著者
児玉 耕太 仙石 愼太郎 荒戸 照世 難波 美帆
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度に引き続き、健康食品関連の米国関係者の訪問・インタビュー・視察調査に関して、研究協力者の一般社団法人 日本健康食品規格協会 池田先生からの紹介の紹介により、アメリカ健康食品の業界団体であるCouncil for Responsible NutritionのVice President, Science & International AffairsであるJames C Griffiths博士に9月に訪問し、インタビューを行った。合わせてボルチモアで開催されるNatural Products Expoにあわせて視察・調査を行った。また、延世大学校のKim, Tack Joong教授(http://web.yonsei.ac.kr/pharm/)とも、2017年8月に協働でワークショップを開催し、情報交換・交流を行なった。また、今まで取りまとめた成果について3月に日本MOT学会でポスター発表を行なった。2017年度は、班会議を2回開催した。2018年度は、最終年度であることから、国際シンポジウムを9月14日に北海道大学で開催する予定である。あわせて、本申請の計画にあるプロダクトデザインワークショップを2018/9/15-16で開催する企画を進めている。
著者
橋本 毅彦 岡本 拓司 廣野 喜幸 鈴木 淳 梶 雅範 鈴木 晃仁 柿原 泰 金 凡性 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

事故や災害の発生を防止したり緩和したりするために、様々な安全基準や規約が設けられている。本研究では、そのような各種の事故災害への対応と基準規約の制定に関して、航空・電力・防火・治水・保険・化学・医薬・医療などの工業医療分野において取り上げ、その歴史的過程を分析しようとした。産業社会を支えるそのような巨大な技術システムの基準・規約の全体を取り上げることはできないが、その顕著な側面やよく知られていないが重要な事例などを明らかにした。
著者
羽田 貴史 安原 義仁 黄 福涛 大場 淳 杉本 和弘 荒井 克弘 成定 薫 米澤 彰純
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果として,(1)アメリカにおける高等教育の市場化の構造を日本と比較して,日本の高等教育市場化の課題を明らかにしたこと(ローズ論文),(2)イギリスにおける大学団体の動向と課題を始めて体系的に明らかにしたこと(ロック論文),(3)アメリカ,イギリス,オーストラリア,北欧,中国,フランスの大学団体・専門団体の現状と課題を始めて明らかにし,今後の研究の基礎を作ったこと,(4)大学基準協会,国立大学協会,公立大学協会,日本私立大学連盟,日本私立大学協会という主要大学団体がはじめて参加し,大学団体の在り方を講論し,課題を整理したこと(2007年8月7日シンポジウム),(5)高等教育の市場化を支える装置である大学評価制度について,認証評価をはじめとする体系的な研究を行ったこと,(6)市場化のもとで,大学がガバナンスや組織変容を通じて適応していく方向や力学を明らかにし,調整団体・大学団体の役割を明確にしたこと,(7)国立大学関係学部長会議の資料収集と目録作成により,高等教育政策の形成過程において,これらの大学団体や組織が果たす役割を検討する基礎情報を明らかにしたことがあげられる。また,高等教育政策の形成にあたっては,大学内における学長(機関レベル),部局長(中間レベル),学科長(基礎組織レベル)の各層ごとで,統合の価値規範が異なるコーガン=ベッチャーモデルが日本でも検証でき,階層構造での葛藤を調整するガバナンスが求められることを明らかにした。大学団体・調整団体の役割は,こうしたガバナンスの構築に寄与することが期待される。
著者
阿藤 誠 津谷 典子 福田 亘孝 西岡 八郎 星 敦士 田渕 六郎 吉田 千鶴 岩間 暁子 菅 桂太 中川 雅貴 曺 成虎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):本研究では第一に男性の未婚化・晩婚化は非正規雇用の増大により引き起こされ、女性の未婚化・晩婚化は高学歴化に伴う賃金稼得力の上昇と関係がある。第二に結婚や家族に対して非伝統的な価値意識を持つ人ほど出生力が低く、反対に伝統的な意識を持つ人ほど出生力が高い。第三に男性と比べて女姓は結婚・出産を経験すると家事や育児を極めて多く遂行するようになる。第四に高齢の親に対しては男性よりも女性の方が心理的、経済的支援をより多く行っており、特に配偶者の親よりも自分の親に対して顕著である。また、孫がいない夫婦より孫のいる夫婦の方が祖父母から様々な支援をより多く受けていることが明らかとなった。
著者
南 雅文 金田 勝幸 井手 聡一郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

