著者
高橋 悦子
出版者
四日市看護医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

質の高い看護ケアに影響を与える要因を明らかにすることを目的に調査を実施した結果、電子カルテなど医療のIT化が看護ケアに与える影響は大きく、本調査でも、IT導入による医療の安全性向上、情報共有の迅速化など看護ケアの質向上に寄与している点が指摘された。一方、看護師の専門的判断力を支える、アセスメント能力、クリティカルシンキングの育成とITシステムとの連携が今後の看護ケア質向上の課題となることが明らかになった。
著者
清水 健
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は主に(100)面と(110)面極薄SOI MOFETにおける移動度をより詳細に調べるための試作活動、および方向依存性を理論的に検討するための数値計算の両面における活動を開始したところであった。より具体的には、極薄SOIにおける移動度の方向依存性を調べるために共通チャネルを有する(110)面極薄SOI MOSFETを実際に試作し、評価を開始したところである。実験結果について今のところ大きな進展はないが、少なくとも当初の机上予測どおり、厚膜を有するSOI MOSFETにおいては定量的に移動度の方向依存性を比較することが可能であることを確認した。今後の課題については、SOIが10nmを切るような極薄膜において移動度を比較することが可能であるかを、実験および測定の両面から検討する必要がある。他方、数値計算においては若干の進展があり、SOI膜厚に依存して伝導方向の有効質量に変化が生じることを理論的に確認することができた。以上の結果については、実験結果とあわせて何らかの形で学会や論文誌へ投稿する予定である。これまで移動度、ひいては電流の方向依存性について十二分な議論がなされている状態からは程遠く、以上の結果を広く公開することは、学術活動としての評価のみならず、産業界へもメッセージを発信することが可能であると考えている。また、前年度に学会へ投稿していた論文が無事に採択されたので、6月にハワイで開催されたIEEE Silicon Nanoelectronics Workshopにおいて口頭発表を行った。本結果については今年度に明らかになったものではないので詳細は省くが、特別研究員の科研費で出張を行ったので報告しておく。自身の発表に際しては質疑も行い、また発表後の休憩時間にも複数の異なる研究グループから詳細について質問を受けたので、一定の評価はなされたものと考えている。
著者
小澤 正基 渡邉 雅之 佐々木 祐二 三村 均 池田 泰久 大橋 朗 須郷 由美 森田 泰冶 佐伯 盛久 橋本 和幸
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-05-11

高レベル廃液中で酸素酸イオンTcO4-として存在するTc(Tc-99)回収のための効果的な抽出剤を開発した。新しい配位子(2,2’-メチルイミノビスジオクチルアセトアミドMIDOAは、ジグリコールアミド(DGA)の中央のエーテル結合の部位に窒素を導入した中心骨格を持ち、Tcに対し強力な抽出能を示す。MIDOAは安定で毒性がなく、検査(治療)対象の臓器に無理なく取り込まれるTc (あるいはRe) 錯体を創製できた。クロマトグラフィ分離法による高レベル廃液処理分離プロセスを構築した。中性子捕獲による使用済み核燃料の核分裂生成物の元素変換挙動と創成元素の資源としての利用可能性を評価した。
著者
平塚 真弘
出版者
東北薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

