著者
川村 欣也 小林 良正 高橋 和明 早田 謙一 住吉 信一 川田 一仁 高橋 百合美 牧野 さつき 則武 秀尚 中村 浩淑 安倍 夏生 新井 雅裕
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.418-424, 2010 (Released:2010-09-02)
参考文献数
15
被引用文献数
7 11

シカ及びイノシシの生食により感染したと思われるE型急性肝炎3例を経験したので報告する.症例1,2は71歳と48歳の男性で発症の約2カ月前に,偶然同一飲食店で別々にイノシシの肝を生食していた.症例3は69歳の男性で,発症の2カ月前から息子が狩猟で捕獲した複数頭のシカ生肉を頻回に自宅で調理し摂取していた.3症例とも入院時,肝逸脱酵素は著明に上昇していたが補液や安静で改善した.3症例の病初期血清におけるIgM-HEV抗体,IgG-HEV抗体,HEV-RNAが陽性でHEV genotypeは4型,塩基配列は相互に99.8%以上一致した.愛知県のヒト及びイノシシから分離されている「4型HEV愛知株」との間にも98.5%-99.8%の一致率を示し,北海道に蔓延するgenotype 4とは明らかに別系統であることが注目された.
著者
赤石 大輔 中村 浩二
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.195-199, 2014
被引用文献数
2

中部日本の環境の異なる3地点からキノコ子実体を採集し,実験室内で子実体内部に成育するハエ類を羽化させた.その結果,モモグロオオイエバエ<i>Muscina angustifrons</i> (Loew)は,新たに19種のキノコを利用していることが判明した.本種は,キノコ子実体のみで羽化すること,また,カメの人工餌でも羽化することが確認された.本種の終齢幼虫は,与えられたミスジショウジョウバエ<i>Drosophila bizonata</i> Kikkawa and Pengの幼虫を捕食した.以上の結果から,野外ではキノコ子実体以外に,おそらく植物組織,糞,動物遺体などを利用する雑食性であるともに,キノコ食双翅目群集内において,ギルド内捕食者でもあると推測された.
著者
中村 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.34, pp.1-8, 2000-05-04
被引用文献数
9

自然なおかしさの笑いと作り笑いの表出の差を解明するため, 目と口, 腹部における笑い表出の開始の時間差を分析する実験を行った.ビデオ記録に加え, 眼輪筋及び大頬骨筋の筋電図, 呼吸曲線を記録した.被験者は男性15名, 女性17名で, YG性格検査の得点で社交群と非社交群に分類した.コメディビデオを見せた時の自然な笑い, 面白くないコメディビデオを見せた時の作り笑い, 教示のみによる単純な作り笑いを比較した.その結果, 3種類の笑い間で, 目と呼吸の時間差に有意差がみられた.また, 女性非社交群と男性社交群で, 眼と口の時間差に有意義がみられた.
著者
垰田 和史 中村 賢治 北原 照代 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.246-253, 2005-11-20
被引用文献数
1 4

新医師臨床研修制度導入以前の研修医の労働や生活の実態を検討する目的で, 国立大学附属病院に所属する102名の研修医について, 連続した4週間の生活時間調査を行った.調査対象とした2,722人日のうち76%の有効回答をえた.平日の平均睡眠時間は5.7時間, 土曜・祝日の平均睡眠時間は6.8時間だった.研修医の40%は睡眠時間が6時間未満で5時間未満の者が17%おり, 外科に所属する研修医の睡眠時間は特に短かった.研修医の睡眠不足は健康を脅かすだけでなく医療の安全性を低下させることから, 新医師臨床研修制度のもとで, 研修医の睡眠時間を含む生活が適切に保たれるよう, 追跡検証する必要がある.
著者
中村 妙子 奥田 眞紀子 松本 しのぶ 栗林 千幸
出版者
奈良佐保短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13485911)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.35-43, 2006

