著者
植竹 照雄
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

下肢を用いた反射神経トレーニング装置を開発し、その効果について検証した。具体的には本研究は、2005~2006年度に開発した上肢を用いる同様なトレーニング装置を併用することにより、トレーニング効果の上肢から下肢あるいは下肢から上肢へのトレーニング効果の転移発現の観点から比較検討した。2007年度は集中的に装置を開発し、2008年度は実際に被験者を用いた実験的研究を実施した。その結果、上肢から下肢への転移効果の方が下肢から上肢への転移効果より顕著になる可能性が示唆された
著者
畑 辻明 関根 光雄 高久 洋 石戸 良治 大塚 栄子 上田 亨
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は重点領域研究を申請するに際し、その準備段階として我が国で核酸化学の研究が濃縮されている核酸化学シンポジウムの中からメンバーを選び、本年度に研究を実施した。その結果、9月におこなわれた核酸化学シンポジウム(札幌)をはじめとして各所で貴重な新しい事実が発表された。たとえば、核酸とタンパク質の相互作用を調べたものとして上田らは制限酵素BalII、Sau3AI、MboIを選びDNA鎖の酵素認識部位のチミンの代りに3種類のウラシルに変換し、制限酵素の認識の特異性を明らかにすることができた。一方、大塚らはいわゆる"ribozyme"の機能が発現するためにどのようなRNAの塩基配列が必要であるかを調べイモリサテライトRNAの切断部位を含む切断鎖と相補鎖の塩基配列を変化させたオリゴヌクレオチド(21量体)を化学合成し、どのような塩基配列が切断に重要であるかを明らかにすることができた。また、関根らはオリゴヌクレオチドの合成で通常用いられているトリチル型の保護基が酸性条件で除去された性質を変換し、アルカリ条件で除去できるトリチル型の保護基を開発した。畑らは、mRNAのキャップ構造を構築する反応形式を検討し、RNAフラグメントを効率よくキャップ化する方法を開発することができた。
著者
松井 圭介
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,茨城県大洗町を事例にコンテンツ・ツーリズムの影響に注目し,ツーリズム形態の転換に伴う観光空間への影響,及びその変容の解明を試みた。大洗町は観光施設を数多く有する県内でも有数の海浜観光地であり,2012年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として新たな観光現象が生じている。大洗町においては,当初は店舗・組織におけるアニメファンへの対応は個別的であったが,来訪者が増加するに連れて,商工会の主導により積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れ,多くのアニメファンを取り込み,聖地が共創されていったことが明らかにされた。
著者
山口 琴美
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

海外を含め、妊娠線に関する研究はほとんど行われていない。妊娠線の出現時期も明確になっていない現状である。今回は、妊娠線の出現経過と妊娠線出現と血清リラキシン濃度との関連をみた。妊娠28週時点で妊娠線が出現しているものがあったが、多くは妊娠34週以降に出現していた。また妊娠経過に伴い、妊娠初期・中期・後期と血清リラキシン濃度の変化と妊娠線に出現には有意な関連性は認めなかった。 妊娠線の有無の2群の差で血清リラキシン濃度の経過をみたため、出現時期別により血清リラキシン濃度との関連性は見ることができなかった。今後は今回明らかとなった出現系経過と共に妊娠線出現の原因を探索するする必要性がある。
著者
水谷 暢
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

