著者
石原 正博
出版者
日本イギリス哲学会
雑誌
イギリス哲学研究 (ISSN:03877450)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.69-81, 1999

<p>Harriet Taylor and J. S. Mill, in the late 1840's and early 1850's, just before and after their marriage, wrote a series of articles on injustice and cruelty, revealing their growing concern over the effects of male violence and authority sanctioned by law. Their intention was to drive legislators and judges to regard violence as a serious crime deserving severe punishment. My analytical approaches are based upon thoughts in their "joint productions"; sometimes Mill comments, "Very little of this article was mine". This paper aims to shed light on Harriet Taylor's ideas and the formative process of Mill's thoughts.</p>
著者
榊原 正義 桂林 浩 鈴木 敏克 守屋 康正
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.83, pp.75-80, 1991-09-24

多くの情報をボトムアップに整理し、構造化する手法であるKJ法を利用してグループによる情報整理を支援するために、同期会議支援システムICE90の一つのアプリケーションとして、電子KJ法システムを構築した。電子KJ法システムは、各参加者が個人作業空間として使用するワークステションを通してKJカードの作成や移動等の操作を並行して実行できることを特徴としている。紙を使った従来のKJ法と比較すると、試行錯誤を行いながらのグループ編成や、グループ単位でのカードの操作が容易に行えるようになることが確認された。For the purpose of supporting groupwork to organize information, the authors developed ICE90: a face-to-face meeting support system. It has KJ-Method support function as one of its applications. The KJ-Method support function on ICE90 enables participants to create and operate KJ cards at the common workspace in parallel through each workstation for individual use. In comparison with the conventional KJ-Method with paper, it is easier to group KJ cards by trial and error, and to operate multiple cards in a group with ICE90.
著者
桂林 浩 鈴木 敏克 榊原 正義 守屋 康正
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.83, pp.63-38, 1991-09-24

オフィスでの作業は共通の目的を達成するための会議などの共同作業が中心であるが、ワークステーションによる支援は個人作業が中心である。そこで、ワークステーションによる会議の支援を考えた。まず個人作業用ワークステーションの応用可能性を検討し、次に会議支援特有の機能を実現した会議システム(E)を構築した。さらに、オフィスで行われている会議を3つのタイプに分類し、本システムにおける各タイプに対するワークステーションの利用可能性を検討した。その結果、会議タイプにより改良方法は異なるが、ワークステーションを使って支援できることを確認した。Cooperative work to achieve the shared target is the nucleus of office works, however personal work support is the major objective of many computer-supported systems. Therefore, the establishment of computer-supported meeting system is considered. We investigate the potentialities to use workstations at meetings, before making a system which includes special functions for the meetings. We classify meeting types into three, and investigate the applications of this system to support each meeting type. Consequently, the workstations indicate the potentialities to support meetings, though it requires some improvement according to meeting types.
著者
岡原 正幸
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.255-288, 2010-02

一 はじめに : 感情社会学の原点へ二 大森荘蔵の感情論(一) 感情と「心の内」(二) 「即ち」あるいは「共変」 : 生理学と「感情」(三) 風情と感情三 廣松渉の「表情」論(一) 表情の抜本的再考(二) 各種論説の批判的吟味(三) 共感・共振性四 おわりに : 感情を揺さぶる
著者
吉田 拓弥 川原 純 井上 武 笠原 正治
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:21888566)
巻号頁・発行日
vol.2017-AL-165, no.16, pp.1-7, 2017-11-09