自然や季節感を大切にしてきた高齢者は,生活空間の中で季節感を感じることでイメージが広がり,より心地よさを感じると思われる.その季節感は,季節の物だけでなく,色によっても演出することができるのではないかと考え,季節感と色の関係を系統的な色票を用いて検討した.カラーサンプルとして,日本色彩研究所の新配色カード 199cを使用し,ランダムに並べ替えた色票を光源ボックスの中に入れ,20歳前後の学生20名に,"春","夏","秋","冬","感じない"のいずれかに評価してもらった.その結果,春はピンク系が,夏は青系が,秋は茶系が,冬は,彩度の低い色が上位を占めた.季節のイメージを調べると,春は桜,夏は海,秋は紅葉,冬は雪が,突出して選ばれ,季節に代表される自然が,季節の色に最も大きな影響力を及ぼしていた.逆に言えば,季節の色からそれらの事がイメージできると考えられるその結果,季節に代表される自然が,季節の色に最も大きな影響力を及ぼしていた.季節の色を,色相,トーン別に分析すると,以下のように季節ごとに明らかな傾向が見られた.春・・・色相:ピンク系,黄緑系,緑系,トーン:light,bright,pale夏・・・色相:青,青紫系,トーン:vivid, bright秋・・・色相:暖色系,トーンは,dark,deep, dul, soft冬・・・色相:青紫系,紫系,トーン:dark grayish,grayish, light grayish施設内で,季節ごとに季節感のある色彩を用いることにより,色から自然へのイメージが広がり,心地よい空間が演出でき,利用者への心理的効果は大きいものと考える.
著者
森上 亜城洋 西田 裕介 三谷 美歩 中村 昌樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1027-1031, 2014 (Released:2015-01-21)
参考文献数
28

〔目的〕排泄行為と下腿最大周径,身体組成および栄養状態の間の関係性ならびに影響度から排泄行為能力に与える要因を把握することとした.〔対象〕後期高齢入院患者66名.〔方法〕排泄行為(バーサルインデックス)と,下腿長を100%とする腓骨頭下端から26%の部位での下腿最大周径,身体組成(予測身長,体重,BMI,筋肉量),および医科健診での栄養状態(血清アルブミン)との間の関係性を,相関および回帰分析により調べた.〔結果〕排泄行為は下腿最大周径と身体組成と栄養状態との間に有意な相関関係を示した.重回帰モデルにおいて排泄行為に影響する要因として下腿最大周径とAlbが選択された.〔結語〕下腿最大周径とAlbにより排泄行為能力を予測できる.
著者
大島 裕明 山本 祐輔 山家 雄介 高橋 良平 ヤトフト アダム 中村 聡史 田中 克己
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.2-7, 2011-01-01
被引用文献数
1

Web情報には多様な情報が存在しており,本当に信じてよいのかどうかは慎重に検討しなくてはならない。特に,Web2.0コンテンツは,これまでの本や新聞などのメディアよりも,情報の品質が低い可能性があるため,信憑性の検証が必要であると考えられる。本稿では,そのようなWeb情報の信憑性という課題に対して,情報技術がどのような役割を果たせるかということについて議論する。まず,情報の信憑性という概念について整理を行う。また,現在,Web情報の信憑性に関連して行われている研究について紹介する。さらに,われわれが行っているWeb情報の信憑性検証技術に関する研究の紹介を行う。
著者
渡邉 憲夫 与能本 泰介 玉置 等史 中村 武彦 丸山 結
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.113-127, 2013 (Released:2013-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

On March 11, 2011, the Tohoku District-off the Pacific Ocean Earthquake and the subsequent tsunami resulted in the severe core damage at TEPCO's Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station Units 1-3, involving hydrogen explosions at Units 1, 3, and 4 and the large release of radioactive materials to the environment. Four independent committees were established by the Japanese government, the Diet of Japan, the Rebuild Japan Initiative Foundation, and TEPCO to investigate the accident and published their respective reports. Also, the Nuclear and Industrial Safety Agency carried out an analysis of accident causes to obtain the lessons learned from the accident and made its report public. This article reviews the reports and clarifies the differences in their positions, from the technological point of view, focusing on the accident progression and causes. Moreover, the undiscussed issues are identified to provide insights useful for the near-term regulatory activities including accident investigation by the Nuclear Regulation Authority.
著者
古宮 成 土生田 晴比古 北浦 英樹 土居 由佳子 高橋 克幸 中村 敦史 宮川 直康 西内 健一 山田 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MR, 磁気記録 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.466, pp.11-16, 2007-01-11

