著者
門前 暁
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

ヒト臍帯血由来造血幹・前駆細胞であるCD34^+細胞に対する5テスラまたは10テスラという強定常磁場の長時間曝露は、細胞の生死には影響を与えなかったが、10テスラで16時間曝露により、巨核球・赤血球前駆細胞由来コロニー数は有意に増加した。このとき初期造血関連及び細胞周期関連遺伝子がshamコントロールに比べ有意な発現増加を示した。本研究よりヒト造血幹・前駆細胞に対する強定常磁場曝露が、巨核球・赤血球造血への分化を特異的に亢進することが明らかとなった。
著者
上田 実 入江 一浩 渡邉 秀典 品田 哲郎 小林 資正 叶 直樹 岡本 隆一 松永 茂樹 井本 正哉 半田 宏 渡辺 肇 佐々木 誠 木越 英夫 西川 俊夫 石橋 正己
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

共同研究による本学術領域の推進により、多くの天然物の標的決定が行われた。これは、天然物化学者と生物学者の共同研究によって、ビーズテクノロジーの天然物への応用が拡大したこと、ならびに数多くの標的同定法が試行されたためである。これらの成果によって、多くの天然物が種標的と同時に複数のオフターゲットと結合することが明らかになった。天然物リガンドは、従前の理解のように、生体内において「鍵と鍵穴」の様に極めて特異性の高い作用機構を持つのではなく、生体内で「鍵束」のように機能し、複数の錠前と相互作用することを示している。本領域の研究成果によって、天然物リガンドの作用に関する理解は大きく変化したと言える。
著者
森田 真樹
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の最終年度である本年は、研究計画にしたがって、研究の総まとめとして、米国及びカナダの教科書や諸資料の補足的収集、資料の整理と分析を主に行った。本研究の遂行において、米国と比べ、カナダ関係の教科書や文献の収集が予想以上に難しく、カナダの歴史教育や教科書分析が予定よりも遅れてしまったが、昨年度末に実施した、トロント大学やブリティッシュ・コロンビア大学等での資料収集活動を中心としてカナダでの現地調査とその後の資料収集で、ある程度の資料を分析することができた。また、カナダは、州ごとに教育制度が異なっており、社会系教科のカリキュラム構成も多様であるため、州カリキュラムの収集・分析にも着手した。本年度は、主に後半で、米国とカナダの比較を行い、同様に多文化社会であり、多文化主義が浸透している両国において、類似する内容や構成の方法をとる部分もあるが、主流派の歴史に、補足的に少数派の歴史が加えられることが多い米国に対して、カナダの場合は、より積極的に多文化社会を作り上げていこうとする内容が組み込まれていることが分かった。加えて、本年度は、本研究の我が国への応用可能性について検討する過程で、アジアカップでの、いわゆる中国人サポーター問題が起こったこともあり、それらについても検討を進めた。我が国の研究の進展のためにも、カナダ社会科(とくに、歴史教育)の本格的な検討が重要となることも分かり、今度も継続して研究を進めていく必要があると考えている。なお、本年度は、予定していた資料の入手に時間がかかったことなど、諸般の事情により、予定していた学会報告などができなかったが、関連する論文が投稿中であるのに加え、三年間の研究の成果のまとめを、来年度の早い段階で学会報告及び論文投稿できるよう準備している。
著者
木林 和彦 中尾 賢一朗
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

穿通性頭部外傷では脳内に異物が残留することがあり、残留した異物は脳障害の原因となることが考えられる。鉛球を脳内に一定期間留置したモデル動物を作製し、脳の経時的な変化を組織学的・生化学的に解析した。ラットに全身麻酔を施し、大脳内に鉛球または硝子球1個を挿入した。12時間~4週間後に脳を摘出し、パラフィン切片を作製し、免疫染色とアポトーシス細胞の検出を行った。また、大脳皮質のグルタミン酸受容体遺伝子発現を解析した。その結果、脳組織にはNeuN陽性神経細胞の減少、炎症細胞の出現、アポトーシス細胞の出現、メタロチオネイン陽性星状膠細胞の増加等が観察された。また、鉛球留置で遺伝子の発現量が抑えられた。従って、脳内の鉛球は脳を障害することが判明した。
著者
園田 高明 三島 正章 小野 泰蔵 深谷 治彦 脇坂 昭弘 岩上 透 中川 美樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

