著者
平井 肇 天野 郡寿 佐川 哲也 深澤 宏 金 恵子 松田 恵示 沢田 和明
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、スポーツのグローバル化の流れが、アジアの諸国においてどのように受容され、その結果、社会・経済システムや文化形態全体にどのような形で波及し、影響を及ぼしているのかについて分析・考察することを主たる目的として調査研究を行ってきた。「個別の地域研究」(平成11年度)と「特定のスポーツ社会制度に関する比較研究」(平成12年度)に関して、各自がサブテーマをそれぞれ担当して、研究調査を行ってきた。最終年度は、研究成果の統合化を図ると同時に、成果を広く公表して、本研究に関心のある研究者の国内外のネットワークづくりに努めた。研究分担者が取り上げた調査研究テーマは、「子ども労働とスポーツ」、「フィリピンのプロスポーツ興行」、「中国の少数民族政策と体育」、「中国の近代化と体育政策」、「韓日の高校野球組織の比較」、「スポーツ労働者の移動」、「タイの近代化と子どもの遊び」、「シンガポールの華人社会とスポーツ」、「日本植民地下の朝鮮半島のスポーツ」、「米占領下のフィリピンのスポーツ」などである。グループとしては、フィリピン、タイ、中国へ赴き、それぞれの国におけるスポーツとそれを取り巻く社会環境について調査研究を実施した。また、アジアのスポーツ研究者と交流を深めるべく、タイ・チェンマイ大学とチュラロンコーン大学、フィリピン・デラサール大学、韓国・梨花女子大学、中国・河北大学で研究会を実施し、現地の研究者と情報の交換を行うと同時に、今後の共同研究の可能性やネットワークづくりについて協議を行った。これらの結果は、各自が書籍や雑誌、学会などで公表すると同時に、『スポーツで読むアジア』(世界思想社2000年)としてまとめた。また、研究グループのホームページ(http://www.yone.ac.jp/asia-sports/)を開設し、研究成果の公開を行っている。
著者
橋本 洋志 坪井 利憲 大山 恭弘 苗村 潔 天野 直紀 石井 千春 小林 裕之
出版者
東京工科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,日常生活で現れる手の動き(箸や鉛筆の使い方,玉遊び等)を時系列データとして取得し,動きの特徴を表す特徴量を抽出して保存する(アーカイブ(archive)と称す)とともにこの特徴量をハンドガイド(写真参照手に装着して自動制御によりワイヤー型アクチュエータで5本の指を動かす)に送ることにより,ハンドガイドを手に装着した人間に,力覚として手の動きそのもののインストラクションを行えるようにすることにある。本年度では,前年度までの実験結果を基にして,次の成果を得た。● 指関節角度の時系列データに対する主成分分析法により,第1主成分が,動きの巧みさの指標となりうること,また,指関節角度の時系列データのうち,箸使いでは,人差し指と中指の間の角度に対する標本分散が,箸使い上手さの指標となりうることがわかった。● 玉回しでは,親指を含めた3本の指先関節が周期的に動くことが上手さの鍵となることがわかった。また,手の動きに関連して,副次的に次の知見を得た。● 手の力覚を用いて,人間の周囲にある障害物環境を認職できるという視覚の代替感覚を実現できることを明らかにした。● 人間がレクリエーションの一環として太極拳の動作を行うとき,手先の動きが重要であることが判明した。これは上手に動こうとするときの指標として,手先でバランスをとったり,スムーズな動作移行のときに手先反動を用いているためで,人間の動作と手の動きとの関連性に注目することが必要であることがわかった。以上の知見をもとに,指先のみならず手先の動きがしなやかになるようなインストラクションディスプレイのプロトタイプを構築し,臨床実験を通してその高い利便性・使用性を立証した。さらに,指先のモーションアシストデバイスを試作し,指の感覚とその動かし方に関する幾つかの知見を示した。
著者
天野 雅男 魚住 超
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成8-10年の三年間にわたり,漁船,イルカウオッチング船の協力で,タッパナガの回遊を知る目的で目撃情報を収集した.その結果,7,8月に三陸沖に現れ,9,10月には北海道南岸まで分布を広げるが,その後南下し,1から4月ごろまで三陸沖から姿を消すことが判明した.毎年,7月から9月に三陸沖,室蘭沖でタッパナガ群の直接観察調査を行った.行動調査では,タッパナガは日周的な行動パターンを示さず,一つの行動パターンが長時間連続する傾向が明らかとなった.個体識別用の写真は,現在解析中であるが,予備的な解析から,群れ間でオトナオスの割合に5-12%と変動があり,オトナオスが群れ間を移動している可能性が示唆された.また,子連れのメスの割合は15-21%であり,従来の報告より高いことが見いだされた.吸盤タグによる潜水行動の調査では,6時間にわたる潜水データが得られ,コビレゴンドウの潜水行動を初めて明らかとすることができた.装着個体は,日中は浅い潜水を行っていたが,日没後,100mを越える潜水を繰り返していた.多くの潜水は200秒以下に保たれており,また,深度と持続時間の関係が200秒付近を境に変化することから,代謝に関係するなんらかの制限がこのあたりに存在すると考えられる.潜水プロファイルは二つのパターンに分かれることが明らかになり,タッパナガが異なった潜水パターンを使い分けていることが示された.鳴音調査では,同じグループで同じ音(コール)が頻繁に聞かれる一方,群れ間では同じコールが聞かれないことから,個体または群れの識別機能を持った音声の存在が示唆された.
