著者
上林 憲雄 井川 浩輔 厨子 直之 櫻田 涼子 千田 直樹 柴田 好則 平野 光俊
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

21 世紀初頭の新しい日本型人的資源管理(HRM)システムのあり方として,コーポレート・ガバナンス制度や経営戦略の側面においては,1990 年代以降,グローバリゼーションや情報通信技術(ICT)革新の影響の下,かなりの程度変容し,「市場主義」的になりつつある。しかし,多くの日本企業は,組織・人的資源管理の側面においては,部分的には変化が見られるものの,従前の仕組みを残存させつつ新たなモデルを志向している実態が明らかとなった。こうした動向は,新しい日本型モデルを構築していくうえで大きなヒントになると思われる。
著者
末次 健司
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

従属栄養植物は、開花期以外は地上に姿を現さないため、分布情報すら明らかではない種が多く、生態学的な研究を行うには困難が伴った。そこで私は、従属栄養植物の精力的な探索と記載分類を地道に行い、詳細な研究を遂行するための土台を作成した。その上で、野外観察から分子生物学的手法に至る様々な手法を駆使し、従属栄養植物の実態に迫る研究を展開してきた。特筆すべき点として、これまで注目されていなかった地上部での適応を含め検討したことが挙げられる。例えば、大半の従属栄養植物は虫媒の植物から起源しているが、それらの生育場所は薄暗い林床であり、ハナバチなどの訪花性見虫の賑わいとは無縁の世界である。このような環境に生育する従属栄養植物は、薄暗い林床で受粉を達成しなければならない。そこで従属栄養植物の送粉様式を調査したところ、多くの種類が昆虫に受粉を頼らずにすむ自動自家受粉を採用していることを明らかにした。こうした自殖の進化は暗い林床で確実に繁殖するのに役立つたと考えられる。しかし、暗い環境に進出可能な見虫を送粉者として利用できれば、林床でも他殖を行うことが可能かもしれない。このような例として、私は、ヤツシロラン節の多くの種が、ショウジョウバエ媒を採用していることを発見した。また従属栄養植物の種子散布様式についても興味深い知見が得られた。そもそも従属栄養植物は、その寄生性ゆえに、胚乳などの養分を持たない非常に小さな種子を作る。そのため、従属栄養性と風による種子散布の間には関連があると考えられてきた。しかしながら暗く風通しの悪い林床では風散布は不適であるため、完全に光合成をやめた従属栄養植物の一部は、液果をつけ、周食動物散布を再獲得していることが明らかになった。
著者
玄 武岩 渡邉 浩平 金 成玟 鈴木 弘貴 崔 銀姫 北見 幸一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、メディアコンテンツの流通における生産および受容の二つの側面から、東アジアにおける越境的な放送空間の構築について実践的に考察した。生産面においては、2001年に始まった「日韓中テレビ制作者フォーラム」に直接かかわりながら調査を行い、その意義と可能性を考察した。受容面においては、東アジアにおける大衆文化コンテンツの越境を、産業、文化、消費、歴史認識など包括的なアプローチをとおして考察し、その過程における排除と変容、現地化と再創造の文化的意味を明らかにした。
著者
桑木野 幸司
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

初期近代に大流行を閲した知的方法論である記憶術が、単なる情報整理技術にとどまらず、同時代の視覚芸術や建築・庭園学においても様々なかたちで応用されていた点を、トスカーナ大公国を中心とした芸術史の展開を置くことで、具体例に即して示すことに成功した。具体的には、アゴスティーノ・デル・リッチョの理想庭園構想に記憶術が応用されていたこと、そしてコスマ・ロッセッリの提案する記憶ロクスに、ピサのカンポサントの図像が適用されていることを示した。
著者
西尾 久英 竹島 泰弘 西村 範行
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

