著者
久住 武 久住 真理 羽賀 隆之 渡辺 尚彦 三辺 武幸 浅賀 英世 岡本 途也
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.7-13, 1993-03-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18

【目的】頭痛は「健康成人の約75%が経験したことがある」とする報告にみられるように, 鍼灸臨床の場においてもよく経験する症状である。頭痛に対する鍼灸治療の効果は, 既に多くの報告がある。しかし, 鍼刺激を検査目的で用いた報告は少ない。我々は, 過去15年来, 耳鳴りや頭痛に対して鍼刺激を検査目的に用い, その意義について検討してきた。今回, 耳鼻咽喉科から検査目的で紹介された痛み患者に対し, 痛みが鍼刺激で再現できた例について検討したので報告する。【対象及び方法】昭和57年4月から平成2年10月までの間に, 痛みを主訴として昭和大学病院耳鼻咽喉科から同院東洋医学診療室に依頼されたもののうち, 顔面の痛みを訴えるものを対象とし, 耳鼻科的, 眼科的検査にて異常を認めないことを条件とした。刺鍼はステンレス鍼 (50mm 20号鍼) を用いて, 大後頭神経ブロック点に刺入し, 刺鍼時の痛みとひびき感の関係を観察した。【結果】1) 大後頭神経ブロック点への刺鍼で, 眼の奥や内眼角部にひびき感が生じることを再度確認した。2) 三叉神経痛や原因不明の眼痛として治療されてきた患者の中に, 鍼のひびき感が (1) 痛みの性質と似ている, (2) 部位が一致, (3) 鍼の操作に同期して痛みが再現できるなど, 痛み症状と一致する例がいた。3) 痛みを鍼刺激で再現できた例は, 鍼治療の有効率も高かった。【まとめ】大後頭神経ブロック点への刺鍼は, 眼の奥にひびき感を生じ, この感覚を検査目的として応用することによって, 診断が可能になった例を認めた。このことから, 本法による鍼刺激は痛みの診察に際して, 結果2) (1)~(3) と,結果3) の治療的に意味があることから, 治療手段としても, 観察検査法の1つとしても有用であると考える。
著者
岡本 紗知
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.14-29, 2020

<p>The purpose of this research is to determine how stereotypical views of the sciences and humanities are formed among university students. Thirty undergraduate or graduated students were semi-structurally interviewed, and the collected data were analyzed by the modified grounded-theory approach (M-GTA). The analysis revealed that, prior to the formation of stereotypical views, students first recognized their aptitudes for one of two categories: sciences or humanities. Once they established their aptitudes, they started to recognize those who were in the opposite category. When they encountered "ideal figures" in such categories, they unconsciously extracted some features and regarded them as common features shared among those in such categories. These common characteristics were further interpreted based on their own views and beliefs, which essentially led to forming stereotypical views. This study suggests that the stereotypical views of the sciences and humanities are not universal; they are gradually formed in parallel with students' constant struggle to navigate themselves during countless decisions for academic and career planning.</p>
著者
野﨑 秀正 川瀬 隆千 立元 真 後藤 大士 岩切 祥子 坂邉 夕子 岡本 憲和 Hidemasa NOSAKI Takayuki KAWASE Sin TATSUMOTO Hiroshi GOTO Shoko IWAKIRI Yuko SAKABE Norikazu OKAMOTO 宮崎公立大学人文学部 宮崎公立大学人文学部 宮崎大学 都城新生病院 いわきりこころのクリニック 細見クリニック カリタスの園 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki University Miyakonojo Shinsei Hospital Iwakiri Mental Care Clinic Hosomi Clinic
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-120, 2021-03-10