これまでの検討結果から、等温遺伝子増幅法とイムノクロマトグラフィーを組み合わせる方法は困難であることが判明した。しかし、血液からの直接遺伝子増幅法や高速サーマルサイクラーを用いたPCR増幅の検討を行うことで遺伝子診断時間の大幅な短縮が期待できる。そこで、島津製作所製Ampdirectを用いて血液からの直接PCRを試みた。また、高速サーマルサイクラーであるアイダホテクノロジー社製Rapid Cycler2及びインディーを用いることにより、従来、約2時間を要していた遺伝子増幅時間を1時間にまで短縮することを目標とした。さらに、現在、検出デバイスとしてイムノクロマトグラフィーであるDNA検出ストリップを用いているが、この遺伝子診断法がこのデバイス以外にも応用可能か否かを検証するため、東洋紡製イムノチップを用いてSNP検出を試みた。基本的なPCR反応はこれまでと同様であるが、イムノチップのメンブラン上には、抗ビオチン抗体が結合されている。PCR後の操作としては、産物にperoxidase標識抗FITC抗体液を5分間反応させ、全量をチップに添加する。続いて洗浄液を添加し非特異的な結合を除去し、最後に発色基質溶液を添加し、SM)が存在すれば青色に発色する。つまりチップを2個用意し、一方には野生型検出プローブを用いた時の反応液を、もう一方には変異型検出プローブを用いた時の反応液を添加することによって遺伝子型を視覚的に判別することができる。これらを検討することにより、Ampdirectを用いて血液からの直接PCRが可能となり、DNA精製に要していた遺伝子診断時間を大幅に短縮することができた。また、高速サーマルサイクラーを用いることにより、従来約2時間を要していた遺伝子増幅時間を1時間にまで短縮することができた。さらにイムノチップの利用により、DNA検出ストリップ以外の検出デバイスでも良好な遺伝子診断が可能となった。
著者
松村 佳子 松村 竹子 森本 弘一 岡村 泰斗 岩本 廣美 小柳 和喜雄 鈴木 洋子 松村 佳子 淡野 明彦
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、まとめに当たって不足するデータをとりつつ、成果報告書の作成に取り組んだ。以下に報告書の構成とテーマを示す。第1章 フィールドワークプログラムの開発.1.河川を活かしたフィールドワークプログラムの開発2.フィールドワークプログラムの効果3.海外のフィールドワークプログラムの調査第2章 教員養成カリキュラムの作成1.フィールドワークを導入した教員養成カリキュラムの評価2.国内の高等教育機関における指導者養成カリキュラム3.海外の高等教育機関における指導者養成カリキュラム4.海外の民間団体における指導者養成カリキュラム5.河川をフィールドとする環境科学教育の展開-化学を中心とする環境教育の展開-第3章 河川からの情報を読む1.河川水の水質分析と生活パターンとの関連2.河川の水質とそこにみられる微生物の関係3.境教育教材第4章 河川をフィールドとする活動実践1.小学校における大和川を活用した環境教育の展開状況-奈良県・大阪府の教員対象アンケート調査の結果を通して-2.布留川をテーマとした活動を通して3.社会人研修会への学生の参加第5章 基礎となる研究1.e-Learningを活用した環境教育支援プログラム運営のための予備的調査-e-Learningのための教育モデルの開発-
著者
深田 智 西川 正史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

溶融塩Flibeはヘリカル型核融合動力炉(FFHR-2)の先進的液体ブランケット概念設計に取り入れられ、強磁場、強中性子束環境においても良好な熱除去とトリチウム増殖が期待されている。しかし、溶融塩中のトリチウム取扱技術が難しい事、トリチウム閉込めと回収が難しい事が予想され、世界的に見ても実証研究例が非常に少なかった。本研究では、トリチウム回収装置設計に必要なFlibe溶融塩内の金属材料中の水素同位体透過率、金属BeによるFlibeの酸化還元制御等を実験的に検討し、目標となるFlibe中のトリチウム濃度を1ppm以下、トリチウム漏洩率を10Ci/Day以下に制御するブランケット構成を実験的に確証することを目的とする。実験と解析から次のことが明らかにされた。1.Flibe中の重水素透過率をNi製二重管式透過装置を使って初めて測定した。求めた溶解度から未精製Flibe中の水素同位体はH^+の形で存在し、H^+とF^-イオンの移動は相互に電荷中性になるように拡散することが分かった。2.Flinak中の水素透過係数を測定し、水素は分子状で存在することが分かった。これはFlinakではFlibeに見られるようなBeF_4^<2+>の分子ネットワークが存在せず、溶融塩中でF^-イオンは常にLi^+,K^+,Na^+イオンと局所的に強い結合をして局在するからと考えられる。3.溶融Flibe中に金属Beを浸すことにより、酸化還元制御可能であることが分かった。これより、Flibe中に存在していた自由F^-イオンが溶解したBeと反応し、BeF_2の分子結合をして、F^-イオンが消費され、水素イオンは分子状で存在するようになると考えられる。従って、核融合炉内のトリチウムを分子状に制御可能であることが分かった。4.1GWの熱出力で発生するトリチウムを許容されたトリチウム漏洩率に保持するためには、高いトリチウム回収率が必要である。そのための、透過窓、気泡塔、スプレー塔の設計方程式を構築し、装置の規模を評価した。