我々は、記録材料Te-O-Pdを用いた追記型ブルーレイ・ディスクBD-Rの応用検討を行った。500Mbpsを超える高速データ記録チャネルに必要なレーザパルス条件を示して単層BD8倍速記録で実用的な再生ジッタを達成し、また、記録膜材料の透過率設計の自由度を活かして片面4層で100GBの大容量を実現した。更に、メディアに記録したデータの高温高湿環境の加速試験により推定寿命100年以上の長期安定保存が可能なことを示し、本記録材料が、高速化/多層化/保存信頼性のすべての面で優れたポテンシャルを有することを実証した。
著者
長谷部 理佐 坂本 壮 中村 聡志 藤森 大輔 吉田 隆平 糟谷 美有紀 伊藤 史生 高橋 功
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.246-249, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
10

除草剤の一種であるパラコートは, 致死率が高い製剤であることから本邦では1999年に生産が中止された。しかしパラコートを5%に希釈した低濃度製剤であるパラコート・ジクワット製剤 (以下, PGL) は現在も販売されており, PGL飲用による死亡例は現在も散見される。2015~2021年に当院で経験したパラコート中毒の5例を検討した。1例は誤飲が原因で, 4例は自殺企図で飲用された。1例はパラコートで, 4例はPGLであった。患者背景としては精神疾患が多いとされているが, 当院の症例も精神疾患やうつ状態の背景疾患があった。また, 農村地域・農家での報告が多く, 当院も農村地域に位置することから, パラコート・PGLが容易に入手できたと考えられる。中毒発生防止のためには行政的対応以外に保管者への啓発が重要と考える。
著者
中村 和弘
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.203-209, 2020 (Released:2020-04-01)
参考文献数
22

心理ストレスは脳の交感神経調節系に作用してさまざまな生理反応を生じさせる. 体温の上昇は顕著な生理反応の1つであり, 強い心理ストレスが心因性発熱と呼ばれる高体温症状を引き起こすこともある. こうしたストレス反応は基本的な生理反応だが, その中枢神経機序は研究途上である. ストレス性体温上昇とよく似た体温上昇である感染性発熱の神経回路機序と比較すると, どちらも視床下部背内側部から吻側延髄縫線核を介した交感神経駆動経路を通じて褐色脂肪熱産生が亢進することで生じる. しかし, 視床下部背内側部を興奮させる仕組みがストレス性体温上昇と感染性発熱とでは異なる. 感染性発熱は, 視索前野でのプロスタグランジンE2作用を介した神経伝達変化が視床下部背内側部を興奮させることで惹起される一方, ストレス性体温上昇は, 皮質辺縁系から視床下部背内側部へのストレス信号入力によって視床下部背内側部ニューロンが興奮することで惹起される.
著者
中村 正広 野々村 祝夫 並木 幹夫 奥山 明彦 高 栄哲 近藤 宣幸 竹山 政美 清原 久和 藤岡 秀樹
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1362-1366, 1989-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ヒト精巣におけるDNA合成, RNA合成, 蛋白合成の至適温度を検討するために, 培養ヒト精巣組織への3H-チミジン, 14C-ウリジン, 14C-ロイシンの取り込みを28℃~43℃の温度条件で観察した. その結果, RNA合成, 蛋白合成は温度依存性に増加し, 37~40℃で最大になると考えられたが, DNA合成は31℃で最大となり, 微妙な温度感受性を示すと判断された. 従って, 精巣温度上昇による造精障害の根本原因の1つとして精巣DNA合成の障害が推察された.
著者
中村 純作 堀田 秀吾 朝尾 幸次郎 梅咲 敦子 松田 憲 津熊 良政 野澤 和典 東 照二 山添 孝夫 佐藤 佳奈 宮浦 陽子 山本 香里 濱中 千裕 霜村 憲司
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我が国中等教育の英語教科書のモニターコーパスを更新、補充、新たにアジア諸国の英語教科書を追加したコーパスを構築し、教科書研究のための環境づくりを行った上、教科書の内容(語彙、構文、文法項目、トピック、社会文化的要素等)を中心に質的・量的比較を行い日本の英語教育に欠けている点を指摘した。また、我が国を含めたアジア諸国の英語教育の実態と課題を検討し、我が国英語教育の問題点、今後の方向性などを考えるための国際シンポジウム、英語教育での新しい試みに関する知見を共有するための英語教育公開講演会、ワークショップなども開催、これらをまとめた報告書を出版した。
著者
田崎 和江 竹原 照明 橋田 由美子 橋田 省三 中村 圭一 横山 明彦 青木 小波 田崎 史江
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.97-113, 2017-07-25 (Released:2018-01-14)
参考文献数
21
被引用文献数
1

