著者
粟谷 佳司 福間 良明 長妻 三佐雄 馬原 潤二 根津 朝彦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、同志社大学における新聞学専攻の形成と展開を通して、新聞学という学知とその文化を考察した。同志社大学の「新聞学」を戦前から戦後にかけての政治学などの学問の知との関係、戦後大衆化する大学と学生の文化などから複合的に考察し、その生成と展開について検証した。特に、鶴見俊輔を始めとした新聞学専攻の教授や京都の知識人、関係者の言説の研究から、「新聞学」という学知の変遷、学生が関わる大衆文化をその社会空間や言説空間の成立と展開過程から、文献や資料、インタビュー調査などによって分析した。
著者
森口 眞衣
出版者
日本医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は20世紀初頭の日本で創案された森田療法(Morita Therapy)を主対象とした成立史研究である。森田療法は明治近代化期のドイツ医学導入により精神医療が神社仏閣や民間施設などでの対処から精神病院での医療へと変化する時期に成立しており、その過程では仏教との関連がしばしば指摘された。しかし森田療法の成立には仏教だけではなく当時の社会的動態としての宗教との関連が想定されるものの、未整理の部分が残存する。そこで本研究は主に仏教史研究との連関を視野に入れつつ、精神療法と宗教の影響関係について、成立背景という側面から分析を試みる。
著者
志田 えり子
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

言語ゲーム論によれば、世界とはルールの束である。ならば、逆に適切なルールの束を与えてやれば、そこに世界が構成されるはずだ。コンピューターロールプレイングゲーム(RPG)が行っているのはまさしくこれである。すなわちRPGは架空の世界を構成し、それにリアリティを与え、プレイヤーにその世界に生きているという感覚(社会参加感)を与えることを目的とするゲームだからである。よいRPG(人気ソフト)はこれに成功している。したがって、それらのソフトがどんなルールを提供しているかを見ることによってわれわれは、どんなルールが提示されればプレイヤーが世界にリアルティをもち、かつその世界に主体として積極的に関わっていると認識することができるのかを知ることができる。具体的には、いわゆるドラクエなどの人気ソフトに共通して見られるのは、自然法則、社会制度といったルールに加え、「人格化のルール」と呼びうるようなルールが提示されているということである。すなわち画面上の動きや変化を行為として認定し、その行為を何らかの人格(自己や他者)に帰属させ、その人格の動機によって説明するルールである。この「情報の人格化」がゲームのリアルティを高め、そのゲームの人気を高める。このように、社会参加の感覚を人々がもつか、それとも疎外感を感じるかは、人々がどんな人格化ルールのもとに置かれているかに依存するのだということ。また、RPGをかなり低年齢の子どもが楽しみうるということからみて、われわれはかなり早い時期にルールを読み解く能力を身につけているのだということ、以上2点がRPGの分析を通じて明らかとなった。今後さらに具体的・内容的な検討を加えたい。
著者
片岡 洋祐
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01

プラズマは光・電子・イオン・ラジカルの集団で、生体分子や組織と相互作用することが知られ、近年、癌治療や止血等に応用されようとしている。しかしながら、中枢神経組織へのプラズマの作用については報告が少なく、その応用の可能性は未知数である。本研究ではラットの中枢神経組織を対象に大気圧プラズマを照射し、神経伝達や組織の可塑性・再生機能へ及ぼす効果を検討した。特に、大脳新皮質へ大気圧プラズマを直接照射して、その後の組織学的な変化を観察した結果、照射3日から7日後にかけて、大脳皮質の照射部位近傍において、グリア前駆細胞マーカーを発現する細胞やミクログリアマーカーを発現する細胞などの複数の細胞種が層状に配列する特徴的な組織構築が形成され、組織の再生を誘導する再生面を形成することを発見した。また、照射後3日をピークに未分化細胞マーカーを発現する細胞も多数出現し、活発に増殖していることも見出した。そこで、こうした大脳皮質組織を採取し、培養試験系にてスフェア形成実験を実施し、多分化能を有する幹細胞が誘導されているかを検討した。その結果、プラズマ照射組織からは大型のスフェアが多数形成され、分化誘導するとニューロン・オリゴデンドロサイト・アストロサイトなどの中枢神経細胞が得られることもわかった。大気圧プラズマ照射技術は、今後、中枢神経組織をはじめ、生体のさまざまな組織の再生医療に応用展開できる可能性が見出された。
著者
戸谷 登貴子
出版者
独立行政法人国立病院機構
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2018

