著者
吉仲 賢晴 福原 知子 長谷川 貴洋 岩崎 訓 安部 郁夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.340-346, 2008 (Released:2009-03-26)
参考文献数
20

廃木材のリサイクルが重要視されている中,生産量が増加している新たな木質系素材としてファルカタに着目し,炭化物を製造してそのトリクロロエチレン (TCE) 吸着性能を評価した。ファルカタを様々な温度で炭化した結果,800℃炭化時にヨウ素吸着性能が極大となった。また,BET比表面積や細孔容積は900℃炭化で最大となり,それぞれ444m2 g−1, 0.196mL g−1であった。また,TCE吸着性能は平均細孔径が最も小さくなった800℃炭化物で最大となり,市販活性炭よりも高い吸着性能を示した。市販活性炭に比べると比表面積や細孔容積の値で劣るファルカタ炭化物が市販活性炭よりもTCE吸着性能が高くなったのは,TCEの吸着に適した径の細孔が多かったためだと考えられ,比表面積や細孔容積の値だけでは,溶液中に低濃度で存在する有機化合物の吸着量を推定することは困難であることが確認された。これらの結果より,ファルカタから製造した炭化物はTCE汚染地下水の浄化に有効な吸着剤になりうることが示された。
著者
永田 裕保 山本 照子 岩崎 万喜子 反橋 由佳 田中 栄二 川上 正良 高田 健治 作田 守
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.598-605, 1994-10
被引用文献数
19

1978年4月から1992年3月までの過去15年間に大阪大学歯学部附属病院矯正科で治療を開始した, 口唇裂口蓋裂を除く矯正患者4, 628名(男子1, 622名, 女子3, 006名)を対象とし, 統計的観察を行い以下の結果を得た.1.大部分の患者は半径20 km以内から来院しており, 大阪府下居住者であった.2.男女比は男子 : 女子=1 : 1.9であり年度による大きな変動はなかったが, 9歳以降年齢が高くなるにつれて女子の割合が上昇した.3.治療開始時の年齢は7∿12歳が大半を占めた.近年13歳以上の割合が増加を示した.咬合発育段階では, IIIB期が最も多かった.4.各種不正咬合の分布状態は, 男子では反対咬合の割合が最も高かった.一方, 女子では, 叢生の割合が最も高かった.男女ともに年々反対咬合の割合が低下し, 叢生の割合が上昇した.5.Angle分類については, 男女ともにAngle I級が最も多く, 骨格性分類では, 男子で骨格性3級, 女子で骨格性1級が最も多かった.咬合発育段階別の骨格性分類では, 骨格性2級はIIC期からIIIA期にかけて増加を示し, 骨格性3級はIIC期とIVC期に多かった.IIIC期からIVC期におけるAngleの分類と骨格性分類との関係について, 男女ともAngle I級では骨格性1級, Angle II級では骨格性2級, Angle III級では骨格性3級が多く認められた.
著者
島村 英紀 SELLEVOLL Ma EINARSSON Pa STEFANSSON R 末広 潔 金沢 敏彦 塩原 肇 RAGNAR Stefansson MARKVARD Sellevoll PALL Einarsson MARKVARD Sel PALL Einarss RAGNAR Stefa 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

