著者
鐘ヶ江 秀彦 谷口 仁土 石橋 健一 大槻 知史 城月 雅大 熊澤 輝一 豊田 祐輔
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、人工環境ならびに社会環境に着目し、逆都市化におけるコンパクトシティの自然災害への脆弱性を補完し頑強性を保つための要件を検討した。その結果、災害発生時の地域経済の回復力(レジリエンス)は、地域からの人口移動が発生しないことに左右されることを明らかにし、人口移動に影響を与える社会関係資本に着目したレジエントなコンパクトシティ戦略について考察した。特に人工環境においては経済指標の時系列分析に基づく間接被害額の推定を行い、被害額と人口移動の関係性を明らかにした、社会環境ではレジリエントな都市を地域コミュニティから実現していくための方策を検討した。
著者
兼子 智 高松 潔 吉田 丈児 小川 真里子
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は精子側技術の向上、媒精環境の効率化によりICSIに依存することなく受精胚を得ることを目的として、授精に供するDNA断片化陰性精子の高精度分画、2. DNA断片化初期像、頭部空胞、先体反応誘起能観察による精子品質管理、3.卵管様微少流路内で運動精子分離、先体反応誘起、受精を同時に行う人工卵管法により、媒精に要する精子の質的向上と量的な下限値の低下を図ることに成功した。本法を顕微授精反復不成功例(250例、406周期)施行し57症例が妊娠し、49例が分娩に到った。ICSI反復不成功例が本研究で確立した高効率媒精システムにより妊娠に至る可能性があることが示された。
著者
吉田 睦 中田 篤
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本邦における氷下漁撈は、かつては諏訪湖、八郎潟で展開してきた氷下曳網漁やその他の漁法による寒冷地特有の生業形態であるが、現在はほぼ北海道に限定されて実施されている。中でも網走湖ではこの氷下曳網漁が動力化して毎年恒常的に実施されており、地域経済にも一定の地位と役割をしていることが確認できた。他方で、ワカサギを主要漁獲目標とする網走湖の氷下漁撈の状況は、近年の温暖化傾向やそれに関連する可能性もある水産資源の資源状況や生態などとも関係して、資源、漁獲量とも厳しい状況にあることが判明した。調査期間の2014年から2017年にかけては、近年では最も漁獲量の少ない期間であり、今後の動向が注視される。
著者
和田森 直
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

振動として可聴信号を耳周辺軟骨に加えるとその可聴信号を知覚できる現象を利用して、断続光の吸収に伴う発熱により、試料内部で振動が発生する光音響効果を応用した骨導音声情報提示装置を開発した。耳周辺軟骨に類似したゴム・シートから発生したPA信号の力のレベルは、日本工業規格に示されている骨導受話器を乳突部に装着した場合の基準等価いき値の力のレベルを最大47dB程度下回った。生体内の主な光吸収物質である水やヘモグロビンは、軟骨に比べおよそ100倍の吸光度を持つ。水やヘモグロビンの吸収波長付近の光源を断続光に用いることにより、基準いき値以上にPA信号の力のレベルを向上できる。
著者
園田 義人 佐松 崇史
出版者
九州東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、振動膜等の物体を一切使わず、レーザ光により音を直接検出する方法、あるいは光の中から音情報を取り出す方法(総称:光波マイクロホン)の技術確立を目的とした開発研究を実施した。同法は、空中音波の位相変調作用により発生した極微弱回折光を検出することで可聴音を検出・再生しようとする試みである。微弱回折光の検出には光学情報処理システムを用いるが、光学システム(特に音検出部にあたる光ビーム構造)をどう組めば可聴音の検出が最適化されるか、あるいは任意のニーズに適う音受信特性が実現できるか、などについては未解明の部分が多い。本研究では、光波マイクロホンの中核部である光学情報処理部及び音検出アンテナ部の理論的・実験的検討を行い、それらを総合した光波マイクロホンの技術確立などを行った。主要な内容を要約すると、次のようになる。レーザビーム伝送路(レンズ群からなる計測光学系)に音が入射した場合、入射点とフーリエ変換の関係にある位置に光検出面を置くことにより音信号が有効に取り出せる。音入射領域のレーザビームウェストのスポットサイズは音波長に近い方が信号強度が大きくなる。実用上は、数mmのビーム直径が使いやすい。音検出部の光ビームの構成と音受信特性を、主に単純反射形及び左右反転反射形ダブルビームを中心に検討し、光ビームの構成(1〜3次元的)を変化させることで、指向性、信号強度増幅などを変化させることができることなどを示した。
