著者
北川 勲 石津 隆 大橋 一慶 澁谷 博孝
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.120, no.10, pp.1017-1023, 2000-10-01 (Released:2008-05-30)
参考文献数
20
被引用文献数
6 9

Monthly changes of the content-ratio between S-(-)-and R-(+)-hyoscyamine as well as those between S-(-)-and R-(+)-scopolamine in the leaves of Datura metel L. cultivated in the field, were quantitatively analyzed by the use of HPLC with a chiral adsorbent. It was found that S-(-)-isomer was predominant for hyoscyamine and the ratio of R-(+)-isomer gradually increased during the growth, whereas in the case of scopolamine, S-(-)-isomer was the sole one found throughout the cultivation period. The 1H-NMR study in the CD3OD solution has suggested that S-(-)-hyoscyamine (1) and S-(-)-scopolamine (2) take a "face-to-face"conformation between their tropane skeletons and the benzene rings of the tropic acid moieties. In the presence of an equimolar NaOD in the CD3OD solution, the racemization at C-2' of 1 and 2 proceeded more rapidly than the hydrolysis at the tropic acid ester bond, presumably due to the steric hindrance caused by their"face-to-face"conformations. In the D2O and H2O solutions, on the other hand, the racemization and the hydrolysis of 1 proceeded smoothly, while those of 2 did not occur. It has been supposed that these individual reaction manners are ascribable in considerable extent to the different basicity of N atom in each tropane skeleton of 1 and 2 and to stronger intramolecular hydrogen bond occurring between the carbonyl oxygen at C-1' and the hydroxyl group at C-3' in the tropic acid moiety of 1.
著者
和足 孝之 稲田 遥 松本 謙太郎 志水 太郎 北川 泉 徳田 安春
出版者
医学書院
雑誌
JIM (ISSN:0917138X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.166-167, 2014-02-15

「誤診」に着目した国際学会 われわれは2011,12年と引き続き,2013年9月23~25日に米国シカゴのNorthwestern Universityで催されたDiagnostic Error in Medicine(DEM)の第6回International Conferenceに参加した.本総会は,臨床現場におけるdiagnostic error(誤診)をいかにして減らすかに着目し,自分が経験した診断エラーやリスクマネジメントの紹介や,今後の解決策の模索などについて,各発表やシンポジウムでも例年活発な議論が行われている. 今回,筆者らは本学会でメインとなるM and Mカンファレンスで,“Is it a Cold or Not ? That is the problem.”というタイトルで40分間の口演発表をする機会を得た.症例は36歳女性.発熱,咽頭痛,鼻水,倦怠感を主訴に救急受診し,感冒の診断で帰宅となるも2日後にDICによる脳出血で救急搬送されたケースである.最終診断は急性前骨髄性白血病であった.この症例の論点として,感冒と診断する際のピットフォールやさまざまなバイアス,また診断時の直感的診断と分析的診断の使い分けについて考察をまとめて発表した.Cook County HospitalのKaren Cosby医師(Rush大学准教授)がModerator,San Francisco VA Medical CenterのGurpreet Dhaliwal 医師(UCSF准教授)が“Professor” Discussantとして診断推論のコメントを加え,会場も交えての活発な意見交換が行われた.
著者
深川 一史 相川 竜一 羽場 一直 北川 良子 樋口 国博 泉 道博 森 秀樹 奥村 浩二 石田 聡 足立 幸彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.1680-1683, 2012 (Released:2013-06-10)
参考文献数
5

急性感染性心内膜炎は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの強毒性菌によって引き起こされ,高齢者に多いことが知られている.2症例は,20歳と36歳といずれも重度のアトピー性皮膚炎を有する若年患者で,発熱,炎症反応上昇を伴った.経胸壁心エコーにて疣腫と僧帽弁付近の乱流を認め,血液培養検査にてmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)が検出され,感染性心内膜炎と診断した.特に症例2では,血液培養と皮膚培養の結果より,感染経路としては皮膚と考えられた.
著者
北川 圭子 大垣 直明
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.576, pp.171-177, 2004-02-28 (Released:2017-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

