著者
菅原 正 高倉 克人
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

1)光学顕微鏡観察およびフローサイトメトリによるベシクル集団解析のデータより、ベシクル内でのDNAの自己複製とベシクルの分裂が連動するダイナミクスを解明した。2)親ベシクルの自己生産で生じる娘ベシクルに、枯渇したヌクレオチドを包みこんだ運搬ベシクルを融合させることで、娘ベシクルに自己増殖能を獲得させた。3)ベシクル型人工細胞には、外的および内的刺激に対して、それぞれ選択的に活性化される4つのステージ (摂取、複製、成熟、分裂) があること、さらに、各ステージでの内部的変化が、ベシクルを次のステージへと駆動していることを明らかにした。
著者
高橋 幸雄 三好 直人 山田 孝子 藤本 衡
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

混雑システムを構成するインテリジェントな客の例として,本研究では最終的にa)交差点の歩行者,b)電車内の客,c)インターネットの利用者をとりあげ,それぞれについて,全くといってよいほど異なったアプローチからのモデル化およびシミュレーションプログラムの作成を行った.現在,それぞれ論文にとりまとめる作業を行っている.a)交差点の歩行者については,自分の速度によって決まる情報空間(視野)の中に入る対向者の速度と向きから,その対向者との衝突可能性を予測し,衝突を避けられる範囲で最も効用の高い速度と向きで歩く,という基本コンセプトでモデル化した.シミュレーションにより歩行者密度と平均歩行速度の関係を求めたところ,実際の歩行流に対して観測した従来の研究結果とよく合致することが確認された.b)電車内の客については,他人との近さおよび他人の視線を主に,他人から受ける影響をポテンシャル関数の形でとらえ,これに降りるときと乗るときのインセンティブを加え,各客が自分のポテンシャルを最小にするように振る舞うものとして,モデル化をし,シミュレーションプログラムを作成した.ここではa)のような行動予測は全く入っていない.このモデルにしたがって客の乗降に必要な時間を計測したところ,電車の混雑率と乗降客数によって.その時間が興味深い動きをすることが確認された.c)インターネット利用者については,http通信データをもとに,個人行動を考慮に入れたモデルを構築した.結果から見ると,ここでは個人の動向よりも,クライアントやサーバ側の事情というのが,ネットワークの混雑状況により大きく関係していることが観察された.
著者
金田 千秋 加藤 哲弘 島本 浣 山田 俊幸 及川 智早 佐藤 守弘 石田 あゆう 岸 文和 前川 修 中谷 伸生 橋爪 節也 鈴木 廣之 太田 孝彦 石田 美紀
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、大正期に流通していた大衆的な視覚表象に関する2つの課題を、豊かな対話関係において、遂行するものである。すなわち、第1の課題は、大衆的な視覚表象が果たしていたメディア的な機能の多様性を、可能な限り広範な資料に基づいて、美術史学的に明らかにすることである。第2の課題は、「文化遺産」の概念を鍛え上げることによって、何らかの大衆的イメージが後世に継承される/るべきさいの条件・方法などを、美学的に考察することである。
著者
玄場 公規 矢野 正晴 ヤング 麻里子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は日本及び海外の研究大学のURA(大学のリサーチ・アドミニストレーター)の機能、モチベーション、役割の比較分析を行う。調査の結果、以下の点が明らかとなった。海外の研究大学のURA人材は法律、経理・財務、知的財産などの高い専門性を有しており、研究者に高度な研究支援サービスを提供していた。また、仕事に対するモチベーションも高く、職務への満足度も高い。さらにキャリアパスも多様であり、研究者としてのキャリアを有している人材も数多くいるが、一方で人材の流動性は決して高くないことが確認された。日本のURAも政策支援により採用されているが、専門性とモチベーションを高める努力が必要である。
著者
前田 忠彦 松本 渉 高田 洋 伏木 忠義 吉川 徹 加藤 直子
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