著者
藤田 恒夫 桑原 厚和 金澤 寛明 岩永 敏彦
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.腸の分泌に関係する細胞要素としては、消化管に広範囲に分布するEC細胞とVIP含有神経が最も重要である。二重染色の結果は、EC細胞とVIP神経が密接な位置関係にあることを示した。2.イヌの十二指腸を用いたin vivoの生理実験で、セロトニンとVIPは単独投与により、腸の分泌が亢進した。同時投与により、分泌は飛躍的に増大した。セロトニン投与により門脈中のVIP濃度が上昇することと考え併せると、下痢はEC細胞から分泌されたセロトニンが近傍のVIP神経に局所ホルモンとして作用しVIPの放出を招く結果、セロトニンとVIPの相乗効果により腸分泌が強く刺激された状態と理解される。3.PACAP(Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide)が腸上皮のイオン輸送を強く刺激することがわかった。PACAPによる塩素イオンの分泌亢進は、コリン作動性および非コリン作動性神経の刺激を介した間接作用である。PACAPにはVIP放出作用があることから、この分泌反応の最終信号物質はVIPであると思われる。4.セロトニンによる腸分泌に関する受容体のタイプを特異的な拮抗薬を用いて検討し、5-HT3と5-HT4であることを示した。5.黄色ブドウ球菌が産生する毒素であるStaphylococcal enterotoxin(SEA)は、激しい嘔吐を起こすことが知られている。本研究ではSEAの腸管内投与が下痢を起こすことを示し、この分泌反応にはEC細胞が関与する可能性を示した。
著者
向井 茂 中山 昇 橋本 光靖 金銅 誠之 齋藤 政彦 藤野 修 行者 明彦 浪川 幸彦 梅村 浩 寺西 鎮男 齊藤 博
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1)幾何学的不変式論を再構成した。また、曲線状のベクトル束のモジュライ空間をQuotスキームというものを使わずに構成した。両者相まってベクトル束のモジュライ理論は大幅に簡易化され見通しよくなった。多くの発展がこの基礎付けのもとになされると期待する。(例えば、Jacobi多様体の退化)2)放物や安定対のような構造付きベクトル束のモジュライも上と同じように構成が見通しよくなった。おかげで共形ブロックの個数に関するVerlinde公式を不変式環のHilbert級数の明示と捉えることができるようになった。この公式の周辺に集まる多くの数学(アフィンLie環、Hecke環や量子群など)を不変式の観点から純代数的に理解できるようになると期待している。。3)穴あきRiemann球(=点付き射影直線)上の構造付きベクトル束のモジュライのmaster spaceは2次元加法群の多項式環への平方零作用の不変式環をその座標環としてもつ。このことより、この環の有限生成性が従う。これと下の成果を合わせて加法群の平方零作用に対するHilbertの第14問題を解決した。(2002年3月学会で報告)4)永田の反例を改良することによって3次元加法群の18変数多項式環への平方零作用の不変式環で無限生成なものを構成した。この環と、5次元射影空間を9点で爆発したものの全座標環との間の同型(永田トリック)が重要であるが、これの新証明も与えた。5)二つのK3曲面の直積上のある種のHodgeサイクルの代数性(Shafarevich予想)に対して新しい証明を見つけた。6)偏極Abel曲面に対して2重レヴェルを考案し、それ付きのモジュライを研究した。(1,d)型でdが5以下のときは正多面体群を使って綺麗な多様体になる。今後は次元公式を計算し、保型形式環を研究すべきと考えている。
著者
江角 智也 多田 康浩 吉林 隆太 末廣 優加 板村 裕之 白澤 健太
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

サクラは散房花序から散形花序の形態多様性を示す.その違いを遺伝子レベルで特徴付けて解明することを目指し,フロリゲン・アンチフロリゲン遺伝子を解析の糸口として花序の形態形成の分子メカニズムを探った.サクラ140品種の花序形態を調査し,花序軸伸長と花数との関係,花序軸伸長と開花の早晩との関係を見出した.次に,サクラ7品種の花芽分化を走査型電子顕微鏡で比較観察し,花序発達の初期段階の小花原基誘導の違いについて明らかにした.花序組織におけるFT相同遺伝子,TFL1相同遺伝子,およびCEN相同遺伝子などの遺伝子発現について調査したが,それら遺伝子発現と花序形態の違いとに関係性を見出すことは出来なかった.
