著者
嶋田 進 大澤 輝夫 往岸 達也 菊島 義弘 小垣 哲也 川口 浩二 中村 聡志
出版者
一般社団法人 日本風力エネルギー学会
雑誌
風力エネルギー (ISSN:03876217)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.A_29-A_35, 2014

Vertical wind speed profiles near the coast were observed using a Doppler Light Detection and Ranging (LIDAR) system at the Hazaki Oceanographical Research Station (HORS) from September 17 to 26, 2013. In order to investigate the impact of atmospheric stability, wind profiles observed at HORS were compared with a log profile model (theoretical wind profile model), which did not consider atmospheric stability. The wind shear was smaller in the observed profiles when the wind came from sea to land, and larger when it came from land to sea. It was also found that the wind profiles included an obvious diurnal cycle when the wind came from land to sea. The results for this study indicate that atmospheric stability is a significant factor when determining the coastal wind profiles, not only when the wind comes from sea sectors, but also from land sectors.
著者
嶋田 豊
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.198-202, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

従来から知られていた過剰服用による漢方薬の副作用に、甘草の偽アルドステロン症、麻黄の交感神経刺激作用、附子の神経麻痺作用、大黄の下痢などがある。一方、ここ三十年ほどの間に明らかになったものとして、免疫・アレルギー反応による間質性肺炎、肝機能障害、アレルギー性膀胱炎があり、特に黄芩との関連が指摘されている。さらに、山梔子の長期服用により腸間膜静脈硬化症が生ずることも知られてきており注意が必要である。
著者
嶋田 豊 後藤 博三 引網 宏彰 関矢 信康
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、脳虚血による神経細胞障害に対する和漢薬(漢方薬)の保護作用とその作用機構をin vivoの基礎研究によって明らかにすることである。スナネズミー過性脳虚血モデルを用いて、漢方薬の経口投与の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死に対する効果、脳虚血後の海馬及び皮質における過酸化脂質(LPO)、一酸化窒素(NO)代謝物、スーパーオキサイド(O_2^<-・>)とヒドロキシルラジカル(HO^・)消去活性、ならびに抗酸化酵素活性に及ぼす効果について検討した。漢方薬は虚血7日前から、最長で7日後まで投与した。その結果、漢方方剤・釣藤散あるいは生薬・釣藤鈎の経口投与は、虚血7日後の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死を抑制した。また両者とも、虚血後の海馬におけるLPOとNO代謝物の生成を抑制した。虚血を行わない実験で、釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は、海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強し、虚血後も海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強した。抗酸化酵素活性については、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)及びグルタチオンパーオキシダーゼ(GSH-Px)を測定した。虚血を行わない実験では、海馬及び皮質ともにCAT活性が上昇したが、SOD及びGSH-Px活性は変化がなかった。虚血後のCAT活性は、釣藤散あるいは釣藤鈎投与によって海馬及び皮質ともに増強を認めた。以上の成績より、一過性脳虚血モデルにおいて釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は遅発性神経細胞死に対して保護作用を有し、その機序の一つとして脳内のCAT活性の増強を介する抗酸化作用の関与が示唆された。
著者
石井 弓美子 嶋田 正和
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.350, 2004 (Released:2004-07-30)

2種のマメゾウムシ(アズキゾウムシ、ヨツモンマメゾウムシ)と、その共通の捕食者である寄生蜂1種(ゾウムシコガネコバチ)を用いた3種の累代実験系において、3種の共存が長く持続した繰り返しでは、2種マメゾウムシの個体数が4週間周期で交互に増加するような「優占種交替の振動」がみられた。このような振動は、寄生蜂が2種のマメゾウムシに対して正の頻度依存の捕食を行う場合などに見られると考えられる。そこで、ゾウムシコガネコバチの寄主に対する産卵選好性が、羽化後の産卵経験によってどのような影響を受けるかを調べた。羽化後、アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシに一定期間産卵させた寄生蜂は、それぞれ産卵を経験した寄主に対して産卵選好性を高めるようになり、産卵による強い羽化後学習の効果が検出された。このことから、ゾウムシコガネコバチは、産卵による寄主学習により個体数の多い寄主へ産卵選好性をシフトし、正の頻度依存捕食を行うと考えられる。 さらに、累代実験系において実際に頻度依存の捕食が行われているかを確かめるために、「優占種交替の振動」が観察される累代個体群から1週間ごとに寄生蜂を取り出し、その選好性の経時的な変化を調べた。その結果、寄主の個体数が振動している累代個体群では、寄生蜂の寄主選好性も振動しており、2種マメゾウムシの存在比と、寄生蜂の選好性には有意な相関があることが分かった。 これらの結果から、寄生蜂とマメゾウムシの3者系において、寄生蜂の正の頻度依存捕食が「優占種交替の振動」を生み出し、3者系の共存を促進している可能性がある。このような、個体の学習による可塑的な行動の変化が、個体群の動態や、その結果として群集構造に与える影響などについて考察する。
著者
佐藤 寛 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.31-44, 2006-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本稿では、児童の抑うつに対する認知行動療法(CBT)に関する研究の動向を整理し、考察することを目的とした。本稿において、一定の割合の児童が抑うつの問題を示しており対応策の整備が急務であることと、抑うつを示す児童に対してはCBTの効果が実証されており、有効な治療法として期待できることが述べられた。また、解決されるべき課題として、(1)わが国の児童の抑うつに関する疫学的データが十分ではないこと、(2)臨床対象者に対するCBTの有効性を検討した研究は2編しか公刊されておらず、臨床対象者への効果についてはまだ明確ではないこと、(3)良好なデザインを用いた事例報告例がきわめて少ないこと、(4)プログラムの内容は成人向けのものをそのまま援用しており、理論的背景や介入としての効果を発達的観点から検証していく必要があること、(5)治療効果に作用する要因を特定し、その機能を明らかにする必要があること、といった点が議論された。
著者
吉久 采花 嶋田 啓太 吉村 智美 山口 公志 川崎 努
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.396-403, 2020-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
36

