著者
篁 宗一
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

早期介入を目的として、精神科看護師ら精神保健専門職と協働して小学生を対象としたメンタルヘルス教育を開発し、効果を測定した。小学6年生の115名を対象に調査した。過去一年間に悩みを抱えた者は52.8%と多かった。対象者を二群に分けて、教育プログラムの有無によって教育効果を測定した。介入群では知識尺度で介入後の得点の上昇が有意にみられた。ストレスコーピングの「サポート希求」の項目にも有意な変化がみられたことから、教育には対象者が悩みを抱えた際の相談につながる効果があることが示唆された。
著者
八谷 満 古山 隆司 福森 功 市戸 万丈 平田 晃 桑名 隆
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.115-127, 2000-12-15
被引用文献数
4

繋ぎ飼い用搾乳ロボットシステムの開発に向けて、特にマニピュレータ機構の設計指針を得ることを目的として、ホルスタイン種泌乳牛111頭を供試して体尺測定調査を実施した。ロボットはストール後方より牛に接近して、牛体位置検出機構は牛体において変形量の少ない部位として坐骨端と左右の腰角を捕捉する。本機構に自動搾乳ユニットを搭載することによって、機械系の原点と牛体との水平面上での相対的位置関係をほぼ確定し、牛体の動きに追従して両者の位置関係を維持する。これを基本的な機械設計概念とする。その上で、牛体とロボット機械系双方の安全性を確保するために、ロボット作業環境内の四肢や乳房等の配置から干渉あるいは衝突の可能性の低い部分を抽出し、動作可能な空間領域をモデル的に示した。これを考慮した機械系, 特にロボットマニピュレータの関節構成と軌道生成を提案した。マニピュレータ機構は、平面的な位置決めと姿勢決めの回転自由度を各々2と1、これにティートカップ装着動作のための並進自由度1を加え、計4自由度の基本仕様で対応可能と判断された。マニピュレータの標準作業域は、牛体軸上の坐骨端からの距離380mmの点を中心とする、350×350mm区画が4乳頭の散在する領域である。この領域においては、エンドエフェクタを有する第3アームを常に牛体軸に平行な姿勢に制御することによって、後肢を回避しながら、狭降な後肢内側空間においてテイートカップのマニピュレーションが可能であると推察された。マニピュレータ機構をモデル的に単純化して、位置制御するための関節変数ベクトルを求める逆運動学問題の解を示した。X-Y平面内での運動特性を考慮して、第1、第2および第3アームリンク長をそれぞれ400mm、350mmおよび200mmと設定した。また、マニピュレータ台座の適正な位置をX、Y座標それぞれ580mm、520mmと設定した。日本家畜管理学会誌、36(3)115-127、2000 1999年4月12日受付2000年9月1日受理
著者
澁谷 渚
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

全7章から成る本研究はザンビアの生徒の基礎的能力と高次的能力の向上をめざした数学の授業開発をおこない、その過程を教師、生徒、教材の三者の相互作用に着目して描くことが目的であった。これは数学学習達成度が低いと言われていながら、学習の過程や認知的側面が明らかになっていない途上国の現状を課題意識としてとらえるところから端を発したものである。本研究において基礎的能力は正の整数の四則計算能力を指し、高次的能力はパターン性の発見、探究、口頭や記述で数学的な見方を話し合うこと、そして授業開発は授業改善サイクル「計画-実施-評価(反省、改善を含む)」とすることを先行研究のレビューやザンビアや他の途上国の現状に鑑み設定した。今年度はザンビアにおける調査データから授業における三者の相互作用を浮かび上がらせるために授業の内実を掘り下げる分析を行った。分析では定量的授業分析と、数学の学習指導において教師と生徒の発話が活性化した場面を抜き出す定性的授業分析から、生徒の学びとそれを取り巻く指導、教材との関連性を論じた(第5章、第6章)。そこでは、先進的な教材の特性を教師が生徒の学習に合わせる形で用い高次な数学的能力の萌芽がみられる成功的な互作用と、対照的に基本とされる1桁の計算に生徒がつまづき、教師が従来型のアルゴリズムを強調する授業を展開したことで、教師中心型の授業に陥る様相の二つを生徒の学習過程とともに掘り下げた。本研究の成果は二点に集約される。・途上国の数学授業の内実を描き、授業における二つの対照的な教師、生徒、教材の経時的な相互作用をモデルとして示したこと・基礎的能力と高次的能力の同時的達成を途上国の授業で具体化したこと本研究の重要性は、国際協力の研究が見落としてきた教科の特性に注目した授業の内実を描き出し、生徒の学習の可能性と課題を事例ベースで描き、教育の質に関して貢献した点にあろう。
著者
植松 光俊 金子 公宥
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.369-376, 1997-11-30
被引用文献数
7