(1)インタラクション・プログラムを開発するツール(オーサーウエアー・プロフェッショナル)を使って、民事紛争アクション・プログラムを組む。これにより、これまでは、「あるべき手続」「あるべき解決」「あるべき行動」が紛争処理理論では、求められてきたところがあるが、それに対して、つぎつぎと、どのようなインタラクションの応酬がつづくか。その中で、どうすればベタ-かを考える。そういうことが重要であることを明らかにした。(2)そのための題材として、まず第一に、これまでは、「囚人のゲーム」が紛争シミュレーションの基本パターンと考えられてきたが、それをパソコン上で走らせることによって、そうではないことを明らかにし、「裏切り」を咎める「オフ攻撃」を加えたパターンを基本とした「三択複合反復囚人のゲーム」をプログラム化し、これこそが、ベースに置かれるべきプログラムだとした。(3)つぎに、それを、つぎのような、現実的・具体的な民事紛争に応用する。1 遺産分割紛争 2 詐欺の手口・訪問販売 3 貸金事件4 土地交換事件(4)紛争行動の選択肢として、コミュニケーション拒否・電話・手紙・弁護士利用・内容証明郵便・調停申立・裁判・仮差押仮処分などから、暴力団利用・自殺などまでも含み込む。(5)これらの選択肢をどう動員すれば、相手方はどう出るか。これを繰り返していくうちに、相手方パソコンは、ある程度はランダムに、ある程度は戦略的・計算的に出方を返してくる。そのようなゲーム的なやりとりの中に、「時間」「紛争コスト」も当然織り込まれる。それら全体を視野に置いてゲームを展開してゆくと、これまで考えられてきたような、パイのぶん取り合戦とか、足の引っ張り合い・双方破滅といった紛争行動の考え方ではなく、もっと別の「対抗計算」にもとづいて、紛争行動に撃って出ているかが実体験されてくる。
著者
玉村 啓和
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

アミロイドβペプチドは、アルツハイマー病の老人斑の主成分であり、膜貫通型の蛋白質であるβアミロイド前駆体蛋白質(β-amyloid precursor protein : APP)がβセクレターゼ、および、γセクレターゼによって切断されて生じる。著者はアミロイドβペプチドの生成を抑制すべくβセクレターゼの阻害剤の創製に着手した。βセクレターゼがアスパルチルプロテアーゼであることから、阻害剤のデザインとしては、基質遷移状態に基づいた「hydroxyethylamine型のジペプチドイソスター(HDI)」を含む化合物が有用であると考えられた。著者は、以前からペプチド性医薬品の化学合成に関する研究を行っており、昨年度「aza-version Payne転位反応」と「O, N-acyl転位反応」を鍵基本反応とするHDI含有ペプチドミメティックスの効率的合成法を確立した。今年度、本法を用いて、コンビナトリアルケミストリー的に多数のHDI含有ペプチドを合成し、強いβセクレターゼ阻害活性を有するリード化合物の創出を目指した。その中からβセクレターゼ阻害活性が数十nMの化合物(分子量約900)を発見した。なお、本阻害剤は同時にassayして比較した市販品(ペプチド研究所、分子量1,650)の約5倍の活性を有しており(分子量は約半分)、今後βセクレターゼの阻害剤の創製研究を遂行するにあたって、十分な活性を有していると考えられる。今後、これをリード化合物として、低分子化、非ペプチド化、生体内安定化、高活性化、BBBの透過性の上昇に関する研究を行い、医薬品としてのプロフィールを向上させることを考えている。このような生体内安定性やBBB透過性の上昇のための分子変換に役立つジペプチドイソスターとして、適度な疎水性を有する(E)-アルケン型ジペプチドイソスター、(Z)-フルオロアルケン型ジペプチドイソスター、及び、塩基性を有する還元型ジペプチドイソスターがあり、今年度これらの立体選択的合成法を開発した。
著者
古山 昭子
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

