著者
高野 勝幸 鈴木 政宏 伴 武 永井 智 横須賀 道夫 岡井 律子 小笠原 章 繁田 明 吉川 翠
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.214, 2003

【目的】チリダニはふとんやカーペットに多く繁殖していると言われている。そこで、ふとん・カーペットのチリダニ/ダニアレルゲンによる汚染実態と、普段の手入れ方法・頻度との関係を把握するため、調査を行った。また、主婦による通常の手入れのダニアレルゲンに対する低減効果についても検証を行うことにより、より最適な手入れ方法についての考察を行った。【方法】(1) 居住空間内でのチリダニ/ダニアレルゲンの測定;2002年8月に首都圏在住の家庭(N=67)について、ふとんとカーペットを対象として実施した。掃除機により3min/m<sup>2</sup>で吸引を行い、採取されたダスト中のダニ数、及びダニアレルゲン量を測定した。ダニアレルゲン量の測定は酵素免疫測定法(ELlSA)により行った。(2) (1)の家庭でふとん・カーペットの手入れについて自記入調査を実施し、ダニアレルゲン量との関係を調べた。(3)手入れ方法の効果の測定;中古のふとん、カーペットを用い、手入れ前後でのダニアレルゲン量の変化を酵素免疫測定法により測定した。【結果】(1) ふとんとカーペットのダニ数/ダニアレルゲン量を測定した結果、半数以上の家庭で厚生労働省の衛生ガイドラインを上回っていることが分かった。汚染度の相乗平均値は、敷ふとんのダニ数102(+333,-78)匹/m<sup>2</sup>、ダニアレルゲン量3.7(+17.7,-3.1)<i>&mu;</i>g/m<sup>2</sup>、カーペットのダニ数358(+1435,-287)匹/m<sup>2</sup>、ダニアレルゲン量8.4(+48.1,-7.2<i>)&mu;</i>g/m<sup>2</sup>であった。(2) ダニ・ダニアレルゲンの汚染度合いには、手入れ方法・頻度と部屋の温湿度環境の双方が関与していた。温湿度環境が類似していれば、手入れ頻度との相関は比較的高かった。(3) 中古ふとんに対して、天日干し/ふとん叩きを行っても、アレルゲンの低減は見られなかった。また、中古カーペットを主婦の普段の掃除機がけ条件で処理した場合、毎日掃除の3年に相当する処理を行ってもアレルゲンを充分に除去することはできなかった。
著者
鈴木 勉
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.365-371, 1999 (Released:2007-01-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 7

現在,覚せい剤を中心とする薬物乱用が大きな社会問題となってきている.それゆえに薬理学領域では医療上あまり有用性のない依存性薬物を世の中に出さないようにすること,一方医療上必要な薬物はその適正使用に努めること,依存形成機構の解明,依存症の治療薬の開発などが使命となってきていると考えられる.これらを行うには依存動物モデルを確実に,かつ安定して獲得する方法論を確立することが重要である.一般的に,薬物依存の形成においては精神依存がその基礎となる.そこで,本論文においては精神依存を予測する方法として最近広く使用されるようになってきている条件づけ場所嗜好性試験(CPP法)の考え方,方法論,注意点,応用,問題点などについて総括した.CPP法では薬物の報酬効果を非常に簡便に,かつ短期闘で評価できることから,近年数多くの薬物の報酬効果が検討されている.また,本法はこれまで最も信頼性の高い精神依存の評価法として用いられている薬物自己投与法での結果と良く対応することも明らかにされており,精神依存の評価,依存形成機構の解明や依存症の治療薬の開発などに広く応用されるようになってきている.一方,CPP法は薬物の報酬効果のみならず,薬物による嫌悪効果の評価にも応用することができる.嫌悪効果は薬物の有害作用につながる可能性があり,これらの点からも本法は医薬品の精神毒性などの研究にも応用できるものと考えられる.さらに本法は,感度の高い身体依存の評価法としても応用できる.このようにCPP法は非常に有用な方法であるため,実験を行うに当っての注意点や問題点を良く理解した上で有効に用いて行くことが望まれる.