1. 研究目的本研究は、学校音楽授業の歌唱学習プロセスを現象的に捉え、科学的な分析を行うことから歌唱指導の改善・向上を図ることを目的とした。小・中学校の授業の歌唱学習方法が模倣を中心としており、それにより起こる相似現象には、学習者が指導者の長所のみならず、短所までも習得している可能性がある。しかし、このことを現場教師の多くが気づかず指導に当っている。これは、歌唱指導法の問題に加え、子ども達の学習状況と喉の健康面にも問題が生じている。そこで集団歌唱の中で個々がどのように歌唱しているか、特に教師との模倣、学習者同士の模倣に焦点を当てて実態を明らかにすることから、学習プロセスにおける相似現象の特徴とメカニズムを明らかにすることとした。2. 研究方法(1)音声分析・解析国立病院機構東京医療センター臨床研究センターの医学博士・角田晃一研究部長に音声解析と研究助言を、東京大学附属病院耳鼻咽喉科の医学博士・今川博氏に音声分析の協力を頂いた。(2)音声検査千葉県内の公立中学校2校の音楽授業で、中学1年生を対象に音声検査を行った。3. 研究成果実際の音楽授業での集団歌唱場面で、教師の歌唱と個々の歌唱の音声検査を行うことができた。被験者が中学1年生だったため、変声期の生徒も多く、さらに部活動などが原因と思われる嗄声も両校共に見られた。それらの音声データから歌唱学習が個々の実態に即して行うことの難しさも明らかになった。また、教師と生徒との歌唱の相似は、今回の音声データにも見られたが、特に教師の嗄声が生徒の歌声の響きのポジションに影響していることがわかった。このことは、生徒たちの声の健康面にも影響するため、教師自身が気づいて指導することが大変重要である。これらの課題は、音声データと共に学会で発表を行った。歌唱指導法の向上だけでなく、学校教育において、子ども達の声についての関心と喉の健康について啓蒙する必要性を感じた。
著者
中村 博昭 鳥居 猛 鈴木 武史 吉野 雄二 山田 裕史 松崎 克彦 廣川 真男 石川 佳弘
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

昨年度に基礎を確立した複素および1進の反復積分の関数等式の導出法(Wojtkowiak氏との共同研究)を延長して,具体的な実例計算をさらに検証した.とりわけ古典的な高次対数関数について知られている分布関係式(distribution relation)の1進版を導出することに成功した.分布関係式は,様々な特殊値を代入することで,高次対数関数の特殊値の間に成立する様々な関係式を組織的に生み出す重要なものであり,1進の場合にも並行してガロア群上の関数族(1-コチェイン)を統御する要となることが期待されるが,前年度までに得られた関数等式との整合性についても検証を行った.8月にケンブリッジのニュートン数理科学研究所で行われた研究集会"Anabelian Geometry"において口頭発表を行った.このときの講演に参加していたH.Gangl氏,P.Deligne氏から今後の研究指針を考える上で有用になると思われるコメントを頂戴することが出来た.また分布関係式の低次項の解消問題に関連して,有理的な道に沿った解析接続の概念にっいて考察を進める必要が生じた.こうしたテーマに関連して研究分担者の鳥居氏には,有理ホモトピー論に関する情報収集を担当していただき,また研究分担者の鈴木氏には,量子代数やKZ方程式との関連で組みひも群の数理についての情報収集を担当していただいた.以上の研究成果の一部は,共同研究者のWojtkowiak氏と協力して,"On distribution formula of complex and 1-adic polylogarithms"という仮題の草稿におおよその骨子をまとめたが,まだ完成に至っていない.周辺にやり残した問題(楕円ポリログ版など)もあり,これらについて一定の目処をつけてから公表までの工程を相談する予定になっている.
著者
鄭 忠和 山口 昭彦 増田 彰則 宮田 昌明 枇榔 貞利
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

