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著者
豊国
出版者
佐野喜
雑誌
源氏五十四帖
巻号頁・発行日
1852
著者
寺田 久屋 山本 勝彦
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.189-195, 1992-04-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

1. 市内のデパートの健康食品コーナーなどで購入した58製品の梅加工食品についてAM, PR, 遊離シアンをそれぞれ定量し総シアン量を求めるとともにAM, PRの分解生成物であるBA及びBAL量を測定した.2. AMは, 梅肉エキス及び梅肉エキスを用いた菓子類に100μg/g (HCN換算5.9μg/g) 以上残留する製品が多く認められた.3. PRは, AM含有量の高い梅肉エキス類のほか, 梅干し及び梅干し加工品類, 梅シソ加工品類から比較的高濃度な製品が認められた. 一般にAMに比較して広範囲な製品から検出された.4. 遊離シアンは, 梅漬け類及び梅干し類に10μg/g近い濃度の製品が認められたが, 加熱処理を伴う梅肉エキス及び乾燥梅製品などでは低濃度であった.5. 総シアンは, AM及びPRの高い梅肉エキス類, 遊離シアンの高い梅漬け類及び梅干し類から平均5μg/g以上認められた. 最高濃度は梅肉エキスで112.9μg/gであり, 1回の摂取量から考えて健康的には問題ない量と思われる.6. BALは, 梅干し類, 梅漬け類に比較的高い濃度の製品が認められたが, 加熱処理を行った梅肉エキス及び乾燥梅製品では, ほとんど検出されなかった.7. BAは, BALとは反対に加熱処理を行った梅肉エキス及び乾燥梅製品において高い値を示した.
著者
目代 邦康
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.160, 2021 (Released:2021-03-29)

1.はじめに 地球温暖化対策としての化石燃料使用の抑制,また東日本大震災での原子力発電所事故により原発の危険性が広く認識されたことにより,再生可能エネルギーによる発電が注目されるようになっている.各地で,地域主体の市民共同発電が行われるようになっている(たとえば豊田2016,大門2016など).一方で,地域住民の合意に基づかない,再生可能エネルギー事業のため,地域に軋轢が生じているところもある.再生可能エネルギー施設設置による乱開発を規制する条例が各地で制定されているのは,この表れであるといえる(例えば岩手県遠野市など).国立公園,国定公園といった自然公園は,自然公園法に定められている通り,優れた自然の風景地を保護し,保険,休養,教化に資することを目的としている.こうした自然公園において,環境省は,2015年には,再生エネルギーの大規模な導入という政府方針に基づき,自然公園においても自然環境と調和した再生可能エネルギー発電施設の導入を,限定的に許容すべきという立場をとっており,現在では,さらに許容の立場を進め,国立公園内での再生可能エネルギーの発電所設置を促す方針となっている.今日,多面的にその価値が理解されるようになっている自然公園において,これまでの規制をさらに厳しくするのであれば理解はできるが,安直にその規制を緩めることは,これまで多くの関係者の努力により築き上げてこられた自然公園の仕組みを破壊するものであるといえる.ここでは,自然地理学的観点から,国立公園,国定公園といった自然公園の価値を考えたうえで,再生可能エネルギー乱開発(再エネ乱開発)の問題点を指摘する.2.自然公園の多様な価値 それぞれの地域に暮らす人は,その地域の自然環境から様々な恩恵を受けており,それは生態系サービスという概念において,整理されている.その生態系は,地域によって異なるが,一つのまとまりのある範囲が流域である.流域の中で,水とそれによって運搬される砂礫,諸元素があり,地形環境がそのなかで形成され,そこで人間が生活している.この流域全域が自然公園となっていることもあるが,日本では,山地の上流部,もしくは河口周辺の海岸部が自然公園地域として指定されている.山地が自然公園として指定される意味は,そもそも開発が進んでおらず,美しい景観が残存していることが第一であるが,それとともに河川に流入する水やさまざまな栄養塩が供給される場所であること,また,山地環境における緩和作用により,流出量が調整されることがあるためである.自然公園法では,法文のなかで生物多様性保全の場であるという位置づけをしているが,生物多様性を支えるための流域やそれより広域の自然環境が存在する意義については十分理解されていない.山地に風力発電施設や大規模太陽光発電施設(メガソーラー)を設置する場合,そこの場所に存在している植生の面積が減少すること,地形が変化すること,水文プロセスが変化することは必然であり,それは許容されるべきものであるのかどうかは,土地所有者と許認可を出す行政関係者だけでなく,地域住民や研究者との合意も必要であろう.水文プロセスの変化は,その山地の保水能力の低下や,流出する水の水質の変化ももたらす.2017(平成29)年3月に環境省自然環境局より出された,「国立公園普通地域内における措置命令等に関する処理基準等の一部改正の概要」によれば,「太陽光発電施設の新築,改築及び増築による土砂及び汚濁水の流出のおそれがないこと」は適合するかどうか審査されることになっているが,何らかの地形改変を行って,土砂を河川に流出させないことなど,実質的に不可能である.
著者
吉岡 香奈
出版者
国立大学法人 東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策コース
雑誌
大学経営政策研究 (ISSN:21859701)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.103-118, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
10