ネットワーク信頼性評価とは,ネットワークの各リンクに静的な故障確率が設定されている場合に,2 頂点間が通信可能である確率を求める問題である.確率を厳密に計算する手法として,二分決定グラフ (BDD) を用いた計算方法が知られている.BDDは 論理関数を圧縮して効率よく表現できるデータ構造である.本稿では,ネットワークの 2 つ以上のリンクの故障に依存関係がある場合の信頼性評価を行う.本手法では,リンク間に存在する依存関係を BDD で表現し,依存関係を考慮しない場合に構築した BDD との二項演算を行うことで,依存関係を考慮した信頼性 BDD を生成し,確率を計算する.本手法を 3 つの計算方法で実装し,各方法を処理時間と生成される BDD のノード数の観点から比較を行う.
著者
市川 宏伸 齊藤 万比古 齊藤 卓弥 仮屋 暢聡 小平 雅基 太田 晴久 岸田 郁子 三上 克央 太田 豊作 姜 昌勲 小坂 浩隆 堀内 史枝 奥津 大樹 藤原 正和 岩波 明
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.399-409, 2018-04-15

抄録 小児ADHDの症状評価で世界的に汎用されるADHD-RS-Ⅳは,海外にて成人ADHDに対応する質問(prompts)と組み合わせて成人向けに使用されている(ADHD-RS-Ⅳ with adult prompts)。本研究は,日本語版promptsを作成し,日本人の成人ADHD患者36名および非ADHD成人被験者12名を対象に,その信頼性および妥当性を検討した。その結果,評価者内および評価者間信頼性の指標である級内相関係数は高く,内部一貫性の指標であるCronbach αは高い値を示した。CAARS日本語版およびCGI-Sとの相関で検討した妥当性も良好であり,かつADHD患者と非ADHD被験者との判別能力を検討するROC解析においても優れた結果であった。成人用prompts日本語版は,ADHD-RS-Ⅳとともに用いることで,成人ADHDの症状評価の手段として有用であると考えられた。
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
前原 正美
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.47, pp.601-620, 2015

本論文では,①豊臣「政権」が公武合体思想に基礎づけられていること,②ゆるぎない豊臣「政権」の構築のために,石田三成は豊臣「家」の構築が不可欠である,と考えたが,秀吉は,秀頼の誕生後,豊臣「家」の一元化を企図したため,かえって豊臣「家」の瓦解の原因をつくってしまったこと,③豊臣「政権」の特質である公武合体思想において,「公」の主たる意味内容は預治思想にもとづく諸大名に対する土地所有権=土地使用権の強化を目指す内容となっていること,したがって豊臣「政権」の主たる政策もまた,土地所有権の改革に主たる比重が占められていること,さらに「武」の主たる意味内容もまた土地問題=領地問題の内容となっていること,そのために秀吉は朝鮮出兵を余儀なくされたこと,④豊臣「政権」は天下人豊臣秀吉と「政権」中枢の石田三成らによって構成されていたが,このことが武力拡大路線(土地=領地の拡大路線)を目指す秀吉派と国内の政治安定を優先する平和路線の石田三成派との政治的対立構図を生みだし,その結果,豊臣「政権」の 分裂の原因を生みだしてしまったこと,⑤全体としていえば,石田三成にとっては,何よりも「大一」の政治思想としての天の視点=「公」の視点に立脚した人生の絶対的視点に立脚した政治を司ることが重要視されていること,を明らかにした。
著者
前原 正美
出版者
中央大学経済研究所 ; 1971-
雑誌
中央大学経済研究所年報 = The annual of the Institute of Economic Research, Chuo University (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.50, pp.169-193, 2018