A dining kitchen is the Japanese English named by the Japan Housing Corporation in 1955, and is the fundamental housing style of postwar Japan. The purpose of this study is to make clear forming process of a dining kitchen. After the defeat of the Second World War, when Japanese some architects had the subject of a minimum house, they proposed "Wohn Kuche" as a model. "Wohn Kuche" was a housing style for a minimum house in Germany after the First World War. On the other hand, architects proposed three new life-styles. They were "separation of a meal room and a bedroom", "taking a meal on a chair", and "democratization of a kitchen." It is thought that the dining kitchen was materialized by two proposals, "Wohn Kuche" and the three life-styles.
著者
北川 賢 長田 高志 金子 仁彦 高橋 利幸 鈴木 則宏 中原 仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.737-744, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
30

症例は18歳男性.約半年前に両眼視力低下,1か月前に右下肢麻痺と感覚異常を自覚.入院時,中心フリッカー値は両眼で低下.MRIは頸髄,胸髄に造影効果を伴う散在性のT2延長病変あり(頭部は異常なし).抗アクアポリン4抗体陰性,髄液オリゴクローナルバンド陽性.“視神経脊髄型多発性硬化症”を疑ったが,抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(myelin oligodendrocyte glycoprotein; MOG)抗体陽性であった.多発性硬化症を疑う病態から抗MOG抗体を認めた際の対処法は,2017年改訂のMcDonald診断基準にも詳細な言及はなく,今後の知見の蓄積を要すると思われる.
著者
石金 恵子 境 美代子 村藤 頼子 広上 真里子 杉政 美雪 北川 洋子 吉田 郁子 中川 輝昭 田内 克典 水島 豊 落合 宏
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.177-180, 1997-11-28 (Released:2010-07-21)
参考文献数
10

病室内のカーテンの細菌汚染状態を知り, カーテンの適正交換頻度を知る目的で, 10病室 (一般病室4, MRSA隔離室6) のカーテンに付着している細菌をバイオエアーチエッカーを用い1週間隔で5回調査した.その結果, 下記の成績が得られた.1) 4週間を通じてカーテンの付着菌数の累積的増加は認められなかった.2) 分離菌ではブドウ球菌がもっとも多く, ついでグラム陽性桿菌, 真菌の順であった.3) MRSA隔離室のほうが一般病室より多くの菌数が検出された.4) MRSA隔離室6室のうち2室で濃厚なMRSA汚染が認められた.5) 消毒用エタノール噴霧はいずれの細菌の除菌にも有効であった.以上より, カーテンの交換頻度はMRSA隔離室では患者の退室ごとに, また一般病室では肉眼的汚れに応じ, 年3-4回定期的に交換するのが適当ではないかと考えられた.
著者
岡部 洋一 柴田 克成 北川 学
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では、ネットワークの振動現象における振動振幅および周波数情報の、モデレ-ショニズムによる学習、および、時間スケールとして、より微視的なパルス時系列の時間相関情報の学習について研究を行っている。モデレ-ショニズムとは、生体は適当なレベルの入出力信号を好みそのレベルに近い入出力信号を築くように学習するとしたフィードバック学習の一種であるが、さらに環境の変動を積極的に利用する方向に改良した、振幅に対するモデレ-ショニズムを提案した。この信号振幅モデレ-ショニズムを用いて、自己結合などのフィードバック結合を有するニューロンを含むネットワークに関してフィードバック結合の効果を検討し、さらに自励発振しうる回路に外界から信号が注入された場合の挙動について、シミュレーション解析を行った。結果として、自励発振が可能なネットワーク構成を示し、そのネットワークに対して外界からの信号を注入した場合、微小入力時にはネットワーク自身の自励周波数で発振し、信号強度を増加するにしたがって、外部周波数に引き込まれることを示した。さらに外部周波数に引き込まれたネットワークは、外部入力を遮断した後にも、外部入力周波数で発振することを示した。より短期の時間スケールにおけるパルス時系列に対する、時間相関学習について提案を行った。ニューラルネットワークにおいてパルス列伝送を考えた場合、複数のパルス列の自己あるいは相互相関関数によって、情報を表現することが可能である。これらのパルス列の時間相関に表現された情報をネットワークに記憶させるために、最急降下学習およびトポロジカル・マッピング学習を行った。結果として、2系列に対する相関について最急降下学習によって、さらに3系列以上の相関についてトポロジカル・マッピングによって学習が可能であることを示した。
著者
岡部 洋一 中山 明芳 北川 学
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