本研究では、子育て支援サービスを提供する公的相談機関に対する母親の援助要請に焦点を当て、母親の育児に対する感情(育児感情)と信念(母性愛信奉)が、援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼす一連のプロセスを示した仮説モデルを検証することを目的とした。宮崎市内及びその近郊にて就学前の幼児(3 歳以上)の育児に携わる母親1000名に調査協力を依頼した。質問紙が返送され、かつ回答に不備のなかった470 名の回答を分析対象とした。仮説モデルに従い共分散構造分析を行った結果、育児感情及び母性愛信奉から3 つの援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼすいくつかのプロセスが明らかになった。このうち、利益とコストの態度を媒介したプロセスについては、いずれも子どもにとっての利益とコストを媒介したパスが有意であり、母親自身にとっての利益とコストの態度を媒介したパスはいずれも有意ではなかった。これらの結果より、子育ての悩みに関する母親の公的相談機関に対する援助要請については、母親の精神状態の解決に動機づけられているというよりも、その原因となっている子どもの問題を解決させることに動機づけられていることが明らかになった。こうした結果は、公的相談機関に対する母親の援助要請促進を促すには、援助要請が子どもにもたらすポジティブな影響を強調することや子どもと担当職員間の良好な関係づくりなど、子どもに焦点を当てたアプローチが有効になることを示唆した。
著者
岡本 牧子 新垣 学 小野寺 清光 飯塚 悟 宮里 大八
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.19-22, 2021

<p>琉球大学地域協働プロジェクト推進事業「ITワークショップを通じた産学連携教育モデルの構築」の活動の一つとして,コロナ禍における県内でのプログラミング教育の実施に向け,オンライン環境でのプログラミング教育ができる教員養成,大学生メンター養成を目的とし,教員志望学生によるzoomとmicro:bitを用いたプログラミングワークショップを実施した.オンライン学習では,過渡期においてはzoomなどオンラインツールの操作方法の習得も重要であるが,授業の流れと参加者の現在地を俯瞰させることができる紙テキストの活用能力,参加者の回路や作業が確認できる教材開発能力,参加者のレベルを把握し,レベルに応じたブレイクアウトルームの活用能力が指導者の能力として重要であり,これらの能力は,教員志望学生のチームによる数回のワークショップ運営を通して身につけさせることができる.</p>
著者
桜井 伸二 池上 康男 矢部 京之助 岡本 敦 豊島 進太郎
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.143-156, 1990-09-01 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
10 6

Many joint actions are involved in the throwing motion of a fastball pitch; therefore, two dimensional (2-D) procedures are insufficient for analyzing the throwing motion. In this study,three dimensional (3-D) high-speed cinematography was used to record fastball pitches of varsity baseball pitchers. Two small reference sticks were fixed on the hands and forearms of the throwing arm of the subjects to detect their movements.The direct linear transformation (DLT) method was used for 3-D space reconstruction from 2-D images filmed by two from 2-D images filmed by two phase-locked cameras (200 frames/s).The throwing arm has seven degrees of freedom of joint motion except in the fingers; three for the shoulder, one for the elbow, one for the radioulnar, and two for the wrist. Following seven joint angle changes corresponding to all these degrees of freedom were obtained throughout the pitching motion. 1) horizontal abduction/horizontal adduction angle at the shoulder joint, 2) abduction/adduction angle at the shoulder joint, 3) internal rotation/external rotation angle at the shoulder joint, 4) flexion/extension angle at the elbow joint, 5) pronation/supination angle at the radio-ulnar joint (forearm), 6) radial flexion/ulnar flexion angle at the wrist joint, 7) palmar flexion/dorsi flexion angle at the wrist joint. The results showed that horizontal adduction and internal rotation of the shoulder,extension of the elbow, pronation of the forearm, and palmar flexion of the wrist were the important joint actions for fastball pitching in baseball. Preliminary to these motions were motions in the opposite direction; e.g., horizontal abduction and external rotation of the shoulder,flexion of the elbow, supination of the forearm, and dorsi flexion of the wrist were detected.These motions in the opposite direction would be useful to extend the range of the motion in each joint angle. The results also appear to be connected to intrinsic muscle propertios, that greater power can be exerted during shortening of the muscle when it is stretched just before the shortening action.
著者
東海林 幹夫 玉田 潤平 岡本 幸市 高玉 真光 平井 俊策
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.79-84, 1985