脳内分界条床核において、神経ペプチドであるCRFとNPYによる神経情報伝達が、痛みによる不快情動生成において相反的な役割を果たすことを明らかにした。また、これら神経ペプチドが分界条床核II型神経細胞に選択的に作用し、その活動をCRFは促進し、NPYは抑制することを示した。さらに、組織学的解析により、分界条床核II型神経細胞の活動亢進が、腹側被蓋野ドパミン神経の活動を抑制することにより不快情動を惹起する可能性を示し、痛みによる不快情動生成の神経機構を明らかにした。
著者
五味 高志 戸田 浩人 木村 園子ドロテア 渡邊 裕純 浅野 友子 水垣 滋 布川 雅典 根岸 淳二郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

森林-渓流生態系の構成物質では、林床落葉の放射性セシウム濃度が最も高く、福島原発事故によって放出された放射性物質の多くは、陸域に現存していた。流域のCs-137空間分布は、林相、微地形、立地などに影響されていた。森林土壌では、農地土壌と比べて有機物に吸着したCs-137が多かった。森林から渓流に供給されたリターは、溶脱によって放射性セシウムが流出し、CS-137濃度は林床の25%程度であった。これに応じて、同じ栄養段階の生物では、林床に生息するものより渓流に生息する動物でCs-137濃度が高くなっていた。本研究結果から、有機物に付着したCs-137の長期的な観測の重要性を示唆できた。
著者
田口 富久治
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成8年度は、研究課題についての史料の勉集をおこない執筆の準備に備えた。平成9年度は、戦後は本政治学史の執筆にとりかかり「戦後日本政治断章(一)」を執筆した。内容は第一章戦後日本政治学の方向づけと制度化、第一節戦後日本政治家の方向づけ(丸山兵男の「科学としての政治学」論文の役割)、第二節戦後日本政治学の制度化である。平成10年度には、戦後日本の政治学をリードしてきた丸山兵男研究の一部を「戦後日本政治と丸山兵男」と題して発表した。また「戦後日本政治学史断章(二)」として、第二章戦後政治学史への諸アプローチ(学史研究のサーグニイ)および第四章戦後政治学の百花斉政ー1920年代世代の登場ーと起して、戦後日本の政治学ルネッサンスの立役となった。1920年代生れの指導的政治学者、すなわち、福里敬一、京極純一、岡義直、永井陽之助、石里雄平の政治学の評価と分析を行った。この研究は、今後数年続行される予定である。
著者
宮本 愛喜子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

生後発達期、中枢神経系では大規模な神経回路形成・編成が生じる。神経回路網の変化としては神経間の情報伝達部位であるシナプスの除去や新生があげられるが、近年、ミクログリアがシナプス除去に対して役割を持っていることが明らかとなってきた。申請者は未解明である生後1-2週目のマウスにおけるミクログリアの役割、特に神経回路発達の指標となるシナプス動態に対するミクログリアの関与について明らかにするためにin vivo 2光子イメージングを用いたミクログリアの接触とスパイン形成または消失について検討を行った。生後8-10日齢の子宮内電気穿孔法によって大脳皮質興奮性神経細胞に赤色蛍光タンパク質を発現させたlbal-EGFPマウス(ミクログリア特異的にEGFPを発現)を用いて、タイムラプスin vivo 2光子イメージングを行ったところ、ミクログリアが接触した部位に新たなフィロポディア状の突起(スパインの前駆体であると考えられている)が形成される様子が観察された。また、ミクログリアの活性を抑えるミノサイクリンを腹腔内投与したマウスのスパイン密度を調べたところ有意な減少が見られ、ミクログリア選択的に除去したマウスでも同様の結果が得られたことから、ミクログリアによるフィロポディア形成は発達期におけるスパイン形成に寄与していると考えられる。さらに、ミクログリアを除去したマウスから作成した急性スライス標本を用いて微小興奮性シナプス後電位の頻度を確認したところ対照群と比較して優位に減少していた。したがって、ミクログリアにより形成されたフィロポディアは機能的シナプスの形成に寄与していると考えられる。以上の結果から大脳皮質体性感覚野の発達期において、時期特異的にミクログリアがフィロポディアの形成を介して機能的シナプスの形成に寄与していることが示され、発達期の回路形成に対するミクログリアの新たな役割を示唆する結果が得られた。
著者
渡部 周子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