著者
粂井 輝子
出版者
白百合女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

平成14年度はワシントン大学に所蔵されている『北米時事』新聞の川柳欄を閲覧コピーし、川柳をコンピュータに入力、平成15年度は『加州毎日』新聞の川柳欄を閲覧コピーし、川柳を同様に入力した。さらに『ユタ日報』の川柳欄の川柳も収集、コンピュータに入力した。両年とも、日系コミュニティでの人脈を通じて、戦前・戦中の川柳人と接触し、個人所蔵資料の閲覧コピー、面談聞き取りを行った。戦時中ジェローム強制収容所で発行された川柳しがらみ吟社の「しがらみ」、ツールレーク隔離収容所の「怒涛」などを収集した。平成16年度は、戦時中の収容所で発行された文学誌のなかの川柳を入力した。同年では、入力した川柳15000句を分析し、2004年度アメリカ学会(アトランタ)で、戦前の川柳に関する学会発表を行った。この発表で、日本アメリカ学会の英文ジャーナル誌への寄稿を依頼された。また、サバティカルで滞在中のハーバード大学ロングフェロー研究所の教授から、ドイツのアメリカ学会誌への寄稿を依頼された。(現在、入校中、発行は2005年度)。さらに補足的研究のために平成17年3月にシアトルとロサンゼルスで調査を行った。また平成16年6月にはアイダホ州ミネドカ強制収容所跡地を見学した。アメリカの川柳は、いわゆる狂句とは異なり、季語のない俳句ともいえる。川柳人の社会階層は、日本人会幹部から、季節労働者、年齢的には「老人」から10代の若者、性別も男性が多いものの、主婦や未婚女性も交じっている。一つの句は短いが、万単位で残る膨大な量を分析することで、記録を持たないと思われた一般庶民のさまざまな声が聞こえてくる。アメリカ移民の「人生の記録であり、心情の詩」である。
著者
渡辺 和子 細野 喜美子 嶋田 智明 吉田 正樹 佐藤 英一 新田 麗子 細野 喜美子 渡辺 和子
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

看護における移動技術の巧拙は看護者の体のテコのバランスの用い方と密接に関連しているが, 患者及び看護者の重心移動に関するより詳細なバイオメカニクス的研究は未だない. 重量負担の大きい患者の移動動作の効率的な介助方式の開発は, 老人人口が増加する今日の重要な課題である. 従って, 我々は日常用いられている看護者の移動技術を取り上げ熟達者と未熟者達の技術の差及び患者の受ける負担を力学的・生理学的に解明することを目的とした. 全介助の必要な患者を仰臥位から起坐位にする場合の技術の効率性を検討するために次のような実験を行った.1.熟練者の技術の特長から指導ポイントを取り出し, これを用いて未熟練者の指導前後の関節角度の変化を分析し, 指導ポイントの要因について考察し知見を引き出した.2.熟練者の移動動作における筋活動の発生順序の分析の結果, 動作初期の腓腹筋と大腿四頭筋・左上腕三頭筋・左上腕二頭筋の活動の様相に特徴が見られた.3.未熟練者の左右の腰背筋の筋電図と関節角度の変化を指導前後に測定した. 指導前に腰背筋は最大収縮力を使っているが, 指導後は低い筋活動で患者の移動を成功している. これにより指導ポイントがより明らかになった.4.熟練者から取り出した指導ポイントを用いて, 未熟練者14名の指導前後の筋電図の比較検討を行った. その結果, 指導によって動作はリズミカルになり, 筋活動も効率的となることが明らかになった.5.全介助の必要な患者をベッド上で仰臥位から坐位にする際, ベッドの高さに対して介助者の身体的負担への影響を検討した. その結果介助者の身体疲労・疼痛の程度は身長の50%のベッドの高さで最も少なかった.