環状、非環状、および、かご状構造を有する種々の多フッ化炭化水素(炭素酸)や多フッ化アルコール(酸素酸)を合成し、これらの化合物の気相酸性度をFT-ICR-質量分析法を用いて測定した。密度汎関数法を用いた気相酸性度の計算予測と既知のヘテロ原子を有する無機酸や有機酸との比較を行い、多フッ化炭素化合物が示す特異な物性と反応性について議論した。
著者
菊池 馨実 福島 豪 中川 純 上山 泰 菅 冨美枝 小西 啓文 尾形 健 川島 聡 今川 奈緒 永野 仁美 新田 秀樹 長谷川 珠子 長谷川 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

研究者各自による研究論文の発表に加えて、4度にわたる公開シンポジウムの開催、3度に及ぶ学術雑誌での特集論文の掲載、さらに刊行が確定している論文集と教科書の出版などを通じて、日本における障害者法学の構築に向けた基盤をつくることができた。
著者
大堀 研
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、岩手県釜石市で、災害被災地へのボランティア・ツーリズムと復興・地域活性化の関連性について実証的に研究するものである。平成25年度は、①使用概念の理論的検討、②釜石市の文献資料・統計資料の収集・分析、③関係者へのインタビュー調査・参与観察、の三点を実施した。特に①を主要な作業として進めた。被災地への外部からの交流には複数の用語が使用されることから、実態を適切に表現しうる概念の把握を目指した。具体的には、A)復興ツーリズム、B)ダークツーリズム、C)ボランティア・ツーリズムの3つが頻繁に使用される。A)は国際的でなく、時限的という限界がある。B)は被災地住民の感情にそぐわない。C)はこれらの問題が少ない。国際的には"Disaster tourism"が使用されることも多いが、B)と同様の問題がある。これらから、「ボランティア・ツーリズム」が適切と考えられる。概念の比較検討は例が少なく、本領域の研究を進展させるための作業として意義があったといえる。②、③に関しては、3回の調査旅行により資料収集、参与観察、インタビュー調査を実施し、対象である「三陸ひとつなぎ自然学校」の活動の把握に努めた。釜石市でも震災後のボランティア活動者は減少傾向にある。その中で「三陸ひとつなぎ自然学校」によるボランティアの受け入れは、地域の復興に一定程度寄与している。この団体が受け入れを継続できている背景には、意欲的な受け入れプログラムの開発がある。参与観察では、ボランティアと団体が協働でプログラム開発を行う現場を調査した。こうした手法がボランティア活動者の満足を高めている可能性がある。またインタビュー調査では、外部組織と連携しプログラム開発を行っていることを確認した。総じて柔軟にプログラムを開発しており、その柔軟性が活動継続に寄与している。この点を明らかにしたことが、今年度の研究の意義である。
著者
金 愛蘭
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

