著者
前田 隆子 田中 俊行 大城 等 船川 一彦 能勢 隆之 今井 昭二 林 康久
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.781-787, 1990-08-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

This study reports the contents of Zn and Cu in the breast milk and serum of postpartum mothers, 17 primiparas and 20 multiparas, at one week and at one month after delivery.Results were as follows.1. The mean content of Zn in the breast milk was 5.44μg/ml at 1 week after delivery, and it decreased significantly (p<0.01) to 2.73μg/ml at 1 month after delivery.2. The mean content of Zn in serum was 0.66μg/ml at 1 week, and it increased significantly (p<0.01) to 0.84μg/ml, close to the normal level, at 1 month.3. The milk Zn level at 1 week after delivery was about 8 times as high as the Zn in serum. There was a significant (p<0.05) negative correlation in Zn contents between milk and serum at 1 week after delivery, and there was no significant correlation in Zn contents between milk and serum at 1 month after delivery.4. The mean content of Cu in breast milk was 0.55μg/ml at 1 week after delivery, and it decreased to 0.44μg/ml at 1 month after delivery.5. The mean content of Cu in serum was 2.14μg/ml at 1 week after delivery, and it decreased significantly (p<0.01) to 1.35μg/ml, close to the normal level, at 1 month after delivery.6. Concerning the Cu contents of milk and serum, there was not a significant correlation at 1 week after delivery, but a significant (p<0.05) positive correlation was found at 1 month after delivery.
著者
山下 雅之 桑原 丈和 前田 益尚
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

まず平成17年度には、夏期休暇を利用してフランスとベルギーでマンガ文化の中心をなすと考えられる都市、アングレームとブリュッセルを訪れた。アングレームでは国立マンガセンターで展示資料の閲覧と蔵書資料の検索、調査を行った。またアングレームは町全体のあちこちの壁面に有名なマンガキャラクターが描かれているので写真撮影を行った。ブリュッセルでは、マンガセンターを訪れ、展示されているマンガ史に関する資料を閲覧し、図書館の蔵書を調査した。また市内各所にある書店、古書店を訪れ、マンガの資料収集に当たった。このほかパリなどを中心に書店、古書店を訪れ、マンガの資料を収集した。平成18年1月にはアングレームで行われた国際マンガフェスティバルを視察し、多くのマンガ出版社や作家、雑誌社などのブースを訪れマンガ資料を収集するとともに、関係者にインタビューを行って、マンガ界の現状についての意見交換を行った。平成18年の夏季休暇を利用し、おもにパリで資料の収集に当たった。マンガ専門の書店や古書店で、どのようなものに人気があるか、最近の流れとしてとりわけ人気の高い日本マンガの翻訳の状況などを、実際に書店の店頭で数多く触れることができた。また8月末には南フランスのソリエスヴィルで毎年行われているマンガフェスティバルに参加することができた。小規模ながらも、バカンスシーズンに行われる催しで、地元の人々を中心に熱心なマンガ好きの人たちが集まるイベントを肌で体験することができた。平成19年1月末には、アングレームのマンガフェスティバルに参加した。今年の傾向としては、日本マンガを始めますます輸入が増加する海外のマンガに関心が高まっており、今年のマンガ大賞にはアルゼンチンのマンガ家、そして単行本に与えられる賞には、日本の水木しげるが選ばれた。こうしたことから、これまでの伝統あるフランスのバンデシネに対する危機感も叫ばれるようになり、そうしたテーマのシンポジウムに参加して、現場の出版社や批評家などの生の声に接することができた。さらにアングレームの国立マンガ研究所の学芸員に会って話をすることにより、これから相互に交流を深めながら研究を進める足場を作ることができ、たいへん有意義であった。日本マンガ批評の現状については、本研究組織のメンバーが研究を行い、フランスのマンガについての研究と比較をするため、研究会を数度開催した。この結果、それぞれの発展プロセスの違いから、日本のマンガとフランスのマンガには、いろいろな興味深い差異があることが明らかにできた。なお17年度研究分担者として参加した前田は、平成18年4月から2年を要する病気療養のため休職したので、研究の継続を断念し成果報告も不可能となった。
著者
木村 琢磨 前野 哲博 小崎 真規子 大滝 純司 松村 真司 尾藤 誠司 青木 誠
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.383-389, 2007-12-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
15