高齢女性の歩行における動力学的特徴を明らかにするため, 健常高齢女性13名(80.7±4.9歳)と健常若年女性6名(35.8±9.0歳)に床反力計と3次元動作分析用カメラシステムを設置した歩行路を自由歩行させ下肢関節のモーメントを算出し分析した。高齢群の関節モーメント(ピーク値)は, 制動期の股伸展と推進期の膝屈曲を除くすべての関節運動において若年群より有意に低かった。歩行速度と有意な相関を示した関節モーメントは, 若年群では接地期の膝屈曲, 単脚支持開始時の膝伸展および両脚支持期中間点の足背屈などの主として制動期のモーメントであったのに対し, 高齢群では蹴り出し期後半の膝伸展と蹴り出し開始時点の足底屈モーメントであった。また, 高齢群については歩幅が足底屈モーメントとのみ有意な相関を示した。これらの結果から, 高齢女性の正常歩行における膝伸展筋と足底屈筋の活動(力強い蹴り出し動作)の重要性が示唆された。
著者
周 又紅 韓 静
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1_82-88, 2008-07-20 (Released:2011-08-31)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1
著者
MURAKAMI M.
雑誌
Science
巻号頁・発行日
vol.304, pp.855-858, 2004
被引用文献数
10 1079
著者
水野 恒史 片桐 秀明 深沢 秦司 釜江 常好
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

銀河宇宙線のエネルギー分布と空間分布を明らかにするべく,最新のフェルミ衛星を用いたガンマ線データの解析を2009年度から3年間に渡り精力的に進めた.その結果[ 1]太陽系近傍の宇宙線スペクトルが,地球上で測られた物に近いことを観測的に明らかにした一方で[ 2]太陽系付近の数100pc以内で宇宙線強度が20%程度ばらつくことと[ 3]銀河系の外側の領域で,宇宙線強度が従来の予想に反してあまり弱くならないことを見出した.これらの成果のうち,[ 1][ 3]は執筆責任者として論文を出版し,[ 2]も投稿済みである.関連する研究も加えると計17編の論文をフェルミチームメンバとして出版した.また多数の国内外の学会で継続的に成果発表を行った.
著者
森田 達也 野末 よし子 花田 芙蓉子 宮下 光令 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.121-135, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
5

本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが行われた地域の医師・看護師の体験した変化を収集することである. OPTIMプロジェクト介入後の医師1,763名, 看護師3,156名に対する質問紙調査の回答706件, 2,236件を対象とした. 自由記述の内容分析を行い, それぞれ327, 737の意味単位を同定した. 好ましい変化として, 【チーム医療と連携が進んだ】 ([相談しやすくなった][名前と顔, 役割, 考え方が分かるようになった]など), 【在宅療養が普及した】 ([在宅移行がスムースになってきた]など), 【緩和ケアを意識するようになり知識や技術が増えた】が挙げられた. 意見が分かれた体験として, 【病院医師・看護師の在宅の視点】【活動の広がり】【患者・家族・市民の認識】が挙げられた. 地域緩和ケアプログラムによるおもな変化は, チーム医療と連携, 緩和ケアの意識と知識や技術の向上, 在宅療養の普及であると考えられた.
著者
田波 徹行 坪井 善勝
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.335, pp.22-31, 1984-01-30

