著者
山本 隆
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-8, 1999-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
6

食物を食べておいしいと思ったりまずいと思うことは日常誰もが経験する.本稿では, おいしさ発現にもっとも重要な感覚要素である味覚に焦点をしぼり, 末梢受容機構から中枢での情報処理様式を概説したあと, どのような脳内プロセスを経ておいしい・まずいといった感情を生むのかを最近の神経科学的実験結果をもとに考えてみたい.
著者
山本 真也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR ANIMAL PSYCHOLOGY
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.63-71, 2017 (Released:2017-12-18)
参考文献数
55

Recent studies have revealed similarities and differences among hominids: humans, chimpanzees and bonobos. Cooperation is one of the human hallmarks, but its evolutionary basis can be found both in chimpanzees and bonobos. Comparison among the three evolutionary closest relatives would tell us about how cooperative society evolved. For this purpose, food sharing is an ideal target behavior to examine, since it is a typical cooperative behavior and prevails in the three hominids. The author has observed food sharing events among wild bonobos in Wamba, Democratic Republic of Congo. This data depicts several features of bonobos' food sharing that cannot be seen in chimpanzees. Bonobos often share plant food, which can often be obtained without any cooperation or specialized skills, sometimes even when the same food items are abundant and easily available at the sites. Bonobo recipients may beg to strengthen social bonding. Frequent plant-food sharing among bonobos may shed light on the evolution of courtesy food sharing which may be seen only in humans and bonobos.
著者
山本 哲也 吉本 潤一郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-040, (Released:2021-09-10)
参考文献数
30

機械学習は、近年注目を集めている人工知能技術の一分野であり、問題に対して最適な解決策に到達するための方法やパラメータを自動的に決定する計算戦略である。このアプローチでは、多次元データセットに内在する規則性を発見することによって、個人の状態に焦点を当てた予測モデルを構築することができる。そのため、認知行動療法をはじめとした臨床実践において、アセスメントの効率化・精緻化や、最適な介入方法の選定に寄与する可能性がある。そこで本論文では、まず機械学習アプローチの枠組みや、統計学との違い、そしてその特長を概観する。加えて、これまでのメンタルヘルス領域において、機械学習アプローチが適用されている主な研究テーマを整理したうえで、臨床心理学および認知行動療法研究に寄与しうる活用例を紹介する。最後に、機械学習アプローチの限界に触れながら、今後の応用可能性について論じる。
著者
青山 佐喜子 片山 実圭子 清原 実穂 山本 由喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2006 (Released:2006-09-07)

【目的】食品の抗酸化活性は、食品の品質劣化の防御ばかりでなく、生体の各種疾患の予防・治療に対しても有効性が期待されている。ネギ属野菜類についても、その機能性のひとつに抗酸化性があり、特にニンニクやタマネギについては多くの研究報告がある。一方、ネギ類は多くの種類が食用とされているが、その抗酸化活性についての研究は少ない。そこで本研究では、青ネギ(葉ネギ)、白ネギ(根深ネギ)と、白ネギと同様に根深ネギの一種である赤ネギについて、抗酸化活性と抗酸化成分を測定して比較した。【方法】抗酸化活性の測定には、ラジカル消去能を測定するTEAC法(Trolox equivalent antioxidant capacity)と、還元力を測定するFRAP法(Ferric reducing antioxidant power)を用いた。抗酸化成分はフラボノイド、アスコルビン酸、アントシアニンを測定した。フラボノイドとアスコルビン酸はHPLCにより、アントシアニンは比色法により測定した。【結果】TEAC、FRAPはともに、3種類のネギ類のうち赤ネギが最も高かった。青ネギと白ネギの抗酸化活性を比べると青ネギのほうが高く、青ネギのTEAC、FRAPは白ネギのそれぞれ約4倍、2倍であった。抗酸化成分のうちフラボノイド類は3種類のネギ類いずれもからケルセチンとケンフェロールが認められた。青ネギからはケンフェロールが多く、赤ネギからはケルセチンが多く認められた。総フラボノイド量は青ネギ、白ネギ、赤ネギで約8:1:17の割合で、赤ネギに最も多く、白ネギ中には最も少なかった。また、青ネギにはアスコルビン酸が多く、白ネギの約4倍含まれていた。さらに、赤ネギからはアントシアニンが検出されたが、青ネギ、白ネギからは検出されなかった。
著者
佐藤 智文 平野 智紀 山本 良太 石橋 純一郎 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46094, (Released:2022-09-27)
参考文献数
7