慢性心不全・閉塞性動脈硬化症・慢性疲労症候群・慢性疼痛・慢性呼吸不全に対して、60℃の遠赤外線乾式サウナ装置を用いた温熱療法の効果を検討した。心不全に関しては、2週間の温熱療法は心室性期外収縮総数、連発性心室性期外収縮、心室頻拍を有意に減少させた。ノルエピネフリン濃度は有意に低下し、24時間ホルター心電図による心拍変動解析(SDNN)は30%有意に増加した。さらに、2週間の温熱療法で、グレリン及び成長ホルモンは有意に増加し、質問表による食欲の改善が認められた。温熱療法は慢性心不全患者で増加した酸化ストレスを減少させることも明らかにした。心不全発症ハムスターを用いた実験において、温熱療法非施行群と比較し、温熱療法群では、生存率を35%有意に改善し、eNOSのmRNA及び蛋白の発現や血清nitrate濃度を有意に増加した。温熱療法による血管新生に関する検討では、アポ蛋白E欠損マウスの下肢虚血モデルにおいて、5週間の温熱療法は下肢血流と血管密度を増加させた。L-NAMEやeNOS欠損マウスを用いた実験により、温熱療法の血流改善作用にeNOSとNOが重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、10週間の温熱療法により、閉塞性動脈硬化症(ASO)患者の下肢疼痛、6分間歩行距離、ABI、体表温度、レーザードプラ血流計による下肢血流、下肢血管造影、皮膚潰瘍に関して有意な改善を認めた。4週間の温熱療法は、軽症うつ患者の愁訴や食欲低下を改善させた。また、慢性疼痛患者の疼痛を軽減し、その後の社会復帰率を高めた。さらに、2名の慢性疲労症候群患者に対して温熱療法を施行し症状の改善を認め、社会生活に復帰した。温熱療法は慢性閉塞性肺疾患患者におけるRV dP/dt、運動中の肺高血圧、運動耐容能、QOLを改善することが示された。温熱療法は、これらの疾患に対する新しい治療法として期待される。
著者
田口 善弘
出版者
中央大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

研究目的に書いた通り、「『テンソル分解を用いた教師無し学習による変数選択法』を用いて、ヒストン修飾の研究を行うこと」である。
著者
塚原 伸治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、現在の商店街について、従来の研究が前提とする「地域活性化モデル」の限界を乗り越えて、民俗学的視点から「もうひとつの活性化論」を提示する。そのために2つの商店街(千葉県香取市、福岡県柳川市)の現地調査を実施し、以下を検討する。第一に、一度シャッター通りとなった商店街の現状を、それぞれの地域における取り組みの産物として理解しなおす可能性を検討する。第二に、商店街の衰退および再生について、過去100年の歴史的経緯との関連から再検討する。それぞれの生活と歴史に根ざした固有の文脈を重視する民俗学の視点を導入することで、21世紀における商店街の衰退と再生を理解するための新たなモデルを構想する。
著者
石原 正志
出版者
岐阜大学・医学部附属病院・薬剤部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究の目的】我々は、多施設共同研究でオピオイドによる便秘対策に緩下剤の予防投与が重要であることを明らかにした。この研究の中で多くの施設で酸化マグネシウム(以下、MgO)が緩下剤として使用されていた。一方、MgOが緩下作用を発揮するには、1,000mg/day以上の投与量が必要であるが、MgOが1,000mg以上投与されていても便秘を発現している患者が見受けられた。一般的にMgOによる緩下作用は胃酸(HCl)が必要であるが、制酸剤の併用による胃酸分泌の低下がMgOの緩下作用に及ぼす影響は明らかではない。また、オピオイドを服用している患者の多くは、NSAIDsを服用しており、その胃腸障害予防の為にH2ブロッカー(以下、H2R-B)やプロトンオポンプ阻害薬(以下、PPI)などの制酸剤を併用している。そこで本研究では、オピオイドの便秘に対して、MgOが投与されている患者において、制酸剤の併用がMgOの緩下作用に影響を及ぼすか否かを検討する。さらに、制酸剤による影響が明確になった場合、緩下剤の種類、用量について解析し、オピオイド投与時の適切な薬剤の種類および投与量を明らかにすることにより、オピオイド内服薬投与時の投薬投与計画を確立する。【方法】2007年1月から2014年10月の期間に、当院においてオピオイドが新規に投与された患者441症例を対象とし、MgOが予防投与された患者において、制酸剤(H2R-BあるいはPP工)が併用されている場合と併用されていない場合の便秘の発現状況を比較検討した。また、MgOが投与されている患者において、便秘発現率に影響を及ぼす要因について解析した。【結果】全症例441例中、MgOが単剤で投与された患者は248例であった。また、このうち制酸剤が併用されていた患者は約60%を占め、これらの患者ではMgOの便秘予防効果は有意に阻害されていた(p=0.017)。ただし、MgOの投与量が2,000mg/day以上投与されている場合は、制酸剤併用の影響はほとんど受けていなかった。一方、センノサイドなどMgO以外の緩下剤が予防投与されていた場合は、制酸剤併用の影響はほとんどなかった。また、MgOが投与されている患者の中で便秘発現のオッズを有意に上昇させたのは、制酸剤が併用されている場合[オッズ比(OR)=2.335, 95%信頼区間(CI)=1.093-4.986, p=0.028]とMgOの投与量が1,000mg/day以下の場合[OR=4.587, 95%CI=2.287-9.198, p<0.001]であった。【結論】オピオイドによる便秘対策としてMgOを予防投与する場合、MgOの投与量として1日2,000mg未満では制酸剤の影響を強く受けることが明らかとなった。
著者
加藤 泰史 小松 香織 前川 健一 松田 純 宇佐美 公生 石川 健治 竹下 悦子 上原 麻有子 清水 正之 齋藤 純一 松井 佳子 後藤 玲子 小倉 紀蔵 村上 祐子 中村 元哉 小島 毅 品川 哲彦 水野 邦彦 林 香里
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