著者
阿部 康二
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、今日までその原因が充分には明らかにされていない進行性難治性筋疾患ある。ALS発症者の5-10%は遺伝性で(FALS)、1993年には細胞質内の活性酸素消去機構であるCu/ZnSOD(superoxide dismutase)遺伝子に点突然変異が見い出されてきて、これが一部のFALSの原因遺伝子であることが強く推定されるに至った。すでに以前の研究により日本人の家系を用いた予備的な研究によって2家系のCu/ZnSOD遺伝子に、症状の進行が極めて遅いなどの際立った臨床的特徴を持った新しい遺伝子変異(点突然変異)を見い出して報告している(H46R変異)。さらに本年度の研究により、もう5家系においても、白人家系にはまだ報告のないCu/ZnSOD遺伝子の5つの異なった異常を見い出した。異なった遺伝子変異は、それぞれに特徴的な臨床所見を示しており遺伝子変異と臨床的特徴の関連が注目される。さらにCu/ZnSOD遺伝子変異による蛋白チロシン残基のニトロ化が運動ニューロン死のメカニズムに深く関与していることを明らかにし、変異SOD導入マウスにおいて筋肉に大腸菌LacZ遺伝子を発現させることに成功したことは、本病の原因解明と治療法確立の足掛りとなり、本年度の当初目的は達成できたものと考えられる。
著者
井上 泰浩
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、日本の外務省でパブリック・ディプロマシーをつかさどる文化広報部、イギリス政府(内閣府、外務省=FCOなど)、ならびに英外務省のシンクタンクである外交政策研究所(Foreign Policy Centre)、また、東京のアメリカ大使館など政府機関において調査を実施するとともに、メディアではロンドンのBBCとアラブ首長国連邦のドバイに本部を置く中東の衛星テレビ局、アル・アラビアなどで調査を実施した。外交というものが、外交官や政治家、国家代表団による密室協議で方向づけられ、決定される時代は既に終わっているということを、米英の外務省は十分認識していることが調査から分かった。国際ニュースを世界に伝えるCNNやBBCの役割はいうまでもなく、特に大衆文化レベルのコンテンツは一般市民に対する対外国意識形成において非常に大きな影響力を持っていること、また、政治家や外交官のレベルでの「外交」においても、時として非常に重要な決定要因足りえることが分かった。例えば、日本のアニメが放送される国において日本イメージ形成に与える影響では、人びとの日本に対する好感度を高めるばかりか、実際に日本語学習を始めるという行動面への影響もある。しかし、米英の外務省と比べると、日本の外務省においてはパブリックディプロマシーの重要性の認識は多分にリップサービス的な部分が多く、果たしてキャリア外交官の多くが本当に重要性を認識し、取り組んできるかについては大きな疑問があることが調査の結果わかった。もはや経済力や軍事力だけで、ある国の「価値」や強さを示すことは時代遅れであり、国家ブランディングと合わせてパブリックディプロマシーに国家事業として取り組んでいく必要があるというのが、本調査の結論である。
著者
小玉 美意子 白水 繁彦 吉田 文彦 小田原 敏 音 好宏 鈴木 弘貴
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1)本研究の研究対象テレビ局の夕方のニュース(午後6時から8時ごろの時間帯に30分程度放送する全国向けの番組)、即ち、ブラジルーGloboのJurnalNacional、イギリスーBBCのSixO'ClockNews、アメリカーCBSのCBSEveningNewswithDanRather、日本一NHKの『NHKニュース7』である。2)研究方法(1)各局の番組担当者、その他関係者とのインタビュー調査(2)各番組を2004年11月〜12月にかけての連続しない3週間にわたって録画し、ニュースの長さ、範域、分野、伝え手、情報源、画像素材などについてコーディングして分析する内容分析調査(3)上記の調査をもとに特定項目に着目して研究し考察する3)各国ニュース番組の特徴CBSは、自国と直接関係のある海外ニュースは多かったが外国ニュースは極めて少ない自国中心主義である一方、局独自のテーマ設定で医療番組に多くの時間が割かれた。