植物は,微生物の種類を識別する能力をもち,病原菌に対しては感染を阻止するための防御反応を誘導し,共生菌に対しては,菌の侵入を受け入れるための共生反応を誘導する.このような微生物の識別は,植物の細胞表面あるいは細胞内に存在する受容体を介して行われる.植物の病原菌認識受容体の構造や働きは,動物の自然免疫で働く受容体と酷似していることから,病原菌に対する植物の防御応答は,植物免疫と呼ばれている.一方,病原菌は,エフェクターと総称される分子を獲得し,その働きにより植物の免疫反応を阻止し,感染を成立させている.そこで,ここでは植物免疫の誘導機構と,エフェクターによる病原菌の感染戦略に関して,最近の知見を紹介する.
著者
明石 智義 嶋田 典基 青木 俊夫 綾部 真一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.345, 2006

イソフラバンvestitolはミヤコグサなどマメ科<I>Lotus</I>属植物のファイトアレキシンである.これまでにvestitol生合成系の酵素・遺伝子の殆ど全てが同定されたが,イソフラバン骨格の生合成機構は未知であった.リグナン合成系に見出される,プテロカルパンからイソフラバンへの変換と形式的に同等の反応を触媒する還元酵素のホモログをミヤコグサから得て,基質特異性を検討した.ミヤコグサESTデータベースからフェニルクマランベンジルエーテル還元酵素 (PCBER)様の2配列(<I>PTR1</I>, <I>PTR2</I>)を選抜した.PTR1とPTR2は,PCBERやイソフラボン還元酵素とアミノ酸レベルで60%の同一性を示した.大腸菌系で発現したPTR1とPTR2は,NADPH存在下で(-)-medicarpinからvestitolの変換を触媒した.一方,リグナンや2'-hydroxyformononetinを用いたアッセイでは生成物は見られなかった.以上より,PTR1とPTR2がプテロカルパン還元酵素活性を持つことがわかった.ミヤコグサ幼植物体では<I>PTR</I>遺伝子は常に発現し,vestitol生合成のエリシターである還元型グルタチオン処理による発現誘導はみられなかった.今後,酵素反応の速度論的解析や,ミヤコグサ植物体や培養細胞での酵素活性と遺伝子発現の相関を検討し,PTRの植物細胞内での役割を明らかにする.
著者
樋田 浩一 上野 佳奈子 嶋田 総太郎
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.493-497, 2013-12-01 (Released:2014-12-24)
参考文献数
13

このたびは日本認知科学会大会発表賞を頂き,誠にありがとうございます.ご選考いただきました先生方および認知科学会関係者の皆様に深く感謝致します.今回の受賞を励みに,今後も研究活動に邁進してまいりたいと思います. 本研究は,2011 年度に明治大学理工学部建築学科に提出した卒業論文の内容を発展させたものです.没入型の多チャンネル音場再現システムの開発に伴い,必要性能である演奏時の遅延の許容範囲を検討しました.大変魅力的なテーマであり,この先,博士後期課程を通じて,多感覚統合プロセスの解明やよりリアルな聴覚情報を呈示するシステム開発の為の知見を深めたいと考えております. 最後に,本研究をまとめるにあたり,指導教官である上野佳奈子先生,嶋田総太郎先生には多大なご助力とご助言を頂きました.この場をお借りして厚く御礼申し上げます.
著者
今井 千鶴子 今井 正司 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1-2, pp.309-316, 2007-04-30 (Released:2017-01-26)