黒柿はカキノキ科の一つであり,幹・枝・根の断面に黒色の部分があり,心材や辺材には縞が美しい孔雀の羽根のような模様(孔雀杢 くじゃくもく)がある.孔雀杢は何百年と樹齢を重ね,かつ,様々な条件を満たした柿の木だけが黒と白の美しい模様を持つようになった希少な銘木である.材質が竪硬で粘りもあり,細かい細工をする指物に適しており和家具,茶道具などが金沢伝統工芸品となっている.しかし,江戸時代に加賀藩が黒柿の栽培を行っていたとされるものの,その科学的な記録はない.なぜ柿の木の幹に黒い色の美しい模様ができるのかを究明するために,石川県金沢市内に生育している黒柿を採取して,IP,XRD,ICP-MS,XRF,SEM-EDS,放射能測定器を用いて物理化学的,鉱物学的,微生物学的特徴を調べた.本研究試料の「黒柿」のXRD 分析では,セルロースの他に低温型α- クリストバライト,生体アパタイト(燐灰石),ハロイサイトなどの粘土鉱物が含まれていた.黒柿の黒色化した幹に形成する孔雀杢は“珪化木”ということができる.本研究結果から,①黒柿が“珪化木”になるには,まず,根の中心の白色部に認められた微生物がCa >>> P,S >> Mg > Si,Fe,Cl,K,Mn を取り込み,生体アパタイトを形成する.②成長するにしたがって,放射能核種やB,Br を伴って, さらにCa,P,S >> K,Mg,Si,Sr > Cl,Mn,Fe などの元素を取り込みながら黒色化する.③そして,年月を経るにしたがって, 幹の辺材部に黒色の縞模様(孔雀杢)を作りながら低温型α- クリストバライト(珪化木)を形成することが明らかになった.
著者
中村 大輝 雲財 寛 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.183-196, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
64
被引用文献数
2

本研究は, 理科の問題解決における仮説設定に関する国内外の研究を収集・整理し, 国内外の差に留意しつつ, 研究の動向や課題を明らかにすることを目的とした。仮説設定に関する研究を, 「仮説の定義」「実態の評価」「思考過程」「指導」の4観点から整理し, 各観点における研究の動向や課題を検討した結果, 主に次の4点が明らかになった。1)仮説の定義の多様性は, 仮説の定義を構成する要素全体に見られるものではなく, 説明する対象の違いに由来するものであること。2)仮説設定の評価方法は, 国内外で用いられる方法に傾向差が存在すること。3)思考過程に関する研究では, 実際の理科授業における仮説を設定する際の思考過程を捉えられるよう改善を図る必要があること。4)国内における指導方法研究はその具体性で国外の研究に勝るものの, 各指導方法には課題も存在すること。