大西洋中央海嶺は、いまプレ-トが生まれている場所である。アイスランドは、その海底山脈がたまたま島になったところである。海嶺については、いままで精密に地下構造が調べられたり、地震活動が詳しく調べられたことはなかった。たとえば地震活動については、何千キロメ-トルも離れた陸から中央海嶺に起きる地震を研究するのが唯一の手段だった。一方、日本の海底地震計は小型軽量で高感度に作られており、数十台という多数の海底地震計を投入する結果得られる、従来よりもはるかに精密な微小地震活動の研究と、精密な三次元地下構造の透視など、地下構造の研究についても、他国をリ-ドしている。このように中央海嶺付近は、その地球科学的な重要性にもかかわらず、いまだ、精密な観測のメスがはいっていなかった。今回の研究は中央海嶺上にあるアイスランドという希有な場を足がかりにして、世界でも初めて成功裏に行われた海底地震研究である。大量のデ-タが得られたために現在まだ解析が続いているが、画期的な成果が得られつつある。具体的には1990、1991の両年とも日本から約20台という大量の海底地震計を運び、アイスランド近海で高感度の海底地震群列観測を行った。同時にアイスランド陸上には臨時に十数点の高感度地震観測点を設置して海と陸、双方から地震を追った。1990年夏には、アイスランドから南西に伸びるレイキャヌス海嶺で長さ150キロ、幅40キロにわたる海域に18台の海底地震計を展開した。観測にはアイスランド気象庁とレイキャビック大学の全面的な協力が得られ、また海底地震計の設置と回収にはアイスランド側の全面的な協力を得て、同国の海上保安庁の船が借りられた。また設置した海底地震計の近くでは、同国のトロ-ル漁業を一カ月の観測期間中、遠慮してもらった。このため海底地震計すべてを順調に回収出来た。この観測の結果、微小地震は海嶺軸に沿ってだけ分布しており、その幅はわずか5キロメ-トル以下であることが分かった。海嶺の両側では全く地震は発生していないことも分かった。そして微小地震は海嶺軸に沿って一様に分布しているのではなく、地震活動の高いところと低いところが発見され、しかも過去の海底火山地震活動との関連が明らかになった。一方、微小地震の震源の深さは、海嶺軸から鉛直下方に伸びているのが分かり、しかもその深さは地下12キロメ-トルまで伸びていることが分かった。従行、海嶺軸下でプレ-トを生むマグマ活動がどのくらいの「根」の深さを持っているかはナゾであり、漠然と2、3キロメ-トルに違いないと考えられていたが、今回の研究によって、海嶺の「根」はずっと深いことが初めて明らかにされたことになる。また一カ月の地震観測期間中、二度にわたって群発地震が捉えられ、そのいずれもがごく細い煙突状の筒の中を震源が移動したことも確かめられた。このような海嶺の群発地震の詳細が捉えられたのも世界で初めてである。1991年にはアイスランドの反対側、北側で海底地震観測を行った。この海域は新しいプレ-トを生んでいる大西洋中央海嶺が、複雑で百キロメ-トル以上もの幅にひろがったトランスフォ-ム断層をなしているところで、世界的にも地球科学の大きなナゾを残している場所である。このアイスランド北側から北大西洋にかけての大西洋中央海嶺で21台の海底地震計と約15台の陸上地震観測点が連携した微小地震観測に成功した。全ての地震計は無事に回収された。また、地下構造を研究するための人工地震実験も行って、従来ナゾだった地下構造を調査した。デ-タは現在、解析中である。この両年度の研究で、従来の地震観測では把握することのできなかったアイスランド周辺の大西洋中央海嶺で何百個という微小地震を捉えることが出来て、地震活動がはじめて精密に分かり、また未解明だった地下構造が知られた。捉えた地震のマグニチュ-ドは1とか2とかの微小地震である。また、アイスランドの南北で明瞭に違う大西洋中央海嶺のそれぞれの活動について、世界でも初めての詳細な知見を得ることが出来た。
著者
西村 可明 田畑 理一 岩崎 一郎 雲 和広 杉浦 史和 塩原 俊彦 荒井 信雄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,ロシアにおいて市場経済化が開始されて十年以上経過した時点で,既に市場経済が成立したといえるのかどうか,経済成長の中長期的展望はいかなるものかについて,経済学的に正確な見解を提示することにある。そのために,(1)1992年以降のロシア経済の発展動向の分析,(2)経済改革の進捗状況の分析,(3)マクロ経済の推移と展望,(4)企業・ミクロ経済制度の考察の課題に,研究分担者・協力者による共同研究を通じて応えようとするものである。我々のある程度結論的な見解は,次の通りである。すなわち,(1)ロシア経済は1992年以降外部から移植された市場経済制度にもとづく経済活動を通じて、持続的な経済成長が確保されるようになっていることから,基本的には市場経済が成立したと見なしうること,(2)その事はミクロレベルでは企業のコーポレートガバナンスの形成によっても裏付けられること,(3)但し金融市場の整備は遅れていること,(4)経済改革の動向は一義的に分明ではなく,自由経済への接近と国家資本主 義的動きとが錯綜していること,(5)ロシア経済は長期的には人口減少の問題を抱えているが,独自のイノベーションなど技術革新が無くても,先進国からの平均的技術の輸入によってキャッチアップしながら成長を続ける巨大な可能性があることの5点に要約できる。この様な見解は,我々の研究成果の中で提示されておりそれは,大別すれば,(1)ロシア・マクロ経済の発展動向と見通しに関するもの,(2)ロシアにおける経済改革の動向に関するもの,(3)ロシアにおける経済体制の現状に関するもの,(4)ロシア企業・金融機関の制度的・実証的分析にかかわるもの,(5)その他に分類することができる。
著者
石川 昇 前田 克彦 亀井 修 岩崎 誠司 田邊 玲奈 木俣 美樹男 金子 俊郎
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.研究代表者、研究分担者、地域の博物館等職員から構成する研究協議会を設置した。博物館・大学に蓄積されている環境学習に関する学習資源(情報・機器)と地域の環境課題について検討を行い、カリキュラムの研究開発、実践方法、評価について協議した。2.環境学習カリキュラムの実施モデル地域において、地域の博物館等職員と学校教員が協力しワーキンググループを設け、継続的に環境学習カリキュラムの開発・運営を行った。3.研究代表者・研究分担者は、博物館・大学のもつ学習資源(研究や教育普及活動の蓄積・情報・機材)を検討し、「総合的な学習の時間」で活用可能な環境学習カリキュラム(教材・プログラム)を開発した。児童・生徒の環境観を形成する環境学習カリキュラムとして研究代表者・研究分担者の専門領域から水、土壌、地形、気象、地質、植物・動物、民俗、美術を取り上げ、組み合わせることで地域の環境を総合的に理解できるカリキュラムの開発に努めた。4.研究代表者、研究分担者は博物館等を中心に5地域の学芸員・研究者・教育者等と共に学習方法を学校の「総合的な学習」等で試行を重ねることにより実践的に研究開発し、地域の環境を学ぶ教材、教具などを成果物として制作した。研究開発に当たっては、(1)主に環境の調査、資料整理と考察、成果の発表方法、(2)ワークショップの中で参加者が共有する方法、(3)多機関の継続的な連携・プログラム開発などに焦点をあてて開発した。
著者
岩崎 篤 桑原 秀剛 轟 章 杉谷 恒也
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会関東支部総会講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2004, no.10, pp.207-208, 2004-03-03