欧米では, 研修医のストレスは燃え尽き症候群や抑うつの原因となり, 研修プログラムからの脱落や非倫理的な診療などにつながると報告され, ストレス要因への対策がなされている.最近わが国でも, 研修医の過酷な労働条件や過労死などが問題となっているが, わが国における研修医のストレス要因を検討した報告は少ない.1) 10施設の研修医25人を対象に, フォーカス・グループ・インタビューを実施し, わが国における研修医のストレス要因を探索した.2) 研修医のストレス要因として, 一人の人間としてのストレス要因, 新米社会人としてのストレス要因, 未熟な研修中の医師としてのストレス要因の3つを抽出した.3) 3つのストレス要因をそれぞれ生活ギャップ, 社会人ギャップ, プロフェッション・ギャップと名づけ, 研修医のストレス要因を, 医学生時代と医療現場とのギャップがもたらす産物として描出した.4) わが国の研修医の様々なストレス要因が明らかになったが, 研修中の未熟な医師としてのストレス要因は, わが国特有であった.5) 安全で効果的な研修を行うために, これらのストレス要因を考慮した研修医のストレスへの対策が望まれる.
著者
伊予田 邦昭 粟屋 豊 松石 豊次郎 永井 利三郎 田辺 卓也 栗原 まな 山本 克哉 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.456-458, 2007-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
6

難治なけいれん発作をもつ小児に対する予防接種基準最終案を検証するため, 全国多施設共同で予防接種後健康状況調査を施行した (112例, 229件, 回答率:52.4%).1)観察期間: 日・週単位群で1カ月, 月単位群で2~3カ月程度, 重積症後では, 各々1~3カ月, 3~6カ月程度. 2)接種後1カ月以内の副反応: 身体面は17件 (7.5%; 1件以外すべて発熱), 50%以上発作が増悪した例はわずか4件 (1.7%; 麻疹・インフルエンザ各2件), 計21件 (9.2%) で, すべて外来対応が可能であった. 3)自然罹患入院例: 麻疹2/5例, インフルエンザ3/7例でけいれん重積を合併した. 以上より各種予防接種は安全に実施されており, 主治医(接種医)が“適切”な時期に個別接種を行う本基準案は妥当と考えられる.
著者
前田 ひとみ
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.23-29, 2000-02-15

はじめに アメリカ合衆国の首都であるワシントンD.C.に隣接するメリーランド州ベセスダに,米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:略称NIH)のメインキャンパスがある。NIHは衛生機関の1つであるが,アメリカ合衆国最大の生物医学研究所でもある。昔,ゴルフ場だったというベセスダのキャンパスは300エーカー(1.2km2)以上の広さをもち,木々や芝生の緑に囲まれ,りすや鹿も訪れる自然豊かなところである。 NIHには博士取得者が約6,000人働き,年間7,000以上の論文が世に送り出されていると言われる。NIHは,ベセスダ以外にもフレデリック,バルチモア,ロッキーマウンテン等にも研究施設をもち,おそらく世界最大規模の生物医学研究機関といっても過言ではないであろう。また外国人研究者として日本人研究者も常に400人以上がNIHで働いていることから考えると,日本人にとってもNIHは最大の生物医学研究施設と言えるのではないだろうか。
著者
前島 訓子
出版者
Japan Association for Urban Sociology
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.31, pp.111-128, 2013 (Released:2015-01-25)
参考文献数
24