訪問面接調査や留置調査など調査員が介在する調査法,Web調査などそれ以外の調査モードを含む様々な調査で実施の際に付帯的に得られる調査プロセスに関する「調査パラデータ」を解析し,調査の精度管理に有用な情報を得ることを目指した検討を行った。また,調査不能率が高い場合に懸念される調査不能バイアスの影響を評価したり,それを調整する方法についての研究を行った。面接調査等の訪問記録や,電話調査での発信記録を分析することによって,調査員の行動をよりよく理解することができるようになり,調査員教育に生かすことができる。また他の調査モードで得られる回答所要時間のデータなどで回答者行動の理解を深めることができる。
著者
石川 由香里 加藤 秀一 片瀬 一男 林 雄亮 土田 陽子 永田 夏来 羽渕 一代 守 如子 苫米地 なつ帆 針原 素子
出版者
活水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度を総括して述べれば、来年度への調査実施に向けた準備を順調に進めることができた年度と言える。中学生と高校生向けの調査票は、昨年度においてすでに完成していたが、それに加え5月に実施した研究会において、大学生に対する調査票を確定することができた。過去7回の調査結果の分析に際しては、独立変数に設定できる質問項目が少ないことが反省材料であった。とくに家庭の社会経済的背景についてたずねることについて、学校側の抵抗感が大きく、最近ではとくに質問項目として盛り込むことが難しくなってきた。しかし、一昨年および昨年度に行われた大学生対象の予備調査において、大学生であれば親の学歴や職業についての質問項目に答えることへの抵抗はほとんど見られず、分析に耐えるだけの回答を得ることができていた。したがって本調査においても、大学生対象の調査票の項目には、親の学歴や生活状況を尋ねる質問を含めることとした。今年度のもう1つの大きな取り組みとしては、調査先の決定があった。そのために協同研究者はそれぞれ、調査候補となっている都道府県及び区市町村の教育委員会ならびに対象校へ調査の依頼のために手分けしてうかがった。その結果、年度末までには、かなり理想に近づく形での調査協力を取り付けることができた。年度内に3回実施された研究会においては、調査協力依頼のための文書を作成し、またそれぞれの調査先から調査実施の条件として示された個別の案件についても審議した。また実査に加わる調査員に対するインストラクションの内容、保険、旅費の配分など、調査に必要なすべての事柄について確認を行った。
著者
岩上 真珠 渡辺 秀樹 宮本 みち子 米村 千代 大槻 奈巳 松木 洋人
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015

・アンケート調査の属性集計から、調査結果の全体的な要約の作成と、それを踏まえた研究分担者の各自のテーマの分析案を検討する作業を行ない、10月以降にとりまとめる予定であった。・アンケート調査の自由回答欄も分析するため、記入内容をテキストデータ化する作業を行なった(業者委託)。30代では結婚・育児に関する不安、60代では将来の経済的生活、子どもとの関係に関する問題などが比較的多く記述されていた。10月以降に、自由回答の分析方法の検討も行なう予定であった。・インタビュー調査については、調査会社と対象者の選定作業や個人情報保護の取り扱いの取り決めなどの準備作業を行ない、平成29年9~10月に約20人(平成28年度延期分を合わせて合計40名)に対し実施予定であった。・平成29年8月に研究代表者が死去したことにより研究事業が廃止となったため、上記9月以降の作業の実施をすべて中止せざるをえなかった。
著者
三隅 将吾 高宗 暢暁 庄司 省三
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、以下のような成果を得た。1)ウイルスの外被糖タンパク質に対する抗体やCCR5に対する抗体を粘膜面に誘導できた。2) CCR5および外被糖タンパク質に対する抗体価を維持するための交叉免疫抗原を見つけることができた。3)本邦におけるHIV/AIDS経膣感染霊長類モデルの構築を試みたところ、ヒトの性周期と類似するカニクイザルを用いて、SIV10000TCID_<50>/ml(1ml)をSIV感染細胞及び精液とともに複数回接種するモデルが妥当であるという結論に至った。
著者
塚本 康浩
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