The purpose of this research was to clarify the process of establishing Akita International University (AIU) by considering why a public university with global and distinctive education was established in Akita. To this end, I analyzed the discussions of the Review Committee and the Preparatory Committee for the Establishment in which AIU was conceptualized. I also obtained information from the minutes of the prefectural assembly, commemorative magazines of AIU and the Minnesota State University-Akita campus (MSU-A), and books written by Mineo Nakajima, the first president of AIU.As a result, it became clear that although initial discussions were held with MSU-A in mind, the policy shifted to a more global-minded one. President Nakajima and other members of the committee believed that liberal arts education was important, and to elicit its unique and global characteristics, AIU was established as a new public university corporation with the support of the Ministry of Education.
著者
大平 修司 スタニスロスキー スミレ 日高 優一郎 水越 康介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.19-30, 2021-01-07 (Released:2021-01-07)
参考文献数
61
被引用文献数
2

ふるさと納税は,問題点を抱えているものの,着実にその規模が拡大している。一方で,ふるさと納税に関する研究は,その実態把握研究が大半であり,特に利用者研究は限定的な理解に留まっている。本稿では,まずふるさと納税を寄付型および報奨型クラウドファンディングとして理解し,利用者がふるさと納税を行う要因を検討する。次に寄付者が寄付を行う要因を検討する。さらにふるさと納税の返礼品を寄付つき商品と理解することでコーズ・リレーテッド・マーケティング研究を通じ,消費者が寄付つき商品を購入する要因を検討する。最後にふるさと納税の利用者を理解する枠組みを提示し,地方自治体のマーケティングへの示唆を述べる。
著者
吉岡 徹朗 向山 政志 内藤 雅喜 中西 道郎 原 祐介 森 潔 笠原 正登 横井 秀基 澤井 一智 越川 真男 齋藤 陽子 小川 喜久 〓原 孝成 川上 利香 深津 敦司 田中 芳徳 原田 昌樹 菅原 照 中尾 一和
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.609-615, 2007-07-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

症例は, 39歳男性. 36歳時に硝子体出血を機に初めて糖尿病を指摘され, 以後当科で加療されていたが, 糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群加療のため入退院を繰り返し, 次第に腎機能が低下した. 2005年5月に腸炎症状を契機に乏尿, 労作時息切れ, 下腿浮腫, 体重増加をきたし, 血清クレアチニン5.8→13.0mg/dLと急激に上昇したため, 血液透析導入目的で当科入院となった. 透析開始後, 積極的な除水にもかかわらず, 心胸比は縮小せず, 透析導入後第6病日以降血圧が低値となり, 第10病日には収縮期血圧で70mmHg前後にまで低下した. 心エコー検査にて心タンポナーデを認め, 心膜穿刺にて多量の血性心嚢液を吸引除去した. 臨床経過, 穿刺液の検査所見, 血清学的検査所見, 画像検査所見から, 尿毒症性心外膜炎と診断し, 心嚢腔の持続ドレナージと連日の血液濾過透析を行い軽快した.尿毒症性心外膜炎は, 透析治療が発達した今日ではまれであるが, 急性腎不全, 慢性腎不全の透析導入期, あるいは透析不足の維持透析患者において, 心嚢液貯留を認める場合, 溢水のほか, 悪性疾患や感染症, 膠原病とともに考慮する必要がある.
著者
橋崎 頼子 川口 広美
出版者
日本カリキュラム学会
雑誌
カリキュラム研究 (ISSN:0918354X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.15-28, 2022 (Released:2023-05-15)
参考文献数
31