The main goal of this essay is to explore the construction of sacred place in the multi-religious context based on a field study at Bodhagaya, India. Bodhagaya is generally regarded as the most significant sacred place for Buddhist believers mainly because it is the place the Buddha reached his enlightenment. This widely known site recognized for its Buddhist significance attracts a large number of pilgrims, tourists from different parts of the world to the religious-historical site currently called Mahabodhi Maha Vihar. But this popular conception of the site is established on a rather serious sociological neglect of the fact that the sacred place of Bodhagaya is a place located in a social environment composed of multiple religions. This essay will examine the actual construction of the sacred place in Bodhagaya from a sociological concern whether the sacred place of Bodhagaya is constructed solely from Buddhist conception of the site or it is the result of superimposed interaction, interpenetration or conflict between plural religious interests.
著者
中前 茂之 高野 伸栄 大川戸 貴浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_39-I_52, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1

平成に入ってから長く続いた少雪傾向が一変し,近年は豪雪が頻出する傾向がみられ,財政の厳しい市町村にとっては豪雪への対応は財政上軽い負担ではない.除雪事業の特徴として,あらかじめ降雪の量を決定して予算を立てることが不可能である上,一旦豪雪が発生した場合は市町村は除雪費を否応なく確保しなければならず,限られた市町村財政では賄いきれない恐れがある.しかしながら,国によるいくつかの支援措置はあるものの,国と地方の負担・分担のルールも明確に定まっていない.そこで,本稿では,これまでは直轄国道や道府県管理道路について除雪費推計手法として提案してきた除雪単価逓減則を市町村道にも適用することを検討するとともに,市町村の豪雪時における財源確保の状況や想定する負担限度を明らかにし,その際の課題を整理検討する.
著者
前原 清隆
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ドイツ語圏諸国(ドイツ、スイス、オーストリア)におけるエコロジー憲法(エコロジーを構成原理とする憲法)について、学説や運動による構想、諸国の連邦および州(ラント、カントン)における実定憲法化の過程と現状を明らかにした。同時に、それが憲法に関する近代的な原理(人権の保障や民主主義など)との関係で一定の緊張関係にたつものでもあることを示唆した。
著者
篠崎 昌一 森山 雅文 林田 淳之介 田中 昭彦 前原 隆 古川 祥子 太田 美穂 今林 佑美 中村 誠司
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.147-153, 2015-03-20 (Released:2015-09-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Objectives: Cevimeline hydrochloride (CH) and pilocarpine hydrochloride (PH) are recognized as salivation-inducers with a high affinity for M3 muscarinic receptors. However, these drugs have a high frequency of side effects, including digestive symptoms and hyperhidrosis. We compared the effectiveness and side effects of these two drugs before and after a medication change.Materials and Methods: Seventy-six patients with Sjögren's syndrome were divided into the following four groups: 1) CH group, CH was administered for 12 months; 2) PH group, PH was administered for 12 months; 3) CH-PH group, CH was administered for 6 months followed by PH for 6 months; 4) PH-CH group, PH was administered for 6 months followed by CH for 6 months. We measured the salivary flow rate and recorded the subjective symptoms in each group.Results: In each group, stimulated whole saliva (SWS) and unstimulated whole saliva (UWS) significantly increased after 3 months and 6 months, respectively, and subjective symptoms improved after 3 months. The incremental changes in both SWS and UWS did not differ significantly between the groups. The CH and PH groups both had digestive symptoms (32.3% and 32.1%, respectively) and hyperhidrosis (29.0% and 39.3%, respectively). We found no significant difference in salivary flow rate or subjective symptoms after the medication change. However, the frequencies of side effects in the CH-PH and PH-CH groups decreased significantly for both digestive symptoms (9.7% and 10.7%, respectively) and hyperhidrosis (25.8% and 14.3%, respectively).Conclusions: After changing the salivation-inducing drug, there was no significant difference in salivary function or subjective symptoms, while the frequency of side effects markedly decreased. These results suggest that changing the salivation-inducing drug effectively reduces side effects.
著者
前田 見太郎 清川 朝栄 小林 章子 西口 理恵 矢野 忠 大山 良樹
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.120-124, 1993-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7