This research is about a statistical diagnostic method for a structural health monitoring which is applicable to existing structures from the present moment. In this method, structural condition is statistically diagnosed by change of a response surface which is regression model of sensor's outputs. Change of response surface is statistically tested with F-test. In the F-test, a threshold value of normal/troubled condition is simply decided from a theoretical F-probability distribution. Therefore, this diagnostic method only requires data of intact condition and does not require the complicated modeling and information of troubled condition. To confirm the effectiveness of the presented method, health monitoring of jet fan is conducted. Load cells are mounted to a supporting system of the jet fan. Response surface is calculated from vibration data measured by the load cells. As a result, structural condition of the jet fan is successfully diagnosed with the method.
著者
宮岡 礼子 大仁田 義裕 小谷 元子 山田 光太郎 岩崎 克則 梶原 健司 中屋敷 厚 長友 康行 佐々木 武 岩崎 克則 大津 幸男 梶原 健司 長友 康行 中屋敷 厚 山田 光太郎 二木 昭人 マーティン ゲスト ウェイン ラスマン 庄田 敏宏 入谷 寛 石川 剛郎 梅原 雅顕 川久保 哲 田丸 博士 藤岡 敦 松浦 望 西納 武男
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

等径超曲面の分類問題の大部分を解決し,運動量写像で表現することにより,可積分系理論との関連性を根拠づけた.特異点をもつ曲面の基礎理論を進展させ,種々の局所・大域理論を明らかにし,ルジャンドル写像を用いた新しい視点を開発した.リーマン・ヒルベルト対応を介してパンルヴェ方程式の力学系を研究し,カオス性の観点を開拓した.高種数Gromov-Witten理論のモジュラー性,ミラー対称性を論じ,また量子コホモロジーから得られる正則微分をポテンシャルにもつ曲面の構成を通じて,tt*幾何に貢献した.
著者
四日市 章 河内 清彦 園山 繁樹 長崎 勤 中村 満紀男 岩崎 信明 宮本 信也 安藤 隆男 安藤 隆男 前川 久男 宮本 信也 竹田 一則 柿澤 敏文 藤田 晃之 結城 俊哉 野呂 文行 大六 一志 米田 宏樹 岡崎 慎治 東原 文子 坂尻 千恵
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