平成30年度の研究計画にもとづき、8月に一橋大学で分担者および協力者(国内)と研究打ち合わせを行い、平成30年度の計画を確認すると同時に、分担者の村上祐子氏が研究発表を行った。また、分担者および協力者の何人かに、『思想』2019年3月号および4月号の特集で研究成果の一部を発表してもらうように再度依頼して確認した。なお、代表者の加藤は8月にWCP北京大会に参加してプレゼンテーションを行った。10月に代表者が渡独してシェーンリッヒ教授(ドレスデン工科大学)らと論文集の編集およびそれに関連した国際ワークショップ企画に関して打ち合わせを行うとともに、11月に一橋大学で網谷壮介氏(立教大学)らを招聘して概念史的研究の一環である「第7回スピノザ・コネクション」を開催した。12月に東京大学で、非欧米圏担当の分担者および協力者と研究打ち合わせを行うと同時に、金光来研究員(東京大学)の講演会を行った。平成31年1月に代表者が、10月に一橋大学で開催予定の国際ワークショップの企画および論文集編集の件で再度渡独し、クヴァンテ教授(ミュンスター大学)・ポルマン教授(ベルリン・AS大学)らと研究打ち合わせを行うと同時に、シェーンリッヒ教授の主催する研究会に参加した。3月に京都大学で、科研費のワークショップを開催し、代表者の加藤と分担者の小島・小倉両氏が研究発表を行い、またニーゼン教授(ハンブルク大学)・マリクス准教授(オスロ大学)・バーデン教授(イリノイ大学)・デルジオルジ教授(エセックス大学)を招聘して一橋大学で国際ワークショップと、さらに手代木陽教授(神戸高専)らを招聘して「第8回スピノザ・コネクション」を開催すると同時に、『ドイツ応用倫理学研究』第8号を刊行するとともに、科研費のHPも完成させた(http://www.soc.hit-u.ac.jp/~kato_yasushi/)。
著者
篠田 謙一 佐藤 丈寛 安達 登 角田 恒雄 神澤 秀明
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

