著者
丹羽 謙治 下原 美保 金井 静香 亀井 森 佐藤 宏之 深瀬 浩三 高津 孝 日隈 正守 橋口 晋作
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の主要な課題である「自然災害等に備えた、鹿児島県の資料防災ネットワークの立ち上げ」に向けての基礎づくりを行った。鹿児島県、宮崎県の一部自治体の資料保存状況を把握するとともに、鹿児島市の入来院家資料、大武文庫、谷口家資料、姶良市の森山家資料などのデジタルカメラによる資料保存・目録整備、資料防災に関する研究会・講演会の開催、ホームページの立ち上げによる広報活動を実施した。
著者
作道 信介 北村 光二 太田 至 曽我 亨 羽渕 一代 辻本 昌弘
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

カクマ難民キャンプ設置の住民側の影響は以下のとおり。1)カクマ周辺住民の治療環境の多元化:キャンプの病院・診療所への依存が高まり医学用語の定着がみられる。同時に流入する人びとを患者とする外来の治療者-マッサージ師、薬売り、音楽治療者、移動治療者-が流入してきた。近年、医療と民間治療の棲み分けが明確化してきている。2)「糞肛門」の出現:干ばつ以来の食生活の変化はトゥルカナの主食をミルクからトウモロコシへ変わった。それにあわせて、身体の不調を干ばつによる食生活の変化に帰する新しい病気、「糞肛門」があらわれた。この病気を治療するマッサージ師の多くが干ばつなどによって追われてきた人びとであることがみいだされた。3)トゥルカナと難民との交流:(1)贈り物の交換による友情、(2)婚姻関係があった。トゥルカナは対人関係において、他者をそこにいて代替不能な"あなた"の位置に置こうとする。それが難民との関係形成に重要な働きをしていた。4)携帯電話の普及:それによると、携帯は牧畜民の既存の人間関係を固定化、強化する反面、対面場面での関係形成の柔軟性を損なう可能性があることが示唆された。牧畜民への携帯普及はまだまだであるが、近代化における牧畜民的自己の変容というテーマが浮上した。
著者
五十殿 利治 井上 理恵 木下 直之 武石 みどり 梅宮 弘光 桑原 規子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、舞台美術という演劇と美術の境界領域に属するジャンルについて、検討するものであった。研究対象は研究者の専門領域の関係で、「近代」(概ね明治以降)と限定し、また舞台美術を視覚文化という視点から多角的に検討するために、美術と演劇の研究者ばかりでなく、音楽史や建築吏の専門家にも参加を求めて、検討を加えた。毎年3回ずつ開催された研究会においては、分担研究者ばかりでなく、専門家にも指導助言を仰いだおかげで、議論されたテーマはすこぶる多岐にわたるものとなった。その内容については、研究成果報告書に反映している。この研究成果報告書では、テーマが近代能、海外巡業演劇、劇場建築、舞台写真、舞踊、劇場音楽等にまで拡がっており、つぎにような論として結実している。伊藤真紀「日比谷野外能と舞台の松」、井上理恵「川上音二郎の『金色夜叉』初演と海外巡業」、梅宮弘光「川喜田煉七郎による劇場計画案の舞台機構とその時代背景」、五十殿利治「『機械美』時代における舞台と写真」、木下直之「日清戦争と原田重吉の奮闘」、木村理恵子「舞踊家アレクサンダー・サハロフの来日をめぐって」、京谷啓徳「山本方翠と活人画」、桑原規子「アーニー・パイル劇場をめぐる美術家たち」、武石みどり「山田耕作の初期劇中音楽」坂本麻衣(研究協力者)「川上音二郎の舞台改革」である。これらの議論は各研究者が研究会での意見交換を踏まえたものであり、今後さらに各ジャンルにおける舞台美術への理解を促進するとともに、舞台美術に関わる文化的な領域の多様性をつねに踏まえた研究を進めることが期待できる。
著者
内村 太郎 古関 潤一 桑野 玲子 東畑 郁生 西江 俊作 WANG Lin QIAO Jian-Ping YANG Zongji HUANG Dong HUANG An-Bing LU Chin-Wei