以下に本論の結果を要約する。(1) a/b比は, このシェルの挙動に大きな影響を与える。(2) Donnell仮定に基づき, a<<bの形状をもつトロイダルシェルの座屈解析を行う場合, 非軸対称座屈荷重を非常に少さく見積もる恐れがあるので注意を要する。(3) 座屈解析には, 定方荷重と静水圧の区別を明確にすることも必要である。すなわち, n=0, ModeBは, 静水圧に比べ定方向荷重の座屈荷重が小さくなるが, n≧1におけるModeAとModeBでは逆に, 静水圧が定方向荷重より小さい座屈荷重を与えている。(4) 一般に線形項を扱う問題で, b/a比が極端に大きくなければ, このシェルに対するDonnell仮定は有効と考えられる。ただし, 2次の非線形項を利用した座屈解析では, b/a比があまり大きくない場合にも, 他の仮定と比べて異なる傾向を示した。なお, 3次の非線形項を含めた問題に対するDonnell仮定の有効度を調べることは今後の課題とする。
著者
高久 元
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.29-38, 1998-05-25
被引用文献数
7

インドネシア共和国スマトラ島西スマトラ州に生息する食糞性甲虫体表上よりハエダニ科ハエダニ属Macrocheles kraepelini種複合体の1種であるM. hallidayi Walter and Krantz, 1986雌個体を採集し飼育を行った.その結果, 第1若虫, 第2若虫及び雄が得られ, それらの詳細な記載を行った.kraepelini種複合体に属する種の多くは成体及び第2若虫の第4脚膝節に7本の毛を有するという特徴をもつ.ハエダニ科のNeopodocinum属でも同様の特徴が見られるが, Neopodocinum属では第1若虫の第4脚膝節上の毛は5本のみであるのに対し, 今回得られたM. hallidayiでは6本であり, M. hallidayiが属する種複合体の特徴的な形質状態であると考えられる.また, M. aestivus Halliday, 1986は, 背板毛の形態, 胸板の模様, 第4脚膝節の毛数などにおいてkraepelini種複合体の種と共通の特徴をもつことから, 新たにkraepelini種複合体の構成種とした.
著者
關橋 薫 齋藤 宏美 佐々木 有
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-8, 2002-12-25

甘味料ステビア抽出物の安全性試験の一環として,ステビア抽出物およびその代謝物であるステビオールの遺伝毒性をコメットアッセイで評価した。ステビオールはin vitroとin vivoの両方で,ステビア抽出物はin vivoで検討した。in vitroコメットアッセイではヒトリンパ芽球細胞株TK6およびWTK-1を用いた。ステビオールの1000μg/mlでは著しい細胞生存率の低下がみられたことから,生細胞数が70%を下回らない濃度としてラット肝由来の代謝活性化系の有無に関わらず500μg/ml以下で評価した。代謝活性化系の有無に関わらず500μg/ml以下で統計学的に有意なDNA損傷の増加はみられなかった。以上の結果から,本試験条件下において,ステビオールには代謝活性化系の有無に関わらずin vitroでDNA損傷誘発性はないと考えられた。ステビア抽出物およびステビオールの致死用量は2000mg/kg以上であることから,最高用量を2000mg/kgとしてマウスに単回強制経口投与し,3および24時間後に肝,腎,胃,結腸,精巣でDNA損傷性を検討した(ステビア抽出物では肝,胃,結腸のみ)。ステビア抽出物およびステビオール投与群では,いずれの臓器においても統計学的に有意なDNA損傷の増加はみられなかった。以上の結果から,本試験条件下において,ステビア抽出物およびステビオールには評価対象としたマウスのいずれの臓器に対してもDNA損傷誘発性はないと考えられた。
著者
藤澤 正視 稲村 哲也 渡部 森哉 福山 洋 菊池 健児 高橋 浩 五十嵐 浩也 山本 紀夫 川本 芳 大山 修一 大貫 良夫 阪根 博 ワルテル トソ セノン アギュラール カルロス サバラ 鶴見 英成 藤井 義晴 阿部 秋男
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