昨年度行った縄文人のゲノム解析の成果の一部を本年に論文発表した。また同時に、得られたSNPデータからこの人物の形質の特徴を抽出して復顔像を作成し、プレス発表を行った。このニュースは多くのマスコミの取り上げられ、大きな反響があった。北部九州と南西諸島の縄文時代相当期の人骨の持つミトコンドリアDNAの分析を進め,両者が1万年ほど前に分離した集団である可能性があることを明らかにし、沖縄で行われた学会で発表を行った。更に、初年度の分析で縄文人のゲノム解析に関してある程度の成果を得たので,本年は日本人の成立を考える上で重要な,弥生時代人骨を中心にゲノム解析を進めた。縄文人の末裔と考えられている西北九州の弥生人のゲノム解析によって,彼らが既に渡来系集団と混血した集団であることを明らかにし,論文発表した。また,渡来系集団の起源地と考えられる韓国の6千年前の貝塚人骨である加徳島の新石器時代の遺跡から出土人骨のゲノム解析を行い,彼らが現代の韓国人よりも縄文的な要素を多く持っていることを見いだし報告した。更に渡来人の遺伝的な特徴を更に詳しく知るために,弥生相当期に当たる韓国の人骨の分析を進めている。日本国内でも渡来系とされる弥生人集団のゲノム解析を進めた。特に大量の人骨が出土した弥生時代後期の鳥取県青谷上寺地遺跡から出土した人骨について,網羅的な解析を行った。その結果,彼らの遺伝的な特徴は現代日本人の範疇に入るものの,多様性は大きいことが判明した。このほか,全国の大学研究機関や埋蔵文化財センターに所蔵されている縄文~古墳時代人骨を収集し,ミトコンドリアDNAの分析を進めた。更にその中でDNAの保存状態の良い個体については核ゲノムの解析も実施している。
著者
梅澤 明弘 秦 順一
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

TERT、E6、E7、およびBmiを遺伝子導入することにより寿命を延長したヒト骨髄間葉系幹細胞を用いてin vitroとin vivoにおいて心筋に分化するかどうかを検討する。ヒト骨髄間葉系細胞を限外希釈法でサブクローニングをして得られた細胞に、レトロウィルスを用いてTERT、E6、E7、およびBmiを遺伝子導入した。得られたヒト寿命延長骨髄間葉系幹細胞をGFPで標識し、マウス胎児心筋細胞と共培養することで心筋へ分化させ、さらに免疫組織化学を用いて抗心筋トロポニン抗体で評価した。また、免疫不全マウスの心筋にヒト寿命延長骨髄間葉系幹細胞を注射し、心筋への分化を免疫組織化学により評価した。in vitroでGFP陽性細胞は2日後に筋管細胞様に延長し、7日後には拍動する細胞を認めた。免疫組織化学では抗心筋トロポニン抗体陽性であった。また、in vivoにおいても抗心筋トロポニン抗体と抗β2ミクログロブリン抗体陽性の移植細胞が認められた。以上のことより、寿命延長したヒト骨髄間葉系幹細胞は心筋に分化し得ると結論づけられる。心筋細胞がin vitroで大量に確保できるという状況が現れれば、それらの細胞を用いた細胞移植という方法論で、末期重症心不全の治療に用いることが可能であろう。In vivoにおいて、胎児心筋細胞を用いて心臓への移植の可能性が証明されて以来、遺伝子を導入した細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、無処置の骨髄細胞などがドナー細胞として用いられてきた。また、胎児性幹細胞を用いた実験も報告されているが、倫理的な問題を含んでいる。
著者
飯塚 理恵
出版者
関西大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

知識の獲得に関わる善い性格を認識的な徳、知識の獲得を妨げてしまうような悪い性格を認識的な悪徳と呼ぶ。そのような知識をめぐる規範的な問いに取り組むのが徳認識論である。本研究は認識的な徳と悪徳をより明らかなものにし、いかに悪徳を回避できるのかを描くことを目指している。まず、悪徳の回避のために、社会を整備することの重要性を検討する。次に、徳認識論者はオープンマインドの徳(他人の意見を真剣に考慮すること)を推奨しているが、一方でわたしたちが親しい人々にのみ共感能力を発揮する傾向を持つという問題に取り組む。最後に、西洋社会の文脈でのみ行われてきた認識的謙遜の徳について日本の文脈における独自性を検討する。
著者
大江 朋子 高田 剛志 小川 充洋 古徳 純一
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

人は自らの身体と環境の状態を監視し,その時々で処理した情報を瞬時に統合させている。この情報統合において身体や環境の温度が社会的反応を導く可能性や,それに体温調節システムが関与している可能性はすでに論じられてきたものの,体温調節システムが社会的反応に影響するかは直接検討されないままであった。本研究では,身体の深部温や皮膚表面温の測定によりこれを可能にするとともに,温度情報が統合される過程で情報処理モード(攻撃と親和)の切り替えが生じるとするモデルを提案し,唾液中ホルモン(テストステロン,オキシトシン)などの生理的反応の測定とVR(virtual reality)技術を用いた実験を通してモデルの実証を試みる。