酸化物高温超伝導体は、従来の超伝導体と比較し使用温度が高く、また,ギャップエネルギーが10倍程度高いため、それに比例した高速性が期待されている。また、バンドギャップが大きいため、半導体との整合性にも期待がかけられている。本研究はこうした高温超伝導体エレクトロニクス応用の基本技術となるトンネル形ジョセフソン素子を集積回路技術により作成することを目的としている。電子デバイスのような、微細あるいは薄い構造を取り扱うには、薄膜の平坦性、および作成温度の低温化が達成される必要がある。このため、この両方を改善するためにacおよびrfスパッタ法を改良した。具体的には導入酸素の紫外線による活性化、試料とターゲットの位置関係の最適化、および各電極にバイアスをかけることである。この結果、最高プロセス温度500度程度で薄膜を作成できるようになった。また、下部電極となるYBCOのみならず、上部電極のYBCOについても十分な特性の薄膜を作成できるようになった。トンネル型ジョセフソン素子を完成するためには、数nmのごく薄い均質な絶縁膜を作成することが必要である。このため、MgOを中心としていくつかの材料を検討した。まず、我々の従来の研究成果であるYBCO/Au/絶縁体/Nbの構造のものを検討し、下部電極をBSCCOとしても、ジョセフソン特性が観測できることを、直流特性、高周波特性、磁界依存性の三つの方法で確認した。その後、上下とも高温超導体であるジョセフソン素子の検討を開始した。その結果、高温超伝導体上に絶縁体を付けると、多くの場合、島状構造をとり、均質な膜がえにくいことが判明した。この他にも多くの素子構造を検討している。現在のところ、進行状況は、当初予定よりもかなり早いが、一方で研究をもっと原理的な方向に展開する必要があることも感じつつある。
著者
岡部 洋一 北川 学
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

生物が行っている動的で解析が困難な運動を、学習によってロボットに獲得させることを目的として1)鉄棒の大車輪運動、2)1脚によるホッピング運動、3)2足歩行運動、4)多関節で蛇行運動を行うロボットを作製して、学習制御の研究を行った。1)では二重振子の構造にし、振子間の関節に取り付けたDCモータがトルクを与え、振子の各関節に角度センサを取付けた構造のロボットで角度センサの情報を基にし、DCモータに与えるトルクを変化させる簡単なルールベースを構築し、大車輪運動の制御を試みた結果連続的な大車輪運動を実現出来た。2)の1脚ホッピングロボットは、上下、前後の方向に自由度が与えられた系で、本体に取付けられた脚が前後に振れる事によって移動する構造にした。脚の付根にDCモータを取り付け、これが脚を振る動力となる。センサによって脚の振れ角、高さ、移動距離の情報が得られるようにし、1)と同様に、センサによって得られる情報を基にして、DCモータに与えるトルクを変化させる簡単なルールベースを構築し、ホッピング運動の制御を試みた結果安定したホッピング動作を実現する事が出来た。3)の2足歩行ロボットは股関節と膝をサーボモータによって動かして前進する構造にし、制御システムについても生体をモデルとしてニューラルネットワークを用いたものを取り入れるため、リカント型のニューラルネットワークにおける発振と位相のずれを用い、両脚の股関節と膝の部分に取り付けたサボモータの角度を制御して2足歩行を試みた。その結果、安定した歩行運動を実現出来た。4)は3)の制御系を発展させ、ニューラルネットワークにおける発振と位相のずれを用いた運動の学習を試みた。学習させた運動は、各関節にサーボモータを配置した4関節のロボットによる蛇行運動で、目標となる速度、モータの消費電力を設定して学習させた結果、目標とする蛇行運動の獲得を実現出来た。
著者
宇留野 隆 正木 千恵 渋谷 洋 北川 亘 長濱 充二 杉野 公則 伊藤 公一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.9-13, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
5