これまで視力回復に対する鍼治療の効果については近視の分類上, 軽度近視に対する治療が多く, 中等度ならび強度近視に対しての鍼治療の効果に関する報告は少ない。筆者らは中等度及び強度近視に対して裸眼視力回復を目的に置鍼術による鍼治療を行った。裸眼視力の回復を認めた3症例については, 治療を一時中断し, 鍼治療後の持続効果を観察した。また, 裸眼視力の回復が認められなかった3症例については, 置鍼術を鍼通電治療に変更し, 治療効果について観察を継続した。その結果, 置鍼術治療で裸眼視力の回復を認めた3症例は治療を中断してもなお, 初診時裸眼視力よりも高い視力を維持し, 鍼治療の持続効果を示した。一方, 視力の回復の認められなかった3症例に対しては鍼通電治療に変更してからは徐々に回復を示し, 初診時裸眼視力よりも高くなり, 鍼通電治療による効果を認めた。
著者
武尾 実 大湊 隆雄 前野 深 篠原 雅尚 馬場 聖至 渡邉 篤志 市原 美恵 西田 究 金子 隆之 安田 敦 杉岡 裕子 浜野 洋三 多田 訓子 中野 俊 吉本 充宏 高木 朗充 長岡 優
出版者
海洋理工学会
雑誌
海洋理工学会誌 (ISSN:13412752)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.45-56, 2018 (Released:2018-08-30)
参考文献数
12

Nishinoshima is an andesitic stratovolcano located in Ogasawara Islands, Japan. In November 2013, island-forming eruption started. Before the eruption, Nishinoshima was a small island of the area of 0.29 km2 and elevation of 25 m but it had a huge edifice rising 3,000 m from the sea floor. By March 2016, area and elevation reached 2.7 km2 and 140 m, respectively. We conducted various types of geophysical observations at this “difficult-to-access island” (950 km from Tokyo taking 90 min by Jet plane, or 24 h by ship). In June 2016, we conducted airborne observations using unmanned helicopter, collecting 250 grams of scoria and detailed 4K images of lava flows. OBSs (Ocean Bottom Seismometers) were deployed around Nishinoshima in four periods. From February 2015 to May 2017, characteristic waveforms dominated at 4–8 Hz band were frequently observed. Comparisons with infrasonic records and video images revealed that the 4–8 Hz seismic signals were associated with eruptions at pyroclastic cone. The number of seismic signals of this type declined from July 2015, and disappeared in November 2015, suggesting that the eruptive activity started declining in July 2015 and ceased in the middle of November 2015. In October 2016, we landed and deployed a broadband seismometer and an infrasonic sensor in the old Nishinoshima, collecting a lot of new lava, deposits, and ash samples. We demonstrated a capacity of remote-island volcano monitoring system for one day test navigation circling around Nishinoshima. After one and a half year quiescence, a new eruptive phase started in April, 2017. Our on-land seismic sensor detected precursory signals as early as April 17. The seismometer also recorded characteristic waveforms during the very early stage of the new eruption phase before data transmission was terminated on April 21.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史 太田 伸男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.44-51, 2017-01-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
4

舌下免疫の最初の数年間の効果は治療年数により高まるとされる. スギ花粉舌下免疫の同一患者での症状を, ともに中等度飛散であった2015年 (花粉総数2,509個/cm2) と2016年 (同3,505個/cm2) の2年間で検討した. 【方法】発売初年に開始した舌下免疫132例 (41.8±17.5歳, 男女比75: 57) と対照に初期療法56例 (44.9±13.5歳, 同25: 31) を選択した. 2015年と2016年の両方のスギ花粉飛散ピーク時に, 1) 症状スコアと症状薬物スコア, 2) Visual analog scale, 3) 日本アレルギー性鼻炎標準 QOL 調査票 (JRQLQ No1) で調査した. 主目的に舌下免疫療法2年目に効果が増強するか, 副次目的に舌下免疫と初期療法の比較とした. 【結果】推定周辺平均ですべてに治療方法と年度に交互作用はなく, くしゃみ, 鼻汁, 鼻閉, 眼のかゆみなどの眼鼻症状において, 初期療法には2年での差はなく, 舌下免疫療法の多くで2年目は1年目より有意に良かった. 全般症状の項目も同様であった. QOL (quality of life) は, 舌下免疫の17項目中2項目のみで有意に2年目が良かった. また, ほとんどの項目で舌下免疫は初期療法より有意に効果的であった. 【結論】初期療法を対照にした中等度飛散の2年の比較で, 舌下免疫の治療効果は治療1年目より2年目で高まっていたと考えられる.
著者
小林 正人 岩佐 豪 高 敏 高木 牧人 前田 理 武次 徹也
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