傍正中視床, 中脳梗塞の1例を報告した.症例は, 46歳男性で, 1) 動揺する過睡眠, 行動異常.2) 上下方向注視麻痺.3) 動揺する瞳孔散大・不同, 対光反射低下.4) 四肢麻痺 (左>右).両側病的反射.5) 知覚障害.6) 左顔面神経麻痺.7) 尿便失禁.8) 自律神経症状.9) 痴呆.10) 不随意運動を呈した.頭部CT像では両側視床・右中脳に蝶形の限局性低吸収域を認めた.椎骨動脈血管写では, 右脳底交通動脈の閉塞を認め, 傍正中視床・中脳梗塞と診断した.文献的考察を行ない, 傍正中視床・中脳梗塞の特殊性及び, akinetic mutismとの違いを指摘した.
著者
水野 徳美 岡本 学 有泉 誠 野原 聖一 岡田 晃
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.158-164, 1978 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

Shiramine is an isolated mountain village located in Ishikawa prefecture. The study was done to find the relationship of the geographical distribution of marriage on traffic development and other factors. The results were as follows. 1) The rates of marriages between the same villagers about 80% showed little change from 1868 to 1925. After 1926 they decreased slowly, and after 1955 they markedly decreased. 2) The spread of the geographical distribution of marriages took about thirty years after traffic development. And it was almost in parallel with the spread of newspapers and telephones from 1955 to 1965. 3) In Kuwajima district of Shiramine village there is a high rate of marriage between the same villagers, while in Shiramine distrct there is a low rate of marriage between the same villagers. It meant that Shiramine and Kuwajima district people did not marry with each other. But after 1955 when marriages between the same villagers decreased, marriages between the same district residents also decreased rapidly after 1971. The two district people then began to marry with each other after 1971. 4) The geographical distribution of marriage of old traditional well established families expanded earlier than the poor working class.
著者
岡本 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.174, 2006 (Released:2006-09-07)

【目的】本報告ではいくつかの代表的な甘味物質とバレイショデンプンに試料を絞って、添加するバレイショデンプンの濃度が上昇し、ゾルからゲルに移行するとともに、甘味の感じ方がどのように変化するのか、ゲルとゾルを同一条件で調べること目的した。【方法】年齢18から20歳の健康な女子学生26から30名をパネルとし、甘味試料としては、D-グルコース、D-フルクトース、スクロース、D-ソルビトールが用いられた。パネルは、「基準液」と「デンプン添加の甘味試料」を味わって甘味の強さを比較し、評点法で評価した。評点データは、一元配置分散分析後、グループ間の有意差をテューキーの多重比較により検定し、p<0.05を有意とした。統計ソフトはSPSS for Windowsを用いた。【結果】「ゾル群:0.15625_から_2.5%デンプン添加の甘味試料を含む群」では、平均評点はおおむね小さく、これは基準液と甘味強度にあまり差がないことを示している。「ゲル群:5.0から20.0%デンプン添加の甘味試料を含む群」では、平均評点はおおむね大きく、これは基準液と甘味強度の差が大きいことを示している。すなわち、「ゾル群:0.15625から2.5%デンプン添加の甘味試料を含む群」では、甘味が強く感じられ、「ゲル群:5.0から20.0%デンプン添加の甘味試料を含む群」では甘味が弱く感じられるといえよう。また、「ゾル群」と「ゲル群」では、甘味強度に有意差の認められた群間が多かった。これらのことから、甘味試料がゾルからゲルに変化すると粘性や硬さを増すが、それにともない甘味強度が弱くなるのではないかと考えられた。
著者
江木 盛時 黒田 泰弘 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 小谷 穣治 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 志馬 伸朗 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 谷口 巧 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 鶴田 良介 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 土井 研人 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 土井 松幸 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 中田 孝明 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 中根 正樹 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 藤島 清太郎 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 小倉 裕司 細川 直登 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 升田 好樹 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 松嶋 麻子 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 矢田部 智昭 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 安宅 一晃 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井上 茂亮 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 射場 敏明 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 垣花 泰之 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 川崎 達也 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 久志本 成樹 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, 2020
被引用文献数
2