最初に,永続性副甲状腺機能低下症を回避するために必要な,術翌日の血中i-PTH(Day1-PTH:非移植副甲状腺機能)と移植腺数を検討した。Day1-PTH≧10pg/mlでは,永続性機能低下は0.6%(3/493)と低かった。Day1-PTH<10pg/mlでも,2腺以上移植した症例は,9.2%(22/239)に抑えられた。次に,術中i-PTH値(全摘後5分値:PTT-PTH)と,Day1-PTHの相関を調べた。PTT-PTH≧15pg/mlは,Day1-PTH≧10pg/mlに対して,感度80.15%,特異度82.91%,PPV 76.22%,NPV 85.94%であった。計算上,PTT-PTH<15pg/mlの時,移植腺なしでは,36.1%の確率で永続性機能低下となりえる。2腺以上の移植を行うと8.3%となり,絶対危険減少27.8%,相対危険減少77.0%が期待される。
著者
小西 貞則 北川 源四郎
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.413-419, 1999-07-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
32
被引用文献数
1
著者
平川 善之 隈本 健 釜谷 幸児 野原 英樹 安田 和弘 津本 要 山崎 登志也 元尾 篤 牛島 幸治 北川 智子 蓮尾 幸太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0845, 2004

【はじめに】腹筋群の緊張による腹圧の維持・増強は、体幹・腰部のみならず四肢の運動機能に重要である。実際臨床場面でも、腰部・四肢の障害側と一致した腹圧の左右差が問題となる症例は多い。Richardsonらは腹横筋の収縮による腹部引き込み動作が腹圧の向上に影響するとし、圧バイオフィードバック装置を用いた評価方法を紹介している。臨床的には血圧計マンシェットで代用した方法がある。これらは腹部全体の評価であり、左右差を反映したものではない。そこで今回、腹圧評価の一指標として左右を分別して測定した。この結果と我々が臨床で行う体幹安定性テストを比較し、その有効性を検討した。<BR>【方法】健常被検者18名に対して以下の2つのテストを行い、比較検討した。腹部引き込みテスト(以下テスト1):Richardsonらの方法に則って腹臥位での腹横筋収縮による腹部引き込み動作を十分習得させた後、正中線の左右腹部下に二つの血圧計マンシェットを配置し、水銀計の目盛を70mmHgに設定した。被検者に5秒間の腹部引き込み動作を行わせ、その際、水銀計の増減の安定値を記録した。測定は10回行い、各試行間に30秒間の休息を入れた。体幹安定性テスト(以下テスト2):被検者は足底接地しない端座位を保持し、検者が左右の肩の上に徒手的に体重の60~70%程度の負荷を加えた。肩甲帯挙上などの代償動作の出現や体幹中間位を保てなかったものを「不安定」と評価した。(背景に目盛を設定し3人のPTが評価)<BR>【結果】テスト1は左右差有り:11名、左右差無し:7名であった(t検定 危険率5%)。テスト2は左右差有り:9名、左右差無し:9名であった。テスト1・2共に左右差有り:8名、共に左右差無し:6名、どちらにも属さない:4名であった。これら2つのテスト間の関連性を検定するためフィッシャーの直接法を用いた。その結果、テスト1における左右差の有無が、テスト2における左右差の有無に一致する確率が高いことがいえた(p<.05)。<BR>【考察】今回、左右腹部下で腹部引き込みテストを実施した結果、半数以上の11名に左右差が認められた。このことから腹圧を反映する腹部引き込み動作に左右差があることが示唆された。さらに体幹安定性テストにて評価された左右差が、腹部引き込みテストでの左右差と一致する確率が高いことから、これら2つのテストは体幹機能の左右差を評価できる一つの指標となることが考えられた。身体の運動に先行しておこる腹横筋収縮による腹圧の上昇は、体幹の安定性に関与し、四肢の運動や動作を効率的に行うための重要な要素となる。この機能が片側的に損なわれると、体幹の安定性を必要とする動作等に支障を来たす可能性が考えられる。今後、より多くの健常者のデータを収集すると共に、諸動作との関連性を検討していきたい。
著者
森嶋 厚行 北川 博之
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.197-198, 1997-03-12