研究成果の概要 : インクルーシブ教育を理論的・実践的両側面から捉え、国内外の障害に関する理念・教育制度の展開等について歴史的に解明するとともに、特定地域の幼児・親・教師を対象として、障害のある子どもたちのスクリーニング評価の方法の開発とその後の支援について、長期的な研究による成果を得た。
著者
大月 康弘 加藤 博 坂内 徳明 中島 由美 齊藤 寛海 立石 博高 長澤 栄治 大稔 哲也 三沢 伸生 亀長 洋子 堀井 優 竹中 克行 松木 栄三 三浦 徹 栗原 尚子 臼杵 陽 勝田 由美 黒木 英充 堀内 正樹 岩崎 えり奈 青山 弘之 飯田 巳貴
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

地中海世界の歴史において人びとの活動の重要拠点となった「島嶼」に注目し、自然・生態環境に規定された人々の生活・経済空間としてのマイクロエコロジー圏、および当該マイクロエコロジー圏が対外世界と切り結んだ経済社会ネットワークの構造分析を行った。政治的、人為的に設定され認知されてきた「地域」「海域」概念、および歴史的統一体としての地中海世界の存在論にも批判的検討を加えた。
著者
岩崎 薫 名久井 忠 早川 政市
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.418-423, 0000
被引用文献数
1

トウモロコシサイレージの原料が被霜した場合,サイレージの発酵品質,飼料価値,圃場損失にどのような影響を及ぼすかについて検討した。供試品種は交8号,ホクユウ,P3715で,被霜の程度は軽微なものは2〜3回,強いものは5〜14回であった。軽微な霜を被ると植物体の上部1/3程度が脱色し,強霜を被ると全体が脱色した。また,被霜により,サイレージの水分,粗蛋白質,単少糖が減少した。サイレージの発酵品質は,強霜を被ると総酸が顕著に減少し,その結果pHが4.5〜5.3に上昇した。粗蛋白質消化率は被霜回数が増加すると共に低下し,DCP含量も同様に低下した。一方,乾物消化率,TDN含量は被霜しないものと同等か,やや低い値を示した。ハーベスター収穫による圃場損失は被霜により増加した。以上の結果,良質なサイレージ原料を得るためには,2〜3回の降霜後にすみやかに収穫することが望ましいと推察された。
著者
長谷部 文雄 塩谷 雅人 藤原 正智 西 憲敬 柴田 隆 岩崎 俊樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

熱帯対流圏界層(TTL)内脱水過程を解明し、熱帯成層圏水蒸気の長期トレンドを高精度ゾンデ観測により検出するために、TTL水蒸気量と水平移流に伴う大気の温度履歴との対応を、同一大気塊の複数回観測(match観測)により明らかにすることが本課題の特徴である。これまで蓄積してきた観測データから、ゾンデ観測された水蒸気混合比と移流する大気塊の経験する最小飽和水蒸気混合比との間には、観測点の立地条件、温位高度、季節、ENSOなどの気象条件に特有の脱水効率依存性が見出された。また、個々のゾンデ観測ごとに様々な高度で描かれた後方流跡線により大気塊の起源を求めたところ、相対湿度のジャンプが観測された高度の上下で流跡線が大きく配置を変える例が見出された。この結果は、ゾンデ観測された個々の大気塊ごとに、その大気質の変遷を大気塊の起源と対応させて議論することが可能であることを示す客観的根拠となり、水蒸気matchの信頼性を担保する事実と考えられる。個々の水蒸気分布の特徴をライダー観測された巻雲粒子の存在と対応させたところ、両者に良い対応の認められる例が見出された。これらの結果は、独自に開催した国際研究集会やアメリカ気象学会中層大気会議などの国際会議で発表し、投稿論文を準備中である。米国の予算削減に伴いTC4が中米に場を代えて実施されたため、TC4との同時観測は実現しなかったが、我々の観測データは人工衛星データの検証においても大いに貢献している。さらに、今後の発展を展望した試みとして、Lymana水蒸気計などの飛揚も行った。また、GCMに全球解析場や観測データを同化することにより流跡線解析を精密化する試みを開始した。こうした活動は、熱帯上部対流圏・下部成層圏における水蒸気の長期モニタリングの継続の重要性とともに、脱水過程に関する研究の発展の方向性を示すものである。
著者
藤田 統 加藤 宏 牧野 順四郎 岩崎 庸男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