2 0 0 0 OA 飛島

著者
片山 一道 梅津 和夫 鈴木 庸夫 松本 秀雄
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.97-112, 1985 (Released:2008-02-26)
参考文献数
30

山形県酒田市に属する飛島は3集落(勝浦,中村,法木から成る小島であるが,小地域でヒト集団の小進化過程を解明する上で,すぐれたモデルを提供してくれるものと期待できる。前々報と前報では,そこでの人口構造,婚姻構造,さらにそれらから導かれる各種の遺伝学的パラメーターを斟酌することによって,飛島住民の身体形質には,遺伝的浮動を主因とすると思われる地域的分化が存在するという可能性が指摘できること,実際にも皮膚紋理形質については,そのことをある程度裏付けるような地域的分化が,集落間や本州一般集団との間で存在していることを立証してきた。本報では,合計389人の飛島在住者の血液試料から,23の遺伝的多型性形質について,集落ごとの遺伝子頻度を求め,集落間の遺伝的分化の大きさとパターンを詳細に分析することによって,飛島で生起した小進化過程の様相を推測するとともに,その主働要因についてな一層詳細に検討していこうとするものである。主な成績は次のように要約できる。1.検査した23種類の血液型システムのうち,LDH,AK,PGK,PHI では変異型が全く存在しなかったが,他の19システムでは多かれ少なかれ多型性が観察された。しかし,Rh(D)では(D-)型は法木集落で2人観察されただけである。2.多型状態にある形質のうち,Rh(D),Tf,ADA,SGOT を除いた15形質について,有意差検定を行ったところ,過半数の8形質で3集落間には有意な遺伝子頻度の差異があることが判明した。なかでも ABO 式と Gm 式血液型では極めて大きな集落間差が認められた。3.集落間差異の内訳をみると, MN と Gmと EsD では中村が,また ABO では勝浦が他の2集落から偏った遺伝子頻度を示すことに起因しており,総合的には中村と他の2集落とでは遺伝的組成をやや異にする傾向にあることが認められた。4.3集落間の遺伝的分化の大きさは,根井の分化係数(GST)が0.0117と推定されることから,かなり大規模なものであると評価できる。ちなみに,本州の遠隔3地方一般集団間の GSTは0.0008,アイヌと近畿人と先島人の間の GSTは0.0077である。5.多型性形質の遺伝子頻度について,各集落と日本人一般集団との間の偏差を標準化したのち,集落ごとに変異パターンを図示して,集落間分化のパターンを比較したところ,勝浦と法木の変異パターンは相対的には相互に類似しているが,中村のそれはこの両者によりもむしろ一般集団の方によく相似していることが判明した。6.しかし,一般集団の頻度を基準とした,遺伝子頻度の偏差の方向は,多くの形質では,3集落間で互いにかなり異った様相を呈しているとみるのが妥当である。7.飛島全体をプールしてみると,日本人一般集団と比較した場合,MN, P, Jk, Gc, Gm,Km, PGM1, PGD, EsD, sGPT など多くのシステムで,特徴的な遺伝子頻度を有しているものと判定できる。これらのうちには,飛島独自の特徴として示唆できるものもあるが,北部日本での共通な特徴である可能性があるものも少なくはない。8.以上の結果を総合すると,飛島の3集落間には大きな遺伝的分化があり,前々報で予測したように,基本的には遺伝的浮動などの機会的要因によって生起したものと考えることができる。しかし,勝浦と法木の間でのやや頻繁な通婚による inter-village migrations, さらには山形県の本州集団から中村への gene flowも,その分化には色濃く投影されている。また,集落成立時には,創始者効果も一定の役割を果したであろうということは想像にかたくない。しかし,このことを立証する積極的な証拠は全く見あたらない。むしろ,飛島での平均ヘテロ接合確率が比較的大きいことから,マイナーな要因であった可能性の方が高い。いずれにしても,本研究は,日本の小地域での小進化過程において,機会的要因だけでなく,gene flow もまた重要な役割を果してきたことを示す実例を提供してくれるものである。

2 0 0 0 Modic sign

著者
大鳥 精司 折田 純久 稲毛 一秀 鈴木 都 山内 かづ代
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1129-1137, 2016-12-25