著者
天野 晃 松田 哲也 水田 忍
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,臓器としての生物学的知見が豊富な心臓を対象として,近年急速に解明が進み実現されるようになった,タンパク分子機能に基づく精密な細胞モデルを元に,心筋細胞の配列,組織の微小循環,冠動脈血流,心筋組織の力学的特性に基づいた心臓の3次元拍動モデルの実現を目指した.まず,左心室3次元拍動モデルの編集ツールを実現し,シミュレーションアルゴリズムとして,心筋細胞のタンパク分子機能に基づいたモデルが生成する収縮力と,材料特性に基づく3次元形状の変形を精密に計算する連成シミュレーションアルゴリズムを提案した.次に,心臓拍動モデルの形式的記述と,実験プロトコルの形式的記述言語としてPSPMLを設計した.さらに,日々蓄積される生物学的知見を容易に導入し,有効性等を評価するシステムとして,形式的に記述された心筋細胞モデルを非専門家が安全に編集可能で,さらに実験プロトコルの修正も可能な編集システムを実現した.また,心臓拍動の精密な再現に不可欠な血管系のモデルとの連成計算を行うシステムを実現した.このシステムにより,様々な細胞モデル,左心室モデル,血管系を用いたシミュレーションにおいても,自由に組み合わせを変更して循環動態シミュレーションが可能となった.最後に,これらのシステムを用いて,左心室構造力学モデルにおける応力評価を行った.心臓は拍動に伴う能力や効率を最大化するため,収縮末期における応力分布が均等化するように細胞配列が最適化されているという仮説があるが,実際の心臓で心壁内部の応力が評価できないため,仮説の検証にはシミュレーションモデルが利用されるようになってきている.構築したシステムを用いて,収縮末期における心壁の応力分布を評価した.この結果,従来の報告で評価が困難であった心尖部において,明瞭な応力集中を確認できた.これは,バチスタ手術等の外科手術において,経験的に重要性が認識されている心尖部の重要性を示唆する結果であると考えることができる.
著者
寺澤 敏夫 浅野 勝晃 天野 孝伸 羽田 亨 山崎 了
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、宇宙空間・宇宙の極限環境におけるさまざまな粒子加速機構について、最新の理論と観測結果を用いた研究を行い、長年の謎である宇宙線陽子・電子比決定メカニズムに迫った。中心的に扱われたのは衝撃波加速機構、乱流統計加速機構であり、それらを共通のキーワードとして、地球定在衝撃波から超新星衝撃波、ガンマ線バーストに伴う相対論的衝撃波まで、広範なパラメタ領域における加速機構の描像の最新化に寄与した。
著者
西本 一志 天野 健太 千葉 慶人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J94-A, no.7, pp.488-499, 2011-07-01

食卓は,単なる食事のための場ではなく,コミュニケーションのための場としても非常に重要な役割をもつ.近年,情報メディアを食卓に持ち込む試みが多数なされつつあるが,それによって食卓における共食者コミュニケーションを促進することを主な目的とする試みは見当たらない.本論文では,筆者らのこれまでのインフォーマルコミュニケーション支援メディアに関する研究から得られた知見に基づき,複数の人々が持ち寄った写真等の情報を話題の種とする食卓コミュニケーション支援メディアの機能要件について検討した.その結果,写真等の情報を閲覧するための情報メディアと会話の話題とするための情報メディアとは全く似て非なるものであり,両者に求められる機能要件は大きく異なることが明らかとなった.具体的には,情報を会話の話題とするための情報メディアには,低い操作性や低い一覧性など,一般的には好ましくないとされる機能特性が要件となることを示す.