NHKは地方ニュースをよく扱っており、社会ニュースが多いのだが、「発表もの」の比率が極めて高く、女性とマイノリティの参画は非常に少なかった。Globoは経済ニュースが多く、取材情報源は多様で、女性の参画比率が高かった。BBCは外国ニュースの比率が他国より高く、議会における政策論議を中心とする政治ニュースが多かった。4)9/11事件以後の国際テレビニュースの内容変化(1)9/11以後、世界のジャーナリズムは感情的になったといわれるが、CBS以外では認められなかった。(2)4番組とも政府情報源に大きく依存し、特に国際および外国ニュースにおいてそれは著しい。(3)同じ事件も番組により、視点や使う言葉で違った枠組みが作られ、それにより出来事の印象が変えられる。(4)"国際"を「外国で発生する自国ニュース」と捉えると、CBSは4つの番組の中で最も「自国志向」である。(5)9/11のような出来事は、ニュース制作過程、中でもニュース情報源に大きな影響を与えた。しかし、どの局も基本的な番組制作の方針は変えていない。
著者
西谷 修 中山 智香子 米谷 匡史 真島 一郎 酒井 啓子 石田 英敬 土佐 弘之 石田 英敬 土佐 弘之
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

21世紀グローバル世界秩序の構造的要素である戦争・経済・メディアの不可分の様相を歴史的・思想的に解明し、前半部を「ドキュメント沖縄暴力論」(B5、171ページ)として、また後半部を「グローバル・クライシスと"経済"の再審」(B5、226ページ)としてまとめた。
著者
児嶋 由枝
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

12世紀後半の北イタリアでは、ロンバルディア・ロマネスクが独自の様式・図像を展開していた。すでにこの時期の北イタリア中世都市国家の聖堂に関わる美術の展開については研究が進められている。しかし、この展開に重要な役割を担ったとされる北イタリアの修道会美術に関してはいまだ多くが詳らかでなかった。こうした状況をふまえ、本研究では、エミリア地方の三修道院(キアラヴァッレ・デッラ・コロンバ、フォンテヴィーヴォ、カスティオーネ・ディ・マルケージ)に焦点をあてて調査を実施した。特にゴシック様式の導入、都市聖堂との関係、そしてアダムとエヴァ彫刻図像について新たな視点を提起することができた。
著者
若松 一雅 伊藤 祥輔
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ヒト中脳黒質中に存在するニューロメラニン)NM)を単離し、その構造研究を行った。その結果、NMはDAとCysが約4:1で酸化重合して生成したフェオメラニンの構造単位であるベンゾチアジンを持つ部分とDAの酸化重合で得られたユーメラニンの構造単位からなることがわかった。また、脳内被殻、前運動野皮質、小脳などの非カテコールアミン作動性ニューロンにおいて新しいNM様色素が存在することを発見した。この色素は、黒質や青斑核に存在するNMと違って、DA由来でなくDOPA由来であることが化学分解法とHPLC分析により確認された。
著者
栗原 達夫 江崎 信芳 三原 久明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.Burkholderia sp.FA1由来フルオロ酢酸デハロゲナーゼはフルオロ酢酸の加水分解的脱フッ素反応を触媒しグリコール酸をあたえる。本酵素反応ではD104の側鎖カルボキシル基が基質のα-炭素を求核攻撃し、フッ化物イオンが脱離するとともに、酵素と基質がエステル結合した中間体が生成する。エステル中間体のD104のカルボキシル基の炭素原子を、H271によって活性化された水分子が求核攻撃して、グリコール酸が遊離するとともにD104が再生する。野生型酵素、D104N変異型酵素とフルオロ酢酸の複合体(Michaelis複合体)、H271Aとクロロ酢酸の複合体(エステル中間体)のX線結晶構造解析により、この反応スキームの妥当性が示された。基質カルボキシル基は、H149、W150、Y212、R105、R108によって認識され、フッ素原子はR108に結合していた。W150F変異型酵素では、クロロ酢酸に対する活性は野生型酵素と同等であるのに対して、フルオロ酢酸に対する活性は完全に消失した。W150はフルオロ酢酸の脱フッ素に特異的に必要とされる残基であることが示された。