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中国、台湾、日本で、強い地震によって損傷を受けた自然斜面が、その後の豪雨をきっかけに崩壊する「地震と降雨の複合的な作用」による斜面災害を対象として調査研究を行った。(1)地震で強震を受けた山岳地域の斜面で、踏査、機器を使った調査と観測、現地実験を行い、斜面の不安定化の実態とメカニズムを把握し、危険な斜面の抽出の方法や災害を軽減する方法を提案した。(2)低コストで簡易な斜面表層の変状の観測装置を用いて、斜面災害の前兆をとらえ、早期警報によって被害を軽減する技術の実用化を推進した。さらに、多点計測や、弾性波を用いた斜面監視など、新しい技術を開発した。
著者
鹿又 伸夫 与謝野 有紀 平田 暢 野宮 大志郎 織田 輝哉 稲葉 昭英 太郎丸 博 高瀬 武典
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.異なる分野の調査データに適用するという研究目的については、歴史社会学、社会運動論、組織社会学、社会心理、社会行動などにかかわるデータの分析を行った。具体的には、農民暴動、ボランティア団体、社会的属性と意識、援助行動、携帯電話への不快感、出産意向などの分析をおこない、ブール代数アプローチが多様な分野およびテーマに応用可能であることを示した。2.調査方法の異なるデータへ適用するという研究目的については、事例データのみでなく、歴史的資料データ、既存データのメタ分析、クロス表データ、ヴィネット調査データ、手紙データなど多様な調査データへの応用方法を提示し、ブール代数アプローチを様々な調査データへ応用可能にした。3.理論の定式化および理論比較への適用という研究目的については、演繹的に理論モデルを構築する手法によって、役割概念を理論的に再定式化する成果が得られた。そこでは、役割の階統性・可視性による役割構造分析という、役割理論にたいする新たな分析を提示した。4.数理モデルとして拡張するという研究目的については、論理演算の明示化、確率モデルとの比較、真理表データの2値化基準の検討などを行い、数理モデルとして拡張していくための基礎的検討を行った。これらでは、データの多様性の欠如や、矛盾のある行などの方法論的問題にたいする対処策を提示した。以上のように本研究では、方法論的な基礎的検討(上記4.)、発展的応用方法の開発(上記2.および3.)、そして実質的研究への応用(上記1.)を行った。とくに実質的研究へ応用にかんしては、意識や行動における主観的論理や主観的状況定義にブール代数分析が有効であることがわかった。
著者
安部 正真 川勝 康弘
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現在「はやぶさ」に続く小天体探査の検討が進められている。次期小天体探査では「はやぶさ」が探査したS型小惑星よりさらに始原的なタイプの小惑星の探査を進める予定である。具体的にはC型小惑星の探査を検討しており、探査機が到達しやすい近地球型小惑星の中で始原的なタイプの小惑星を多数検出することが必要となってる。本研究において、我々はまず、探査機の到達しやすい近地球型小惑星のリストを作成した。リストアップした小惑星それぞれについて観測好機を調べ、観測後期を迎える小惑星の多色測光を適宜行い、小惑星のスペクトル型の推定を進めてきた。観測は東京大学木曽観測所の1.05mシュミット望遠鏡および台湾鹿林天文台の1m望遠鏡を用いている。これまで3年間で30天体の観測を実施し、20天体のスペクトル型を推定することに成功している。これらのうち5つはC型小惑星であった。本研究開始前の探査しやすい近地球型小惑星でC型小惑星と判明していた天体は、7天体であったが、我々の研究成果と海外の研究者の観測成果を合わせて、現時点でC型小惑星は15天体となり、ほぼ倍の数となった。この数は本研究を開始する前の予測とほぼ一致している。探査しやすいC型小惑星の数が約2倍になったことにより、探査計画の設計自由度が上がり、探査のフィージビリティーが向上している。これらの結果を踏まえて、2010年の打ち上げを想定している「はやぶさ2」ミッションの探査候補天体については、C型小惑星である1999JU3が有力な探査対象として選ばれている。本研究では1999JU3を探査する場合の探査機の具体的な軌道計画についても検討を行い、はやぶさと同程度の探査機設計で探査できることを明らかにした。
著者
山口 和子 西村 清和 長野 順子 川田 都樹子 前川 修
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