本研究の目的は,心身ともに健康な女子大学生を対象に,不安感受性(anxiety sensitivity)が痛み経験(痛みの閾値,痛みの耐性の程度,痛みの主観的評価,痛みへの恐怖感,痛みへの認知的対処方略)に及ぼす影響について実験的に検討することであった.実験参加者31名は,日本語版不安感受性尺度によって,不安感受性低群(n=12)ならびに不安感受性高群(n=19)に分けられ, 3℃の冷水に手を浸す課題(コールドプレッサーテスト)に取り組むことが要求された.コールドプレッサーテスト中に閾値,耐性の程度の測定を行うとともに,コールドプレッサーテスト終了後には,ペインスケール(痛みの主観的評価),多面的痛み尺度(痛みへの恐怖感),日本語版coping strategy questionnaire (痛みへの認知的対処方略)を実施した.その結果,不安感受性高群は不安感受性低群に比べて,痛みの主観的評価が高いことや,自分自身を励ますといった肯定的な自己教示の対処方略を多く用いていることが示された.以上の結果から,不安感受性は痛みの主観的評価や痛みへの認知的対処方略に影響を与える重要な変数であることが示唆された.
著者
加藤 裕幸 中島 聖二 嶋田 靖史 内田 有哉
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.47, 2010

【はじめに】<BR>平成18年度の医療・介護報酬同時改定を機に、介護保険による個別・短時間型通所リハビリテーションを開設した。開設後3年が経過し、これまでの運営経過と課題について報告する。<BR>【経過】<BR>平成18年9月、サービス提供時間:3時間以上4時間未満。午前と午後の2クール制(1クール定員20名)で開設。平成19年9月、サービス提供時間3時間30分から20分短縮。平成20年4月、1クール定員25名へ増員。平成21年4月、制度改正に伴う利用調整実施。平成22年4月現在の人員配置:専任医師1名、理学療法士5名、准看護師1名、介護福祉士2名、相談員1名、介護・送迎補助員3名体制。<BR>【登録者状況】<BR>開設から平成21年12月までの40ヶ月間登録者総数5018名(月平均登録125名)。平均年齢73.2歳(男性55%、女性45%)。要介護区分割合:要支援(52%)要介護1(20%)要介護2以上(28%)。疾患割合:脳血管疾患(56%)運動器疾患(32%)難病他(12%)。送迎対応率:(83%)。<BR>【提供サービス】<BR>食事、入浴サービスなし。送迎は範囲限定対応。個別トレーニングの方針は、1)立位歩行等の抗重力活動の促進 2)日常生活動作トレーニング 3)個人活動、趣味活動の促進支援。個々のニーズに応じた柔軟な対応を実施してきた。<BR>【現状と課題】<BR>利用者は、第2号被保険者と前期高齢者が47%を占め、要介護区分では、要支援者と要介護1の者が全体の72%であった。特に、新規利用依頼の7割は要支援者であり、そのほとんどが新規の要介護認定後、心身機能・ADL維持改善、疼痛緩和などを目的として、初めて介護保険サービス利用に至るケースであった。利用の主目的以外にも個別の課題として、家事炊事・入浴・床上動作練習、家族への介護指導、住環境福祉機器調整、復職調整、外出旅行参加促進などにも随時対応し、ADL拡大に努めてきた。その結果、利用終了者は登録者総数中105名、その内「改善・目的達成」による終了者は29名(28%)で、すべて要支援と要介護1区分の利用者であった。要介護2以上の利用者も要介護度悪化防止は認めているものの、利用継続を希望され終了者は少なかったが、認知症を認める利用者は適応の見直しを要すことが多く、他のサービス移行を進めた。基礎疾患の悪化により終了となる場合も多く、通所での健康観察だけでなく、利用効果を上げていく為にも、利用目的・課題を明確化し、ご家族、主治医、ケアマネージャーとの情報交換・連携強化が必要と考えられた。また、送迎では対応できない地域もあるのが現状で、特別便を組むなど送迎範囲拡大に努めてきたが、対応率は8割程度に留まっている。<BR>【まとめ】<BR>当院、個別・短時間型通所リハビリテーションの3年間の運営状況を報告した。短時間で個別性の高いプログラムを推進する事で、介護予防効果は認めていた。しかしながら要介護度の軽度者に限定される傾向や介護度の高い利用者、認知症利用者への介護度改善への取り組みは今後の課題と考えられた。
著者
飯島 有哉 上村 碧 桂川 泰典 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.103-114, 2021-03-15 (Released:2021-03-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1