近年, ネットワークの普及に従って異種分散情報資源が容易に利用可能となり, それらの統合利用が重要な課題となっている. 我々は, 構造化文書とリレーショナルデータベースを対象とした, 統合利用環境の研究開発を行なっている. この統合利用環境(図1)では, まず, ラッパーが各情報資源中のデータを統合データモデルであるNR/SD モデルに変換し, メディエータが NR/SD モデルに基づいた統合操作の機構を提供する. [figure] NR/SD モデルは, 入れ子型リレーショナルモデルに, 構造化文書を扱うための抽象データ型 "構造化文書型" (SD 型) を導入したものである. NR/SD モデルの最大の特徴は, 構造化文書と入れ子型リレーション構造を, 動的かつ部分的に相互変換するためのオペレータ "コンバータ" (converter) にある. NR/SD モデルを利用することにより, 次のような応用が可能になる. (1)入れ子型リレーショナル代数系を利用して, 構造化文書群の操作を行なう. (2)入れ子型リレーション構造を構造化文書に変換することにより, 型と独立した検索やメタデータを手がかりとした検索を行なう. さらに, 部分的に変換を行なうことにより, 構造の異なるデータを適当な抽象度で抽象化し統一的に操作することができるので,構造化文書とデータベースという表現の異種性に加え, データ構造の異種性にも対処可能である. これは, 構造化文書のような準構造化データの操作に特に有効であると考えられる. これらの他にも, WWW のような環境において, データベース検索の結果を構造化文書の形式で求めたり, 構造化文書に対するビューを定義する, といったことも可能である. しかし, 従来の NR/SD モデルは以下のような点で制限があった. (1) SD 型で許される文書構造の制約が厳しく, SGML 文書等に現れる例外構造や再帰構造等に直接対応していない. (2) SGML 文書等に現れる, 要素に付随する属性の操作を考慮していない. (3)コンバータによる変換の対象となる, 入れ子型リレーション構造と構造化文書の構造の関係に制約があり, 任意の変換を行なうためには, コンバータ以外の演算も含めた複数の演算を,データ構造に従って複雑に組み合わせ適用する必要がある. 本稿では, NR/SD モデルを改良しこれらの問題点を解決したモデルとその応用例を示す. 特に, 入れ子型リレーション構造と構造化文書を相互変換するコンバータの改良を中心に説明する.
著者
北川 浩 中谷 彰宏 仲町 英治 渋谷 陽二
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

金属多結晶材料の破壊は,ミクロスケールでの原子結合形態の破綻が,様々なメゾスケールの不均一内部構造とダイナミックに作用し合って伝播・拡大し,マクロ的な破面を形成する過程である。本研究では,このような破壊現象に力学的な視点に立った実体論的検討を加えた。具体的には,分子動力学(MD)シミュレーションによる原子スケールでの動的構造解析からき裂の発生・伝播の最も基本的な素過程についての知見を獲得し,転位論および結晶塑性モデルをベースにした連続体力学解析結果と対比させることにより,ミクロ/メゾ/マクロにわたる結晶構造材料の強度特性の基本的検討を行った。得られた主な成果をまとめると,(1)MDシミュレーションにより,(1)転位や双晶構造の相互干渉により生じるき裂発生過程,(2)fcc-Cu,bcc-FeをモデルとしたモードI,II,III型荷重下のき裂先端原子の動的構造解析,とくに延性破壊の結晶方位,温度依存性,(3)粒界構造と格子欠陥の相互干渉作用,(4)粒界近傍での拡散特性の温度依存性などを明らかにした。(2)連続結晶塑法モデルを,転位運動の現象論的カイネテックスを組み込めるように精緻化し,有限要素法によりき裂先端の変形場の解析を行って,原子モデルシミュレーション解析結果をその実体的なデータとみなして,ミクロ的な応力の意味,せん断帯の形成のミクロメカニズムの検討を行った。(3)MDシミュレーションに用いた原子間ポテンシャルの妥当性とその限界を検討するため,超格子法に基づくバンド構造解析および分子軌道法をベースとするクラスタ構造に対する,いずれも第一原理計算を実施した。(4)走査型トンネル顕微鏡によるHOPG材表面に見られる原子レベル段差構造,き裂,格子欠陥の構造の大気下での観察を行って,結晶材料の強度を律している微視的基本構造の計測を行った。
著者
渡會 涼子 安友 裕子 北川 元二
出版者
名古屋学芸大学管理栄養学部
雑誌
名古屋栄養科学雑誌 = Nagoya Journal of Nutritional Science (ISSN:21892121)
巻号頁・発行日
no.4, pp.55-65, 2018-12-25