2.1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(Freon113a)を電子受容体とした集積培養によりSulfurospirillum属の嫌気性細菌を得た。テトラクロロエチレンを電子受容体とした集積培養により、16S rRNAの配列がuncultured bacteriumの16S rRNAの配列と98%の相同性を示す嫌気性細菌を得た。3.2-クロロアクリル酸資化性菌Burkholderia sp.WS由来の2-ハロアクリル酸レダクターゼとNADPH再生系として機能するグルコースデヒドロゲナーゼを共発現する組換え大腸菌を作製した。この組み換え大腸菌を用い、2-クロロアクリル酸を基質として、除草剤原料として有用な(S)-2-クロロプロピオン酸の生産を行った。従来法(光学分割法)を上回る収率で生成物を得ることに成功した。
著者
杉山 敏郎 平山 文博 浅香 正博 穂刈 格
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

H.pyloriは慢性萎縮性胃炎、胃癌の主要な病因と考えられ、その関連性は疫学的、動物実験モデルにより実証されている。我が国のH.pylori感染者は約6000万人と推定されているが、胃癌予防のために全感染者を除菌することは現実的に不可能である。したがって、予防ワクチンの開発は重要である。さらに開発途上国では胃癌患者はいまだ増加傾向にあり、かつ多数の感染者を除菌することは経済的に全く不可能であり、一層、予防ワクチンの開発が必要とされる。本研究ではH.pyloriリコンビナントカタラーゼ蛋白をワクチンとして用い、スナネズミに免疫し、その後、胃癌を高頻度に発症するH.pylori菌株を感染させ、感染の成立、胃炎の成立、そして胃癌発症予防効果を検討した。5週令SPFスナネズミにH.pyloriリコンビナントカタラーゼ蛋白をアジュバントとともに免疫し、その後、採血および胃液を採取、ELISA法により血清lgG抗体および胃液lgA抗体の上昇を確認した。免疫成立を確認した後、胃癌高頻度発生H.pylori菌(TN2GF4株)液を経管的にスナネズミに投与し、さらに10ppmのメチルニトロソウレアを20週間投与し、経時的に観察し、胃癌の発生を評価していたが、検討した72週の10匹のスナネズミでは組織学的に胃癌の発生は全く確認されていない。一方、我々がクローニングしたH.pyloriカタラーゼ遺伝子をカナマイシンカセットに導入しH.pyloriに遺伝子導入し、菌体内でリコンビネーションによりカタラーゼノックアウトH.pyloriを作成し5週令SPFスナネズミ15匹に感染させたが、感染は全く成立せず、カタラーゼは感染成立に必須であることが判明している。したがってH.pyloriリコンビナントカタラーゼ蛋白は感染予防ワクチンとして極めて有用である。
著者
江浦 由佳
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

我々はこれまでにほ乳類では報告のなかったFZOのホモログをラットにおいて2種類同定し(Mitofusin1,Mitofusin2)、その後の解析から2つのMfnが共にmit融合に必須であり、協調的にmit形態の調節に機能することを明らかにしてきた。さらに複合体に含まれるmitofusinと協調的に機能する新規因子の探索を行った結果、ひとつの新規因子を同定した。これをmitofusin binding protein(MIB)と呼ぶ。今年は昨年に引き続きこの因子の解析を行った。(1)ラット肝臓を用いて内在性のMIB存在様式を解析した。細胞分画を用いて解析した結果、内在性MIBにおいても過剰発現細胞のMIBと同様にmt、ms,及びサイトソルに局在していることがわかった。ミトコンドリアに局在するMIBの膜結合性はショ糖密度勾配遠心をおこなってもミトコンドリア画分に一部回収されることから一部は膜に強く結合していることが示唆された。(2)MIBは酸化還元酵素に保存されたドメインを有しているのでその活性がmt形態への効果に必要かどうか調べるために補酵素結合ドメインにアミノ酸置換の変異を導入した変異体を作成し検討した。その結果、その変異体においてmt形態への効果が消失したことから酵素活性がmt形態への機能に必要であることが示唆された。(3)また同じ酵素ファミリーに含まれるzeta-crystallinがMIBと同様のmt形態への効果を有するかどうかzeta-crystallinのcDNAをサブクローンして解析した。