温室内で生育中の2種類の木性シダから放出される塩化メチルをバッグエンクロージャ法によって測定した結果、ヒカゲヘゴからの塩化メチル放出量は日中に減少し、クロヘゴからの放出量は日中に増加することが明らかとなった。さらに、大型チャンバーと低温濃縮/GC/MSから構成される放出量自動測定システムを開発して、塩化メチル放出量の連続観測を行ったところ、両者とも放出量は日中に低下した。気温の変化に対してクロヘゴは正の応答を示し、ヒカゲヘゴは負の応答を示した。1)ラット由来の肺胞上皮細胞と肺毛細血管内皮細胞を用い、基底膜を有する正常肺胞壁を模した2〜0.5μm厚の培養組織の作製に成功した。この培養系に粒径20nmと200nmの蛍光標識されたポリスチレン粒子と金コロイド粒子を培養組織に添加して、粒子の動態・通過機構・認識機構を検討した。A)細胞間の結合部ではなく細胞に取り込まれた20nm粒子がわずかではあるが細胞層を通過するが200nm粒子は通過しなかった。B)200nm粒子はphagocytosisで、20mm粒子はpinocytosisで細胞に取り込まれ、核やミトコンドリアへの移行はなかった。C)カーボンナノチューブは凝集が激しく単粒子で曝露して毒性評価することは困難であった。細胞内シグナル伝達分子の活性化としてNF-κBの核移行と、サイトカイン(IL-1b、TNF)の分泌は検出されなかった。MAP kinaseのリン酸化がナノナノチュいブ添加で検出されたが、毒性の弱い20nm粒子では弱かった。2)マウスに気管内投与した20nmと200nm金粒子は、主にマクロファージに貪食され、ごくわずか20nm粒子は粒子単独で循環系に入り体内移行することが形態的及びICP-MSで示された。3)マウスにカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、二酸化チタンを気管内投与し、肺への影響を検討した。組織染色ではNF-κBの核移行は検出されず、サイトカイン(IL-1β、TF-α、TGF-β)は50μgのカーボンナノチューブ投与でわずかに分泌が亢進していた。50μgと10μgのカーボンナノチューブ投与で肺の炎症、肉芽腫、部分的な線維化が認められ、ニッケル含量の多いシングルウォールのカーボンナノチューブで影響が強かった。カーボンナノチューブは肺胞マクロファージに貪食されていたが一部上皮細胞に刺さっている像も観察された。
著者
生田 和良 IBRAHIM Madiha Salah
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

エジプトにおける鳥インフルエンザウイルス(H5N1)のアウトブレイク発生は他の国に比べ遅かったが、他の国の発生頻度が低下する中で、今も多くのアウトブレイクが続いている。しかし、エジプトにおけるH5N1の情報は極めて少ない。本年度は、エジプトの家禽類(ニワトリとアヒル)からのサンプル(呼吸器系、腸管系、中枢神経系)を入手し、それぞれからウイルスを分離した。これまでに、ニワトリ由来株A/chiken/Egypt/CL6/07とアヒル由来株A/duck/Egypt/D2br10/07の高病原性を確認し、ウイルス遺伝子配列を決定した。これまでに報告されているエジプト株clade 2.2のものと比較して、両ウイルスはM以外の遺伝子にアミノ酸置換が認められ、この置換はニワトリとアヒル由来株間で異なっていた。系統樹解析においても両株は異なるクラスターに位置していたことから、エジプトのH5N1はニワトリとアヒルでそれぞれ独立して進化していると考えられた。
著者
陳 文西
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この研究の主な成果は3つの点を挙げられる。(1)ユーザ端末(ベッドサイドボックスとセンサボード)の開発長期にわたって睡眠時の心拍数を全自動的に収集できる計測手法の開発と装置設計、試作。計測装置はベッドサイドボックスとセンサボードから構成されている。センサボードは枕の下又はマットの下に置き、睡眠時の心臓拍動に由来する微弱振動を感知する。ベッドサイドボックスはこの振動信号を増幅し、AD変換を行い、データベースサーバに送信する。(2)自動解析アルゴリズムの開発とパフォーマンスの評価隠れマルコフモデルなどデータマイニングアルゴリズムを開発し、日頃睡眠時の連続心拍数から生理周期を自動的に推定する手法を提案し、パフォーマンスを評価した。さらに、枕の下とマットの下に3箇所(背、臀、小腿)、それぞれセンサボードを設置し、異なる部位の計測パフォーマンスを検討し、最適の計測部位を特定した。(3)ネットワークデータベースサーバシステムの構築と自動解析アルゴリズムの実装ユーザ端末からネットワーク経由で睡眠時の心拍数を自動的に収集するためのデータベースサーバシステムを構築し、(2)で開発したアルゴリズムをサーバ上で実装し、総合的な性能評価を行った。
著者
森山 優 森 茂樹
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