【目的】若年女性の過度のやせは、貧血、骨粗鬆症、低体重児出産などのリスク因子となる。本研究では女子大学生を対象に健康状態、栄養摂取状況、食行動調査を実施し、低体重者の実態を明らかにするとともに、自己のボディイメージ評価による栄養摂取状況および健康状態について比較検討を行った。【方法】①健康状態については身体計測、血液検査、②栄養調査は食物摂取頻度調査法(FFQ)、③食行動は独自で作成したアンケート調査を実施した。ボディイメージはStunkard によるシルエット法を用いて検討した。【結果】管理栄養学部1 年生女子学生134名を対象とした。Staunkard のシルエット法は体格図( 1~ 9段階でスコアが高いほど体格が大きくなる)から選択してもらいボディイメージをスコアで評価する方法である。BMI による実際の体格とシルエット法によるボディイメージ評価を比較検討した。現在の自己評価によるボディイメージ・スコアは、低体重者(BMI<18.5)4.00±0.92、普通体重(18.5≦BMI<25.0)4.17±0,96、肥満者(25.0≦BMI)4.40±1.34と、低体重者と肥満者との間に有意差は認められたが、いずれもBMI=23に相当する4 点台であった。理想とするボディイメージ・スコアは平均2.93±0.63、健康的であると思うボディイメージ・スコアは平均3.49±0.59と、健康的であると思うボディイメージより、理想とするボディイメージ・スコアが有意に低かった。肥満度別に、「理想のボディイメージ」とエネルギー摂取量を比較検討したところ、低体重者、普通体重者ともに、理想のボディイメージ・スコアが低い者は、エネルギー摂取量が低く、過剰なダイエットをしている可能性が示唆された。自己のBMI による体型を正常に認識している「正常認識群」と自己のBMI による体型を実際より太っていると過大評価している「やせ願望群」で検討を行った。やせ願望群は63%であった。血圧や骨密度、血液検査成績においては、正常認識群とやせ願望群で有意差は認めなかった。エネルギー摂取量は正常認識群1,714±545 kcal、やせ願望群1,583±437 kcal とやせ願望群が少ない傾向がみられたが有意差はなかった。食品群別における主食・芋類摂取量は、やせ願望群の方が有意に低かった。【結論】ボディイメージの誤った認識が過度の痩身傾向に影響している可能性が示唆された。若年女性に対する正しいボディイメージ認識の啓発が重要であると考えられた。
著者
瀬戸 卓弥 竹内 優志 橋本 正弘 伊藤 惟 市原 直昭 川久保 博文 北川 雄光 宮田 裕章 陣崎 雅弘 榊原 康文
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

食道癌は10年生存率が20%前後の癌であり、膵臓癌や肝細胞癌と並んで致死率の高い癌である。また、食物を運ぶ蠕動運動による狭窄と癌による狭窄の判別が難しく診断の難しい癌であることも知られている。そこで本研究では、過去に食道癌と診断された患者のCT画像を用いて畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と 再帰型ニューラルネットワークの学習を行うことにより、新規のCT画像に食道癌が存在するか否かを判別するシステムの構築を目的とした。結果として、CNNとLSTMを用いた診断支援システムの構築に成功し、80%を超える精度で分類を行うことができた。
著者
寺川 裕史 牧野 勇 正司 政寿 中沼 伸一 酒井 清祥 林 泰寛 中川原 寿俊 宮下 知治 田島 秀浩 高村 博之 二宮 致 北川 裕久 伏田 幸夫 藤村 隆 尾山 武 井上 大 小坂 一斗 蒲田 敏文 太田 哲生
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 = The Biliary tract & pancreas (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.481-485, 2014-05-01

症例は56歳, 男性. 検診にて膵頭部腫瘍を指摘され, 当科紹介となった. 腹部USでは膵頭部に多房性嚢胞性病変を認め, 内部は多彩なエコー輝度が混在するモザイク状であった. CTでは膵外に突出する境界明瞭な多房性嚢胞性病変として描出され, 嚢胞壁および隔壁に造影効果を認めた. MRIにおいては自由水の信号と比較してT1強調像ではより高い信号, T2強調像ではより低い信号, 拡散強調像ではより高い信号を呈しており, 粘調度や蛋白成分の高い内容物の存在が示唆された. 年齢, 性別, 画像所見およびCA19-9高値などを総合的に評価し, lymphoepithelial cyst (LEC)を第一に疑った. 他の膵嚢胞性疾患が否定できないため切除生検としての腫瘍核出術を施行し, 病理学的にLECと診断した. 詳細な画像検査に加え, 性別やCA19-9値などを総合的に評価することにより, 膵LECを疑うことが可能であると考えられた.