著者
松岡 心平 天野 文雄 磯田 道史 小川 剛生 落合 博志 高桑 いづみ 高橋 悠介 竹本 幹生 橋本 朝生 姫野 敦子 宮本 圭造 山中 玲子 横山 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、観世文庫が所蔵する貴重な能楽関係文献資料の調査・整理・保存・公開によって、今後の能楽研究の発展の基礎を築いた。資料はマイクロフィルムに撮影・保存したうえで、これをデジタル画像化し、文献調査に基づく書誌情報と統合してデータベース化した。これはデジタルアーカイブとしてWeb上に公開され、資料が世界中から検索・閲覧可能になった。さらに「観世家のアーカイブ展」の開催を通じて、研究によって得られた知見の普及をはかった。
著者
表 章 竹本 幹夫 山中 玲子 西野 春雄 表 きよし 橋本 朝生 天野 文雄 松岡 心平
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、能楽が現代にいたるまでの問に全国各地でどのように成長・発展したかを具体的に跡づけ地方能楽史の体系的な位置づけを行うことを最終的な目標として、(1)全国の地方諸藩の能楽資料の残存状況を調査し、(2)藩政日記中の演能記事、演出資料、演能記録等を可能な限り収集・整理し、(3)地方各都市における能楽の浸透の程度や演能の際の経済的基盤、役者確保の方法、技法の伝播の仕方など、様々な問題を具体的な資料によって跡づける作業を行ってきた。その結果、資料収集の面では、予想通り各藩の藩政日記は能楽資料の宝庫であることが確認され、特に東北・北陸諸藩を中心に撮影・収集が進んだ。が、逆に、量があまりにも厖大なため、これらの大藩や江戸・京・大坂といった大都市の状況については全体を俯瞰する論をまとめるまでに至らず、基礎資料としての能楽関係記事年表や、個々の役者に関する考察等、一側面を切り取った論考を掲載することになった。一方、比較的資料が限られた小藩に関しては、調査・考察が行き届き、複数の都市について、まとまった研究成果を挙げることができた。その結果、江戸時代には大都市のみならず、地方の小都市においても、それなりに能楽への取り組みが行われていたこと、能の演じ手を確保するために他藩の役者に協力を仰いだり素人の教育を任せたりするシステムや、地方在住役者間のネットワークのようなものができていたことも、新たに判明した。この他、名古屋の笛方役者、藤田六郎兵衛家蔵の能楽文書悉皆調査と撮影も、本研究の成果の一つであるが、これについては別途資料目録を作成すべく、準備中である。
著者
吉岡 基 幸島 司郎 天野 雅男 天野 雅男 荒井 一利 内田 詮三 大谷 誠司 小木 万布 酒井 麻衣 白木原 美紀 関口 雄祐 早野 あづさ 森 恭一 森阪 匡通
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ミナミハンドウイルカの保全のために必要な基礎情報を得るため,分布や移動経路の把握,地域個体群間の関係に関する検討,行動解析,繁殖生理値の収集を行った.その結果,(1)伊豆鳥島周辺に本種が分布し,その個体群は小笠原や御蔵島の個体群との間に関係を有すること,(2)奄美大島での調査により,本種が同島周辺を生活圏とすること,(3)御蔵島個体群の社会行動の分析から,その頻度が性や成長段階によって異なること,(4)飼育個体の性ホルモン分析から,オスの精子形成は春~秋により活発になることなどが明らかになった.
著者
天野 恒雄
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.242-257, 1968-06-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
木村 一樹 近藤 正章 天野 英晴 宇佐美 公良 中村 宏 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.7, pp.1-8, 2011-01-17

演算ユニットにランタイムパワーゲーティング (PG) 技術を施した省電力プロセッサコア Geyser において、OS により PG 動作を制御することでハードウェア単体での PG より電力削減効果を高めることが期待されている.本研究では,PG 実施時のオーバヘッドと電力削減量の損益分岐点がコアの温度により変化することに着目し、ランタイムにコアの温度情報を取得して OS により PG 実施ポリシーの決定を行う制御方式を提案する.またこの方式について FPGA ボード上に構築した評価システムに実装し評価を行い,演算ユニット全体の平均リーク電力を最大約 11% 削減した。'Geyser', the processor core with a fine grain power gating technique, requires further power savings by controlling the behavior of power gating with OS support. This paper describes an approach to improve power saving efficiency of Geyser that is the method by runtime temperature information of CPU core to decide the behavior of power gating, focusing on the fact that the breakeven point of power saving efficiency varies with the temperature. The leakage power consumption of 4 computing units has been reduced by up to 11% with the method on the FPGA evaluation board.