本研究の目的は,GIGA スクール構想による1人1台端末整備直後におけるICT 活用の促進要因を明らかにすることである.川崎市内の小学校教員(N=997)を対象として,教員の年代,GIGAスクール構想推進講師(GSL)担当,ICT 活用歴,GIGA 以前からICT を活用していたこと,ICT活用に対する自信,がGIGA 後のICT 活用に対する認識に及ぼす影響を検討した.分析の結果から,GIGA 後のICT 活用には,「年次の若さ」「GIGA 以前のICT 活用」「自信」が有効であること,ICT 活用歴の長さだけではGIGA 後のICT 活用には寄与しないこと,年代の高い教員においてICT活用への自信を持つことの効果が高いこと,が示唆された.
著者
山本 優一 石川 陽介
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.17-21, 2018-05-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
14
被引用文献数
10 6

2015年に大阪府内においてバラ科樹木の害虫として世界的に知られているクビアカツヤカミキリ(Aromia bungii)が発見された。そこで,2015年から2017年に大阪府域において本種の宿主であるバラ科樹木を対象に被害状況を調査した。調査地において被害木は年々増加し,いくつかの被害木はおそらく本種の加害が原因で枯死した。サクラにおいては根元周が大きな木ほど被害を受けていた。一方で,同じ被害程度のサクラを根元周別に比較すると,大きな木ほど樹勢への影響を受けにくく,小さな木ほど枯損しやすい傾向にあった。被害木の被害部位の最高地上高は,大部分の被害木が地上から 2 mより低かった。また,被害を受けてからの年数が経過した被害木ほど被害部位の最高地上高は高かった。
著者
野々垣 政志 阪井 裕一 山本 満
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11764, (Released:2020-09-03)
参考文献数
15

【目的】重症熱傷受傷後に早期から理学療法を行い,退院できた幼児を経験したので報告する。【症例】2 歳の男児,重症熱傷に対し人工呼吸管理下に治療を開始した。熱傷面積は体表の72% で,頸部・体幹・右上腕は全周性にⅢ度熱傷であった。入院後5 日目より理学療法を開始し,気管挿管中は鎮痛下で関節可動域練習を行った。抜管後,関節可動域練習や歩行練習を実施したが,本人が痛いと拒否するため介入に難渋した。また,筋力低下により基本動作には重度の介助を要した。入院後103 日目以降,熱傷の軽快とともに歩行練習等を行えるようになり,運動機能は急速に回復し,152 日目に退院した。関節可動域は全周性にⅢ度熱傷であった部位以外には制限を認めず,運動機能は屋外歩行が可能となった。【結語】2 歳の重症熱傷児でも人工呼吸管理中の鎮痛下より関節可動域練習を行い,熱傷の時期に応じた運動療法を施行することで,屋外歩行が可能となるまで回復した。
著者
高橋 邦明 石井 正光 浅井 芳江 濱田 稔夫 山本 巌
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.1166-1173, 1984 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

種々の西洋医学的治療に抵抗した, 比較的病歴の長い難治性の乾癬患者33例 (尋常性乾癬26例, 乾癬性紅皮症2例, 関節症性乾癬2例) に対し, 乾癬の病態を, 表皮turn overの亢進に基づく慢性増殖性炎症, すなわち於血を基本とした慢性炎症と考え, 駆於血剤である桂枝茯苓丸 (便秘傾向の強い場合には大黄牡丹皮湯) に慢性炎症を抑制する温清飲を合方して長期間投与した結果, 著効16例 (49%), 有効10例 (30%), 無効7例 (21%), 悪化0で, 有効率79%と非常に優れた効果を認めた。副作用もみられず, 今後乾癬の治療法の1つとして極めて有用性が高いと考えられる。
著者
山本 清
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.97-118, 2020-07-15 (Released:2021-08-12)
参考文献数
31