動物の発生・再生・腫瘍形成および記憶における細胞接着分子ギセリンの役割を個体レベルで追求した。ニワトリの皮膚移植再生モデルを確立し、移植片の定着にギセリンおよびそのリガンドが関与すること、さらにギセリンの投与が再生を促進することを見出した。さらに、ギセリンおよびそのリガンドが腫瘍(大腸癌およびリンパ腫)の転移を促進することを腫瘍移植実験において明らかにした。ギセリン欠損動物は、出生前に致死となることが判明した。
著者
清水 英範 堤 盛人 森地 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

(1) 基準点となりうる地物の整理江戸朱引内全域にわたり、古地図と現代図との目視による対照を行い、TINの位相を保持している基準点となる地物300点を整理した。(2) TINを拡張した幾何補正手法の有効性と限界の確認TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法を従来の常套手段である多項変換等と比較し、その有効性を確認した。また、TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法の限界を例示し、TINと多項変換を統合した幾何補正手法との比較も行った。本研究においては線形街路の多い江戸城下町を対象としていることから、TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法を用いている。(3) 古地図分析支援システムに要求される機能の確認都市計画史等の文献を調査することにより、古地図分析支援システムとして要求される機能を確認した。(4) 古地図の土地利用図の作成TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法により天保御江戸絵図(1843)を朱引内全域にわたり幾何補正し、大名屋敷や神社・仏閣などの土地利用ごとにポリゴン化した。これにより、現在の文京区に相当する地域の土地利用図の作成を行った。(5) 古地図分析支援システムの有効性の確認幾何補正した古地図の構成要素をベクター化することにより、古地図の定量的分析を支援することが可能となる。さらに、現代のGISデータを用い、当時の空間的状況と地形との関係を分析することが可能となる。(3)において確認したGISの機能を用い、(4)において幾何補正した天保御江戸絵図を対象に、主要街道の縦断線形の分析、標高・地形と土地利用の関係の分析、眺望に関する分析を行い、システムの有効性を確認した。眺望に関する分析においては、CG技術を用い鳥瞰図の作成も行った。
著者
鎌倉 慎治 越後 成志 鈴木 治 松井 桂子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

種々のリン酸オクタカルシウム(OCP)・コラーゲン複合体(OCP/Col)を用いてその骨再生能について検討し、(1)OCP/Colは細胞の増殖や接着を促進し、(2)小型動物の埋入試験でOCPの含有量に依存して骨再生能が向上し、生じた新生骨の骨質は経時的に増強し、正常骨組織に匹敵する力学特性を示すこと、(3)大型動物での種々の埋入試験によってその十分な骨再生能を確認し、これら一連の成果によって世界初のOCP/Colを用いた臨床研究を実現するに到った。
著者
武内 ゆかり 森 裕司 菊水 健史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

同一犬種内における気質の個体差の遺伝的背景を探る目的で,日本古来の柴犬と使役犬としても名高いラブラドールレトリバー種(盲導犬候補個体)に着目し,柴犬では飼い主による気質評価アンケートと,ラブラドールレトリバー種では訓練士による訓練評価記録と,主に申請者らが同定した気質関連遺伝子の多型との関係を解析した。その結果,柴犬では,他人に対する攻撃性とsolute carrier family 1, member 2遺伝子の一塩基多型が,ラブラドールレトリバー種では,活動性と同多型およびcatecholamine-O-methyltransferase遺伝子の一塩基多型が有意に関連していることが明らかとなった。
著者
高木 伸之 王 道洪
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