20世紀後半の新聞記事を資料とした自作の大規模な通時的新聞コーパス(総文字数約1,700万字)を用いて、「抽象的な意味を表す外来語の基本語化」現象の実態およびその要因について記述した。具体的には、20世紀後半に基本語化した語を抽出するとともに、外来語を含む類義語体系の量的な変化を調査し、類型化を行なった。また、要因については、語彙論的な検討のほか、「テクスト構成機能」と呼ばれる諸機能についても検討を行なった。
著者
宮下 遼
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究最終年度の本年は、研究成果を発表し、その可否を学会に問う年であった。また、平成19年度7月から20年度8月までの期間、トルコ共和国、及びフランス共和国に滞在し行った海外調査も、この研究成果に大きく寄与した。まず、社会史研究である論文「トルコ古典文学における都市と詩人:都市トポスの誕生と16世紀イスタンブル」では、都市頌歌、及び一般生活に関連する項目を内包するトルコ古典文学作品史料を主史料としつつ、オスマン朝文壇の中心を為したイスタンブルの都市空間の中にトルコ詩人を対置、彼らの都市観を探り、都市の固有の建造物や地域が韻文の中でどのようなトポスを形作っていたか、また住民の生活がどのような特徴から捕えられていたのかを明らかにした。地中海通文化研究である「〈研究ノート〉東方旅行記における二つの観察潮流とそのトポス:フランス大使ダラモン一行におけるキリスト教古代文化と異文化の取り扱い」では、トルコ詩人と西欧知識人の比較を志しつつ、やはりイスタンブルという対象を観察したフランス人の旅行記史料を比較考察し、西欧語で書かれた東方旅行記史料に現ずる、イスタンブルという物的対象、トルコ人という人的対象の定型性とその詳細を明らかにした。トルコ古典文学研究である「トルコ古典文学における酌人:17世紀オスマン朝「酌人の書」についての一考察」では、オスマン文人/詩人とトルコ古典文学全体に通底する特徴を詳らかにするべく、ペルシア伝来の神秘主義詩「酌人の書」が、彼らにあってどのように受容され、そして各詩人のオリジナリティがいかに付与されていったかを明らかにした。トルコ語小説の翻訳である二書にかんしては、翻訳補助、及び日本語校正と時代考証を通して参加した。学会発表は、研究指導委託先であったユルドゥズ工科大学(イスタンブル)の学部生向け教育プログラムであり、研究遂行者は、様々な作文、作詩の規則を内包し定型性の非常に高いトルコ古典文学と、我が国の古典文学のシステムの比較を行いつつ、特に短歌、連歌、俳句について発表を行った。以上の研究成果を踏まえつつ、平成21年度以降も、特別研究員(PD)として、今度は詩人/文人から都市イスタンブルへと研究対象を移しつつ、引き続きトルコ古典文学史料に依拠する社会史との視座から研究を進めていく所存である。
著者
内藤 喜之 関 一 小林 暁 伊藤 公一 亀井 宏行
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

FM-CW(周波数変調-連続波)レーダーは、周波数検出方式なので、微弱な反射もとらえ易いと考えられるので、土層の判別能力もパルスレーダより優れていると考えられる。また、アンテナの周波数帯域内に、発信周波数を収めることもできるので、リンギングも抑えられ明瞭な画像が得られると期待される。本研究では、まずFM-CWレーダの試作からはじめた。スロットアンテナを用いた500MHz〜1GHz帯域のレーダ,300MHz〜500MHz帯域のレーダなどを試作し実験を重ね、最終的には中心周波数300MHzのボウタイアンテナを用いたFM-CWレーダシステムを完成させた。このFM-CWレーダは、送受別体の2台のアンテナを持ち、発信周波数は、100MHzから500MHzの400MHzの帯域で、三角波状に周波数変調をかける。この三角波の周期は、5msec,10msec,50msec,100msecの4種類を選択できる。走査する時は、車輪のついた台車の上に乗せて引くか、そりに固定して牽引する。変調三角波の周期は50msecを用いた場合、周波数変調速度は16Hz/nsec(=400MHz/25msec)となり、パルスレーダで30nsecの深さ(土の比誘電率25とした時90cmの深さに対応)はFM-CWレーダでは、480Hzに対応する。このレーダを用い、長崎県壱岐郡原の辻遺跡、茨城県ひたちなか市殿塚1号墳、宮崎県西都市都原古墳群横穴墓、岐阜県大垣市昼飯大塚古墳、大阪府岸和田市久米田貝吹山古墳、岐阜県養老町象鼻山1号墳などで探査実験を行った。とくに原の辻遺跡では、従来のパルスレーダでは捕らえられなかった水田下の環濠がFM-CWレーダでは捕らえることができ、このレーダの土層判別能力の優位性が証明された。また、土の誘電率を現場で直接測定する方法として、同軸ダイポールアンテナやモノポールアンテナを直接大地に刺入して反射係数から推定する方法を開発した。
著者
上野 健一 鈴木 啓助 山崎 剛 井田 秀行 南光 一樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