本論文の目的は,第1に石田三成の旗印「大一大万大吉」には《「愛」の政治思想》が示されており,したがってまたそこには《「愛」の理念》が示されていることを明らかにすること,第2に,三成の旗印「大一大万大吉」に示される《「愛」の政治思想》は《「大一」の政治思想》,《「大万」の政治思想》,《「大吉」の政治思想》という3つに分類して,その具体的内容が示されていること,第3に,三成の《「愛」の政治思想》は,老子の《「陰陽」の政治思想》,聖徳太子の《「和」の政治思想》を継承した《「積善」の政治思想》を発展させた政治思想であるが,そしてまた政治経済思想に関連づけていえば,J. S. ミルの功利主義思想と共通する内容が示されているのであるが,一言でいえば,三成は人間各人は「私」の心を乗り越えて「公」の心=他者や社会に対する「愛」の心を涵養しないかぎり,決して幸福にはなれないこと,いいかえれば人間各人は自分が幸福になるためには,「愛」の心に従って,他者や社会のために自らの生命を役立てて貢献する,という意味での「公共哲学」を有して生きることが極めて重要なことだと天下万民に示したこと,第4に,人生には,《相対的幸福》の視点と《絶対的幸福》の視点の2つの視点に立脚した《幸福の価値観》があるが,人間の幸福は「私」の心に従って,物質的利益(立身出世)の増大を図る生き方から「公」の心=「愛」の心に従って他者や社会の利益の増大を図る生き方への幸福の価値転換が不可欠なのであり,それゆえに三成は,敵と味方,主流派と非主流派といった対立の状況を乗り越えて調和的状態をつくりだすには,「大」=「天」=「神」の心,すなわち「公」の心=「愛」の心をもって天下万民が生きることの重要性を主張したこと,第5に,三成の使命は,秀次事件以後,秀頼の豊臣「家」と豊臣「政権」の構築にあったが,三成はその使命を合議制=連帯制による豊臣「政権」の構築によって武力社会から知力社会への政治的,社会的構造転換によって実現しようと企図したこと,それは同時に知的ネットワークの形成による合議制=連帯制=共同制という特質を帯びた豊臣「政権」に基礎づけられた国家構想であったこと,その実現によって秀頼の豊臣「政権」もまた安泰化となり,天下万民のための天下人の世の実現が達成されてゆくこと,を示してゆくことにある。
著者
前原 正美
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.49, pp.567-616, 2017

本論文では,石田三成の旗印「大一大万大吉」のなかには老子の道教思想の影響が色濃く反映されていることを明らかにする。老子の道教思想に基礎づけられた宇宙論に従えば,宇宙=天上では「太」=北極星=「大」=「天」=「神」が不動の位置を占め,その周辺を「八」の星が動いているが,地上では,この「太」=「大」=「天」=北極星=「神」=「一」と「八」=支持者・補佐役との関係が映し鏡となって反映している。「太」=「大」と同じ意味であり,「太」=「大」は,「天」=「神」を意味する。 聖徳太子(厩戸皇子),皇極天皇(斉明天皇),天智天皇,天武天皇の後を受けた持統天皇,藤原不比等は,地上を支配する「太」=「大」=「天」は,具体的には高天原であり,唯「一」の存在である「神」は天照大神であり,そして「神」=唯「一」の存在は天皇=持統天皇である,と位置づけた。そして「八」とは天皇を支持し補佐する官僚(制度)を意味する,と位置づけた。したがって古代以後の日本では,政治思想=道教思想に基礎づけられた宇宙論,いいかえれば《「九」の政治思想》=《「一」+「八」の政治思想》が継承されてきたのである。 石田三成は,こうした古代における宇宙論=《「九」の政治思想》=《「一」+「八」の政治思想》の伝統を受け継いで,「太」=「大」を「天」=「神」と理解したうえで,①「天」=「神」の意思に命令を受ける唯「一」の存在こそ「天皇」であり,それゆえに「天皇」こそが政治の頂点に立つ存在であること,しかし現実には,「天皇」の代理人としての「為政者」である「一」=天下人が天下国家の政治を運営・指導する存在であること(《「大一」の政治思想》),②したがって「天皇」の代理人としての「一」=「為政者」=天下人=豊臣秀吉は,「公」の政治,つまり天下万民=「公」民のために「愛」の心を降り注ぐ「愛」の政治を司るために「公」家=関白太政大臣となって「天皇」を支えること,同時に「武」家の棟梁として確固たる豊臣「家」を構築し,かつまた強力な「武」力を背景として,「武」家の棟梁として「武家」=天下の諸大名に官位制度を適用し,そうして「公」「武」一体となって「公」家と「武」家との融和=調和を図ること,いいかえれば道教思想に基礎づけられた宇宙論,つまり《「九」の政治思想》=《「一」+「八」の政治思想》を適用した豊臣「政権」の構築を企図した。すなわち《唯「一」の存在=「天皇」とその代理人としての「一」なる「為政者」=天下人豊臣秀吉》+《「八」=基本的な枠組みとして石田三成を中心とした「八」人の支持者・補佐役(側近ブレーン)》から構成される「公」儀=豊臣「政権」=連合「政権」を構築し(《「大万」の政治思想》),③そうして地上のゆるぎない「万」機としての豊臣体制(政治体制)=中央集権国家体制のもとで天下万民のための天下泰平の世の構築の実現を目指したのである(《「大吉」の政治思想》)。 加えて三成は,反戦平和主義,戦争回避主義の立場に立って,日本国内における経済優先主義の主張を展開したのであった。そしてそのために三成は,《「九」の政治思想》=《「一」+「八」の政治思想》に基礎づけて,「一」=天下人豊臣秀吉のもとでの「八」=豊臣「政権」における三成を中心とした武家=諸大名の協力を得ながら,何としても天下万民のための天下泰平の世の構築を実現しようと全身全霊を傾けたのであった。 石田三成における《「大一大万大吉」の政治思想》は《「愛」の政治思想》であるが,それは古代における宇宙論=《「九」の政治思想》=《「一」+「八」の政治思想》の延長線上に位置づけられるのであった。その意味で三成の天下国家論=中央集権国家論=公武合体論は,古代国家論の再編を目指したのである。
著者
海野 剛裕 菅原 正義 中久喜 輝夫 岡田 嚴太郎
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.21-27, 1993 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
4