This paper examines a new common framework for citizenship education in Europe, where social integration is pursued in the time of social fragmentation caused by globalization. Our study mainly focuses on “The Reference Framework of Competences for Democratic Culture”, proposed by the Council of Europe in 2018.Through an analysis of three reports on the framework, we identified the following characteristics regarding the content construction and development process. We used the concept of intercultural dialogue as an analytical perspective.In the background of the study, there are two dilemmas in the curriculum development of citizenship education in Europe that previous studies have not focused on. The first is how to include shared values in education while respecting diversity. Education in Europe has emphasized shared values, as they can mediate the chaotic situation over the two world wars and the Cold War. However, it is pointed out that the interpretation of these shared values can be different in different contexts and even contradict the values of each country. The second is how to design a common framework for transnational citizenship education that can guide flexible curriculum making rather than constraining the national curriculum. These dilemmas relate to the larger question of how to mediate respect for diversity and social integration.Interculturalism has focused on educational policy in Europe since around 2010, when multiculturalism was criticized for causing polarization and social fragmentation. Interculturalism emphasizes constructive ideas of culture and identity, individual rights, shared values, and intercultural dialogue. Intercultural competencies, including intercultural dialogue, were proposed by Council of Europe’s educational experts. Critical cultural awareness, which is the ability to critically evaluate perspectives and practices of one’s own and other cultures and countries, is the central concept of intercultural competencies.In the framework, intercultural dialogue was used as a criterion for content selection and as a principle for the development process in order to make it possible to combine respect for diversity with social integration. While shared values are emphasized in competency models and descriptors in the framework as a basis for intercultural dialogue, they are not treated as universal. Instead, they are introduced as something constructed in specific cultural contexts and that can be critically examined and reconstructed in dialogue. In the competency model, values include contradictory concepts, namely “valuing human dignity and human rights” and “valuing cultural diversity,” which is the premise of intercultural dialogue. These concepts can mediate the importance of cultural diversity while respecting the human rights of each individual. Furthermore, the inclusion of “knowledge and critical understanding” as components fosters a critical reflection on one’s own culture.In addition, the framework has been developed through intercultural dialogue between different education stakeholders in member countries. This development process ensures that the framework is comprehensive, transparent and coherent for all concerned, and opens up the possibility of reconsideration. In this way, it can be appreciated that the content and process of preparation, based on intercultural dialogue, attempted to combine respect for diversity with social integration.(View PDF for the rest of the abstract.)
著者
羽渕 一代
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.103-117, 2000-10-31 (Released:2016-11-02)
著者
上田 明広 小松 研一 髙橋 牧郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.85-91, 2023 (Released:2023-02-25)
参考文献数
35

症例1は80歳女性.アルツハイマー病でドネペジル塩酸塩(donepezil hydrochloride,以下DNPと略記)を増量した2ヶ月後に首下がり症状が出現した.頸部伸筋のミオパチーを思わせる軽度の筋力低下やMRIでのT2高信号,針筋電図での筋原性変化を認めたが,DNP中止2ヶ月後に姿勢異常は消失した.症例2は78歳男性.レビー小体型認知症でレボドパ,プラミペキソール(pramipexole,以下PPXと略記)を服用していた.レボドパ減量4週後にDNPを開始,10日後に右前方への体幹屈曲が生じた.DNP・PPXの中止とレボドパ増量を行い5ヶ月後に姿勢異常はほぼ消失した.コリンエステラーゼ阻害薬の稀な副作用として体幹の姿勢異常が報告されており,注意が必要である.
著者
坂東 伸幸 後藤 孝
出版者
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.5-10, 2017-01-20 (Released:2020-08-04)
参考文献数
17