冬季雷雲下の風力発電設備において上向きに開始する落雷の前兆現象を3つ確認した。一つは落雷開始の数秒前から数アンペアの電流が流れる前兆電流である。二つ目は落雷前に発生する微弱な発光を伴う放電現象で風車先端から数メートル程度進展して停止する現象である。三つ目は落雷前に風力発電設備周辺での地上電界強度が正または負の極性に偏る現象である。前兆電流については2秒前には落雷の発生を予測できることを確認した。
著者
山肩 洋子 今堀 慎治 森 信介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は,Webにある膨大な数のレシピの集合が本質的にどの程度の多様性を持っているのか,足りないのか十分なのか,何が足りないのかを明らかにすることである.そこで本研究では,(i)自然言語処理技術によりレシピ記述から手順構造を抽出し,(ii)手順と記述の観点からレシピ間の関係を解析するとともに,(iii)全体の知識を使って補完可能な欠損を補完することで,レシピ集合が持つ本質的な多様性を解析する機構を構築する.今年度は以下の2点を行った.(1) 国際化に向けた英語対応:Webレシピの急増は日本だけでなく世界で起こっている現象である.米国最大手のAllrecipesの月間ページビューは推定2,000万件で,クックパッドの実に3倍以上である.さらに料理レシピが世界の情報処理の研究対象として国際的に認知されつつある.そこで,平成28年度,英文係り受け解析器RASPの開発で著名なJohn Carroll氏の協力を得て,英文レシピのフローグラフコーパスを開発した.今年度はこれを我々が開発した手法で実装することで,固有表現認識精度が84.8%,固有表現が正しく認識されているときの依存関係推定精度74.1%を達成した.また,和文と英文のレシピの構造的な相違を統計分析により明らかにした.(2) レシピテキストの記述粒度の自動変換:肉じゃがやハンバーグのような代表的な和食は数千からときに数万のレシピが見つかる.同じ料理名をもつレシピのうち,その主たる調理方法が似通っているとき,それらは似た調理手順を説明した異なる記述であると考える.ここで,片方のレシピがもち,もう片方のレシピが持っていない説明は,その手順の詳細説明であると考えられることから,この関係を用いて詳細記述を生成した.また,双方が持つノードはその手法の主幹であることから,それらを取り出したフローを簡略な表現と位置付けた.
著者
遠藤 不比人 秦 邦生 中井 亜佐子 田尻 芳樹 シャムダサニ ソヌ
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

英語圏の人文学研究における「情動理論」を英国モダニズム文学という歴史的文脈で再考察した。特に同時代の精神分析的言説との関連、およびマルクス主義美学の政治的可能性という点に関して、海外の研究者と継続的に英語を使用した会議を開催し、当該テーマをめぐり国際的な研究成果をあげることができた。それを踏まえて、さらに、近代の「心理学化」に抗う「反=心理学」と呼ぶべき言説的系譜が新たな視点として浮上し、それについての国際会議をロンドン大学で行った。
著者
星野 幹雄
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小脳をモデル系として、神経幹細胞アイデンティティの時空間制御機構について調べた。小脳菱脳唇の神経幹細胞ではAtoh1が、小脳脳室帯の神経幹細胞ではPtf1aが発現し、その部位での空間アイデンティティを規定することで、それぞれ興奮性神経細胞と抑制性神経細胞を生み出す形質を与えられているということを明らかにした。また、小脳脳室帯の神経幹細胞は、最初にプルキンエ細胞産生神経幹細胞であったものが、その後抑制性インターニューロン産生型神経幹細胞へと形質を変えることを見いだした。その過程では、転写因子Olig2とGsx1が関与することも見いだした。
著者
瀬戸 浩二 佐藤 高晴 田中 里志 野村 律夫 入月 俊明 山口 啓子 三瓶 良和
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南極地域において小氷期では乾燥的な気候であったと考えられる.その後,相対的に湿潤に変化したようだ.亜寒帯オホーツク海沿岸海跡湖群では,人為的環境変化以外では大きな環境変化は見られなかった.濤沸湖で湾口の閉鎖あるいは縮小が見られた.これはわずかな海水準低下に起因しているものかもしれない.温帯日本海沿岸海跡湖群では,小氷期終了前後(1600-1800年頃)に洪水堆積物が認められ,比較的大きな降雨があったことが明らかとなった.その後は人為的な環境変化が大きく,個々の汽水湖に個性的な環境変化を示している
著者
青木 浩樹 吉村 耕一 吉田 恭子 田中 啓之
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージ特異的SOCS3ノックアウトではマクロファージ分化が炎症性M1優位となり解離発症が亢進した平滑筋細胞特異的SOCS3ノックアウトマウス(smSOCS3-KO)では、外膜コラーゲン線維の沈着および組織強度が亢進しており、解離発症が抑制された。ヒト解離組織では中膜外側にSTAT3の活性化を認め、外膜と接する部分の中膜および外膜にマクロファージ浸潤を認めた。STAT3活性化は中膜平滑筋細胞およびマクロファージの双方に認められた。解離発症前後にIL-6系シグナルが活性化し、その作用は細胞種特異的であることが明らかになった。
著者
赤垣 友治 佐々木 義憲 中村 等
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