金属ナノクラスター触媒の反応性は、構成元素だけでなく、サイズや環境、構造など様々なファクターに依存するため、触媒活性の決定的因子の解明は困難であった。本研究では、銅クラスター触媒によるNO解離反応を例に、反応経路自動探索法を用いた系統的量子化学計算とスパースモデリングの手法を併用した触媒活性因子の抽出を試みた。具体的には、LASSO推定、SCAD推定、MC+推定の3つの手法を使い、軌道エネルギーや局所的な指標などの説明変数を用いて、Cu13クラスター上でのNO解離の遷移状態エネルギーを回帰した。その結果、遷移状態のエネルギーはLUMOの軌道エネルギーと負の相関があること、SCAD推定やMC+推定ではLASSO推定よりもコンパクトで相関係数の高いモデルが得られることがわかった。
著者
大野 公一 前田 理
出版者
分子科学会
雑誌
Molecular Science (ISSN:18818404)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.A0042, 2011 (Released:2011-06-04)
参考文献数
83
被引用文献数
2 2

It has been a long standing problem to answer the following fundamental questions in chemistry; (1) what kinds of chemical compounds (isomers) can be produced from a set of atoms given by a chemical formula, such as H4C2O2, (2) how the isomers can be converted to one another, (3) how they are decomposed into smaller species, or conversely (4) how they are made of smaller species. Although this problem can be solved theoretically if all minima and pathways among them via saddles could be searched on the potential energy hypersurface, it has been believed to be impossible, when the number of atoms exceeds four in the target chemical formula. A very simple tool like a compass for voyage could be discovered for global reaction route mapping (GRRM) in the chemical world. That is the anharmonic downward distortion (ADD) which enables one to follow all reaction pathways from an equilibrium (EQ) point toward structures of transition states (TS) surrounding the EQ point. Subsequent downward followings from already found TSs can easily be made as conventional intrinsic reaction coordinate (IRC) followings to reach some EQ points and dissociation channels (DC). Further quests around newly found EQs will yield many more reaction pathways via many other TSs. Such one-after-another procedures will continue until no new EQ could be found, and finally one can obtain a global reaction route map of the chemical formula as well as the answers to the fundamental questions in chemistry. Now, one should step into the new era of chemical problems to perform a perfect microscopic control of chemistry involved in the stereo reaction dynamics of atoms and molecules, based on leading information on typical trajectories searched by the automated exploration of chemical reaction pathways.
著者
前川 要 千田 嘉博 高橋 浩二 村越 潔 酒井 英男 モリス マーティン 宇野 隆夫
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