18年度は、研究代表者・分担者ともに主として海外ではアメリカ・ナショナルアーカイヴズ関係の資料調査を中心に活動した。今年度の成果の主なものは下記の通りである。(1)アメリカが傍受した日本外交電報(Magic);SRDJシリーズの撮影(研究代表者、分担者)17年度に1940年前半と1941年の部分は撮影をほぼ終了していたので、1940年分後半と撮り洩れの史料を撮影した。(2)SRDJシリーズのデータベース化(研究代表者、分担者)1941年の部分はほぼ完成した(研究成果報告書を参照)(3)アメリカ国務省文書;アメリカ・ナショナルアーカイヴズ(研究代表者)国務省と駐日大使との往復電報(1941年)の撮影は、閲覧可能なものはほぼ終了し、目録を作成した。また、下記のアメリカ在外公館の発着電状況をソースカードからデータベース化した。重慶(1941年1〜12月初)、マニラ(1941年1月〜7月)、南京(1941年1〜12月初)、上海(1941年1月〜7月)、北京(1941年1〜12月初)、サイゴン(1941年1月〜7月)アメリカ国務省文書;Foreign Relations1941 Vol.IV Far Eastの目録入力を終了した(4)訊問史料;アメリカ・ナショナルアーカイヴズ(研究代表者)占領期に実施された情報関係者に対する訊問史料を収集した。(5)ナショナル・アーカイヴのマイクロフィルム焼き付け(研究分担者)購入済みのマイクロフィルムの焼き付け作業を実施した。(6)国内の史料調査と関連文献の収集(研究代表者、分担者)防衛研究所・国立国会図書館等で史料調査をおこなった。これら及び昨年度調査の成果は、研究成果報告書の論文等に反映された。
著者
石田 謙司 桑島 修一郎
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、有機強誘電体多層膜を用いて新たな原理の論理演算素子を創成すべく、その基本概念の取得、動作原理の探求を行うことである。本年度は分極相互作用を利用した論理演算素子の実証実験に不可欠な強誘電体論理セルとなる強誘電体多層膜をフレキシブル基板上に形成して論理動作の詳細を解析し、有機強誘電体のスイッチング機能を応用した非トランジスタ型の有機論理法の動作原理を考察した。本動作を検証するため、フッ化ビニリデンVDFオリゴマー(n=12)を用いてデバイス試作を行った。電極材料にはA1を使用し、A1配線はVDFオリゴマー薄膜を介して、3つのラインが1か所でクロスオーバーするパターンとした。クロス領域は0.25mm^2、それぞれの膜厚はA1:60nm、VDF:220nmである。作製した積層体に、プリセット用のポーリング処理を施した後、論理入力として(input1,input2)=(1,0)、(0,1)、(1,1)、(0,0)をそれぞれ印加した。本実験の場合、入力論理値"1"は、+48Vであって、"0"は-48Vであり、その矩形波を入力とした。矩形波としての印加時間は250usecである。それぞれの入力に対して観測された出力電荷の時間変化を観測したところ、(1,0)、(0,1)での出力がほぼ一致することが判り、その値は、59nCであった。この値はポーリング処理時での各層での残留分極量に一致する。また(1,1)での出力がちょうどその2倍に相当する118nCであり、分極反転に伴うスイッチング動作が実際のデバイスでも想定通りに実行できていると言える。以上の結果より、例えば出力の閾値を50nCとすれば、ORゲート、100nCとすればANDゲートとして動作、実行できることが判明し、強誘電体多層膜を用いた論理ゲート動作を実証した。
著者
茅野 政徳
出版者
横浜国立大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、PISA型読解力育成をふまえ、「主観的読みと客観的読みの融合」をめざし、小学校における文学的文章及び説明的文章の新たな教材と指導法を開発することを目的とした。「主観的な読み」とは、児童が自己を投影し、登場人物の心情を探り、内容理解に役立つ読みといえる。「客観的な読み」とは、作品世界から一歩外に出た視点から作品を捉え、作者の意図をふまえ、解釈・評価に結びつく読みである。この2つが融合し、児童が新たな読みを構築するために取り組んだのが、コンピュータソフトを活用したテキストの加工・編集である。説明的文章では、文章の結末部を削除したテキストを作成し、児童が論の展開をふまえて結末部を書く。それを作者のものと比較することで作者の結末部の妥当性を見出した。また、問いかけや投げかけ、筆者特有の言い回しを抜粋したテキストと本来のテキストを比較し、表現効果について学んだ。これらの学習では、作者と対等の位置に児童がおり、自らの考えを述べるために深く文章を読み込む姿が見られた。また、これまで以上に作者の表現技法の巧みさや論の組み立て方の工夫に目を向けることができた。文学的文章では、推理小説や二人称の作品などを教材化した。このような教材を用いることは、本研究のもう一つのねらいである「受動的な読みから能動的な読みへの転換」に役立った。児童が積極的に文章にかかわり、作者の言葉の使い方や話の進め方に対して意見を述べる姿が数多く見られた。児童の主観的な読みは大切である。そこに言葉を媒介にした客観的な読みが加わることで児童の読みの世界は大きく広がった。受信から思考し、それを発信まで結びつけるためには児童の能動性を喚起する指導法やそれに合致した教材の開発が必要であり、それが着実にPISA型読解力の育成に繋がることを明らかすることができた。
著者
保井 孝太郎 竹上 勉 小島 朝人 松浦 善治 宮本 道子 木村 純子 KIMURA-KURODA Junko 荻本 真美
出版者
(財)東京都神経科学総合研究所
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1989