著者
デカマス ガブリエル
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

The grant allowed me to by precious books on the nuclear age for my research. These books include a recent photo album by Toyosaki Hiromitsu on the Bikini incident, or a vintage novel called Radium Terror, a Mystery Story. While the book was particularly expensive because it was printed in 1912, the story and its illustrations were important. It contained some original copyright-free etchings that I could scan and use as illustrations for my own coming book on the arts of the nuclear age. Consequently, I could enrich my research in terms of content and visual material.
著者
小田 寛貴 池田 和臣 坂本 昭二 増田 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

鎌倉時代以前の現存古写本は,極めて少ない.これは,室町以降,茶室の掛軸等にするため,古写本が数行毎に裁断されてきたためである.この古写本断簡を古筆切という.故に,古筆切の史料的価値は高く,同一の本を構成していた古筆切(ツレ)を蒐集することで,貴重な史料である元の写本を復元できる.ただし,問題点が一つある.古筆切には,後世の偽物や写しが大量に混在しているのである.そこで,14C年代測定により古筆切の書写年代を求め,さらに,顕微鏡観察によって原料・繊維幅・紙漉法等を求め,それらが等しいツレを蒐集することで,失われた古写本の一部分を復元することができる.本研究では,その方法の確立を行った.
著者
泉 佳伸 松尾 陽一郎 山野 直樹 砂川 武義 小嶋 崇夫
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マイクロ波技術を使ってこれまで困難だと考えられてきた水溶液系のDNAの評価を可能にした。具体的には、プラスミドDNAの鎖切断に伴う大きな構造変化とそれによる誘電率変化を、空洞共振器の共振周波数変化等で検出し、精度や再現性の向上のために環境の影響を低減させた。酵素で2本鎖切断させたDNAと切断前のDNAで測定値に違いが得られた。この技術を用いて、放射線被曝線量評価手法に応用できる可能性を見出した。
著者
伊藤 茂樹 田中 奈緒子 加藤 美帆 居郷 至伸 加藤 倫子 後藤 弘子 仲野 由佳理
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

少年院に送致された非行少年に対する社会復帰支援は、少年院での矯正教育(施設内処遇)と出院後の保護観察(社会内処遇)として行われているが、日本において両者は制度的に分離しているほか、統制された施設とノイズに満ちた社会の間の環境面での「落差」が様々な困難を生んでいる。しかし更生保護の現場においては、施設内処遇の成果を踏まえつつ、保護司と保護観察官、更生保護施設の職員らがこの落差を調整しながら、少年の社会への「ソフトランディング」を可能にするべく支援や調整を行っている現状が明らかになった。
著者
倉田 二郎 尾崎 眞 三橋 紀夫 赤嶋 夕子 酒向 正春
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