β-グルコオリゴ糖のヒト腸内フローラに与える影響について検討した.β-グルコオリゴ糖は,微生物起源のβ-グルコシダーゼの糖転移・縮合反応を有効に利用して製造されたβ-グルコオリゴ糖を主成分とするシラップ(商品名:ゲントース)を用いた.In vitroでの腸内細菌による資化性試験においては,β-グルコオリゴ糖はBifidobacteria, Lactobacilliに選択的に資化された.また資化性試験に用いた4株のClostridium perfringensにはほとんど資化性は認められなかった. さらに,β-グルコオリゴ糖をヒトに投与し,腸内フローラの測定を行った結果では,49/日のβ-グルコオリゴ糖の投与によりBifidobacteriaの菌数が有意(p<0.05)に増加し,その占有率は21.5%にまで増加した.この期間の糞便のpHは投与前後に比較して約0.5pH単位の低下が認められた.また被験者の健康状態については異常なガスの発生および鼓脹感はみられず,約6割の被験者において便通および便の硬さの改善がみられた. 以上の結果からβ-グルコオリゴ糖は49/日の摂取量で有効なBifidobacteriaの増殖因子であること,便性改善効果がある新規な澱粉糖として利用できることが示唆された.
著者
楠原 正洋
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.213-217, 2009 (Released:2009-11-27)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

スポロトリコーシスは健常人におこる慢性の感染性肉芽腫であり,診断には病理組織検査と真菌培養による菌の同定が必要である.補助的にはスポロトリキン反応も有用であるが,疑陰性もあるので注意を必要とする.治療薬として第一にはヨウ化カリウム薬の内服が安価かつ効果的であるが,消化器系の副作用や,施設によっては入手困難なこともあり,次いでイトラコナゾール,塩酸テルビナフィンが選択肢となる.その他局所温熱療法も有効である.黒色真菌による深在性皮膚感染症は,菌の寄生形態によりクロモブラストミコーシスとフェオヒフォミコーシスに大別するのが一般的になりつつあるが,本邦では前者をクロモミコーシスと称する場合も多い.診療の際,クロモブラストミコーシスは鱗屑内の褐色胞子型菌要素を,フェオヒフォミコーシスは膿汁内の菌糸型を確認できるので,日々の診療での直接顕微鏡検査が重要である.菌の同定には形態学的手法と分子生物学的手法の両方が望ましい.治療では,脳転移などの重症化に注意し,確実な治療とその後の長期的な観察が重要である.症例ごとに手術療法の適応や菌種別の抗真菌薬の選択,温熱療法などとの組み合わせが必要となる.
著者
松原 凱男 山田 茂治 吉原 正邦 前嶋 俊壽
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1312-1316, 1987
被引用文献数
4