Modic signとは 椎体終板変性は,MRIで日常的に観察される変化である.一般的には退行性変化として考えられている.図1で示すように,年齢とともに椎間板高が減少し,その変化が椎体終板に発生する現象である.高齢者の8割以上はこのような画像を呈している.変性腰椎の椎体終板変性はModicら1)により報告され,一般的にはModic signと呼ばれている.椎体終板はMRIのT1強調画像で低輝度,T2強調画像で高輝度を呈するModic Type 1,T1強調画像,T2強調画像でともに高輝度を呈するType 2,さらにT1,T2強調画像で低輝度を呈するType 3に分類された2,3)(図2).最近のModic signのレビューによると,腰椎にその変性を認める割合は14%であり,変性の程度は年齢に比例し,10年間で6%の増加を認めることが報告されている.Modic signの分類ではType 2が多く,次にType 1であり,Type 3が最も少ない2).多くの論文において椎間板の変性が腰痛の原因となりうることが報告されているが,椎間板の近傍に存在する椎体終板変性の病理と臨床的意義に関する論文は少ない.本稿では,現在までにわかっているModic signの臨床的意義に関して述べたい.
著者
神田 賢 北村 拓也 佐藤 成登志 古西 勇 鈴木 祐介 渡辺 慶 久保 雅義
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.483-487, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
25

〔目的〕若年女性の本態性慢性肩こり有訴が頸部に影響を及ぼす因子を比較検討した.〔対象と方法〕若年女性40名(有訴群20名,無有訴群20名,平均年齢21.4 ± 0.7歳)を対象に,頸部屈伸筋群持久力および最大筋力,頸部機能不全度(NDI)を評価した.〔結果〕肩こり有訴群は無有訴群と比較して,頸部屈伸筋群持久力時間において有意に低い値を示したが,屈伸筋群最大筋力においては,有意な差を認めなかった.頸部機能不全度では,有訴群が無有訴群と比較して有意に高い値を示した.〔結語〕若年女性においては,本態性慢性肩こり有訴は頸部屈伸筋群持久力に影響を及ぼす因子となる可能性が示唆された.また,本態性慢性肩こり有訴は,頸部機能にも影響を与える可能性が示唆された.
著者
川合 恭平 鈴木 汎
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.494-500, 1979-06-01 (Released:2009-11-13)

We, Toagosei Chemical Industry, have buckled down seriously to the safety problem with making the best use of our experience of plant accidents happened in the past.With an explosion accident in 1952 as a momentum, our plant operation was standardized. Then, with an explosion accident in 1972 as a momentum, an expert committee for the prevention of plant accidents was institutionalized.By the said committee, the checking for causes of accidents is done as to each stage of research, engineering, and test operation. The check list is used for this purpose. Now, we would introduce the part relating to the explosion.Differential Scanning Calorimeter is effective for the checking against explosive chemicals of which counterplan is difficult to be set.
著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 羽鳥 剛史 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_327-67_I_332, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
21

本研究では,「家族」,「学校や会社等の組織」,「地域」,「国家」という4つの共同体を取り上げて,これらの共同体からの疎外意識が主観的幸福感に及ぼす影響について実証的に検討することを目的とした.この目的の下,主観的幸福感を構成する「感情的幸福感」と「認知的幸福感」に関する既存尺度とヘーゲルの理論を基に作成した「人間疎外尺度」を用いて,両者の関連を検討した.その結果,共同体に対する疎外意識と主観的幸福感との間に負の関連性が示され,共同体からの疎外意識を感じている人ほど,その幸福感が低い傾向にある可能性を示唆する結果が得られた.特に,「家族」と「国家」に対する疎外意識は,感情的幸福感と認知的幸福感の双方に対して直接的な負の影響を及ぼし得る可能性が示唆された.
著者
松岡 成治 米田 浩久 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.87-96, 2004 (Released:2005-03-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1

We encountered 5 patients with cerebrovascular disease, who demonstrated shortening of the trunk muscle. We thought that the shortening was caused by primary low muscle tone. We investigated whether there was an effect on sitting and walking postures by stretching the shortening muscles. So we stretched these muscles at first. But we could not obtain good effect on either static sitting or walking postures. Then we selected one patient, and tried using weight shifting during sitting with sufficient muscle contraction. As a result, we could acquire improvement in both sitting and walking postures. From the above investigation, it was suggested that both stretching the shortened muscles and performing physical therapy based on normal movements were important therapeutic exercise for patients with cerebrovascular disease.
著者
鈴木 貞吉
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 71.2 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.34, 2016 (Released:2017-12-05)

前回の東北学院大学では、ニュウトンの万有引力の法則の分母の半径、rをゼロにしても、Fは無限大にならないことを説明した。すなわち、測地線が無限大になるのである。そこまでは、時間の制限で語れなかったので、今回説明する。
著者
大江 亮介 鈴木 育男 山本 雅人 古川 正志
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2010年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.699-700, 2010 (Released:2011-03-10)

