作教材を種々検討し,ワンチップコンピュータを用いた"電子オルガン"を開発した.これはドレミ...の音階(下のソから上のソまで)2オクターブを発生できる.また,振動数と音の高さとの関連性を調べたり,非音階の音(風の音,幽霊の音など)を発生するために,連続音(496Hz〜4kHz)を発生する機能も付加した.さらに,子ども達に人気のあるメロディー6曲を自動演奏する機能も付加したものが得られた.作る喜びを体験するために,木材の切断・仕上げ・塗装,プリント基板の切断・穴あけ・部品取り付け・ハンダ付け,紙コップを使ったスピーカ部やタッチセンサ部などの組立てにおいてホットボンド接着・ネジ取り付けなど,多くの作業場面を取り入れた授業計画を開発した.夏休みには開発中の"電子オルガン"や昨年度開発した"ヤジロベー"や"崇城博士"の工作教室を熊本市博物館,熊本市中央公民館および天草郡の小学校で実施し,多くの小学生に喜んでもらうと同時に,子ども達の工作スキル並びに指導法の検討を行った.中学校での研究授業は2学期に天草郡本渡市教良木中学校,3学期に水俣市久木野中学校で実施した.この時は"電子オルガン"と"崇城博士"の2教材を用いた.中学生の工作スキルのレベルを見込んで作業場面を増やしたが,実質は小学5・6年生と大差ないように感じられた,知識の面では確実に高レベルにあることが予想されるので,この事を生かした指導法の開発が望まれた.以上の研究授業から"ものづくり"の体験は"総合的に学習する時間"の優れた教材に成り得ることが判明したが,これらの準備・実施に要する手間・暇を考えた場合,現場教師に対する外部援助があって初めて実現可能であると感じる.このため,今後はホームページでノウハウを提供したり,ボランティアグループで援助活動等を計画して行きたい.
著者
松井 邦彦 小島 淳 小川 久雄
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、日本人の急性心筋梗塞患者に関した前向き多施設共同研究である Japan Acute Coronary Syndrome Study (JACSS)のデータベースをもとに、1)データマイニングの手法や統計手法を用いて、治療法の選択を含めた判断の影響、その効果を評価する。さらに、2)予後予測モデルの作成を試みた上で、得られた結果について妥当性の検証を行った。急性心筋梗塞患者に対して、30 日後での死亡に関する侵襲的な再還流療法の効果についての評価を行ったところ、中程度のリスクと考えられた群に対して、もっとも効果は高かったと考えられた
著者
興梠 征典 掛田 伸吾 中村 純 森谷 淳二 香月 あすか 吉村 玲児 小笠原 篤 村上 優 宮田 真里 阿部 修 渡邉 啓太 上田 一生 井形 亮平 杉本 康一郎
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

うつ病患者と健常者におけるCOMT遺伝子多型とNET遺伝子多型が、脳微細構造に及ぼす影響を、MR統計画像解析を用いて検討した。3次元高分解能MR画像による脳容積解析では、COMT遺伝子多型のMet carrier群において、健常群に比し患者群では尾状核の体積が有意に小さかった。Valine/ Valine型においては差がなかった。NETではG1287A多型において有意な関連が見られ、G/A型やA/A型に比べG/G型では左前頭前皮質の容積減少の程度が、健常群よりも患者群において有意に大きかった。これらの所見が、MDD患者の症状に関連している可能性が示唆された。
著者
関 みつ子 萩原 芳幸 鈴木 直人 森野 智子 大西 真 高橋 英之 大川 勝正 KILGORE Paul Evan KIM Dong Wook KIM Soon
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

新規検出法であるLoop-mediated isothermal amplification (LAMP)法を用いて呼吸器感染症菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌および髄膜炎菌)の検出方法を開発し、過去の疫学調査から得られた臨床データおよび脳脊髄液サンプルを用いてその臨床的有用性を明らかにした。さらに、要介護高齢者のインプラントを含む口腔状況について調査を行い、口腔ケアにおける問題点を明らかにした。
著者
松浦 啓一
出版者
国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.インド太平洋に出現するモンガラカワハギ科魚類には11属が含まれている.これらの仔稚魚は背鰭条数,臀鰭条数,胸鰭条数,縦列鱗数,頬部鱗列数などの計数的形質や頭部や鰓孔上部の鱗の配列状態,色彩などの組み合わせによって属レベルの分類が可能であることが明らかになった.アカモンガラカ属とソロイモンガラ属は背鰭条数が31本以上あるのに対して他の属では30本以下である.さらにアカモンガラ属とソロイモンガラ属は縦列鱗数の差によって識別できる.(2)上記2属以外の9属においては,ツバサモンガラ属は胸鰭下方に大きな突起をもつので容易に識別できる.なお,この突起は成長によって退縮し,成魚になると目だたなくなる.(3)他の8属においては眼の前方にある溝の有無,鰓孔上部の肥大鱗の有無,頬の鱗の配列状態,尾柄の形,色彩などを組み合わせることによって各属を識別できることが明らかになった.(4)他方,属内の種レベルの分類は仔魚では困難であった.2.これら外部形態及び内部形態を検討した結果,11属の系統関係について以下の結論を得た.ツバサモンガラ属は他のすべての属と姉妹群関係にある.他の10属の中では,アミモンガラ属が最初に分岐し,次にナメモンガラ属が分岐したと考えられる.さらにムラサメモンガラ属,クマドリ属がこれに続いて分岐し,残りの6属と姉妹群関係を形成する.6属の中ではソロイモンガラ属とキヘリモンガラ属が他の5属と姉妹群関係を形成する.そして,ツマジロモンガラ属とモンガラカワハギ属が分岐し,次にアカモンガラ属,そして最後にオキハギ属が分岐したと考えられる.
著者
山下 東子 堀口 健治 下田 直樹 工藤 貴史 加藤 基樹
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