研究成果の慨要を下記の3つに分けて記す。(1)遺跡の年代われわれの唐川城跡における3年間の測量・発掘調査の最大の成果は、中世城館ではなく古代環壕集落であることを明らかにしたことである。いままで、中世城館として考えられ、環境集落の研究史では全く採り上げられなかった。それは、第1次調査における土塁の盛り土から出土した土師器碗破片と土塁の上から検出された鍛冶炉跡SX02の埋土基底部から出土した土師器甕口縁部より明らかとなった。遺跡の存続年代は、従来の土器編年観から10世紀半ばから11世紀初頭頃で、年代的には、50年から60年ほどの期間である。(2)規模・機能と集住唐川城跡については、従来略測図のみ公表されていたが、今回トラバース測量を実施して正確な測量図を作成した。その結果、面積が約8万2千m^2、浅い空堀状の遺構,2条の空堀跡と外土塁、竪穴住居跡あるいは鉄生産関連遺構と考えられる窪みを多数確認した。これらのことから、唐川城跡は,二条の空堀と浅い空堀状の遺構によって,北から3つの郭で構成され、そして中心の郭が最も大きく高いことが判明した。また城城内に竪穴住居跡,鍛冶関連遺構が41箇所存在することを確認した。また、小鍛治の関連と想定される小型の窪みは16箇所以上存在する。第2次発掘調査では、2軒の住居跡を検出したが、いずれも新旧2時期存在した。そのことから、41箇所の2倍程度、つまりすくなくとも百軒弱の集落であることが推定できる。井戸は、井戸は北側郭と南側郭に各1基確認した。どちらの井戸も上端幅約10m,深さ約2.5mを測る。第1次調査では、南側郭の井戸を半分断ち割りしたが、湧水層が確認できず溜井戸の可能性がある。また、井戸周辺に竪穴住居跡あるいは,鍛冶関連遺構と推察する円形の窪みを確認した。鉄生産の際の水を溜める遺構の可能性がある。(3)手工業生産今回の大きな成果の一つは、精錬炉が盛り土をした階段状遺構の頂上から2碁見つかったことである。付章の深澤・赤沼論文によると、鯵ヶ沢町杢沢遺跡と同様の竪型炉であり、関連性が考えられる。従来、環壕集落からは、小鍛冶炉を検出した例はあるが、精錬炉を検出したのは初めてである。北側井戸周辺では直径約2m前後の窪みが約7箇存在しており鉄滓が地表面採集できる。さらに南側井戸東側平坦面にも10基以上の窪みがあり、ここでも鉄滓が地面採集できる。これらのことは、少なくとも北郭と南廓では、精錬と小鍛冶を一連の工程で、土木工事を含めて、大規模かつ組織的に行っていたことを示している。また、内面漆塗りの土師器甕が出土したことは、漆容器として使用された可能性がうかがわれ、漆生産工房があったことを推測させる。
著者
前田 美紀 宮地 直道
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.19-35, 2012-03-30 (Released:2017-03-20)
参考文献数
42

Formation mechanism of basaltic pyroclastic flows has not been sufficiently clarified yet because basaltic pyroclastic flows do not occur as frequently as felsic ones. We studied the Osawa pyroclastic flow 3 deposit (OsPfl-3), which took place on the western flank of the Fuji volcano between 2.9 and 3.0 ka. OsPfl-3 has two flow units and one cooling unit, which have a combined volume of 6.2 × 106m3. The flow overlies another unit composed of two scoria fallout deposits (YokSfa-2a and 2b) which sandwich a pyroclastic flow deposit (OtPfl). OsPfl-3 mainly consists of welded blocks and dense blocks with composition and petrographical characteristics of basaltic andesite. Some of the dense blocks have cracks on their surfaces and look like “cauliflower-shaped bomb”. They have a flat surface on one side with concentration of vesicles near the surface. The matrix of OsPfl-3 has dense fragments that are thought to have originated from dense lava blocks and poorly vesiculated scoria. The emplacement temperature of the blocks is estimated to be higher than 580℃ from thermoremanent magnetization measurements. These observations indicate that the blocks in the OsPfl-3 originated from welded pyroclasts, lava flow or lava lake at the summit crater. The sequence of the eruptions that formed OsPfl-3 and underlying deposits are summarized as follows: Stage 1: Deposition of fallout tephras (YokSfa-2a and 2b) and an intercalated pyroclastic flow (OtPfl) which are composed of fairly vesiculated scoria; Stage 2: Formation of lava flow or lava lake at the summit crater, and deposition of pyroclastics on the lava; Stage 3: Occurrence of the pyroclastic flow (OsPfl-3) caused by collapse of lava and pyroclastics. OsPfl-3 is prominently distributed on the western flank. This observation implies that the westward flow from the source lava that filled the summit crater could cross the lower part of the crater rim.