脊髄筋萎縮症(SMA)患者の 95%以上に、SMN1 遺伝子のホモ接合性欠失が認められる。このような SMA 患者では、SMN1 遺伝子とつよい相同性を有する SMN2 遺伝子が残存していて、かなりの程度 SMN1 遺伝子の欠失を補償しているものと考えられている。実際、SMN2 遺伝子のコピー数は、SMA の臨床的重症度と逆相関の関係が認められている。SMN1 遺伝子と SMN2遺伝子のプロモーター領域の塩基配列はほとんど同一であると報告されているが、c.-318 GCC 挿入多型は SMN1 遺伝子プロモーター領域に特有のものであると考えられてきた。今回の研究プロジェクトにおいて、私たちは、SMN2 遺伝子のコピー数が少ないことから重症であると予想されたのにもかかわらず、意外にも軽症であった SMN1遺伝子欠失患者の SMN2 遺伝子プロモーター領域を解析し、c.-318 GCC 挿入多型を見いだした。私たちは、この多型の SMN2遺伝子転写に与える影響を解析し、脊髄性筋萎縮症治療法の開発を目指した。しかし、このc.-318 GCC 挿入多型は SMN2 遺伝子プロモーターの転写活性を上昇させず、白血球中の SMN2 遺伝子転写産物は他の 5 人の SMN1 遺伝子欠失患者より少なかった。c.-318 GCC 挿入多型を有するプラスミドを使ったレポーター遺伝子アッセイでも、この多型が転写効率に対してわずかではあるが負の効果を持っていることが明らかになった。結論として、SMN2 遺伝子プロモーターの c.-318 GCC 挿入多型は、意外にも軽症であった臨床像には関係がなかったものと思われる。また、このことは、非 SMN2 遺伝子関連症状修飾因子がSMA の重症度に関わっていることを示唆している。また、c.-318 GCC 挿入多型は SMN2 遺伝子の転写活性を低下させることが明らかになった。このことは、SMA 治療の際には、SMN2 遺伝子の転写活性にかかわる薬剤の種類や量を、c.-318 GCC 挿入多型の有無によって変える必要があることを示唆している。
著者
足立 俊明 大塚 富美子 前田 定廣 包 図雅
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

まず1つの軌道に対してその始点と軌道上の各点を測地線で結んで構成される軌道ハープについて、構成された測地線分の長さやそれらの初期ベクトルが作る天頂角を考え、ケーラー多様体の断面曲率が上から評価されているという条件の下で長さと天頂角の下からの評価を与えた。次に、磁力がアダマール・ケーラー多様体の曲率に比べて小さいとき、軌道の非有界性と、磁性指数写像の微分同相性を示した。更に、1つの測地線に対してその始点と各点とを結ぶ軌道で構成される軌道ホルンを考え、磁力と断面曲率との関係を満たせば多様体上の点と理想境界上の点とを結ぶ軌道がただ1本存在し、理想境界の異なる2点を結ぶ軌道が存在することを示した。
著者
平川 澄子 仲澤 眞
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