前年度に引き続き、近代日本の「「かわいい」の生成」について、人文社会科学(またこれに影響を与えた自然科学)や芸術の動向と、総合的に捉えることを試みた。文献資料や図像資料の調査や情報収集、整理、解釈という方法に基づく。本年度は、「かわいい」ということを明確に把握するために、これと対比される「かわいくない」ことについても分析を進めた。具体的には、少女雑誌での投稿文化の発展、少女雑誌における編集者と読者の関係性、少女雑誌読者の芸術志向(文学志向)、女子教育の動向と少女雑誌に与えた影響、これらの観点から調査を試みた。加えて、アクチュアルな意義を問うために、コンテンポラリー文化の動向についても目を配った。成果発表としては、次の実績を上げることができる。女子学研究会(2017年9月16日、於甲南女子大学)にて、「自著紹介 渡部周子『つくられた「少女」―「懲罰」としての病と死』(日本評論社、2017年)」と題して、口頭報告を行った。この発表は、本研究計画に先立つ、科学研究費による研究課題「明治期女子教育の制度化に際する西洋科学思想の影響に関する研究」の成果としてまとめた、自著の紹介を軸としている。ただし、発表の中で、この研究成果と、進行中の研究課題である「かわいい」の生成が、どのように結びついているのか、現在はどのような問題に取り組んでいるのか、「かわいい」と「少女」との関連から考察することで示してもいる。コンテンポラリー文化の動向(現代日本のアニメが描く「少女」観等)との比較、相対化、またアクチュアルな意義を、この発表で問うこともできた。
著者
島津 明人 川上 憲人 宮本 有紀 大塚 泰正 種市 康太郎 西 大輔 津野 香奈美
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,米国およびカナダで開発されたCREW(Civility, Respect & Engagement with Work)プログラムに関して,(1)日本版CREWプログラムの開発,(2)日本の職場での適用可能性の検討,(3)実施効果の検討,の3点を目的とした。某大学病院の2つの病棟を対象にプログラムを実施し(2014年9月~2015年2月の6か月間)中間解析を行った結果,参加者の大部分を占める看護職において,ワーク・エンゲイジメントの得点が上昇する傾向が認められた。
著者
久保 智英
出版者
作業条件適応研究グループ
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

疲労の回復は勤務中の手休めや休憩時にも生じるが、疲労が回復する大きな機会は勤務と勤務の間の余暇にある。しかし、これまで、どのような余暇の過ごし方が疲労回復に効果的であるのか、とりわけ昼夜の逆転が頻繁に起こる交代制勤務者に焦点を当てた知見は数少ない。本研究の目的は、健康生成論的な観点より、交代制勤務に従事する看護師を対象として、夜勤による疲労回復と余暇の過ごし方の関係を明らかにすることであった。
著者
星 正治 澤田 昭三
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究の研究内容は、(1)原爆に被爆した岩石や瓦、煉瓦を集め、(2)原爆の中性子により生成された微量放射能を測定し、(3)計算コード(MCNP)をシュミレーション実験でチェックし、(4)放射能のデータとDS86(線量評価体系1986)の矛盾とその原因を考察することにあった。(1)-(3)は初めの2年間の研究でほぼ満足できる十分な結果を得ていることが分かった。最終年度は(4)の矛盾の原因を追求することに重点をおいた。DS86における実験データとの矛盾は本研究代表者らが初めて発見した。問題は広島原爆の中性子であり、1.5Kmの地点でDS86はデータの10-30%位にしかならないほど重大である。チェックを行った項目は以下の通りである。A.原爆の爆発の際発生した中性子のスペクトル。B.その中性子が空気中を透過して地表面に達するまでの計算。C.計算に使った中性子の計算コード(MCNP)ノベンチマークテスト。D.計算に使った空気の成分の(特に水蒸気)高度別の測定。E.地表面における岩石や鉄の放射化の実験結果の検証と計算。F.ガンマ線のデータと計算との比較による正さの検証。最終的な結論としてDS86の計算のうち一番初めの仮定に問題があることが判明した。即ち、(a)長崎においては上記AからFまで全て正しい。(b)広島においては上記BからFまでは正しい。(C)上記Aの広島の場合が誤りである。(C)に関しては原爆の爆発の過程であるので実験の検証はできない。そこでDS86の仮定を変えて計算し放射化のデータと最も合うのはどれかを考えた。その結果分かったことは、広島原爆本体には厚い鉄(約20cm)が使われているが、原爆は爆発の途中で上下ほぼ半分に割れ5%-15%の中性子が直接放出された。これでほぼデータが計算により再現できる。今後は新しい線量の計算が必要となる。
著者
和田 初枝
出版者
サレジオ工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