日本脳炎ウイルス(JEV)が属するフラビウイルスは、世界中に70種にのぼるウイルス種が存在しており、総合的で有効な対策が待たれている。現在黄熱病ウイルス、JEV、ダニ媒介脳炎ウイルスに対する生および不活化ワクチンが使用されているが、それぞれに問題点を含んでおり新しい形のワクチンの開発が要請されている。そこで、組換えDNA技術を用いてJEVに対する新しいワクチンの開発をはかり、他のフラビウイルスに対するワクチンの開発の基盤となる技術的・方法論的知見を提供することを目的として、研究を行なった。組換えバキュロウイルスおよびワクチニアウイルスを用いた研究によって、以下のことが明らかになった。1,ウイルス粒子エンベロ-プに存在する構造蛋白E,preM,Mは、ポリプロテインとして合成された後、細胞の酵素によって切断プロセシングされて完成する。2,これらの蛋白の上流にはシグナル配列があり、正常な抗原構造を持った構造蛋白を発現させるためには、正常にプロセシングされることが必要である。3,ウイルス粒子上のE蛋白は、E蛋白単独またはpreM,M蛋白とともにオリゴマ-を形成しており、モノマ-状態のE蛋白に比べて抗原的に安定であり免疫原性も高い。4,E蛋白をオリゴマ-粒子として細胞外に大量に産生・放出させ得る、組換えウイルス発現系を開発することができた。5,蛋白上の中和抗体エピト-プの位置を明らかにできた。6,E蛋白の一部分と融合し、中和などの特定にエピト-プのみを含むHBsAg粒子を産生する系を、開発することができた。以上の成果から、JEVを初めとするフラビウイルスの新しい人工コンポ-ネントワクチンを開発するための基本的な方法を提示することができたと言える。
著者
布村 明彦
出版者
旭川医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