女性スポーツに少なからぬ影響を及ぼしているメディアとジェンダーの関係を中心に研究をすすめた。メディアで醸成される身体や運動・スポーツに関わる言説は、筋肉に象徴される逞しい男性の身体と、無駄な脂肪の少ないしなやかな女性の身体という、性によって異なる理想の身体像をつくりだした。その背景には、スポーツの産業化の進展によるフィットネスクラブの急増、テレビメディアを介してのスポーツの氾濫があった。「フィットネス」は、より積極的に理想の身体を獲得するための営みとなり、改造可能な身体観がもたらされた。1980年以降のBMIの推移をみると若い女性のスリム化傾向は著しく、男性は体格向上ないしは肥満化傾向にある。身体のジェンダー化は着実に浸透している。身体を重要な要素とするスポーツはジェンダー化された身体像の影響を大きく受けている。スポーツを題材としたテレビコマーシャルの映像分析を行った結果、男性が主人公となるCFが64.8%で女性の14.3%を大きく上回っていた。質的にも異なる描写がなされ、男性スポーツ選手はメディアを介してより偉大に描かれていくのに対して、女性スポーツ選手は矮小化されていくことが明らかになった。女性スポーツ発展のためには、ジェンダーにとらわれない個性ある身体を見直すこと、メディアを批判的に読み解き、是正する声をあげることの重要性が示唆された。また継続して考察を進めてきた女子サッカーリーグの運営と観戦者に関する日米比較研究からは、女性ファンの開拓、スター選手のメディア露出、女子サッカーのプレイ環境の整備などの課題が示唆された。
著者
安仁屋 政武
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究期間の2010 年度から2014 年度までの4年間で氷河後退により面積が8.43km2減少した。最大の後退はサン・キンティン氷河の3.35km2であった。その他顕著な後退をした氷河は、コロニア、シュテフェン、HPN3、フィエロ、ベニートである。一方、サン・ラファエル氷河、グアラス氷河、レイチェル氷河(以上氷原西側)、ピスシス氷河、パレッド・スール氷河、レオン氷河(以上氷原東側)、エクスプロラドーレス氷河(北側)、はほとんど変化しなかった。細かく変動を見ると、2013-15年の1氷河当たりの後退速度は2011-12の1/5、2012-13の約1/3となっており、後退速度が鈍化した。
著者
篠原 康
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

極性半導体の例としてGaAsを対象にコヒーレントフォノンの生成過程を微視的な理論から明らかにした。また、SbとSiについてコヒーレントフォノンの観測過程のシミュレーションを行った。さらに研究の実施計画にはない点として、応用数理に基づく効率的な固有値解法をBogoribov-de Genness方程式に適用し、その有効性を実証した。GaAsに対して、これまでに開発した手法を適用し、その生成機構の第一原理シミュレーションを行った。これまでに明らかにしてきたSiやSbと同様、Raman過程に伴うコヒーレントフォノンの励起機構が第一原理的に再現されることを確認し、極性半導体のGaAsにおいても既存の理解が適用できることを示し、力の絶対値を評価した。さらに、極性半導体特有のメカニズムである瞬間的な表面電場の消失に伴う物理過程を特徴づけるBornの有効電荷の計算を行った。既存の研究では定常電場を含めた自由エネルギーを最小にするアプローチで第一原理的に計算されていたが、我々は電場を断熱的に加えることで定常電場を模したシミュレーションを行い、我々のアプローチで、理論の先行研究、および実験値と良い一致を見、本アプローチで定常電場がかかった状態をうまく記述できていることを示した。論文をまとめる為の計算結果は概ねとり終わっている。コヒーレントフォノンの生成過程の第一原理シミュレーションでは、Siに対しては十分な結果が得られたが、Sbについては、十分な精度を計算で達成するためには莫大な計算コストがかかることが判明したため、他の物質でのシミュレーションも合わせて論文にまとめる方針を検討している。前年度デュアルディグリープログラムで培った応用数理の知見を活かし、高効率固有値解法である櫻井杉浦法をBogoribov-de Genness方程式に適用し、高効率計算が出来る事を実証し、超大規模系の理論計算の可能性を示した。
著者
若杉 雅浩
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

多くの地域において増え続ける救急患者に対して「緊急に治療が必要な患者を、適切な時間内で、的確に診断治療」できる安全な社会基盤を確立するために、救急外来において普遍的に使用できる標準化された患者トリアージシステムを確立し、システムを用いた救急患者のトリアージ結果を一元化して集積するために看護師向けの教育コースを開発し提供するとともに、地域においてトリアージ結果のデータ収集ができる体制を構築した
著者
江原 由美子 左古 輝人 鶴田 幸恵 林原 玲洋 須永 将史
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

学問の世界において生み出された概念である「ジェンダー」は,広く一般に使われる言葉として普及した.だが,その使用が政治的に批判されるようになると,「科学・社会・政治」が交錯し,相互に影響を与える状況が生じた.このような状況は,どのようなコミュニケーション齟齬を生み出したのだろうか.学問の世界における「ジェンダー」概念は,もともとかなり限定された文脈において創案されたものであるが,その文脈から切り離されることで,かえって広範な応用可能性を持つことになった.だが,その一方で,学問的であるか否かにかかわらず,「ジェンダー」概念の使用が批判されるという,複雑な政治的状況を招くことにもなったのである.
著者
尾場 友和
出版者
大阪市立東淀工業高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