新素材「ガラス繊維強化PTFE系複合材料」の摩擦摩耗特性を広範囲な実験条件の下で評価し,メンテナンスフリー型軸受の実用化の可能性を検討した。得られた結果を要約すると次の通りである。【1】高速無潤滑下における摩擦摩耗特性:すべり速度が〜40m/sで摩擦係数は0.4〜0.45で最大となる。この時の摩擦面温度は〜130℃で,粘弾性変形抵抗が最大となる温度に一致する。10m/s以上では,〜0.3でほぼ一定である。比摩耗量は(1.5〜3.3)x10^<-6>(mm^3/Nm)である。摩耗面は微細な褐色酸化鉄粒子で覆われており,これらの保護作用により破局的な摩耗形態へ遷移しないと言える。このように高速無潤滑という条件下においても,破局的な摩耗を生じない,新規な特性を有していることがわかった。しかし,相手材がステンレス鋼や硬質クロムめっきなどの場合,複合材料の摩耗量は各々〜2倍,〜1000倍大きくなる。【2】油潤滑下の摩擦摩耗特性に及ぼすすべり速度と荷重の影響:金属製の軸受が焼き付きに遷移するような薄い油膜が形成されるような厳しい条件下においてもPTFE系複合材料は焼き付きに遷移せず低摩擦・低摩耗を維持した。高速高荷重下において,油煙が発生するような厳しい摩擦条件下においても焼き付きにき遷移せず,摩擦係数0.02〜0.04を維持した。この時,リング温度は100〜150℃,比摩耗量は10^<-6>(mm^3/Nm)のオーダーであった。【3】油潤滑下の摩擦摩耗特性に及ぼす相手面粗さの影響:金属製軸受や他の複合材料(PEEK)は,相手面粗さが油膜厚さより大きくなると,低摩擦係数(〜0.008)から高摩擦係数(0.06〜0.1)へ急激に遷移し,焼き付きの様相を示す。しかし,PTFE系複合材料は,相手面粗さ依存性が小さく,摩擦係数の上昇率は小さく,激しい焼き付きの様相を示さない。【4】摩耗粒子分析及び摩耗機構の解析:摩耗粒子発生量はきわめて少なく,レーザ回析式粒度分布測定装置では,ほとんど検出できなかった。唯一検出されたのは,粗いリングと摩擦した場合であった。粒径0.4μ程度の小さな粒子が僅かに検出された。このように,PTFE系複合材料の耐摩耗性が、摩耗粒子分析の観点からも実証された。以上の結果から,PTFE系複合材料は,実験条件を厳しくしても焼付きの様相を示さず,また,発生摩耗粒子数も非常に少なく,メンテナンスフリー軸受への応用の可能性が非常に高いと結論付けることができる。
著者
山口 雄仁 鈴木 昌和 川根 深 駒田 智彦 金堀 利洋
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

印刷ないしPDFの理数系文書をアクセシブルな電子書籍形式であるDAISYに変換するOCR技術の改良,理数系DAISY編集・閲覧ソフトウェアの開発,日本語理数系教材をきちんと取り扱えるようにDAISY形式を拡張・改良する研究などを行った。その結果,全盲・重度弱視・発達性読字障害など様々な形で視覚に障害を持つ生徒が,インクルーシブな教育環境で晴眼者と同じ科学教材を共有するための基礎が確立できた。