フェンサイクリジン(l-(l-phenylcyclohexyl)piperidine;PCP)は臨床的に精神分裂病に類似した多彩な精神症状を惹起することが知られているが、PCPの精神異常惹起作用の形態学的基盤に関しては十分に検索されていない。本研究は、PCP投与ラット脳の超微形態について検索して精神分裂病様症状が出現する組織病理学的基盤について解明しようとするものである。実験動物として9週齢のSprague-Dawley系雄性ラットを用い、生理食塩水に溶解した10mg/kgのPCPを単回あるいは1日1回、連日4日間反復投与(腹腔内注射)した。また、生理食塩水のみを同様に腹腔内注射したラットを対照群として、各群のラットを最終投与の4〜12時間後にグルタールアルデヒドによって灌流固定した。脳を取り出して後部帯状回皮質から組織片を切り出し、型通りにエボン包埋した。1-μm切片をトルイジン・ブルー染色して光顕的に検索し、超薄切片をウラン・鉛二重染色して電顕的に検索した。PCP投与ラットでは、投与直後から3〜4時間にわたって運動失調、移所運動量増加および常同行動(臭いかぎ、首振り、回転運動などを繰り返す)が認められた。PCP投与ラットの後部帯状回皮質を光顕的に観察すると、胞体内に1〜数個の空胞状構造を有する神経細胞が認められた。同部を電顕的に観察すると、ミトコンドリアや小胞体が拡大・膨化して空胞状構造を形成していた。この変化は、PCP単回投与ラットよりも反復投与ラットにおいて高度であった。PCP投与ラットの帯状回皮質における神経細胞の空胞状変化のメカニズムは不明だが、精神分裂病死後脳の検索においても帯状回の組織変化が報告されており(Benens ら,1987)、本研究の結果は、精神分裂病様症状発現の形態学的基盤を考察する上で興味深い。
著者
金子 晃 笠原 勇二 竹尾 富貴子 菊地 文雄 山田 道夫 三村 昌泰 成田 希世子 塚田 和美 真島 秀行 松崎 克彦 山本 昌宏 北田 均 バランディン アレクサン 薩摩 順吉
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

偏微分方程式の基礎理論の研究においては,ジェブレイ級の解の接続問題において,接続可能性を方程式の特性帯の重複度とジェブレイ指数に関連付けた新しい結果を得た.解の漸近挙動・スペクトルの研究では,定数係数線型偏微分方程式が劣指数的増大度の解を持つための条件を追求し,リウビユの定理の拡張を得た.また,枯草菌のコロニーパターン形成過程の数理モデルを提出し,計算機によるシミュレーションにより2次元パターンを再現し,それが相転移的メカニズムで起こることを明らかにした.さまざまな逆問題の研究では,双曲型方程式に対する逆問題の一意性を係数の正則性を弱めた形で導き,逆問題のリプシッツ安定性を最も望ましい形で示した.また,密度一定の2次元図形について,2方向からの投影データによる再構成問題の一意性が成り立つ場合に,その離散化版の実用的な再構成アルゴリズムを与え,安定なことを示した.一意性が成り立たない場合に適当な重み函数を見出してそれを最大にする解を計算機により探索し,非常に面白いパターンが得られることを発見した.偏微分方程式の数値解析的研究では,中厚平板のモデルであるライスナー-ミンドラン平板に対して新しい安定化混合型4辺形有限要素を開発し,ロッキングを起こさずに薄板モデルに漸近することを検証した.また,乱流のシェルモデルにおいて,相似則を満たすカオス解を追跡しリヤプノフスペクトルを得,それが波数空間において特徴的な波数の周辺にのみ大きな値を持つことを見出した.このアトラクタ次元が大きな極限での漸近表式を導き,数値計算との良い一致を検証した.更にスケール変換に対して不変な積分作用素に適合する双直交ウェーブレットを構成し,応用を与えた.また,修正8節点セレンディピテイ要素が3次の補間誤差を持つことを示し,具体的な問題に対する有効性を確認した.
著者
岡田 賢祐
出版者
岡山大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究計画は闘争と記憶に焦点を当てたものであり、戦いの敗北を4日間記憶できるオオツノコクヌストモドキを使用して、以下の研究を展開した。最初に記憶時間がなぜ4日間維持されるのかシミュレーションし、敗北の記憶時間がどのように変化するか調査した。また敗北経験を覚えている間、オスはまったく戦わないが、代わりに射精形質への投資を増やす。従って、学習によって行動を調整できる。これら結果の一部は専門の国際誌に掲載されている。
著者
坂井 典佑
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