就職氷河期から一転し、就職戦線はバブル期に匹敵する売り手市場で活況を帯びている。高卒労働市場においても求人倍率の点からは同じく好況には違いないが、高校教育が産業界を支える質の高い人材を輩出しているのかという点については等閑視されてきた。本研究ではまず近年の高校教育を取り巻く状況について、学校・生徒・社会のそれぞれの視点より文献に基づき分析をおこない現状認識を深めた。つぎに高卒労働者の質について評価する指標づくりとして、全国1020の事業所高卒採用人事担当者を対象に「高校生の採用と企業が求める教育像に関する調査」を郵送法にておこなった。調査は「採用時に重視したポイント」と「企業が高校教育に望む教育活動」の2つから構成し企業側の視点による高卒採用の実態について迫った。その結果、高等教育機関への進学率の上昇や学力低下を主因に、企業の高卒採用は決して順調に進んでおらず、「人手は足らないし、質も確保できない」という高卒労働市場が危機的な状況にあることがわかった。詳細については「専門高校と企業との接続に関する研究」(『教職教育研究-教職教育研究センター紀要』、関西学院大学教職教育研究センター、第13号、2008年3月)に小論としてまとめた。さらに、そうした状況を打開するためにはどういった方策が必要であるか。その手かがりを探るため「新規高卒若年社員(事務職以外)における職場適応に関する調査」を全国139の事業所高卒採用人事担当者を対象におこなった。内容は「社内研修の内容」と「早期離職の要因」を中心に構成し、就職後の高卒生の課題について考察を深めた。以上2つの調査結果に基づき、専門高校でのキャリア教育を企業との接続の観点から検討し、産業界を支える専門高校のあり方について明らかにした。
著者
澤田 敏樹
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

繊維状ウイルスからなる機能性ハイドロゲル構築を目的とし、繊維状ウイルスの一種であるM13バクテリオファージ(ファージ)の末端と金ナノ粒子が特異的に相互作用するよう分子設計して用いた。適切な濃度比で混合すると、両者は自己組織的にハイドロゲル化した。その際、ファージは三次元的に配向しながら集合化して液晶化し、また金ナノ粒子はフラクタル様のネットワーク構造を構築し、構成要素それぞれの構造が制御されたゲルとなることがわかった。両者の間の特異的な相互作用を制御したゲルを調製することで、ゲルの機械的強度が分子間相互作用に支配されることもわかった。また、自己修復能や大腸菌応答性を示すことも見出した。
著者
稲葉 美由紀 杉野 寿子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

私たちの日常生活は自然災害、新たなテクノロジーやグローバル化の影響を受けている一方で、様々なリソースは減少しています。そのような状況を背景に、本研究は貧困や格差の問題が深刻化している「豊かな国」において、従来の救済的・治療的な社会福祉の枠組を超えた社会開発的なコミュニティワークモデルづくりへの手がかりを模索することを目的とした。社会開発的なアプローチとして、社会企業・ソーシャルビジネス、少額融資、コミュニティガーデン、認知症カフェなどの地域を基盤とした新たな活動が展開されていることを確認することができた。研究成果は日本社会福祉学会などを含む国内外学会で発表し、論文として出版した。
著者
中北 英一 鈴木 賢士 坪木 和久 大石 哲 川村 誠治 橋口 浩之 高橋 劭 城戸 由能 田中 賢治 中川 勝弘 岩井 宏徳 市川 温 杉本 聡一郎 鈴木 善晴 出世 ゆかり 若月 泰孝 相馬 一義 大東 忠保 山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