写真の非芸術的側面と従来みなされてきた細部の再現からなる触覚的質が、視覚をモデルとするモダンの美的ヒエラルキーと知を揺るがし、日常的なものや無意味なもの、アブジェクトなものや非焦点性を芸術の世界に組み入れ、芸術のポストモダン的状況を作り出すと共に、アパレイタスとしてのその特性は自我やリアリティーの消失に対応している。他方、芸術と写真とのこの近接は写真の非芸術的な起源への問を再び呼び起こしている。
著者
小島 浩之 上田 修一 佐野 千絵 安形 麻理 矢野 正隆 吉田 成 内田 麻里奈 森脇 優紀 冨善 一敏 設楽 舞 野中 治 木部 徹 島田 要
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、記録媒体として紙に次ぐ歴史を有するにもかかわらず、これまで学術的な観点から調査・研究がなされてこなかったマイクロフィルムについて、図書館等への訪問実態調査(33機関)、および図書館と文書館への質問紙調査(大学図書館:1,378、都道府県立図書館:58、国立国会図書館:1、公文書館:75、大学文書館:88、専門図書館:380)を基軸とし、生産・出版・保存・活用・管理等の諸側面から総合的に分析した。
著者
橋本 由紀子 米良 重徳 中川 香代
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では近年の企業の社会貢献(CSR)の国際的新動向を鑑み、CSRの質的向上が急務であることから、有用なCSR評価指標の開発を試みた。そのためにRavi Kirloskar Quality Performance Model(RKQP MODEL)指標を使用し、インド、プネ市の産業地区における多国籍企業を含む合計10社のCSR担当者計14名、住民計200名、地域リーダー計20名に面接聞き取り調査を実施し、結果を経年度比較と因子分析を行い、評価に重要な6因子を抽出した。また、質的調査により、住民参加型、専門部署による運営等、高評価の要件を導き出し、今後のCSRの動向を整理し、課題を提起した。
著者
根岸 雅史 投野 由紀夫 長沼 君主 工藤 洋路 和泉 絵美
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来の言語テストは、専ら「宣言的知識」を測定してきたと思われる。そこで、本研究では、「手続き的知識」を測定することのできるテストの開発を試みた。このために、大規模英語学習コーパスのテキスト分析を自動で行うことにより、学習者の習得段階を明らかにし、これを反映するようなテスト方法を模索した。「テスト」という手法自体は必ずしもうまく機能しなかったものの、作文の「チェックリスト式採点」はある程度の信頼性のある結果を得ることができることわかった。
著者
田渕 五十生 池野 範男 草原 和博 秋山 伸隆 大知 徳子 中澤 静男 森本 弘一 西山 厚 吉澤 悟 五島 政一
出版者
福山市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「ESD」は「21世紀における市民教育」(Citezensip Education)である。我々は、「ESD」のツールとして、新しく「世界・地域遺産教育」と云う概念を造り、「何処でも誰でも」実践ができる「教材事例集」を作成した。それは、研究協力者が日本の世界遺産の全てにフィールドワークを行い、授業実践にかけて作成したものである。それを使用すれば「何処でも、誰でも」ESDにアプローチ可能な内容になっている。また、日本の教育現場では、「グローバル・シティズンシップ教育」の概念は未知である。我々は、その概念を紹介して「多文化共生」の実践事例集付きの冊子を刊行した。
著者
谷口 一雄 三辻 利一 中井 泉 吉村 作治 宇高 忠 中村 浩