This study (1) developed the Japanese version of the Inventory of Statements About Self-injury (ISAS), a tool for assessing the functions of nonsuicidal self-injury (NSSI), and (2) classified NSSI in adolescents based on its functions. We administered a questionnaire to a community sample and gathered 592 responses, including those of 267 undergraduates who had experienced NSSI. The results of factor analysis indicated that the Japanese version of the ISAS was different from the original and was composed of three factors: “Distress coping functions,” “Interpersonal influence functions,” and “Identity maintenance functions.” Cluster analysis of the Japanese version of the ISAS scores indicated four clusters: “Habitual cluster,” “Distress coping cluster,” “Overlapped identity maintenance cluster,” and “Overlapped interpersonal influence cluster.” Each cluster’s clinical features indicated that the more the functions overlapped, the more severe were risks of suicide, anxiety, and depression. These results indicated that the significance of NSSI functions’ assessment was related to their overlap. These results suggested the usefulness of the functional approach to treatment.
著者
関野 展弘 嶋田 徹 田村 直樹 Sekino Nobuhiro Shimada Toru Tamura Naoki
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所特別資料 = Special Publication of National Aerospace Laboratory (ISSN:0289260X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.164-170, 1996-01

航空宇宙技術研究所 8 Jun. 1995 東京 日本13回航空機計算空気力学シンポジュウム-高エンタルピー流れワークショップの課題に対して11の結果を示した。これらの課題は球体回りの流れのシミュレーション(課題 1)および再突入機、OREX回りの流れのシミュレーション(課題 2) である。これらのシミュレーションを行うために、異なる気体の性質用に3種類の数値コードを使う。すなわち熱化学非平衡気体用、平衡気体用、および凍結(理想)気体用である。これらのコードにおいて、ナビエ・ストークス方程式はHarten-Yee型TVD(全変動減少)流束推定およびLU-SGS(上下対象ガウス-サイデル)陰的法を使用する有限体積形とする。熱化学非平衡流れに対しては、11の化学種が考えられ、Parkの2温度モデルを採用する。球体ケースに対する計算熱流束は、ワークショップの主催者達から提供された実験データと良く一致する。OREX(軌道再突入実験)ケースに関しては、計算熱流束が飛行データより幾分大きいが、 計算結果は飛行データと同じオーダで一致した。球体の場合の特殊な流れに対しては、非触媒壁への熱流束は完全触媒壁への熱流速より大きい。この現象の原因の1つは、化学種の急速な再結合速度であることを示した。資料番号: AA0000110016レポート番号: NAL SP-29
著者
塩谷 雄二 寺澤 捷年 伊藤 隆 嶋田 豊 喜多 敏明
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.615-623, 1998-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1

アトピー性皮膚炎は東洋医学的に風湿熱・血熱・血虚・〓血などと捉えられている。一般に温清飲, 治頭瘡一方, 消風散, 十味敗毒湯, 越婢加朮湯, 白虎加人参湯, 駆〓血剤などの方剤が広く用いられているが, 成人型のアトピー性皮膚炎の治療は容易ではないというのが実状である。これまでアトピー性皮膚炎の治療とされているものでは, アトピー性皮膚炎に特有の皮膚の乾燥症状 (ドライスキン) が改善されないことが多く臨床上の課題である。今回, 治療に難渋していた乾燥性紅斑型の5症例に対して加減一陰煎加亀板膠の加減方に転方したところ奏効が得られた。加減一陰煎加亀板膠は養血潤燥, 養陰生津, 養陰清熱の働きがあり, 皮膚の炎症だけでなく, ドライスキンも改善され, ステロイド外用剤の離脱が比較的容易にできた。アトピー性皮膚炎患者の皮膚はドライスキンによってバリアー機能が障害され, 汗, 衣服, 掻破などの機械的な刺激, あるいはダニなどの環境アレルゲン因子に対して敏感になっている。そのため, 治療としては消炎だけでなく, ドライスキンも改善しなければ, アトピー性皮膚炎の治療とはならない。ドライスキンは表皮角層の水分量の減少が主因であり, 治療上考慮されなければならない重要な側面であると考える。
著者
柴田 大輔 河合 望 中町 信孝 津本 英利 長谷川 修一 青木 健 有松 唯 上野 雅由樹 久米 正吾 嶋田 英晴 下釜 和也 鈴木 恵美 高井 啓介 伊達 聖伸 辻 明日香 亀谷 学 渡井 葉子
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

現在の西アジア諸国において戦争・政争を引き起こす重要なファクターとしてイスラームの政教問題が挙げられる。西アジア政教問題の重要性は万人が認めるところだが、一方でこの問題は単なる現代情勢の一端として表層的に扱われ、しかも紋切り型の説明で片付けられることも多い。本研究は、文明が発祥した古代からイスラーム政権が欧米列強と対峙する近現代にいたる長い歴史を射程に入れ、政教問題がたどった錯綜した系譜の解明を目指した。ユダヤ・キリスト教社会、紋切り型の説明を作ってきた近現代西欧のオリエント学者たちが西アジアに向けた「眼差し」も批判的に検討したうえで、西アジア政教問題に関する新しい見取り図の提示を目指した。