従来よりも現実感の高い蝶の飛行を表現するため,物理法則に基づく飛行シミュレーションを行う.剛体力学の処理には物理エンジンを利用し,抗力による高速な流体力学を新たに追加実装する.蝶の羽は,フラッピング(羽ばたき)とフェザリング(ひねり)が可能である.実際の蝶の測定データを基にフラッピングを行い,人工ニューラルネットワークと最適化手法を組み合わせることでフェザリング角度を適切に制御させる.
著者
鈴木 尚
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.7-11, 1948-07-01 (Released:2008-02-26)
参考文献数
17
被引用文献数
49 62
著者
鈴木 和博 中村 俊夫 南 雅代 池田 晃子 Suzuki Kazuhiro Nakamura Toshio Minami Masayo Ikeda Akiko
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.22, pp.121-134, 2011-03

Japanese Red foxes (Vulpes vulpes japonica) establish stable home ranges within particular areas or are itinerant with no fixed abode around human habitations. They are popular wild animals and feature prominently in the folklore of human culture. The population, however, was decreased until the beginning of the 1970's, and no fox has been seen since about 1975 in Kodenosawa, a small habitation about 17km NE from the urban area of Toyota City. A fox remains was found from the under floor of the Jizo-temple together with a ragged package of Nissin Chicken-Ramen which was used from 1971 to 1983. The fox's remains is c. 50 cm in body length. The left half of the remains exhibits soft tissues including skin and dried muscle, but the right half facing to the ground is completely decayed. To determine when the fox died, we measured 14C concentration in collagen extracted from a tooth and a rib of the remains. The δ13C (-18±1 ‰) normalized 14C concentrations are 129.2±0.4 pMC for the tooth and 129.0±0.4 pMC for the bone. Although the values intersect the calibration curve at 1962 and 1979, the 1979 age only agrees with the time span supported by the envelope of Chicken-Ramen. Drying of muscle tissue without rotting was likely to take place in cold winter. Thus, the fox's death is reasonably definable in the period from late November 1979 to early January 1980. The δ13C (-18±1‰) values suggest a diet containing a significant amounts of C4 food or protein with higher isotopic values. There is little C4 plants in Kodanosawa, but sizable amounts of cone were constantly brought from outside for cow's and chicken's food. A possible protein source is the herbivore and the omnivorous feeder within the area. An alternative may be marine fish and the derivatives including dog- and cat-food. To test whether the fox took food brought from outside or not, we analyzed the 87Sr/86Sr isotopic ratio of the remains. The 87Sr/86Sr isotopic ratios, 0.709439±0.000016 for the tooth and O.749464±0.000014 for the bone, are distinctly lower than those of wild boar's bone (0.709944±0.000016 and 0.709912±0.000012), river water (0.710079±0.000016) and the granite (0.710218±0.00016) that underlies the wide area of Toyota City. The initial 87Sr/86Sr ratio of 0.7096±0.0001 constrains the lowest isotopic ratio of water, plants and animals within the area. The distinctly lower 87Sr/86Sr values documents that the fox took sizable external food with higher δ13C values. After the disappearance of foxes from Kodenosawa around 1980, wild boars swelled in population. Voracious scavengers dug slope of hills side and paddy fields as they foraged for bulbs, yams, earthworms and grubs, and eventually ate voraciously paddy, sweet potatoes and beans in the field. This triggered the abandonment of cultivation of fields that face mountains. It is likely presumed that foxes were preventing wild boars from invading the human habitation through attacking Uribou, young wild boars. 愛知県豊田市小手沢町にある地蔵堂を建替えるために旧堂を取壊したとき,床下から乾潤びたキ ツネの遺骸が見つかった.遺骸の横に1971年から1983年まで使用されたデザインのチキンラーメ ンの袋があった. 口先から骨盤までの長さが約50cmの成獣である.遺骸の地面に接した右側半分 と尾は骨まで溶けて失われていた.左側半分には耳や皮膚も腐敗することなく保存されていたが, 体毛は全く残っていなかった.骨は白骨化し,前足の付け根の皮膚にのみ黒色の筋組織様のものが 付着していた. キツネの歯と骨から抽出したゼラチンコラーゲンの14C濃度(δ13C=-25‰に規格化)は129.2±0.4 pMCと129.0土0.4pMCである.この較正年代(1962年と1979 -1980) 年)とチキンラーメン袋の 使用期間および腐敗の無いことを総合して,キツネの死亡時期を1979年11月下旬~1989年1月上 旬と特定した.キツネのδ13Cは=-18±1‰である.小手沢地内にはC4植物が殆ど栽培されていない ので, 地域内の植物や小動物のみを食べていたと仮定すると,ほぼ完全な肉食をしない限りδ13C=-18‰にならない.一方,キツネの87Sr/86Sr比は0.70745 であり,分析誤差を超えて小手沢のイノシ シ(0.70993) ・川の水(0.71008) ・花崗閃緑岩の初生値(0.7096)より小さい. δ13C値と87Sr/86Sr比か ら,キツネは外来の餌(残飯を含む人間の食料やトウモロコシ主体の家畜飼料)を相当量摂取して いたと結論した. 地蔵堂の床下から見つかったキツネの死亡時期(1979年)は,小手沢地内でキツネが減少した時期 より約10年後で,イノシシの食害が顕在化する1980年代半ばに近い.人家に近い里山を縄張りと するキツネが,イノシシの人里進出を阻止していた可能性を考察した.
著者
本多 宏明 大西 章博 藤本 尚志 鈴木 昌治
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.207-215, 2008-03-20 (Released:2009-04-01)
参考文献数
31
被引用文献数
3 3