研究目的]本高専の教育課程の特徴である「創造性教育」の一環としてのアクティブ・ラーニングを支援するラーニング・コモンズの設計と試行を本研究の目的とする。[研究方法]1. 本学で実践している「創造性教育」における課題解決プロセスを分析し、必要なツールや課題に応じた資料提供等の人的支援について明確にした。2. 「場」として読書等の他の利用目的とラーニング・コモンズを併存させる物理的空間を構築した。方法は図書館内の暗騒音の計測に基づいた音量のバックグラウンドミュージックを特に閲覧スペースを中心に聴こえるようにしたサウンドマスキングシステムを利用するものである。使用する音楽は先行研究で図書館のバックグラウンドミュージックとして肯定意見の多かった環境音楽とした。3. 「創造性教育」への授業外学習支援を視野に、上記1で明らかにしたツールや人的支援の提供を上記2の場で行い、学生利用者アンケートおよび教員へのインタビュー調査を実施した。[研究成果と今後の課題]1. 提供したツールはディスカッション時に「役に立つ」との認識は持っていることがアンケートから伺えたが、実際には積極的な利用は見られなかった。この結果から授業外学習支援においても課題解決学習時に行われているファシリテートが重要になる。そのためには図書館でも課題解決学習の簡単な講習会等を実施することが有効と考えられる。2. サウンドマスキングシステムで利用したバックグラウンドミュージックについては特に個人学習の際に「リラックスできた」という意見が70%以上を占めたが、「他の利用者の声が気にならなかった」については10%であった。この結果から「場」の構築はサウンドマスキングの視点からではなくバックグラウンドミュージックが図書館利用者にもたらす効果という点から再考した方が図書館利用時のそれぞれの利用目的の効果を高める上でも有用ではないかとの示唆を得た。3. 1および2の結果に基づき課題解決学習方法の講習内容および図書館利用者の利用目的の効果を高める図書館の音環境の検討と提案を今後行う。
著者
山田 寛之
出版者
東京福祉大学 教務課(教職課程支援室)
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