我々は、麻酔薬が痛みや意識を減弱・消失させる過程を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いてヒトモデルで解明しようと試みた。その第一段階として、電気刺激による痛み感覚が脳に発現する様子をとらえ、それが実際の痛み感覚とどのように関連するかを調べた。2000、250、または5Hzの正弦波電気刺激により末梢神経のAβ、Aδ、またはC線維を選択的に刺激する装置(Neurometer)を用いて13人の健康被験者の左前腕腹側に痛み刺激を与えた。その結果、250Hzおよび5Hz刺激は、2000Hz刺激に比べ1/4以下の電流で、より鋭く不快な痛み感覚を引き起こした。次に、痛みスコア(VAS)が5または7を示す強さの電流を用いて痛み刺激を同様に与えながら、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により疼痛関連脳活動を観察した。電流による画像artifactを最小限に抑えるため、最小電流値で痛みを起こす5Hz波を選択した。3人の被験者でブロックパラダイムによる全脳fMRI実験を、もう1人の被験者でさらに静脈麻酔薬propofolを鎮静および催眠濃度で与えて同じ実験を行った。Propofolは、Graseby社製TCI機能付きシリンジポンプにて投与した。MRIスキャナーはSiemens社製Vision(1.5テスラ)を用いた。ソフトウェアBrain voyager Qxを用いてgeneral linear modelによる画像解析を行った。その結果、VAS=3の痛みにより右第二次感覚野、右前頭皮質、右下頭頂小葉が活性化し、さらにVAS=5の痛みにより両側前頭皮質、両側下頭頂小葉、両側補足運動野が活性化した。一方、propofolを投与した実験では、多重比較を含む厳密な検定を行ったところ、background noiseが極めて高く、ノイズ振幅が信号強度の2.8%を占めた。輸液路・シリンジポンプなどいくつかの原因が考えられるが、ノイズ源を除去し、今後更に実験精度を高める予定である。
著者
横倉 祐貴
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

ブラックホールのエントロピーはその表面積で与えられ、熱力学エントロピーとネーターチャージの二つの側面をもつ。本研究の目的は、その両者の関係を明確にすることであり、それはホログラフィの起源や情報問題の解明につながるものである。今回、蒸発するブラックホールのself-consistentな解を球対称性という条件だけから構築できた。その解では、ブラックホール内部の物質のエントロピー密度を体積積分すると、エントロピー面積則が再現される。また、量子力学的に、熱力学エントロピーをネーター保存量として定式化できた。これらは上記のブラックホールエントロピーの2つの側面をつなげるものだと期待できる。
著者
安部 正真 矢田 達
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

新規に整備を行ったイオン照射装置を用いて、小惑星模擬表層物質としての含水ケイ酸塩鉱物と無水ケイ酸塩鉱物に対して、太陽風を模擬した水素イオンの照射実験を行った。照射前後の反射スペクトル測定を行ったところ、水素イオンの照射によって、H2OおよびOHに関連する吸収バンドに強度変化が見られた。このことから、水素イオンがケイ酸塩鉱物と反応して水を生成することを示唆する知見が得られた。大気のない小惑星や月表層のケイ酸塩鉱物に水素イオンが貫入し、結晶構造を壊し、活性化した酸素に水素イオンが結合することにより、SiOHやH2Oが形成していると考えられる。今年度は照射する試料を変えて、イオン照射量とスペクトル変化の関係に関する知見を獲得した。微隕石衝突を模擬した宇宙風化実験の結果とも整合する結果が得られている。また、ケイ酸塩鉱物への水素イオンの貫入で形成されるOHやH2Oの温度安定性についての知見を得るために、照射装置のサンプルホルダーに加熱機構を付加する改修を行った。この結果は実際に月表面で観察された水に関する吸収バンドの生成メカニズムを考察するのに役立つと考えられる。また、微隕石衝突を模擬した実験による反射スペクトル変化の測定は主に、可視波長域で行われているため、その結果と比較できるように、本研究で用いているFTIRの観測波長域を可視域まで拡張した。可視域には0.7ミクロンの水質変成に関係する吸収バンドがあり、宇宙風化がこの吸収バンドにどのような変化を及ぼすかについての考察にも役立つと考えられる。これらの改修後の照射・加熱実験および反射スペクトル測定の実施と結果の考察については、来年度も引き続き行う予定である。