集中豪雨やゲリラ豪雨による水災害軽減のための総合的基礎研究を実施した。最新型偏波レーダーとの同期フィールド基礎観測実験においてビデオゾンデ観測の汎用化をはかることでこれまで夢に描いてきた積乱雲内の多地点連続観測を実現するとともに、ヒートアイランドの影響を受ける都市域での積乱雲形成・発達過程のマルチセンサー同期観測の緒も開いた。それらを土台に積乱雲のモデル化と豪雨予測手法の開発を行い、加えて早期警戒情報提供や水位予測などの水管理に重要な手法をも構築した。特に、開発したゲリラ豪雨の早期探知・危険性予測手法は国土交通省で現業化され試験運用が開始されており、科学的にも社会的にも意義深い貢献を果たした。
著者
肥塚 隆 深見 純生 淺湫 毅 丸井 雅子 小野 邦彦 橋本 康子 デュルト ユベール 藤岡 穣 デュルト ユベール 藤岡 穣
出版者
大阪人間科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

研究成果の概要:東南アジアの遺跡や博物館等に遣されているヒンドゥー教や仏教の造形芸術資料を渉猟し、それらを過去の王朝、民族、あるいは現在の国ごとに分類して検討するのではなく、東南アジア全体を一まとまりとする歴史体系の中で総合的に位置づけて考察するための基礎資料の集成に努めた。特筆すべき成果としては、分担者の深見純生が東南アジアのモンスーン航海の確立が4世紀前半にさかのぼることを明らかにした点である。
著者
二宮 浩彰
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、都市型市民マラソンを調査研究の対象とし、経済価値評価手法であるトラベルコスト法(TCM)および仮想評価法(CVM)を援用することによって、スポーツイベントの経済価値について評価することを目的とした。都市型市民マラソンのランナーを対象として、インターネット調査を実施した。その結果、スポーツイベントの経済波及効果、消費支出傾向、および支払意思といった経済価値について実証することができた。
著者
多々見 純一
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

走査型プローブ顕微鏡に付設可能な小型試験機を開発した。安定破壊を目的として、片側シェブロンノッチ試験片を用いた。Si_3N_4セラミックスでは、き裂は連続的に進展するとは限らず、先端あるいはき裂近傍にマイクロクラックを生成しながら、それらが連結して不連続に進展していくことが観察された。また、磁歪材料であるTerfenol-Dでは、き裂の進展に伴いき裂近傍の磁区構造が変化していく様子が確認された。
著者
大津 直子
出版者
白百合女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

最終年度にあたる今年、漸く谷崎の創作と『源氏物語』の翻訳とがどのように関わるのかという問題を、第一の訳〈旧訳〉を手掛けていた三年半の間で執筆した唯一の小説、『猫と庄造と二人のをんな』の中から検証した。現在は投稿・査読中であるため、詳細は省くが、三年かけてようやく谷崎が三度にわたり『源氏物語』を訳し続けたことの意義について論じるという入り口に立ったことになる。研究員着任直後に。中古文学の手法からのアプローチが作家の翻訳の検証に必ずしも有効に機能しないことが判明したため、より合理的に目的を遂行できるよう、谷崎の創作との連関を検証する方向に研究計画を変更し、創作と翻訳との連関を、國學院大學蔵『谷崎潤一郎新訳 源氏物語』草稿から発見するいう成果を得た。
著者
重見 晋也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究計画は、『ボードレール』が「コレージュ・スピリチュエル」という題で文芸誌『コンフリュアンス』に掲載されるにあたり、1)戯曲『蠅』の原稿も編集部に戦時中に送付されていたこと、2)戯曲作品が希望を描くのに対してボードレール論が高い倫理観に根ざした行動の実践を要求していること、3)このサルトルの主張はフローベールを筆頭とした「フランス的精神」を批判することで成り立っているとも考えられる点でボードレール論は編集部の判断により戦時中には発表されなかったことを、フランス国立図書館における『コンフリュアンス』誌を始めとするドイツ占領下におけるフランス文芸誌を対象とした集中的な資料調査から明らかにした。