従来よりバイオエタノールの製造には液体発酵法が広く採用されている.本法は,エタノールを蒸留した後に発生する蒸留廃液の処理が大きな問題となっている.この蒸留廃液の排出を極力抑制することを可能にする新規の発酵法としてエタノール固体発酵システムを考案した.乾燥生ごみにおいて良好に生育し,かつ糖化酵素生産に適した麹菌として麦味噌用の Aspergillus oryzae KBN650を選出した.本麹菌株の乾燥生ごみにおける糖化力の発現は,培養温度 30℃,初発水分含量 50%が最適であった.また,乾燥生ごみのエタノール固体発酵に適した酵母として焼酎酵母 Saccharomyces cerevisiae A30を選出した.本菌株は乾燥生ごみと生ごみ麹の混合割合が等量ずつで初発水分含量が60%において高いエタノール生成能を示した. 以上の知見に基づき,試料調製,生ごみ麹製造,糖化発酵,蒸留の4つの工程から構成されるエタノール固体発酵装置を製作した.この装置では,乾燥生ごみ 9.6kgから 99%エタノール換算で0.6kgのエタノールが生産され,全糖消費量に対するエタノール収率は73.6%であった.この時,従来型の液体エタノール発酵法の蒸留時に排出される蒸留廃液の排出はなく,固形残渣として排出された.
著者
北田 博之 山本 晴輝 山本 峻己 鈴木 昌人 青柳 誠司 高橋 智一 福永 健治 細見 亮太 高澤 智規 歌 大介 川尻 由美 中山 幸治 引土 知幸
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2017年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.897-898, 2017-09-05 (Released:2018-03-05)

蚊の針は細いが穿刺時に折れず,皮膚にたわみが生じない.本研究では,麻酔したマウスの皮膚に対する蚊の穿刺を倒立顕微鏡で観察し,蚊の針が皮膚を貫いて吸血する仕組み,ならびに口針を包む鞘である下唇の役割を解明しようと試みた.その結果,蚊の針の挿入時の下唇の動きや,蚊の血管を探す様子や吸血する様子,そして穿刺時に皮膚がほとんどたわまず,上唇を血管に挿し入れる時に血管が変形しないことが観察できた.
著者
笹川 秋彦 星野 純 小林 篤 西海 理之 鈴木 敦士 藤井 智幸 小西 徹也 山崎 彬 山田 明文
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.167-178, 2006 (Released:2006-06-15)
参考文献数
35
被引用文献数
5 6

The commercial-scale feasibility of high-pressure treatment to fermented foods was investigated, with attention given to the fact that the pressure resistance varies with the kind of microorganism. Kimchi was chosen because lactic acid bacteria had been found to be separated from yeast by pressure application of 300 MPa (20°C), and subjected to pressure treatment to investigate the microbiological, physicochemical and sensory changes with the progress of fermentation. Pressure application of 300 MPa (20°C) to Kimchi for 5 minutes slightly decreased the number of lactic acid bacteria, while completely inactivated the yeast to prevent expansion of the Kimchi-containing package during the storage. The pressure treatment also reduced the generation of lactic acid, the drop in pH value and the decrease of glucose and fructose contents. Although the pressure-treated Kimchi showed increased color difference and translucence, the breaking stress was not changed. The sensory tests demonstrated the advantages of pressure-treated Kimchi, to confirm the improvement of shelf life of Kimchi.