<p>日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。</p>
著者
岡本 淳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48102152, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】当院療養型病棟では非経口栄養患者に半側臥位セミファーラー位姿勢(背上げ30°、足上げ0°)で注入食を行っている。当院の看護側は仰臥位では嘔吐に伴う誤嚥・仙骨部の褥瘡発生の点から半側臥位姿勢を促していた。しかし患者の多くが頚部後屈ずり下がり姿勢となり、肺炎発症を認めた。これはこのポジショニングに原因があると考えた。この仮説をもとにポジショニングを変更することに決定し、頚部後屈を呈す実態と不顕性誤嚥を起こしている現状を調査するとともに、ポジショニング変更前後の頚部後屈角度について検証した。【方法】研究1)非経口栄養患者31名、平均82±9.3歳を対象とし、ベッド注入時の頚部後屈角度、骨盤傾斜角の測定を行い、2011年4月から2012年の6月までの1年2ヶ月分の肺炎回数について調べた。骨盤傾斜角については骨盤傾斜角20°未満(骨盤後傾位)8名、骨盤傾斜角20~30°未満(骨盤後傾位傾向)11名、骨盤傾斜角30°以上(骨盤中間位)12名の3群に分けた。頚部後屈角度については非頚部後屈9名、頚部後屈20°未満(軽度後屈)5名、頚部後屈20°以上40°未満(中等度後屈)11名、頚部後屈40°以上(重度後屈)6名の4群に分けた。骨盤傾斜角は、恥骨結合と両上後腸骨棘を結んだ線と腰椎水平線の角度の測定を行った。骨盤傾斜角3群と頚部後屈、頚部後屈4群と肺炎回数について、統計処理は多重比較検定Tukey-Kramer法を用いた。研究2)研究1の結果に基づき、半側臥位セミファーラー位の足上げ角度を10°に設定、肩甲帯後退、骨盤後傾角の修正を行い、1ヶ月後に頚部後屈角度の測定を行った。研究1の非経口栄養の対象者の中で頚部後屈患者22名中10名が退院となったため、12名(軽度後屈2名、中等度後屈6名、重度後屈4名)平均83±10.7歳を対象とした。ポジショニング変更前後の頚部後屈角度の比較を行い、統計処理は対応のあるt検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の目的、方法、趣旨を口頭にて説明し、同意を得て実施した。【結果】研究1)頚部後屈角度は骨盤中間位で平均3.3±6.5°、骨盤後傾位傾向で24±9.4°、骨盤後傾位で38±9.9°で中間位と後傾位傾向、中間位と後傾位、後傾位傾向と後傾位(P<0.01)で有意差を認めた。肺炎回数は非頚部後屈で平均1.6±1.1回、軽度後屈で5.2±0.9回、中等度後屈で5.7±2.3回、重度後屈で5.6±4.4回で非頚部後屈と中等度後屈、非頚部後屈と重度後屈(P<0.05)で有意差を認めた。研究2)ポジショニング前後の頚部後屈患者12名の頚部後屈角度の変化は変更前で平均30.4±12.8°、変更後で18.3p±9.3°であり有意差を認めた(P<0.01)。【考察】骨盤後傾度により頚部後屈が増加したのは運動連鎖により胸椎後弯位をとり、下位頚椎屈曲位、上位頚椎伸展位をとるためと考える。また肺炎回数は頚部後屈20°以上の中等度・重度頚部後屈群で増加を認めた。これにより喉頭部が拡大し、不顕性誤嚥の高リスクにつながったと推察された。一般的にファーラー位は仰臥位で行われ、足上げは腹筋群の緊張を解き、上半身がずり下がらないための援助技術として行われている。しかし当院では30°半側臥位は殿筋部で支持して、仙骨部と大転子部を除圧する目的で行っている。しかし半側臥位では上半身のずれを招き、ベッド上側の肩甲帯が後退し、上位頚椎回旋・伸展となる傾向を認めた。また足上げ0°は背上げに伴いハムストリングスが引っ張られ、膝関節が屈曲し骨盤帯が後方に倒れてしまう。ポジショニング変更1ヶ月後においては頚部後屈患者の後屈角度が平均18.3p±9.3°に改善した。頚部後屈軽減に至った理由としては足上げ角度を設定し、骨盤後傾角の修正を行ったことで胸椎後弯方向への運動連鎖が減少し、頚部前屈姿勢へとつながったと考える。これにより不顕性誤嚥のリスク軽減につながった。これらは半側臥位セミファーラー位姿勢が原因であったと示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究では当院療養型病棟の入院患者における頚部後屈を呈す実態と頚部後屈がもたらす不顕性誤嚥のリスクについて客観的数値を示した。今回不良なポジショニングにより、肺炎を助長してしまう現状を危惧するとともに、長期臥床にて全身状態が悪化し離床が困難な患者に対して、注入時のポジショニングを調整することが重要となり、頚部後屈予防、不顕性誤嚥のリスク軽減につながっていくと示唆された。
著者
岡本 佳之 高柳 毅 釣谷 浩之 佐山 利彦 上杉 健太朗 星野 真人 長瀬 達則 森 孝男
出版者
公益財団法人 高輝度光科学研究センター
雑誌
SPring-8/SACLA利用研究成果集 (ISSN:21876886)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.497-501, 2015-07-21 (Released:2021-01-15)
参考文献数
3