本研究では、高等教育のアドミッション・カリキュラム・ディプロマ・アセスメントの視点をふまえ、イギリスの1992年継続高等教育法により「ポリテクニク」から大学に昇格した、いわゆる「新大学」を対象とし、イギリス中部の新大学の事例研究によって、職業能力形成を重視する高等教育課程の質保証の取り組みを具体的に明らかにすることを目的とした。本研究の成果は、現状分析を中心とし、次の通りであった。第1に、全学共通の正課外教育として11月から3月の期間に実施されている「就業力支援講座」について、H27年度ガイドブック、オンライン教材、受講生募集用資料の分析により、その教育方法(対面授業、オンライン学習)、教育内容(ガイダンス、キャリア計画、自己分析、職業体験、各種スキル形成、省察、履歴書作成、模擬面接)、評価方法(ポートフォリオ : 作業日程を設定し、対面・オンラインにより指導)、課題が明らかになった。第2に、社会学/犯罪学専攻の学士課程の2年次必修科目で、同専攻の就業力養成科目に位置付けられている「サービスラーニング」について、H27年度ガイドブックと教材の分析、担当教員・学生へのインタビューにより、その地域連携による運営、教育方法、教育内容、評価方法、課題が明らかになった。第3に、「学生参加による教育改善」について、担当教員と代表学生の参加のもとで実施される、学部単位の取組み(10月から4月の期間、月1回程度の会合を実施)および、コース単位の取組み(年3回、会合を実施)を、それぞれ社会科学部と社会学コース(修士課程)を事例とし、そのH27年度議事録の分析により、教育改善への学生参加の特徴と課題が明らかになった。第4に、「職業分野の学士課程における成人学習者の学習経験」について、社会福祉(health and social care)専攻の成人学生へのインタビューの分析により、職業分野の学士課程の特徴、成人学習の文脈における高等教育の質が明らかになった。
著者
今村 展隆 BEBESHKO Via 木村 昭郎 BEBESHKO Vladimir.G BEBESHKO Vla
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

キエフ(ウクライナ)の放射線医学研究センター(ベベシュコ所長)では、クリメンコ教授を中心として12万名のリクイデーター(除染処理作業従事者)を毎年健康管理している。彼らは250mSv:25rem以下の放射線被曝に留めるように設定したとされているが、実際にはそれ以上(一部は1Sv以上)の放射線被曝を受けた可能性を指摘されている。ウクライナ放射線医学センターで1986年以降リクイデーターの白血病発生を調査したところ、1993年までに141名の白血病発症患者を認めそのうち86名は急性白血病であった。放射線医学研究センター血液部門(成人)において、1993年以降1995年9月までに血液腫瘍疾患(悪性リンパ腫を除く)を発症した患者数(リクイデーター)は42名であり、大多数(31名)が男性で年令は20才〜67才であった。急性骨髄性白血病(AML)は16症例で、FAB分類ではAML,M1,3例、AML,M2,2例、AML,M3,2例、AML,M4,5例,AML,M5,4例であった。一方急性リンパ性白血病は2症例認められ、それらはいずれもALL,L2であった。男女比は14/4(3.5:1)で年齢(平均【+-】標準偏差)は41.8【+-】10.6であった。慢性骨髄性白血病は8症例認められ、慢性リンパ性白血病(B-CLL)は8症例であった。これらは男性患者のみで年令(平均【+-】標準偏差)は47.4【+-】10.3であった。また骨髄異形成症候群(MDS:前白血病状態)も8症例認められた。男女比は6/2(3:1)で年令(平均【+-】標準偏差)は51.3【+-】8.7であった。これらの急性白血病のうち検査し得た二症例において、p53癌抑制遺伝子のExon 5及びExon 6の欠失を認めた。この事実は白血病発症においてp53癌抑制遺伝子が重要な役割を演じていることが示唆される。またこの白血病発症率を非被曝者を対象群として比較したところ、リクイデーターの白血病発症率は有意に高率であることが判明した。更にキエフの小児病院にてチェルノブイリ事故前後(1980〜1993年)における小児急性白血病発生率を検討した。キエフ州の急性白血病発病率は(対10万名)及び発病患者数は各々1980年5.24(23名)、1981年3.22(14名)、1982年4.82(21名)、1983年2.56(11名)、1984年4.41(19名)、1985年2.03(13名)、1986年2.81(12名)、1987年5.49(23名)、1988年5.53(23名)、1989年5.27(22名)、1990年4.33(18名)、1991年2.67(11名)、1992年2.43(10名)、1993年2.45(10名)、であり1987〜1990年に一過性の発病率の増加を認めたが、その後は減少していた。ジトミール州の小児急性白血病発病率(対10万名)及び発病患者は各々1980年1.60(5名)、1981年1.61(5名)、1982年1.63(5名)、1983年1.0(3名)、1984年1.60(5名)、1985年3.40(11名)、1986年5.30(17名)、1987年4.44(14名)、1988年4.71(15名)、1989年6.32(20名)、1990年5.80(18名)、1991年5.60(17名)、1992年5.60(17名)、1993年2.91(10名)であり、1988〜1992年に一過性の増加が認められたが、1993年には下降している。ポルタフスキー州の小児急性白血病発病率(対10万名)は1983年5.80、1984年7.8、1985年7.5、1986年5.4、1987年5.5、1988年6.7、1989年4.9、1990年6.7、1991年6.2、1992年6.9でありほとんど発病率の変化は認められなかった。従ってキエフ州、ジトミール州及びポルタフスキー州については調査した限りでは小児急性白血病発症率についてチェルノブイリ事故前後における急性白血病発病率の有意差は認められなかった。以上の事実より高線量被曝者(リクイデーター)に最近白血病発症の増加傾向が認められていることが示唆される。
著者
原 敏夫
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