国際的な成果主義・業績主義の流れの中で,教員の人事評価がいかなる背景と理論を持っているか,また,どの程度我が国で適用されているかを個別大学レベルで分析した.得られた結果は,成果志向・業績志向は政府・文科省の大学改革により急速に強まり,人事評価の結果を処遇に反映させることも浸透しつつあることである.この背景には,NPMの成果主義とスタッフの業績に応じた報酬を与えることでモチベーションが高まるとする期待理論がある.しかし,大学教員の教育・研究・社会貢献の成果を同精度で組織への寄与を含め測定することは,容易なことではない.したがって,人事評価の展開に際しても,業績測定の改善や教員の動機づけ要素並びに報酬の財源などに注意を払う必要があろう.
著者
池尻 良平 山本 良太 中野 生子 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45057, (Released:2021-11-02)
参考文献数
6

本研究では,ICT を利用した,ジグソー法のエキスパート活動における知見の同期的収集が,教師のモニタリングと介入にどのような影響を与えるかを,机間巡視のみの場合と比較して調査した.その結果,内容を含めた俯瞰的なモニタリング,各専門家グループのキーワードのシェア度合いに関する俯瞰的なモニタリングと各グループ内のシェアを促す介入,普段は優先順位の低い上位層のモニタリングを促す可能性が示された.
著者
山本 哲朗
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.194-204, 2012 (Released:2012-12-10)
参考文献数
14

本稿では、 鍼灸医学の危機を救った石川日出鶴丸の足跡を辿り、 彼の目指した科学的基盤に基づいた鍼灸医学についての考察を行います。 石川先生は、 富山県の出身で、 東京帝国大学を卒業後、 京都帝国大学の天谷教授の下で研究生活に入り、 1908年から4年間、 最先端科学が花開くヨーロッパに留学されます。 主にゲッチンゲン大学のフェルボルン教授の下で研究しますが、 短期間ながら、 ぺテルスブルグ大学のパブロフ教授や英国のスターリング教授、 シェリントン教授なども訪れています。 このヨーロッパでの経験が、 後年の研究発展へとつながるのです。 帰国後は、 京都帝国大学の教授として、 日本の生理学研究を大きく発展させ、 同時に、 鍼灸医学や心理生理学にも生理科学的手法による解析を試みられました。 石川先生は、 神経生理学領域では、 加藤元一教授との論争で有名です。 この論争は、 神経の活動電流が、 麻酔部位で、 減衰して伝導するか(減衰論)、 減衰せずに伝導するか(不減衰論)というもので、 加藤教授が石川先生の愛弟子の一人であったことにより非常な注目を集めました。 京都帝国大学を退官後、 1944年に三重大学医学部の前身である三重県立医学専門学校長として津市に来られ、 翌年には、 大学病院に鍼灸療法科を開設されます。 終戦後、 GHQは、 当時の鍼灸などの伝統医学が、 西洋医学の水準からすると、 科学的根拠に乏しいことから、 「鍼灸禁止令」を考えていました。 先生は、 御自身の研究結果をもとに、 GHQ関係者に鍼灸医学の科学性を説明され、 実際に鍼灸を施術してその効果も体験させ、 鍼灸の存続に貢献されます。 しかし、 この間の過労のためか、 1949年に教授会の席で脳卒中を発症し亡くなられます。 石川先生の遺志は、 弟子の笹川久吾京都大学教授に引き継がれ、 日本鍼灸学会が結成されます。 第1回日本鍼灸学会が1954年に京都大学で開催され、 現在の隆盛へと繋がるわけです。
著者
竹原 卓真 井上 捺稀 山本 ルナ 清水 美沙
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-20-00011, (Released:2021-01-22)
参考文献数
44
被引用文献数
1

Faces with larger eyes and double eyelids are perceived as more attractive than those devoid of these features. Moreover, eye bag makeup has become fashionable among nonprofessional lay young females to enhance the perceived size of their eyes. The majority of research on the influence of the upper eyelids on facial attractiveness has been conducted using artificially generated faces; however, research on facial attractiveness forming eye bag makeup remains unexplored. This study investigated the physical and mental attractiveness of real female faces with single/double eyelids and with/without eye bag makeup. The results indicated that faces with double eyelids were rated as more attractive than those with single eyelids. Faces with eye bag makeup were generally perceived as less attractive than those without them. While this was the case regardless of the type of eyelids for mental attractiveness, eye bag makeup only impacted the faces with double eyelids for physical attractiveness.
著者
小畑 弘己 丑野 毅 高瀬 克範 山本 悦世 高宮 広土 宮ノ下 明大 百原 新 那須 浩郎 宇田津 徹朗 中沢 道彦 中山 誠二 川添 和暁 山崎 純男 安 承模 田中 聡一 VOSTETSOV YU. E. SERGUSHEVA E. A. 佐々木 由香 山田 悟郎 椿坂 恭代
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