4-phenylr4H-1,3,4-thiadiazin-5(6H)-one[1]および5,6-dihydro-4-pheny1-4H-1,3,4-thiadiazin-5-o1[2]の<SUP>1</SUP>H-NMR,<SUP>13</SUP>C-NMR,IRおよびUVスペクトルの結果,ならびに拡張.Huckelも分子軌道計算を行ない,結合次数,電荷分布およびHOMO結合軌道の様子を求めた結果かちそれぞれの共鳴安定構造について検討した。[1]の構造は,硫黄原子から3-位窒素原子へ,また4-位窒素からカルポニル酸素へそれぞれ電荷が偏りその結果,3pπ-2pπ-2pπ 系と2pπ-2pπ-2Pπ 系と2種類の連続し喪共鳴安定構造の存在が示きれた。一方,[2]の構造は,硫黄原子から4-位窒素原子へ電荷が偏りその結果,ブタジエン型3pπ-2pπ-2pπ-2pπ 系の大きな共鳴安定構造の存在が示された。そこでこの共鳴構造の異なりが反応性にどのように影響を与えるかについて検討した。[1]は通常り求核剤,求電子剤およびラジカル試荊とはまったく反応性を示さなかった。しかし[2]は弱酸およびヨウ化メチルなどの求電子剤と容易に反応を起こし,分離困難な多くの生成物を与えた。また[2]はアルコール,アミンおよびチオールなどの求核剤とは触媒なしで容易に反応を起こし,それぞれ対応する置換化合物を与えた。このオキソおよびヒドロキシル置換基の違いだけで反応性がまったく異なった結果は共鳴講造の寄与の違いで説明され,また,[2]と求核剤との反応は,ヒドロキシル酸素と5-位炭素間の切断で生じる5,6-ジヒドロニ4H-1,3,4-チアジアジニウムカ与オン中間体を経由する機構を強く支持した。
著者
諏訪 晴香 木村 悟朗 篠原 正典 Haruka SUWA Goro KIMURA Masanori SHINOHARA 帝京科学大学理工学研究科環境マテリアル専攻 イカリ消毒株式会社技術研究所 帝京科学大学生命環境学部自然環境学科
雑誌
帝京科学大学紀要 = Bulletin of Teikyo University of Science
巻号頁・発行日
vol.9, pp.147-149, 2013-03-31

Larvaes of varied carpet beetle (Anthrenus verbasci ) are well known as insects injurious to clothes and crops, and theirfood preference have been researched well and known to inclinable toward animal fiber. Here, we widely invested theirpreference to six clothes including wool, silk, cotton, hemp, rayon and polyester from their gathering behavior. As the results,they gathered on wool most and their preferences to plant fiber were intermediate between those to animal and artificial fiber.
著者
北原 正彦 入來 正躬 清水 剛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.253-264, 2001-09-30 (Released:2017-08-10)
参考文献数
24
被引用文献数
3

To examine the relationships between the northward distributional expansion of the great mormon butterfly, Papilio memnon Linnaeus, and climatic warming in Japan, we analyzed a data set on temperatures near the northern range limit of the species for the past ca 60 years from the year 1940 until 1998. Within the distributional range of the species in southwestern Japan in the year 2000, a significant increase in temperature (i.e., climatic warming) occurred and a significant increase in the latitude of the northern range margins was detected during the period analyzed. That is, the latitude of northern range margins in the species increased with the increasing mean temperature of the coldest month and annual mean temperature in southwestern Japan. Thus, it is suggested that climatic warming as a major external factor may have played an important role in its northward expansion. The averages of annual mean temperatures and mean temperatures of the coldest month near the northern range margins were 15.46℃ and 4.51℃, respectively. Our analysis also suggested that there were different types of northward range expansion patterns of the species. We discuss the patterns mainly from the point of external factors.
著者
原 正敏
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.45-65, 1969 (Released:2010-08-25)
参考文献数
35