A retrospective study was conducted on 161 patients with peritonsillar abscess from July 2007 to June 2015 (111 males and 50 females; aged 11 to 86 years old, median age 41 years). All the patients were hospitalized and treated with drainage by incision for the abscess and intravenous administration of antibiotics. Out of the 161 patients, 83 (51.5%) were affected on the right side, 74 (46%) on the left and 4 (2.5%) on the bilateral. 137 (85.1%) patients were diagnosed as superior type and 24 (14.9%) as inferior type. In the blood test on the first day, number of white blood cells (WBC) ranged from 4600 to 26450 (median 12900) and C-reactive protein (CRP) ranged from 0.35 to 28.9 (median 7.98 mg/dl). Laryngeal edema was complicated in 35 (21.7%) of 161 patients. All the patients were treated with intravenous administration of either PIPC 2 g + CLDM 0.6 g (n = 74), ABPC/SBT 1.5 g + CLDM 0.6 g (n = 39), or ABPC/SBT 3 g (n = 31) twice a day. Decrease rates in WBC of patients with ABPC/SBT 1.5 g + CLDM 0.6 g or those with ABPC/SBT 3 g twice a day were significantly higher than those with PIPC 2 g + CLDM 0.6 g twice a day (p < 0.05). Age, CRP and percentage of laryngeal edema in the inferior type were significantly higher than those in the superior type (p < 0.05). Of the 24 patients of the inferior type of peritonsillar abscess, 12 (50%) patients cannot be drained with incision but cured with antibiotics and steroid. Four (16.7%) patients underwent abscess tonsillectomy under general anesthesia the next day after admission. These findings suggest that treatment with ABPC/SBT and drainage by incision is effective for peritonsillar abscess. The inferior type of peritonsillar abscess needs more intensive treatments including abscess tonsillectomy.
著者
小谷 英太郎 新 博次 井上 博 奥村 謙 山下 武志
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.195-208, 2013 (Released:2015-07-27)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

心房細動症例の抗凝固療法において,ブコロームがワルファリンの減量目的にしばしば併用される.しかし,我が国のワルファリン治療におけるブコローム併用の現状と実際のワルファリン投与量に与える影響に関する全国規模での検討はなされていない.そこで,J-RHYTHM Registry登録時にワルファリン投与中であった6,932例のブコローム併用の有無を調査し,その施設別および地区別のブコローム併用率とワルファリン投与量との関連を検討した.ブコロームは158施設中64施設(40.5%),計297例(4.3%)に併用され,ブコローム併用例のワルファリン投与量は非併用例の約半量であり,有意な減量効果を認めた(1.4±0.7mg/日vs. 2.9±0.4mg/日,p<0.001).各施設のブコローム併用率は施設間で大きな差があり(0~88.9%),施設別平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.59,p<0.001).地区別の併用率は,北越地区が27.3%と最も高く,九州地区と中国地区は1%未満と低率であった.全国10地区間に有意な差を認め(p<0.001),地区平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.71,p=0.021).ブコローム併用療法は,有意なワルファリン減量効果を認め,その併用率には大きな施設間差,地区差が存在した.
著者
立川 真樹 小田島 仁司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.269-274, 2015-04-05 (Released:2019-08-21)