簡易レーザー式・自動雨雪判別装置を開発し、中部山岳域における冬季の降雨発生の気象学的メカニズムと積雪構造への影響を明らかにした。降雨の長期発現傾向は10年規模スケールの低気圧活動に依存し、単調な増減傾向は見られない。雨雪変化は低気圧通過時の南北に走る大地形に沿った暖域と寒気団の交換過程に依存する。積雪の堆積期における降雨発現は積雪内に氷板を形成し、融雪時期まで記録される。一方で、全層ザラメ化した融雪機の降雨は積雪水量の急増と排水に寄与する。全層濡れザラメへの移行は春一番を伴う温暖な低気圧の発生に依存する。2014年2月に発生した大雪は、2014年2月の大雪は、本来、降雨となるべき降水が降雪でもたらされ、引き続く降雨も排水されず山岳域で記録的な積雪水量の増加を導いた。
著者
國土 将平
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、エイズに関する知識テストに対して項目反応理論を適用し、それぞれのテスト項目の特性を明らかにし、エイズに関する知識テストの標準化を行うことである。対象は小6から高校3年生までの4048名であった。知識項目は、対象の発育発達段階、学習のレディネスを考慮して選択した、小6・中1年13項目、中2・3年27項目、高校生28項目である。これらの資料に基づいて、学年別に2母数の潜在特性モデルを用いて、対象者の能力スコア、調査項目の困難度、識別度のパラメータを推計した。また、調査項目のパラメータを利用して、スコア、困難度、識別度を等化し、全ての学年に共通した被験者の評価得点、項目パラメータを算出した。なお、学年は該当学年の4月を基準とした。学年別の能力スコアの分布により、小学生、中学1・2年生、中学3年生、高校1・2年生、高校3年生に分類され、それそれの時期に適切な学習が有効であることが推測された。日常生活における感染の項目について、プールやお風呂、トイレでの感染、飲食による感染に関する知識は、困難度-1、識別力1以上であり、小学生の時期に有効な知識項目、及び学習内容である。しかし、動物からの感染、献血による感染、歯科医などからの感染は困難度1以上、識別力も0.5を下回り、難しい項目であることが示唆された。これらの項目は継続的な学習並びに評価によって、その学習状態が確認できると推測される。「早く処置すると発症を遅らせることができる」、「母子感染することがある」,「HIVは熱に弱い」といった項目は、小学生では安定した特性値が得られず、論理的記述による知識は中学生以上になって学習・評価することが好ましいと示唆された。以上の様な解析を経て、小学生、中学1年生では10項目、中学2・3年生では25項目、高校生では26項目が標準化テストとして適切であると結論された。
著者
池本 淳一 陳 宝強 荘 嘉仁
出版者
松山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では戦前の中国における武術雑誌の内容分析を通じて、武術とチャイニーズネス(中国/中国人らしさ)の関係を考察した。具体的には、前期(1921~30)において武術が芸術と同等の「高級文化」、さらには近代的身体を育成する「中国発祥の近代体育」として再構築されていったこと、後期(1931~41)において武術が固有の文化的価値と社会的役割を持つ「中国の民族体育」として、さらには悠久の歴史と深遠な中国哲学を持つ、もっとも「中国らしい」国民文化として再構築されていった過程を明らかにした。
著者
氷室 昭三
出版者
有明工業高等専門学校
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

直径が37μmのマイクロバブルを30秒ごとに顕微鏡で観察し,撮影に成功した.時間とともに小さくなり,350秒で目視できなくなるくらい小さくなった.これまで水中に発生したマイクロバブルは水面まで上昇して消失すると思われたが,このようにこの程度の大きさのマイクロバブルは,水中でだんだん小さくなり消失することを見出した.さらに,直径の異なるいくつかのマイクロバブルについて観察した.直径100μm以下のマイクロバブルは大きさに応じて寿命をもっていることを見出し,空気の水への溶解度に関係なく,マイクロバブルの大きさで寿命が決まっていることを見出した.一方,直径100μm以上のマイクロバブルは,測定条件下では小さくならなかった.むしろ大きくなる傾向が見られた.また,本研究室では直径2μmのマイクロバブルを撮影することに成功したが,それより小さいマイクロバブルを観察することはできなかった.したがって,ナノバブルなるものの存在は,ここでは確認できていない.一方,マイクロバブルが発生する環境でその挙動が大きく異なることを見出すことができた.この実験結果は,さまざまな方法でつくったマイクロバブルにはそれぞれの機能性があり,それぞれの機能性を利用した用途に用いる必要があることを見出した.
著者
小林 昌二
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