我々は可積分系の典型的な例として行列模型を取り上げ、繰り込み群を用いて研究した。行列模型で表されている二次元重力の可積分系としての数学的構造を場の変数についての変数変換の自由度として理解し、ビラソロ代数の表現として恒等式を導いた。我々は、この恒等式を用いて繰り込み群を厳密に解くことに成功した。中心電荷が1を越えるような物質場と相互作用するような解けない場合にも臨界指数などの有用な情報を得るために、繰り込み群理論が役立つと思われる。我々はまず、1行列模型については、中心電荷が1以下の場合について、繰り込み群方程式を導くことに成功した。この繰り込み群方程式は予想に反して、非線形となる。我々はさらに、2行列模型についても、変数変換の恒等式を具体的に求め、厳密な繰り込み群方程式を導くことに成功した。この繰り込み群方程式を解いて厳密解が得られることを示した。一方、量子重力のもう一つの定式化として2+ε次元での量子重力理論がある。この考え方は、二次元では重力が繰り込み可能になるはずだという点に着目して、高次元での量子重力を解析接続によって得ようとするものである。我々はこの理論に、ディラトンを取り入れることによって、従来の困難を解決した。すなわち、重力理論は二次元で位相的理論となり、不連続となる。我々は、ディラトンを導入することによっては解析接続可能な量子重力理論が構成できることを示した。
著者
安藤 寿男 七山 太 近藤 康生 嵯峨山 積 内田 康人 秋元 和実 岡田 誠 伊藤 孝 大越 健嗣
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本各地の白亜系~現世カキ化石密集層や現生カキ礁において,産状や堆積構造の観察,カキ類の形態・生態調査から,個々の密集層や礁の形成過程を復元し,形成要因を考察した.道東の厚岸湖では現世カキ礁を含む完新世バリアーシステムの堆積史や海水準変動を復元し,パシクル沼では縄文海進初期の津波遡上による自生・他生カキ化石密集互層を認定した.また,九州八代海南部潮下帯のカキツバタ礁マウンドの地形や生態を調査した.
著者
内田 一成
出版者
東京成徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

2方向分析モデルは、理論的には3項強化随伴性モデルを基盤にしているが、個人の行動分析-行動変容プログラムと環境分析-環境変容プログラムを同時的に用意するという点に、その独自性を求めることができる。すなわち、「個人の行動が変容すれば、その個人を取り巻く周囲の環境の変容確立も増大し、また、個人を取り巻く周囲の環境が変容すれば、個人の行動の変容確立も増大する」という両方向的な効果が期待されることから、対応困難な発達障害の強度行動傷害についての包括的な分析枠組みになり得ると考えられる。この検証のため、平成9年度から平成11年度にかけては以下の点について検討した。1.環境分析-環境変容プログラムの検討発達障害者を取り巻く施設環境の随伴性を分析し、その随伴性に対応した環境変容プログラムとして、「正の強化の適正配置」に則った4領域28項目から成るセルフ・モニターリング法を1年間にわたって組織的に導入した。その結果、本法は組織的に施設職員の処遇行動の質を有意に高めるとともに、入所者の行動に広範かつ有意な改善をもたらすことが示された。2.行動分析-行動変容プログラムの検討指導困難な強度行動障害(例:自傷行動、他傷行動、破壊行動)をもつ発達障害者12名の行動分析を行い、その随伴性に対応した個別プログラムを作成し、順次その適用ならびに追跡を行った。3.効果の測定環境変容プログラムと行動変容プログラムそれぞれの効果測定の他に、それぞれが強度行動障害に及ぼす効果も測定した。その結果、両プログラムによって12名の強度行動障害が激減し、特に12名中9名においては強度行動障害得点がゼロ・ゼロ近似水準にまで激減することが示された。このように2方向分析モデルの劇的な有効性が立証された。
著者
西本 一志
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

工学研究は,人々の生活を便利にする技術の実現を目的として推進されてきた.しかしながら,過剰で近視眼的な便利さの追求の結果,副作用として各種の問題が生じてきている.この1つの解決策として,筆者らは,妨害的要素をあえて導入することによって,人による人間的な営みに対して,異なる視点,あるいは高次の視点から見た場合にプラスの影響をもたらそうというメディア・デザインの考え方を提唱している.本研究成果報告書では,我々自身の研究事例に基づき構築した,妨害による支援システムのデザイン方法論について述べる.併せて,この考え方に基づき新たに開発した2つの語学学習支援システムの概略を示す.