1900年にPlanckが導出した放射法則は,19世紀末から続いた熱放射の論議に決着をつけるとともに,量子物理学への道を切り開いた.今日,一般的な熱計測法がPlanckの放射法則を礎に成立しており,基礎科学から熱工学にわたる広範囲で応用されている.白熱球などマクロな物体からの熱放射のスペクトルは,厳密には物質の化学組成や放射面の粗さに依存するものの,多くの場合,黒体もしくは灰色体のそれで近似できる.しかし,放射体が次第に小さくなり放射波長と同程度かそれ以下になっても,Planckの放射式は成立するであろうか?ミクロの極限である原子の発光スペクトルは,原子固有の線スペクトルである.放射体を小さくした場合,熱放射はどのように放射体自身の個性を獲得していくのだろうか?意外なことに,Planckの発見から100年を経た現在に至るまで,熱放射のサイズ効果を明確にした実験は行われていない.微粒子を対象とした実験の本質的な難しさによるのかもしれない.微粒子からの熱放射スペクトルを観測するためには,高温の微粒子を熱的に孤立した状態で空間に保持しなければならない.何らかの支持を用いれば熱的接触が不可避で,支持体自身からの熱放射が微粒子の微弱な信号を覆い隠してしまう.また,粒径が不均一な集団からの信号を観測したのでは,個々のスペクトル構造は平均化されて特徴を失ってしまう.そこで我々は,光トラップにより高温の微粒子を空中に浮遊させ,単一の微粒子からの熱放射スペクトルを計測する新たな実験法を開発した.我々の光トラップは,波長10μmの炭酸ガスレーザー光の定在波を利用したもので,トラップ領域に生じる上昇気流により重力の一部を相殺してトラップの安定度を向上させている.そこにアルミナ,酸化チタンなどの誘電体微粒子を捕捉すると,トラップ光を吸収して高温になり白熱する.このとき微粒子は融点を超えて液滴となっており,表面張力で球形をなしている.蒸発によって縮小していく高温微粒子からの熱放射の可視・近赤外スペクトルを観測すると,単調な黒体様のものから徐々に規則的な鋭いピークを持つ形に変化する.この周期的なスペクトルは,Whispering Gallery Mode(WGM)と呼ばれる誘電体微粒子の光共振器モードに共鳴した構造であることが明らかになった.物質が自然放出を起こす確率は,その空間の電磁場のモード密度に比例する.モード密度が離散的になる有限の空間では,特定の周波数で自然放出の増強・抑制が起こる.誘電体球のWGMは境界で全反射を繰り返しながら周回する電磁波によるモードで,非常に高いQ値を持つ.今回観測されたピーク構造は,WGMに同調した周波数で熱放射が増強されたもので,共振器量子電磁気学的効果を通して,誘電体微粒子の熱放射に放射体の形状や大きさの個性が現れることを示している.微小な熱放射体は火炎や星間ダストなど自然界にも豊富に存在しており,熱放射のサイズ効果の解明は自然現象の正しい理解に欠かせない.さらに,サイズ効果を積極的に利用すると,波長選択性や指向性など,熱放射の特性を制御することも可能になる.
著者
水島 公一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.48-50, 2021-01-05 (Released:2021-01-05)
参考文献数
1

ラ・トッカータ あの研究の誕生秘話リチウムイオン電池の始まり
著者
高橋 満彦 早矢仕 有子 菊地 直樹
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2232, (Released:2023-07-05)
参考文献数
21

野生動物観光(wildlife tourism)は世界中で年間 3436億米ドルの GDPと 21億 8千万人の雇用をもたらしている。バードウォッチングは野生動物観光の中でもっとも持続可能な活動の一つとされているが、非消費的利用とは言え、人が生息地に入り込む等で脆弱な状況にある絶滅危惧種に負の影響を及ぼすような過剰利用が起こるため、日本版レッドデータブックに掲載されている猛禽類 14種のうち 4種は、観察や写真撮影など故意による人の接近が絶滅の加速要因に挙げられている。本特集は、適切な観察方法の遵守を法規制を含めた手段で確保し、リスクを減らした上で観光資源として活用し、得られた収益で地域経済へ貢献すること等で、観光利用と保全を調和的に展開されるための方途を示している。
著者
石塚 昌保 河北 祐子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.81-94, 2013 (Released:2017-02-17)
参考文献数
13

多文化社会を読み解く視点として居場所感に着目し,地域日本語教室の居場所感を測るための「多文化社会型居場所感尺度」を開発した。その結果,地域日本語教室で活動する人々が居場所感を得るためには,①役割,②被受容,③社会参加,④交流,⑤配慮の5つの因子が必要であることが示唆された。またこの尺度を用い,地域日本語教室で活動している人々の居場所感全体をレーダーチャートとして視覚化する試みを行った。この尺度は,地域日本語教室の特徴や課題をとらえる上でも有効に活用できると考えられる。この尺度を利用し,ある地域日本語教室の参加者の「居場所感」を調査したところ,学習者の社会参加感が高い一方で,支援者の役割感が低いことが分かった。この調査結果を基に支援者をエンパワーした試みを紹介し,多文化社会型居場所感尺度を用いた活用事例について考察した。