行動の個体差の原因と形成過程を知るために、我々の研究室で選択交配により作り上げた情動反応性に関する近交系ラット2系統(Tsukuba情動系ラット)および活動性に関する近交系マウス2系統等を用いて、様々な行動遺伝学的、生理生化学的研究を行った。また、Tsukuba情動系ラットを野外フィールドにおいて自然繁殖させ、生態学的研究を行った。1.Tsukuba情動系ラット(THE系とTLE系)のP_1、P_2、F_1、F_2、B_1、B_2を用いてランウェイ・テストの諸測度について古典的遺伝分析を行い、それぞれの遺伝構築を検討したところ、例えば、選択指標である通過区画数には、♀では優勢効果のない中間遺伝が、♂では高情動側への指向優勢が見いだされた。また、各測度間の遺伝相関、諸測度の遺伝率、遺伝子座の推定値を求めたところ、遺伝子座の最小推定値は♀で2〜4、♂で2〜3であった。2.Tsukuba情動系ラットの脳内生化学物質を定量したところ、例えば視床下部のAD濃度がTLEの方がTHEより高いなど、両系の脳内モノアミンおよび代謝産物濃度に様々の生化学的差異が見いだされた。3.Tsukuba情動系ラットのシェルター付きオープンフィールド・両端部屋付き直線走路・I迷路における諸行動、ホーディング行動、穴掘り行動、攻撃行動等が研究され、両系の行動上の差異が比較・検討された。4.Tsukuba情動系ラットの味覚嫌悪学習が、その習得、把持、消去、外部刺激の効果に関して研究された。消去において系統差が見られた。5.ランウェイ、オープンフィールド、I迷路におけるラットとマウスの諸行動を主成分分折して、主因子を抽出した。6.野外フィールドでのTsukuba情動系ラットの性行動、社会行動、日周リズム等が研究され、個体数の推移も分析された。また、野外フィールド育ちによる行動変容についても研究された。
著者
成田 龍一 岩崎 稔 長 志珠絵 佐藤 泉 鳥羽 耕史 水溜 真由美 上野 千鶴子 戸邉 秀明
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本科学研究費補助金にかかわる、本年度の研究成果は、これまで収集してきた「東京南部史料」の分析と、その歴史的な位置づけを集約した『現代思想』臨時増刊「戦後民衆精神史」にまとめられている。同誌は、2007年12月に刊行された。ここには、研究協力者(池上善彦、『現代思想』編集長)の多大の協力がある。研究代表者および、研究分担者、研究協力者による成果は、以下のとおりである。研究協力者の道場親信(東京外国語大学講師)「下丸子文化集団とその時代」「工作者・江島寛」、研究協力者・岩崎稔「詩と労働のあいだ」。「討議戦後民衆精神史」に、成田龍一(研究代表者)、鳥羽耕史(研究分担者)、道場が参加した。さらに、道場による「東京南部文化運動年表」が付された。そのほか、『現代思想』「戦後民衆精神史」には、浜賀知彦氏の所蔵にかかわる1950年代のサークル誌である、『油さし』『いぶき』『たんぽぽ詩集』などの分析が寄稿されている。これらは、池上、岩崎、道場が主宰する研究会での成果の反映である。『現代思想』「戦後民衆精神史」には、木戸昇氏による「東京南部」のサークル運動の概観も「資料」として付されており、『現代思想』「戦後民衆精神史」は、1950年代のサークル運動、さらには文化状況の研究を一挙に進めたものといいうる。また、他の研究者たちによる1950年代の文化運動、およびサークル運動の研究会やシンポジウムにも参加し、成田・岩崎・鳥羽はアメリカ合衆国コロンビア大学を会場とするMJHW(近代日本研究集会)で報告と討論をおこなった。さらに、鳥羽と池上は、1950年代に生活記録運動を展開し、サークル運動と深いかかわりをもった鶴見和子をめぐる研究集会(京都文教大学)に参加した。韓国やドイツにおける研究者との交流を、持続的に行ってもいる。
著者
岩崎 洋平 西村 壮平 小薗 和剛
出版者
熊本高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,複合現実技術を利用したMR 実験室を構築した。この実験室では,ARToolKitにより複合現実環境を実現し,実験機器や結線をCGオブジェクトとして,現実環境(机上)に重畳表示あるいは液晶ディスプレイに表示する。これにより,安全性の高い実験環境を容易に構築することができる。また,マーカを操作のためのユーザインタフェースとして扱うことにより,現実の実験と同様に,複数の実験者がグループで協力しながら実験を実施できる環境を提供することが可能となった。さらに,実験結果を仮想的に表現することで,外乱などの影響を受けない状態での結果を,分かりやすく実験者に提示し,効率的な学習のための実験環境を提供することが可能となる。
著者
岩崎 徹也
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