漁業者の高齢化は青壮年層の新規着業が少ない中で漁業者の多くが高齢になっても就業を中止しないために生じ、漁業就業者に占める65歳以上の漁業者数は34%を占めている。沿岸漁船漁業を中心に、漁業センサス等のデータ分析と実態調査から次の諸点が明らかになった。すなわち、高齢者の就業継続は自身の選択、社会保障の程度、地域における限定的な就業機会によって規定されること、加齢とともに労働強度を軽減できる漁業種類で高齢者の就業が継続されること、その結果高齢漁業者の生産性・漁労所得は若年層に比べて低位であること等である。研究成果の詳細については平成26年度刊の図書『漁業者高齢化と十年後の漁村』で公開予定である。
著者
田野 大輔
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、セクシュアリティの問題を中心に、ナチズムの政治の実態を歴史社会学的に考察しようとしたものである。「民族の健全化」を標榜したナチズムは、人種衛生的見地から性の領域への介入を強化し、結婚・出産奨励策を通じた生殖の拡大を企てるなど、セクシュアリティの問題に並々ならぬ関心を示した。だがそこでは、性の問題が単に抑圧され、生殖のために利用されただけでなく、ある種の「性の解放」の約束を通じて、性的欲望が積極的に刺激され、これを満たす権力の拡大が促されていた。こうした考察によって、ナチズムの性政治を通じた欲望の動員のメカニズムを明らかにしたことが、本研究の成果である。
著者
太田 尚子
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

魚肉水溶性タンパク質(WSPC)のゲル化特性の解明とその高機能化を図ることを目的として,WSPCのカプリン酸ナトリウム誘導ゲル形成能をオボアルブミン(OVA)の存在下並びに非存在下で調べた.まずゲル形成に先立ち,無添加魚肉水溶性タンパク質(WSP)の動的粘弾性挙動をオレイン酸ナトリウムの存在下及び非存在下で調べたところ,無添加WSPの場合に比べ、このタンパク質-脂質混合系において水素結合が混合系サスペンジョンの弾性率の増加を促していることが示唆された.次に、WSPCを用いたレオロジー測定により、WSPC単独ではゲル形成に至らないが、OVAとの混合タンパク質では常温下でゲルを形成することが判った.この混合ゲルの微細構造を走査型電子顕微鏡観察したところ、カプリン酸ナトリウム誘導OVAゲルのそれに匹敵するくらいの微細な網目構造を持っている事が判った.更に,フーリエ変換赤外分光分析により、カプリン酸ナトリウム誘導OVAゲルの場合には、そのゲル形成過程に分子間β-シートに基づくアグリゲーションバンドが現れることが明らかになった.しかしながら,WSPCとOVAから成る混合タンパク質の場合には顕著なアグリゲーションバンドが見出されず,混合タンパク質でのゲル化に伴う二次構造変化の挙動は明らかにはできなかった.今後更に,WSPCの混合ゲル中での物性発現がどのような機構に基づいているものかを解明する事が必要である.
著者
戸田 保幸 松村 清重 眞田 有吾
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

プロペラと船体・舵との相互干渉をCFD計算内で体積力分布を用いる方法に対して新しい手法を提案した。CFD計算のプロペラ面の速度を直接用い体積力分布を計算する方法でこれまでのものとは異なり、誘導速度を引き算して非粘性プロペラ性能で体積力分布を求める時に行うやり取りを必要としない。この手法を用いて平水中の推進性能、ダクトや舵につけられたフィンのような省エネルギーデバイスの付いた計算や波浪中における推力変動の計算を行い十分に使用可能であることを示した。
著者
長坂 康代
出版者
国立民族学博物館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

ベトナムの首都ハノイで、同郷会の活動や母村の祭りに参加して、都市と村の相互扶助の関係を確認した。この数年、同郷会が運営する施設について、同郷会と母村の長老たちと意見の相違があったが、歩み寄りがみられた。同郷会の総会では、民衆による組織体制づくりに立ち会うことができた。また、ハノイの市場(いちば)での出稼ぎ労働者のコミュニティネットワークについて調査した。経済格差や地域格差を超えた、商業をめぐる相互扶助や、出稼ぎ労働者同士の都市生活の支え合い、ハノイの都市経済と宗教の緊密性が明らかになりつつある。