ラス・シクラス遺跡の発掘を実施し、同遺跡の中核的遺構の北マウンドの様態を解明した。マウンド上部の建築群は形成期早期(紀元前2900~1800年)の神殿建築であり、少なくとも8回の神殿更新が認められた。その過程で多量のシクラが使用されたのがこの遺跡の特徴である。シクラ構造を模擬した試験体で振動台実験を行った。その結果、一定の制振効果をもつことが確認される一方で、ある条件のもとでは、その効果がなくなるという特徴が示唆され、シクラを持つ神殿の地震動に対する挙動と被害軽減効果を確認した。
著者
大竹 剛 中野 貴司
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1275, pp.106-117, 2005-01-17

昨年12月26日、インド洋スマトラ島沖でマグニチュード(M)9.0の地震が発生し、津波が約15万人もの命を奪った。その2カ月前の10月23日には新潟県中越地震が起きた。相次ぐ巨大地震は、10年前の阪神・淡路大震災の記憶を呼び覚ます。 1995年1月17日。阪神地区を襲った震度7の巨大地震は約6400人の命を奪い、約10兆円の経済損失をもたらした。
著者
INUI Takao KAJITANI Hisashi NARITA Hideaki MORI Kazuhiro
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
Selected papers from the journal of the Society of Naval Architects of Japan
巻号頁・発行日
vol.9, pp.49-64, 1972-03

A set of three 2m models (M-8, 9, 10) are wave-analyzed, where importance is placed in the bow wave analysis (Part I) rather than in the resultant wave analysis (Part. II). The models are generated from the central vertical plane distribution of sources m(ξ,ζ), whose draftwise distribution is varied as U, V and Λ types under the restriction of ∫^1_0m(ξ) =m(ξ,ζ)dζ=fixed. The results obtained are as follows: Part I-Bow Wave Analysis: (1) The "measured" bow wave patterns show not only the parallel shift (Δx, Δy) but also the "local" distortion in co-ordination to the "calculated" wave patterns where Δy is roughly estimated as B/2. (2) The "measured" bow wave amplitude A_F(θ) is found smaller than the "calculated" amplitude throughout the whole range ofθ=0〜π/2. (3) The comparison among the three tested models shows that the linearized theory does not work so well as far as the frameline effect is concerned. This may suggest a need of some kind of empirical correction factor α_2(ζ) to be applied for the "wave-making" strength of sources, such as 0 < α_2(ζ)&ltlarr;- 1, for 0 &ltlarr;-ζ&ltlarr;- 1 withα_2(0)<1 ,α_2(1)= 1 , whereζ=f/T (f = immersion of source, T = draft of distribution plane). Part II-Resultant Wave Analysis: (1) The resultant of bow and stern waves of Model M-8, the proto-type, is wave-analyzed. (2) Newman's truncation formula is not valid except y=0. (3) The effect of finite transverse separation (y) is of less importance than the truncation error. (4) A remarkable discrepancy is observed between "measured" and "calculated" wave amplitudes, particularly in the smaller range of θor the transverse wave component. (5) Beside viscosity effect, sheltering effect is supposed to be the cause for this discrepancy.
著者
笠原 正雄 平澤 茂一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.444, pp.419-426, 2010-02-25

一般化された(u,u+v)構成法,g(u,u+v)構成法,に基づいて少数の情報記号数に対する最適2元線形符号の大きなクラスを構成している.そしてこの構成法に基づいて(3(2^m-1,m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m)符号を構成し,これらの符号がBrouwer-Verhoeffのテーブル(BVテーブル)に記載の最小距離にn≦125の範囲で一致し,それ故に最適2元線形符号であること且つn≧126の範囲においても最適2元線形符号であることが予測されることを述べる.さらに情報記号数k=2,符号長n,最小距離dの(n,2,d)線形符号および情報記号数3の(n,3,d)線形符号を与えている.そして(n,2,d)符号がn≦125の任意の符号長に対しBVテーブル記載の最小距離限界に一致すること,即ち理論的限界式を完全に満たすことを示している.同様に(n,3,d)符号もn=8+7μ(μ=1,2,…)を除く任意の符号長において(BVテーブル)理論的限界式を満たすことを示している.これらの符号nη≧126の範囲においても最適性を満たすことが強く予想される.さらに情報記号数k=4,5,6および7に対する最適符号を構成し,具体例を示している.