5月期に口頭発表をした原稿について7月期に補足・補強して「日本古代の集落形態を村落(共同体)」として発表した(『歴史学研究』、626号、1991年11月)。この要旨について簡単にふれ、以後の研究について記す。一.弥生後期の環濠集落の解体により、古墳時代の豪族居館跡と集落跡とに分化・分裂していく様子を跡づけようとした。豪族居館も6世紀半ばを境に度質し、環濠土塁などの防御施設をもたないものとなっていく実態を,これまでの発堀調査例から指摘した。二.古代史の文献からも7世紀初頭の小墾田宮に環濠土塁は知られず,最近の調査例からも確認されない。その点からも豪族居館跡の変質も類推された。その背景に,志紀県主が屋根に堅魚木を掲げて雄略大王に処断された古事記記事のように,大王様による規制・王法の存在を想定した。三.大王権・主法の関連するこの時期の問題としてミヤケの,とくに後期ミヤケの事例として播磨風土記の扱う揖保郡の開発問題と,上毛野の緑野・佐野屯倉の検討を行った。(そのためのフィ-ルドワ-クと更なる資料蒐集の必要から調査を以後において行った。)四.古代集落をいくつか集めた「村」(共同体)の史的前提の基本をミヤケにおいて理解することは,豪族居館の環濠形態の規制をした大王権・王法を媒介にして可態であると思われ,従って,日本古代の「村」ムラには同称に環濠や村門などがないという特質に結びつく。ミヤケと集落,豪族居館と集落など具体的に実証しなければならない課題を残しつつ,一応巨視的な見通しを確立できたように考えている。以後,こうした実証的課題のために資料蒐集とその分析・検討・フィ-ルドワ-クを重ねているので、成果がまとまり次第発表する予定である。
著者
加藤 大鶴 依田 平
出版者
東北文教大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では字音声調の史的研究に役立てることを目的とした「中世漢語声点資料による画像付きデータベース」(以下DB)を作成した。字音声調研究においては、声点の物理的な位置情報によって声調を認定する作業が必須であるが、この手続は研究者の主観的な観察に任されることが多かった。本DBでは声点付き漢字の画像、透明テキストによる文脈付き画像、韻書等の研究上必要な情報を検索結果として表示させることで、声調の認定を検証可能な形で提示することができた。
著者
柳田 充弘 武田 俊一 竹安 邦夫 石川 冬木 松本 智裕 西田 栄介
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
2001

我々の研究目的は、多様な生命体の維持・継承の根幹である、染色体のダイナミックスの精密な制御と染色体構造維持との理解である。これらの機構には、DNA複製と修復、複製の結果生じた2本の姉妹染色分体間の合着(コヒーシン)、細胞分裂M期での染色体凝縮(コンデンシン)、染色体と細胞骨格(紡錘体)との接点(動原体)の形成、すべての動原体に紡錘体が結合していることをチェックする機構(紡錘体チェックポイント)、末端(テロメア)の形成が含まれる。柳田グループは、分裂酵母とヒト細胞両方で、動原体で働く相同分子を複数種類、遺伝学とマススペクトロメーターによる解析とを併用して同定し、その機能解析のデータを発表した。またコヒーシンとコンデンシンは、M期以外では、DNA修復にも関与することを証明した。他のグループは以下のテーマで成果をあげた:Atomic force microscopyを使って水溶液のなかのテロメアやコンデンシンを電顕レベルの分解能で観察(竹安)、紡錘体が正常に結合した後にチェックポイントが解除される機構(松本)、Polo like kinaseによるG2→M期移行の誘導機構(西田)、カエル卵抽出液による試験管内テロメア複製の成功(石川)、ニワトリ体細胞株(DT40)の遺伝子破壊による相同組み換え分子群の機能解析(武田)。以上に説明したように、本COEグループでは、酵母、カエル卵(in vitro)、ニワトリ体細胞株、ヒト細胞を用いて、染色体に関連する各生化学反応と各反応間の密接な相互作用とを統合的に解明できた。また、Atomic force microscopyを使った新しい染色体解析方法の開発(竹安)、およびメダカの遺伝子石壊の実験系を樹立する(武田)ことに成功した。
著者
中村 泰之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