日本の考古学において、縄文時代の農耕の存否問題は古くから議論され、今でも論争中の課題である。この混乱の根底には、確実な栽培植物が存在しなかったという研究上の制約があった。我々は、この問題を解決するために、土器中に残る植物種子や昆虫の痕跡(土器圧痕)を検出することで解決しようと考えた。研究期間内に、日本列島の縄文時代~弥生時代171遺跡、海外の新石器時代9遺跡において圧痕調査(約400, 000点の土器)を実施し、多種・多様な栽培植物種子や貯蔵食物害虫(総数552点)を検出した。また、圧痕法の学問的定立のための方法論的整備を行った。その結果、まだ問題点は残るものの、縄文時代の栽培植物の実態と問題点を明らかにすることができた。
著者
佐久間 直緒美 名倉 秀子 山本 茂
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.327-335, 2021 (Released:2021-06-01)
参考文献数
27

文部科学省から『栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育』が2017年3月に交付され、全国で食育が推進されている。本研究は、栄養教諭が行った担任への食育サポートによる効果を検証することを目的とした。対象は児童数約600人、一般級担任(以下、担任)18人の小学校とし、栄養教諭が業務上作成した記録簿の食育に関する項目について、2014年度から3年間を調査した。意欲的に食育に取り組んだ担任数は、2015年度の3人(16.7%)から2016年度の11人(61.1%)と有意に増加した(p<0.01)。異動の無かった12人のうち、食に関する指導実践「有り」の担任数は、2014年度の2人(16.7%)が2016年度に12人(100%)と有意に増加した(p<0.001)。また、同担任の学級残食率2%以下は、2014年度の1人(8.3%)が2016年度に11人(91.7%)と有意に増加した(p<0.001)。栄養教諭が担任に食育サポー トしたことにより、意欲的に食育を行う担任数と食に関する指導実践担任数が増加し、給食の残食率が減少することが明らかになった。
著者
山本 珠美
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.465-473, 1996-12-20
被引用文献数
1

Public Museums, born in modern times, contain two dilemmas. One dilemma is "Who owns a museum?" Generally, a museum forms its collection according to academic elites'value system, so only parts of the public go there. Lately many museums attempt to have various communitiesjoin in planning exhibition for democratization of culture and equality of cultural opportunity. But ironically this causes the crisis of museum identities.The other dilemma is "Is a museum a temple or a forum?" Museological changes transfer "a museum as a temple" into "a museum as a forum" , where visitors analyze the displey while going through the hall. But the general public tend to consider a museum as a temple, where they celebrate the display without critical perspectives. The same dilemmas were seen in the U.S.National Air and Space Museum (NASM) . Froml993 to 1995, the planned Enola=Gay exhibition, commemorating the 50th anniversary of the end of the World War II , provoked rage around the country. "Which owns NASM, academic elites or retired soldiers?" "What is the goal of NASM, education or celebration?" The Enola=Gay controversy throws fundamental problems to American museum world.
著者
中山 昌明 栗山 哲 加藤 尚彦 早川 洋 池田 雅人 寺脇 博之 山本 裕康 横山 啓太郎 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1333-1337, 2001-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

トラネキサム酸 (tranexamic acid: TA) の投与によりCAPD患者の除水量が増加する現象が報告されているが, これを長期間投与した際の除水効果と腹膜機能への影響に関しては不明である. 我々は, 腹膜透過性は正常範囲にあるものの, 臨床的に十分な除水量が得られない3例に対し, 高濃度ブドウ糖透析液を使用する代わりにTAの少量長期間歇投与を試みた (500mg×3days/week, 18か月間). その結果, 全例において除水量の増加が持続して観察された. 少量のフィブリンの析出が-過性に認められることがあったものの, カテーテルトラブルの発生はなかった. 腹膜透過性は, 1例では明らかな変動は認められなかったが, 2例で上昇する傾向を示した. 以上の観察結果より, TAの本投与法は, 腹膜透析患者の除水量増加に対し臨床的に有効であることが示され, 除水不全に対する新たな治療対策となり得る可能性が示唆された. しかしながら, 腹膜機能に与える影響に関しては明らかではなく, さらに検討を重ねる必要がある.