中東・イスラム地域におけるイスラム原理主義台頭の経済的根拠としては、石油の高価格を前提に、石油化学、石油精製などエネルギー集約型重化学工業を基軸に国内開発を促進しようとした産油国型開発戦略が、需給緩和・OPECカルテル機能低下により破綻したところへ、人口爆発が重なったことによる過剰人口問題、とりわけ若年層の雇用問題が重要な要素として挙げられる。経済開発の低迷と石油ブーム期以降の医療機関の整備による人口増加により、結果として若年層の雇用問題が顕在化し、アラブ民族主義や社会主義の破綻によって青年層の不満はイスラム原理主義へ向かうこととなった。産油国型開発が破綻した現在、発展途上国開発の成功モデルは、外国資本の直接投資に依存した輸出指向型開発戦略しかないが、中東地域の政治は安定せず、石油の輸出・収入の影響によりコスト・為替レートは、他の途上国と比べて一般的に高く、同地域への直接投資は、アジア、中南米などと比べ、著しく少ない。産油国をはじめとする中東諸国でも、近年、構造改革を実施する一方、直接投資受入れのための投資保障措置の拡大などの施策を行っているが、必ずしも十分なものではない。中東地域の諸国の多くは、君主制や共和制の形式をとった軍事独裁政権で、福祉による国民融和は不可欠だが、財政均衡化のためには、増税や福祉関連支出の削減が必要である。しかし、福祉の削減は国民の不満を拡大し、同地域の一層の不安定化につながる可能性もある。膨大な低コストの労働力を有する中国の輸出指向型工業化が進展する現在、中東地域で構造改革が進展し、労働コストが多少低下したにしても、同地域に外国資本が重点的に投資をするという可能性も低い。当面、産油国としては、他ならぬ中国の世界市場参入・高成長を一因とする資源需給の逼迫を利用しつつ、石油収入を増加させ、国内開発を促進するという戦術をとることになろうが、70年代型の開発戦略は破綻しており、新戦略の模索を続けざるを得ないだろう。
著者
岩崎 雄一
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

水生生物の保全を目的とした亜鉛の水質環境基準の妥当性を検討する上での資料を得るために,以下の研究を行った。1.河川上流域において亜鉛濃度が河川底生動物群集に及ぼす影響去年度の成果より,底生動物群集の種多様性は基準値(30μg/L)の2倍程度の亜鉛濃度でも顕著に減少しないことが示唆された。本年度はこの成果を広く公表するべく,国際学会での発表や国際亜鉛協会への訪問等を行い,高い評価を受けた。さらに,この結果をより多く調査データを用いて検証するために,英国に3ヶ月間滞在し,英国・米国等の重金属汚染河川約400地点における底生動物調査結果を用いた解析に着手した。本研究の成果は日本の水質環境基準や海外で提示されている安全濃度の妥当性を検討する上で有用な資料となることが期待される。2.河川下流域において亜鉛濃度が河川底生動物群集に及ぼす影響前述した上流域の結果が下流域に適用可能かを検討するために,群馬県碓氷川水系及び粕川での野外調査を去年度実施した。暫定的な結果ではあるが,碓氷川での調査結果より下流域でも上流域の結果と同様な傾向が得られている。今後は,有機汚濁の進行した河川(粕川)での調査結果をまとめ,これら成果をできるだけ早く公表する予定である。上記に加え,亜鉛等重金属がファットヘッドミノー個体群に及ぼす影響を数理モデルを用いて評価した。その結果,当該個体群が維持される亜鉛濃度は約80μg/Lと推定された(掲載雑誌において,注目論文に選出された)。