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は文化財資料や考古学資料等を持ち出すことなく"その場分析"を行いつつ、かつ非破壊な分析を要求する資料に対して資料の化学構造、化学種の情報を与え、かつ定量分析を可能とする文化財分析用可搬型X線分析装置を試作し、あわせてこの試作装置による文化財・考古学分野への適用評価を行うことである。このため、文化財・考古学分野でX線を用いた分析手法でどのような情報の抽出が求められているか、いかなる条件の下で測定しなければならないか等を含めて測定要素の検討を研究分担者の専門分野ごとに行い、2001年3月末までに試作装置を完成させた。この間、研究分担者、吉村、三辻、及び中村らはそれぞれ個別に適用評価に係わる予備調査を行った。特に吉村はエジプト古王国・新王国時代の埋蔵副葬品・貴金属類への適用を、中村は日本国内における銅鐸等金属類への適用を、また三辻は古代・中世土器への適用評価に向けての予備実験・調査を行った。平成13年度は岩石分析の問題抽出の為の岩石フィールド分析の実習を兼ねた研究会を実施し、この成果をもとにエジプトでの出土遺物のレリーフとステラのその場分析を実施した。本研究で開発を行った考古学分析用可搬型X線分析装置による考古学分野への適用評価研究として、平成14年度はエジプトでのフィールド測定を行った。ポータブル蛍光X線分析装置1号機の改良を行い、よりその場分析に適した装置を開発した。本装置は、モノクロメータにより単色化したX線と白色X線の二つの励起源が選択でき、また1号機に比べて、分光ヘッド部の大幅な軽量化及び先端形状を細く円錐上に改良することで、湾曲した面など様々な形状を持つ考古資料の分析に対応できる特徴を持っている。本装置とともに、高いS/N比が実現した新開発のポータブル粉末X線回折装置をエジプトのアブ・シール南丘陵遺跡の発掘品収蔵庫に設置し、その場分析を行った。両装置を用いて遺跡から出土した彩色プラスター、彩文土器の顔料等を分析し、エジプシャンブルー、アマルナブルー、赤鉄鉱、軟マンガン鉱などが青、赤及び黒色の顔料として同定できた。
著者
ロバート ジェイコブズ ブロデリック ミック
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

放射線被ばくの健康面への影響に関する知見は多くあるが、本研究は放射線被ばくの社会的・文化的影響について歴史的・比較文化的検証を行った点において、初の研究であると言える。世界各地で放射線に被ばくした人々やその家族、また核実験へ参画した人々などへ数多くの聞き取り調査を実施した。社会的・文化的影響の一端としては、仮設住宅への移住、食生活の変化や制限、宗教や伝統の分裂・崩壊、伝統的知識の途絶などが挙げられる。被ばくの実相は家庭内においても、子や孫の世代へ受け継がれぬまま隠される傾向がみられ、個人、家族、地域社会のあらゆるレベルにおいて社会的・文化的崩壊を招くことが分かった。
著者
百生 敦 矢代 航
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

X線Talbot干渉計を含め、X線透過格子を用いる微分位相計測技術と、フレネルゾーンプレートを用いたX線結像顕微鏡を組み合わせることにより、位相敏感X線顕微鏡の開発し、高分子材料や生体組織などの弱吸収物体の高感度・高分解能観察技術を立ち上げた。さらに、試料を回転させて複数の投影方向で撮影を繰り返し、試料内部構造の三次元屈折率分布画像の再構成(X線位相トモグラフィ)も実現した。
著者
柏原 昭博 渡辺 成良 長谷 川忍 岡本 竜
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大学の研究グループなどにおける研究活動に着目し、徒弟的な関係を踏まえて研究初心者が熟練者と同様に真正な文脈で学ぶことができるようになるためのスキルの獲得・向上を支援する計算機システムを構築した。特に、研究活動と連携しつつ段階的に学習スキルアップを図る新しい支援の仕組みを実現した。具体的には、Webリソースから研究活動に関連する知識を学ぶスキル、研究ミーティングでの学習スキル、プレゼンテーションスキルを取り上げ、学習プロセスを具体化する認知ツールを基盤とした学習スキル向上支援技術を設計・開発した。
著者
増山 幹高 坂本 孝治郎 待鳥 聡史 奈良岡 聰智 村井 良太 飯尾 潤 竹中 治堅 川人 貞史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

この研究では, 日本を含む議会制民主主義諸国における立法と行政のあり方を体系的に理解し, 歴史的・比較政治学的視座に基づいて日本の国会および議院内閣制を理論的・実証的に分析している. とくに, 国会に関する未公開史料の保存・整理を進めるとともに, 代議制民主主義の発展過程, 二院制と立法・行政関係の制度構造, 議会制度と選挙制度の相互連関を歴史的・比較政治学的に検証している.