著者
杉谷 嘉則 影島 一己 西本 右子 天野 力
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

高周波分光法は、物質と水の相互作用の変化を鋭敏に捉えることを可能にする、われわれ独自の手法である。すなわち、物質の状態変化に伴う誘電率変化を共振周波数の変化として検出する手法である。また、エマルションとは、界面活性剤の力により、水中の油滴、逆に油中の水滴の形で一様に分散する系をいう。食品(牛乳)、化粧品(ヘアーオイルなど)、農薬、塗料、その他多くの産業分野に用いられている。これらエマルションは熱力学的に不安定な系である為、時間経過によりいずれ相分離を生じる(別の言い方では、劣化する)。これらの相分離過程を高周波分光法により観測することに成功した。実際には、多種類のエマルションを合成し、その劣化過程を高周波スペクトルのピーク位置の移動という形でとらえることができた。結果の一例を示すと、エマルション合成時に、界面活性剤の割合を多くしたものは、時間経過に対する劣化が緩やかに進行することが判明した。また、高温で保存したエマルションは、劣化がより速やかに進行することも判明した。これらは経験的には自明として知られていることであるが、目視や他法では観測し得ないような微小の変化も本法で鋭敏にとらえることができた。
著者
天野純司
雑誌
外科 Mook
巻号頁・発行日
vol.52, pp.85-96, 1989
被引用文献数
64
著者
佐々木 大輔 松谷 宏紀 竹 康宏 小野 友己 西山 幸徳 黒田 忠広 天野 英晴
雑誌
先進的計算基盤システムシンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.399-406, 2011-05-18

誘導結合によるチップ間ワイヤレス接続技術は,製造後にチップを重ねて実装することで,三次元積層が可能であり,その高い柔軟性と転送性能が注目されている.この三次元転送技術を有効に利用するためには,積層されたチップのコア間で容易にデータを転送を行う方式を確立する必要がある.本論文では,ワイヤレス誘導結合を用いてチップ間でコミュニケーションを行う手法として,垂直バブルフローを利用したリング型 NoC を提案し,仮想チャネルを用いたリング型 NoC,および,垂直バス方式と比較する.さらに,これらの通信方式を搭載したプロトタイプチップを実装し,それぞれの手法による性能,および,面積の違いを測定する.シミュレーションによる評価の結果,プロトタイプチップは 200MHz で動作し,誘導結合部分は 4GHz 超のクロック伝送によるダブルデータレート伝送を実現,平均消費電力は最大は 33.8mW となった.垂直バブルフローおよび仮想チャネルを用いたリング型 NoC は,垂直バス方式と比べ高いスループット性能を実現した.さらに,垂直バブルフローは既存の仮想チャネルを用いる方式よりも面積性能比で優れることが分かった.