SPring-8における放射光光源を利用したX線マイクロCT装置(SP-μCT)を用い、フリップチップのSn-Ag-Cu鉛フリーはんだ接合部を対象として、デジタル画像相関法による、ひずみ分布の非破壊計測の可能性について検証を行った。ひずみ計測の前段階として、変位ベクトルの粗探索を行った結果、Ag3Sn相のような特徴点の周囲では、比較的高い精度で、ひずみ計測を行うことができる見通しが得られた。今後、追加の実験を行うことでマイクロ接合部における新たな信頼性手法の開発が期待できる。
著者
北澤 純 高橋 顕雅 西野 万由美 岡本 明子 宮元 伸篤 新川 由基 黒澤 学
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.136-141, 2018

<p><b>背景</b> : 外陰 Paget 病は外陰悪性腫瘍の 1~2%とまれな腫瘍である. 今回, 擦過細胞診にて外陰 Paget 病を推定しえた 2 例を経験したため報告する.</p><p><b>症例</b> : 症例 1 ; 82 歳, 女性. 2 年前より外陰部掻痒感, 発赤があり, 症状が増悪したため当院へ紹介され受診した. 外陰部の擦過細胞診では, きれいな背景に孤立性に N/C 比が高くクロマチン微細な小型細胞が散見された. 核小体が複数みられ, 軽度核形不整を伴う細胞も認められた. 集塊はみられなかったが, 相互封入像が認められた.</p><p>症例 2 ; 79 歳, 女性. 近医で子宮筋腫を認めたため, 当院へ紹介され受診した. 当科受診時, 外陰部に広範な発赤を伴う皮膚肥厚を認めた. 外陰部の擦過細胞診では, きれいな背景に N/C 比の高い小型細胞が孤立散在性に認められ, クロマチンは微細で核小体が目立っていた. 平面的な小集塊も 1 ヵ所あり, 細胞は N/C 比が高く, 核小体が目立ち, クロマチンは微細だった.</p><p><b>結論</b> : 外陰部病変の擦過細胞診で異型のある腺系細胞が認められたら, Paget 病も鑑別に入れた精査が必要である. また, 外陰擦過細胞診にてブラシを用いることで細胞採取数が増加し, 診断精度が向上する可能性が示唆された.</p>