著者
和氣 典二 河本 健一郎 和氣 洋美 張 善俊 斎田 真也 葭田 貴子 葭田 貴子 大森 馨子 宮崎 由樹
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

1)変化検出課題や二重課題による注意やパタン知覚の研究や触覚と視覚の比較研究を行った。変化検出課題を視野狭窄が生じている緑内障や網膜色素変性の眼球運動は人為的に視野を制限したときの4゜から8゜の場合と類似していることや変化を検出するときの反応時間は視力に影響されずに加齢や視野の障害の程度に依存することを明らかにした。触覚で変化検出課題を行うと、触覚の反応時間は視覚より顕著に長くなる。この知見から手の触野を視野で表すと、約0.5゜に相当する。二重課題では偏心度を変えたときの輝度コントラストと色コントラストを検討し、偏心度が増すと、感度が著しく低下することを示した。また、輝度コントラスト感度に差がなくても、色コントラスト感度では高齢者は顕著に若年者より低下する。パタン知覚の場合、先天盲や先天的ロービジョンは3次元情報を触覚で報告できないが、後天盲ではそれが可能である。2)応用的観点から、地下空間の快適性・安全/安心に大きな影響を与えるものに視認性や視覚的注意があることを指摘し、それを踏まえた空間の評価法を提案した。また、画像処理の応用面として、電子透かし技術の実用化をはかった。
著者
勝野 眞吾 鬼頭 英明 西岡 伸紀 三好 美浩 和田 清 吉本 佐雅子 尾崎 米厚 永井 純子
出版者
岐阜薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

若者の喫煙,飲酒を含む薬物乱用は変化するので繰り返し調査をしてモニタリングを行うことが必要である.本研究では,日本とアジアの青少年の薬物乱用の実態を調査し,データ・アーカイブを構築した.得られた結果は以下のようである.(1) 日本の青少年の喫煙,飲酒経験は連続して低下しており,2009年の時点でのこれまで1度でも喫煙経験した者の割合は13.1%,飲酒生涯経験率は56.7%であった. (2) 何らかの違法薬物を一度でも経験した者は2009年,男子1.1%,女子で0.6%であった. (3) 日本を含むアジア諸国の青少年の違法薬物乱用経験は欧米に比べて著しく低い. (4) 日本の高校生のほとんどは,薬物乱用の危険性をよく理解し,乱用に拒否的な態度を もつ. (5) 以上をまとめデータ・アーカイブを構築するとともに,その重要性を指摘した.