著者
梶原 景昭 望月 哲男 佐藤 研一 小山 皓一郎 天野 哲也 宮武 公夫 西部 忠 権 錫永 国広 ジョージ 越野 武
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

調査研究の結果、得られた知見は以下の通りである。1.「北方」を地理的に定義するのではなく、わが国との関わりを中心に文明論的に、そして近年の国際関係、地域連繋の点から定位すると、極東ロシア、北東アジア、中央アジアを含む、北西ユーラシアの拡がりに21世紀的な意味を見出すことができる(「北方」といえば北米、スカンディナヴィア、極北、ロシア北部等を含むが、ここでは上述の積極的な定義が重要である)。2.1で定めた「北方」地域に関しては、その大半が社会主義の洗礼を受けたことも含め、ロシア語、ロシア文明のきわめて強い影響下にある(学術制度から日常生活にも到る)。3.しかしながらこうした文明・文化の状況は現在あくまでグローバル化の渦中にあり、いわゆる従来のロシア文明ととらえることは妥当でない。4.中央アジア、極東ロシアにおける韓国の存在は極めて大きい。それに反し、歴史的にはさまざまな関わりがあるもののわが国の存在感は弱い。5.上述の域内でのヒト・モノの移動は想像以上に進行している(アゼルパイジャン、チェチェン人が極東ロシアに多数移住していること、またスターリン時代の強制移住による中央アジアの朝鮮人の存在など)。6.この地域を概観すると、周辺地域である日本、韓国などの相対的な経済先進地域が北方中心域に刺激を与えているようにみえるが、こうした経済的インパクトが社会変化を支配するところまではいっていない。7.ユーラシア鉄道計画等の北方地域に関わるプロジェクトに対し、日本の関心と関与が圧倒的に少ない。
著者
吉川 かおり 天野 マキ 天野 マキ 大迫 正史 坂口 正治 越田 明子 旭 洋一郎 吉川 かおり 藤島 岳
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては、某県内にある某知的障害者更生施設における利用者6名とその保護者、施設職員との共同で、重度知的障害者への非言語的コミュニケーション方法の開発を行った。まず、利用者の全体像をとらえるために、支援職員から見た本人像・家族から見た本人像を調査し、相違点を検証した。また、支援職員がとらえた利用者像を明確化するための研修を実施すると共に、イルカ療法導入・スヌーズレンによる支援・乗馬療法導入に向けての準備を行った。具体的には、イルカとのふれあい体験の実施、水泳・水中活動を通してのプログラムの模索、遊具を用いての発達支援プログラムの開発である。国内外の施設・プログラムの視察を含めながら、対象施設・対象となる利用者にとって最適な方法と用具を模索し、プログラムの開発を試みた。イルカ療法導入の前段階として行った水泳・水中活動は、利用者用の支援プログラムを考案するところまで至ることができた。しかし、イルカ療法を導入するには地理的・気候的・費用的条件の面で困難があり、より手軽に用いる事のできる支援方法を探す必要が示された。スヌーズレンによる支援は、用意できた部屋がリラックスルームのみであったため、そこでの活動を通してコミュニケーションを深めるというところには至らなかった。そのため、他の遊具を用いる発達支援プログラムを考案し、利用者が日常的に楽しみを得ることのできる環境を創出することとした。特に、音の出るおもちゃには関心度が高く、少ない働きかけで多くの刺激が返ってくる遊具を導入する事の有効性が示された。乗馬療法については、その生理学的意義の考察を行い、実際の導入は今後の課題となった。これらのプログラムを導入する事によって、支援職員・保護者の相互理解が深まり、言葉のない利用者が表出する非言語的コミュニケーションの理解の方法および利用者支援の具体的方法が明確化された。
著者
金坂 清則 山田 誠 新谷 英治 勝田 茂 坂本 勉 天野 太郎 小方 登 秋山 元秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、19世紀の世界をリードした西欧の中でもとりわけ重要だった大英帝国の人々が行った旅や探険とその記録としての旅行記について、アジアに関するものに絞り、歴史地理学的観点を主軸に据えつつ、歴史学者や言語学者の参画も得て多面的に研究し、そのことを通して、未開拓のこの分野の研究の新たな地平を切り開く一歩にした。また、その成果を地理学のみならず歴史学や文学の世界にも提示して学問分野の枠組みを越えることの有効性を具体的に提示し、かつそれを一般社会にも還元することを試みた。このため、I英国人旅行家の旅と旅行記に関する研究、II英国人の旅と旅行記に関するフィールドワーク的研究、III旅のルートの地図・衛星画像上での復原、IV19世紀のアジアを描く英国人の旅行記文献目録編纂という枠組みで研究を進めた。Iでは、このような研究の出発点となるテキストの翻訳に力点を置く研究と、それ以外の理論的研究に分け、前者については最も重要かつ代表的な作品と目されるJourneys in Persia and Kurdistanについてそれを行い、後者については、最重要人物であるイザベラ・バードやその他の人々の日本・ペルシャ・チベット・シベリアへの旅と旅行記を対象に研究した。IIについては、イザベラ・バードの第IV期の作品であるJourneys in Persia and Kurdistanと、第V期の作品であるKorea & Her NeighboursおよびThe Yangtze Valley and Beyondを対象とし、このような研究が不可欠であり、旅行記の新しい読み方になることを明示した。またツイン・タイム・トラベル(Twin Time Travel)という新しい旅の形の重要性を提示し、社会的関心を惹起した。IIIでは縮尺10万分の1という従来例のない精度でバードの揚子江流域の旅のルートを復原すると共に、この種の研究に衛星画像の分析を生かすことができる可能性を西アジアについて示した。また今後の研究に必須の財産となる目録を編纂した(IV)。