近年、微生物由来バイオポリマーがその易分解性あるいは機能性から脚光を浴びている。γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)はグルタミン酸のみから構成されるホモポリマーで、納豆菌が生産するγ-PGAはD型とL型のグルタミン酸からなる。本課題で、納豆菌の粘質物の主体であるγ-PGAの生成は納豆菌が保持するプラスミド上にコードされている蛋白質の正の支配を受けることを明らかにした。納豆菌をクエン酸で培養すると、細胞内に生成するグルタミン酸の大部分はD型で、細胞膜ペプチドグリカンの構成アミノ酸であるD型グルタミン酸合成系とγ-PGA合成系の連関が強く示唆された。一方、γ-PGA分解菌の探索を行う過程で、糸状菌が生産するγ-PGA分解酵素がL型のγ-PGAのみ分解し、反応残液中にD型のγ-PGAが高分子状で残存することを認めた。これまで2種類のγ-PGA分解酵素を単離、精製したが、いずれもエキソ型で、L型のγ-PGAのみを分解し、D型のγ-PGAは分解しなかった。したがって、γ-PGAはD型とL型の二つの独立したPGAポリマーからなる共重合構造を有し、D型とL型のグルタミン酸を基質とする二種類のγ-PGA合成酵素の存在が示唆される。本課題によりγ-PGA生合成系が解明され、酵素法により生分解性プラスチックの原料としてγ-PGAが供給されるようになれば、現在、緊務の課題である地球環境問題にも大きく貢献できるものと信ずる。
著者
阿児 雄之
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、博物館・美術館におけるフロアガイドを、オープンデータとして整備することにより、透明性と流通性を高め、多様な利用者層への対応などの利便性向上をもたらし、文化施設の利用促進をはかることである。具体的には、博物館・美術館などが提供しているフロアガイドを収集し、空間ならびに機能・内容説明といった記載情報(語彙とピクトグラム)の分類と構造分析を実施した。これらフロアガイド記載語彙とピクトグラムの集成データはオープンデータとして公開した。さらに、フロアガイド創作に活用できる新しいピクトグラムを制作し、二次利用がしやすいライセンスにて配布している。
著者
姉川 雄大
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

戦間期ハンガリーの「生産的社会政策」を地域社会、道徳規範、人種排除という観点から検討するとともに、この社会政策による支援可否の選別基準を明らかにした。その結果、この政策が地域社会におけるパターナリスティクな権力関係を維持する機能を果たしたこと、同時にこの政策を通じて地域社会が国家による道徳規範の教化と人種的排除を支えていたこと、この相補性は被支援家族の「生産性」や返済能力によって導かれる、支援に値する/しないという選別基準によって可能になっていた、あるいは強化されていたことが明らかになった。
著者
渡邊 由紀子 合田 美子 山田 政寛 益川 弘如 兵藤 健志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は,研究や教育のためのリソースが集約されている大学図書館が授業外学習支援を積極的に行うために,大学図書館員の専門性を図書館情報学だけではなく,教育工学及び学習科学の観点を含めて再構成し,それに基づいた教材と学習システムを開発し,効果を評価することにある。そのため,学習支援を担当する大学図書館員を対象としたeラーニングの学習教材を開発し評価するとともに,それらの教材を通じて学んだ知識やスキルの転移を支援できるように,学習科学の研究知見であるアンカードインストラクションを活用したストーリーベースのビデオ教材を開発し評価した。