著者
猪瀬 武則 山根 栄次 栗原 久 阿部 信太郎 山岡 道男 淺野 忠克 山田 秀和
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

価値多元社会における多面的多角的見方を育成する経済教育カリキュラムの開発研究である。研究を進める上で、「カリキュラム班」と「金融リテラシー班」の二つに分けた。カリキュラム班では、「価値多元社会における多面的多角的見方」の原理研究と海外のカリキュラム調査を試みた。金融リテラシー班は、中学生の金融リテラシー調査結果をもとに、経済的見方の有無にかかわらず一定の経済知識はあることが明確となった。カリキュラム班で明らかにした多面的多角的見方育成の原理と、リテラシー調査班で明らかにした中学生の現状の一端を説明する。前者に関しては、第一に、多面的多角的見方育成のための原理として、(1)一元的な経済学教授から多元的な経済学教授へ、(2)政策決定学習などでの経済論争を基礎とした既得観念との差異を対象化する学習、(3)経済学の合意・不合意を前提としたカリキュラム教材の構成を、(4)行動経済学などの成果を基にした感情などを踏まえた意思決定モデルの精緻化を提起した。また、カリキュラム教材としては、米国では、問題基盤経済学、経済学の倫理的基礎付け教授などのカリキュラム教材によって、英国からはビジネス教育のカリキュラム教材にそのモデルを見いだした。後者のリテラシー班では、稀少性などの経済基本概念がきわめて弱く、福利などの知識が弱かった。財の種類、収益が高い貯蓄商品、複利計算、株と債券の違い、投資家の収益(配当)、分散投資などは、米国に比しても高く、半数以上は把握していた。日米の差異は、文化的背景も考えられるが、カリキュラムや教材を含め、多面的内容構成に課題を投げかけている。
著者
奥 忍 権藤 敦子 HERMANN Gottschewski
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究の完成年度として、3度の研究会を開催してこれまで行った研究成果について検討と補足をした上で報告書の形で総括をした。研究の目的を実現するために、本研究では数多くの研究者、学生の協力を得たので、それらを含めて、成果を全185頁の報告書として刊行した。第1部「忘れられたアイデンティティ」:日本音楽をめぐる教育の場の現状を3つの角度から明らかにした。第2部「潜在する音楽的アイデンティティ」:日本音楽・芸能におけるリズムを対象とした実験研究を行い、口上や朗読、伝統音楽にみられるリズムの特質について分析を行う。また、学生の表現の分析によって、その中に伝統芸能のリズム操作と共通する要素が含まれていることを明らかにした。第3部「近代日本の歌における日本語の捉え方」:第1部や第II部で浮上した問題について歴史研究の手法でアプローチした。近代日本における日本語による歌の捉え方、音楽要素に着目した日本語指導などについて扱った。第4部「音楽的アイデンティティの再認識」:言葉と音楽との関係に着眼した授業の開発とその成果の検討。日本音楽の学習に関する客観的で分析的な理論研究の裏付けをもつ実践的な研究が必要とされるため、方法の異なる実践例を検討し、例示した。研究の内容は以下のとおりである。I 忘れられたアイデンティティ1.小学生と中学生に見る日本伝統音楽に対する姿勢2.教員養成関係学部における日本音楽の動向3.現代の若者にとっての日本音楽-大学院生のレポートに見る日本音楽-II 潜在する音楽的アイデンティティ-リズムを中心に-1.香具師の立ち売り口上におけるリズム操作-「がまの油売り」の場合-2.「何は何して何とやら」におけるリズム操作-茂山千之丞による7つの演じ分けを基に-3.日本の伝統芸能のリズム-共通詞を用いた伝統芸能の音声分析-4.朗読と歌唱のリズムの類似度を定める方法についての考察5.音楽教育専攻学生に見る伝統芸能的な語感-歌舞伎風「名乗り」のリズム分析-6.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(1)-行と行間、連間に焦点をあてて-7.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(2)-行間と連間の感受に焦点をあてて-8.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(3)-詩の初見と再読による「間」の取り方-9.詩の朗読から歌うことへ-詞を詠・唱・歌う-III 近代日本の歌における日本語の捉え方-西洋音楽との関わりから-1.「国の子ども」を定義する-近代日本子ども音楽の三つの場面-2.音楽教育と外国語教育の接点-語学教育における歌唱のすすめ-3.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(1)-兼常清佐の言説を中心に-4.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(2)-高野辰之の言説を中心に-5.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(3)-わらべうた教材の分析をとおして-IV 音楽的アイデンティティの再認識-声と言葉による学習の開発-1.言葉のリズム学習としてのヴォイス・プロダクション-「お祭り」の創作学習2.香川の民話・民謡・方言を用いたミュージカルの創作-小学校低学年向け「狼の眉の毛」-3.オノマトペによる音楽創作-ヴォイス・プロダクション『のでのでので』-4.讃美歌から生まれた歌唱教材-「星の世界」に見る歌詞の変遷-5.体験学習「歌舞伎の表現」-内在する伝統的なリズム感に気づく授業