著者
丸山 剛史 白石 崇人 内田 徹 船寄 俊雄 笠間 賢二 釜田 史 山本 朗登 大谷 奨 井上 惠美子 亀澤 朋恵
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、第二次大戦前日本の小学校・国民学校教員(以下、初等教員)検定制度の府県比較と中央の初等教員検定関係法令制定・改正過程に関する総合的研究である。府県比較に関しては、北海道、鳥取県、長野県、埼玉県、宮城県、山口県の道県を取り上げた。中央法令制定・改正過程の検討には『公文録』・『公文類聚』等の法令起草・成文関係史料等を用いる。本年度は学制発布から小学校教員検定等ニ関スル規則施行下の時期(1872-1900年)に限定し、検討を行った。検討の結果、次のことが明らかになった。1)府県比較に関して。北海道に関しては、資料調査により北海道道立文書館には初等教員検定関係の史料はほとんど残されていないことが判明したが、北海道教育会の機関誌に初等教員検定制度を活用した教員養成講習会に関する記事が掲載されているほか、合否判定基準等を記した検定内規も掲載されていることがわかった。検定関係規則は「小学校教員検定等ニ関スル細則」、「小学校教員検定細則」等の名称により北海道庁令で規定されていたことも判明した。長野県に関しては、資料調査により長野県立歴史館に『長野県報』、検定関係文書が所蔵されており、特に検定関係文書はこれまで非公開文書が多かったが、問い合わせにより非公開文書のほぼすべてが公開されることになった。また、検定関係規則は長野県令により「小学校教員検定等ニ関スル細則」、「小学校教員検定及免許状ニ関スル細則」、「小学校令及小学校令施行規則実施ニ関スル規程」等の名称により規定されていたことがわかった(他県に関しては文字数の制限により省略)。2)中央法令制定・改正過程の検討に関しては、国立公文書館には画期的な史料は見つけ出すことはできなかったが、府県教育会機関誌等に「小学校教員検定ニ関スル規則」制定過程に言及した記事があることがわかった。
著者
本望 修 佐々木 祐典 浪岡 愛 中崎 公仁 浪岡 隆洋
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞においては、閉塞血管の灌流領域の脳代謝および機能は低下し、脳実質や脳血管は脆弱化している。一方、近年、血栓溶解療法や脳血管内治療の急速な進歩により、閉塞血管の再開通率は80-90%に至っている。このため、脆弱化した脳実質組織や毛細血管に対して、急速に血流が再開されることよって、脳細胞障害や出血性合併症等を引き起こす再灌流障害は、極めて重要な病態となってきており、急いで対応すべき課題となっている。我々はこれまで、脳梗塞動物モデルを用いた基礎研究で、骨髄幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)の静脈からの全身投与が治療効果を有することを多数報告してきた。治療効果のメカニズムとして、①神経栄養因子を介した神経栄養・保護作用、②サイトカインによる抗炎症作用、③脱髄軸索の再有髄化、④損傷軸索の再生、⑤軸索のSprouting、⑥血管新生による血流増加、⑦神経系細胞への分化による脳細胞の再生、⑧免疫調節作用などが、多段階に作用することが判明している。更に近年、これらの作用メカニズムに加え、⑨血管内皮細胞やペリサイトを再生させ、血液脳関門(blood brain barrier: BBB)を修復する治療メカニズムも報告している。本研究では、一過性中大脳動脈閉塞モデル等を用いて、再灌流障害に対する骨髄幹細胞移植の治療効果を詳細に検討することを目的とする。さらに、血栓溶解療法(tPA静脈内投与)と細胞移植治療との相互作用を解析し、tPAの副作用に対する軽減効果についても検討しており、補助金は適切に使用されている。