学習する時間・場所を選ばない教育システムの一つであるeラーニングシステムの重要な機能としてオンラインテストがある。つまり,Web上で正誤問題,多肢選択問題を解き,自動採点・成績管理を行うものである。本研究では,数式処理システムを応用して,オンラインテストに数式による解答を行い,その正誤評価を可能にしたシステムSTACKの整備を行った。これにより,オンラインテストの可能性を広げることができ,自然科学系科目のeラーニングの発展が期待される。
著者
山科 典子
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1.目的本研究は、保育者が幼稚園児にどのように関わることで、文字への関心が生まれ、就学前の適切な発達が促されるのか、教師による意図的な環境構成を教育課程と絡めて考えることを目的とした。2.方法(1)年長1学期と3学期に個別に面接を行い、文字への関心と実態をはかる。(2)「おみせやさんごっこ」「お手紙ごっこ」「かるた・すごろく」など遊び場面と、「グループの名前を決めよう」「運動会のポスターをかこう」など生活場面における、子どもと文字のかかわりを観察し、援助する。(3)小学校1年生との交流を持ち、育ちの違いを意識しながら、文字とかかわる。3.結果と考察(1)面接により、年長中頃には、ほとんどの子どもが50音を読めることがわかった。書き方になると、その割合は減少。読み・書き両面において自分の名前に関する意識は高い。しかし、書ける子どもにおいても、鉛筆の持ち方や書き順には課題が多かった。ここから、読みが先行すること、関心が高く接する機会が多いものから習得すること、書くことにおいては指先の発達との関連が推測される。(2)遊園地ごっこにおいて、ホワイトボードの活用を提示。子どもが、どんな遊園地にしたいか、絵や文字で記す。仲間にイメージを分かりやすく伝えると共に、次の日の遊びへの橋渡しとしても有効だった。文字の持つ「伝える」「残す」という働きが、遊びの中でも大きな意味を持った。(3)1月にした1年生との給食試食会では、平仮名で書かれたカードをプレゼントされた。一緒の活動後、学校の楽しさを伝え、君を待っているよというメッセージをもらったことは、幼児にとって心動く体験であった。文字は書けないが読むことはできる子ども達にとって、文字に対する大きな刺激となった。楽しかった思いと共に、家庭にお土産としてカードを持ち帰るということは、入学への期待を膨らませる意味においても有効であった。
著者
柳澤 一男 橋本 達也
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

古墳分布南端域における古墳の出現過程の解明を目指した本研究では、(1)宮崎市檍1号墳、(2)西都市西都原81号墳の2基の前方後円墳の発掘調査を実施した。調査内容とその成果は次のとおりである。(1)宮崎市檍1号墳は調査の結果、墳長52m、後円部直径35〜38m、同高4.5m、前方部長約17m、同高1.7〜2m、前方部前面幅約20mの規模が確定し、規格性の低い墳形が想定された。後円部から確認された埋葬施設は国内最大級の木槨と判明した。木槨は長方形のプランで、長さ6.8〜7.2m、幅4.0〜4.2m、高さは約1.5m程度と推測される。木槨内には短小型の刳抜式木棺の埋置を確認した。また前方部平坦面から長さ17mにわたる開削墓道の一部を検出した。檍1号墳の築造時期は後円部墳頂から出土した土器から4世紀前葉と推測される。(2)西都原81号墳は調査の結果、墳長53.7m、後円部経37.5m、同高3.7〜6.9m、方部長20m、同高1.2〜1.6m、前方部前面幅約20mの規模と、奈良県纒向石塚とほぼ等しい比率をもつ墳形を確認した。墳丘は後円部のみ2段築成、鍵穴形平面形の周堀は前方部隅角で収束する形態と判明した。後円部背面側に接続する突出部は、後円部墳丘下段と同時に形成され、上部平坦面外周に石組みが全周することが確認された。また突出部上面、くびれ部、後円部上段墳丘斜面から4基の小型陪葬遺構を確認した。本墳の築造時期は3世紀後葉と推測される。以上の調査により、(1)南九州における前方後円墳の出現が3世紀にさかのぼること、(2)前方後円墳の墳形と墳丘構築法の多様性、(3)埋葬施設の独自性と多様性(木槨・短小型刳抜式木棺)が明確となった。なかでも檍1号墳の木槨構造と西都原81号墳の調査成果は、畿内中枢部の前方後円墳形成過程と、前方後円墳の列島的規模の拡散研究に寄与するものである。