その結果、zeta-crystallinを過剰発現させてもmt形態には全く影響が無かったことから、酵素ファミリーの中でもMIBに特異的な機能であることが示された。(4)Mfn1との相互作用について解析するため、Mfn1リコビンナントカラムを用いて、MIB野生型、酵素ドメイン変異体、zeta-crystallinとの結合実験を行なった。その結果、MIBの野生型のみがMfn1カラムに結合できたことから、MIBの機能はMfn1との結合能力に依存していることが示唆された。(5)MIBのmt形態への効果についてさらに解析するため、RNAiを用いてHeLa細胞の内在性MIBを発現抑制を解析した。その結果、RNAi細胞においてMfn1のRNAi細胞の結果とは逆のmtのネットワークの顕著な活性化が観察された。このことから、MIBはMfn1を介してmt融合を抑制する機能があることが示唆された。
著者
栗原 麻子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

法廷弁論家であり、また前4世紀後半のアテナイ政治を主導する政治家の1人でもあったリュクルゴスに焦点をあて、ヘレニズムへの転換期における公と私の関係性について検討した。とりわけ、リュクルゴスの政策における公私の関係性を理解するために(1)エイサンゲリア(弾劾裁判)の多用、(2)私的復讐と公的刑罰の区別の2点について分析し、市民生活のなかの公共的要素をリュクルゴスが重視していたことを明らかにした。そのポリス共同体イメージは、アテナイ社会に伝統的な互酬的価値観のもとに、アプラグモシュネ(消極主義)的な市民像を取り込んだものとして理解できる。
著者
近浦 吉則 鈴木 芳文
出版者
九州工業大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

結晶の構造評価は局所的な基本構造とその構造の場所分布の2因子によって完全になされる。前者の基本的結晶構造はX線スペクトルによって解析される。一方、結晶の不完全性を含む物質の構造の場所分布は、本研究代表者らによるX線散乱トポグラフィで調べられる。そこで、両者の機能を有機的に組み合わせた局所的なスペクトロスコピーをともなうトポグラフィ(仮に、X線スペクトロスコピック散乱トポグラフィと称する)の開発が本研究の第一の目的である。また、X線回析トポグラフィの欠点の一つであった場所分解能の向上を各種のマイクロビームの開発により、シンクロトロン放射光の新時代においてサブミクロン分解能を達成する目処を立てることが第二の目的である。平成4年度にまず、高精度走査機構を含むシステムの設計を行ない、計22軸の位置制御を行なうコンピュータープログラムを完成させた。平行して、収束X線マイクロビーム自作完了。平成5年度は、上記走査装置の製作を行なうとともに、収束マイクロビームと位置敏感検出器を組み込み、珪素鋼単結晶中の方位分布トポグラフフの直接観察を試み、本法の有効性が確かめられた。平成6年度は、高エネルギー研究所シンクロトロン放射光実験施設において、スリット方式で平行白色マイクロビームをつくり、竹材中のセルロース結晶、珪素鋼および複合材料をX線散乱トポグラフ観察を行ない、2〜3μmの分解能を達成した。これは、これまでの本法の分解能を1桁向上させたことを意味する。これらの実験から、0.5μmの壁は2次元非対称反射のマイクロビームによって可能であることを結論した。さらに、システム全体の調整チェックのために、先端複合材料の構造評価を行ない、半導体検出器マルチチャンネルのシステムが所期の設計性能を持っていることを確認した。研究成果の一部は、研究期間中、6回の国際会議で発表された。
著者
加藤 和彦 杉木 章義 長谷部 浩二 品川 高廣 品川 高廣
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では, 系統的で拡張性に富んだクラウドコンピューティングシステム構築のためのプログラミングシステム・フレームワークの研究開発を実施した.粒度の小さな機能コンポーネントを提供し,それらをスクリプティングで組み合わせることでシステムを構成した.また,仮想マシンにコンポーネントの集合体を封じ込め,迅速かつ大規模で高堅牢性を有するシステム管理を可能とした.さらに,システム監視を含めた自律分散的な管理を可能とした.