著者
秦泉寺 雅夫
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

今年度は、申請課題の2つのテーマにおいて進展があった。第一のものは、K3曲面上のN=4超対称位相的ゲージ理論についてのもので、前年度に引き続き、この理論の分配関数と、アフィンリー環の理論との関連を追及した。この方針の研究を進める事により、ADE型のアフィンリー環の分母公式に現れる式が、K3曲面上のADE型のゲージ理論の分配関数の満たすべきS-双対性の性質を満足している事を発見した。この発見をもとに、ADE型のゲージ群をもつK3曲面上のN=4超対称ゲージ理論の分配関数を構成した。また、これらの結果が、弦理論双対性の一種であるTypeIIA弦理論と、Heterotic弦理論の間の双対性を用いて、簡明に解釈できる事を示した。第二のものは、一般型の超曲面の量子コモホロジーに関する研究で、今年度は、この量子コモホロジー環を、それに付随するガウス-マニン系と呼ばれる微分方程式を用いて決定するという方針のもとに研究を行った。大きな進展は、この量子コモホロジー環が、カラビーヤウ超極面の量子コモホロジー環を導出する際に用いられるミラー変換と呼ばれる座標変換を拡張した一般ミラー変換を用いる事によって決定できる事を発見した事である。現在の所このやり方によって、次数5までの有理曲線に関するGromov-Witten不変量を予言する公式を導出する事に成功している。また、一般の次数の有理曲線に対して、一般ミラー変換をどう定義すべきかが明らかにはなっていないので論文の形で発表はしていないが、近日中に理論を完成させ、発表する予定である。
著者
藤井 豊
出版者
福井医科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

I.カエル水晶体の含水率とクリスタリン組成 水晶体周辺部の含水率は70%前後でありゾル状態であった。中心部に移行するに従って含水率の低下が進み、ゾルからゲル状態への層の移行がみられた。最終的に核では20%前後と著しい含水率の低下がみられ、核は事実上鋼球体であった。水晶体構造蛋白質(α、β、ρ、γ-クリスタリン)の組成は含水率の低下即ち中心部に移行するに従って、α、β、ρ、-クリスタリンの減少とγ-クリスタリンの増加が認められた。さらに、中心部ほど不溶性クリスタリンの増加がみられた。II.水晶体の顕微鏡観察 水晶体の物性は周辺部と核では著しい相異があり、凍結切片を作製するさい核は粉状に粉砕されてしまう。他の方法による切片の作製も同様容易ではなく、顕微鏡観察による力学的ストレスの解析にはなお検討する必要が残った。III.熱力学的ストレスによる影響 加熱によ変性を調べると50℃より表面の白濁が進行し、その後完全に白濁変性する。しかし、この白濁は中心部では認められず透明な状態を維持している。一方、-80℃で凍結後、室温に戻すと、水晶体周辺部は依然透明であるが核は白濁変性を起こした。この傾向はトノサマガエルより食用ガエルでみられ、また大きい水晶体ほど白濁の程度が著しかった。変性の起こらない温度領域で低温高温の反復処理(0と40℃、それぞれ5分を一日反復負荷)を行ったが顕著な変化は観察されなかった。IV.超音波による影響 超音波(1MHz、8w/cm^2)処理を20℃で5分行うと周辺部と核の中間層に気泡形成が認められ、この中間層に最も強い振動の力学的ストレスの影響が現われた。以上、水晶体を核、中間層および周辺部の3層に分けて考察することができた。含水率の高い水晶体周辺部はゾル状態であり振動などの力学的ストレスに対して柔軟に対応できる反面熱に弱い構造となっている。中心部の核は含水率を極端に下げて蛋白質の高密度化を達成して熱や力学的ストレスに対処できる丈夫な構造になっている。ところが中間層は周辺部と核の両者の特徴を兼ね備えてはいるが、相反する性質が混在するが故にかえって力学的ストレスに対応しきれていない可能性がある。カエルの白内障はまさしくこの領域に集中していることから、力学的ストレスとの因果関係が示唆された。