著者
磯田 則生 久保 博子
出版者
奈良女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

高齢者に対する温熱環境基準や好ましい冷暖房設備のあり方について提案するために、高齢者住宅を対象に温熱環境に関するアンケート調査、実態測定を実施すると共に高齢者を被験者に人工気候室実験により温熱環境要素の人体影響を測定し、総合的に検討した。1.住宅温熱環境における青年・中年・高齢者の住まい方対応に関するアンケート調査では、住宅の熱特性や高齢者の体質・体格により冷暖房器具の使用や住まい方に違いがみられた。夏季には高齢者の方が他の年代に比べ着衣量が多く、冷房器具としてはクーラーより扇風機の使用率が増加し、睡眠時の使用は減少する。冬季には高齢者の着衣量が増え、高齢者・中年ではストーブが使用され、睡眠時には中年・高齢者で寝床内暖房器具の使用が増加し、特に高齢者で多く、トレイ回数も増加する。2.高齢者住宅の温熱環境の実態測定では、冬季の温熱環境が悪く、暖房設備を改善する必要がある。夏季の居間の平均室温は29℃程度で、寝室では27℃であり、通風や扇風機の利用が多い。冬季の居間室温は15℃〜18℃と推奨室温より3〜5℃低く、寝室では8℃程度とさらに低く、着衣や炬燵で寒さに対応し、夜間のトレイ時には皮膚温が低下する。3.高齢者・青年を被験者とした人工気候室実験では、高齢者の温熱環境に対する生理・心理反応の特徴を明らかにした。夏季実験では高齢者は青年に比べ躯幹部皮膚温が低下するが、末梢部の変化が少なく安定するのに時間を要し、気温や気流の影響を受ける。冬季実験では寒冷暴露時の高齢者の前額皮膚温が気温の影響により低下するが、下腿部では青年に比べ低下が少ないことから血管収縮機能の低下が示唆される。推奨室温としては夏季には26℃〜29℃で、室温30℃では気流が必要であり、冬季には21℃〜25℃の室温が推奨され、放射暖房方式が望ましい。
著者
河田 興 伊藤 進 磯部 健一 日下 隆 大久保 賢介 安田 真之
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

2004年10-12月に香川大学医学部附属病院で出産した新生児33名およびその母親32名について、カフェイン及びメチルキサンチン血中濃度測定を行った。分娩時の母体血、娩出時の臍帯から得られた臍帯静脈、日齢2、日齢5に新生児血を採取し高速液体クロマトグラフィーで測定した。臍帯静脈血中カフェイン濃度が4mg/L以上の12名、臍帯静脈血中カフェイン濃度が4mg/L未満の21名の2群について日齢2、日齢5に行ったブラゼルトン新生児行動評価法について比較検討した。母体血と臍帯静脈血のカフェイン濃度の比較はWilcoxon順位検定で行った。母体血と膀帯静脈血のカフェイン/カフェイン及びその代謝物の和の比を比較した。その比較はpaired t検定で行った。母体血と臍帯静脈血のカフェイン及び代謝物濃度比(カフェイン/総メチルキサンチン)はそれぞれ0.68±0.13、0.69±0.14(平均±標準偏差)で差を認めなかった(p=0.469)。母体血カフェイン濃度と臍帯静脈血カフェイン濃度は対数変換後の換算値の平均値及び標準偏差値で1.47±1.87mg/L、1.73±1.76mg/Lであった(P=0.078)。更に、臍帯血濃度、日齢2血中濃度、日齢5血中濃度を測定し、新生児カフェイン消失半減期を求めた。新生児カフェイン消失半減期が14日以上は10名とで14日未満は23名であった。分娩前に母体に摂取されたカフェインを臍帯血カフェイン濃度の高低で検討すると、そのカフェイン濃度が日齢2と5の新生児行動の方位反応に影響することが示された(p=0.076)。
著者
新庄 文明 川崎 浩二 林田 秀明 吉田 治志 久保 至誠 久保田 一見
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

N県下の歯科保健に関する地域格差や課題を明らかにするため、4つの調査と分析を行った。(1)受療調査:全歯科診療所における平成16年7月第2火曜日の受診者全数17,117人(女性57%)の年齢区分は小学生相当年齢に最初のピークがあり、55-64歳が最大であった。訪問診療は1.2%を占めたが、全受診者の25%が受診した県庁所在市19地区のうち3地区、および別の1市が全訪問診療の75%を占めており、これらの地区で訪問診療が全診療に占める割合は、11%、2.4%、1.3%、3%と、特定の地区で集中的に実施されていた。(2)歯科医師の活動調査:県歯科医師会全会員を対象とする保健活動の実情調査では、回収数25%の時点で訪問診療実施経験なしが22%、52%は訪問診療のみを実施、26%が居宅療養管理指導、摂食機能療法などを併せて実施していた。(3)幼児の生活とう蝕の関連:3歳児う蝕有病者率を市町村別にみると離島、および島原半島南部が有病率が高く、また、「近隣に歯科医院がある」、「できるだけ遅くまで甘味食を与えない」という回答者の多い地区では、う蝕有病者率が低かった。(3)離島住民の口腔保健:平成14年〜16年に離島で歯科健診を実施した1343人の約4割が未処置う蝕、15%が2本以上の未処置う蝕を有し、年齢差はなかった。65歳以上の3割以上が義歯を必要としつつ義歯を使用せず、歯が原因で不快な思いをしたことのある人の割合は歯数が少ないほど多かった。(4)児童相談所健診:N県下2箇所の児童相談所において、平成16年5月下旬以降の被虐待児を含む一次保護対象者の口腔診断査を行い、10月までの対象者70名の41%に未処置歯あり、20%に痛い歯があり、14%は「歯で困った時、我慢する」と回答した。以上の結果より、離島や歯科医療の希薄な地域、保健習慣不良、被虐待児など重点的に取り組む対象者がうかびあがり、訪問診療などの実施状況にも地域格差のあることが明らかとなった。
著者
大林 正博 井出 雅弘 久保木 富房
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.591-598, 1997-12-01
被引用文献数
6

アレキシシミアを伴う書痙患者に対して, 5年余り(200回余り)のフォーカシングによる面接を行った。面接第30回くらいまでの話題の大半は, 右手の違和感など症状に関するものであった。しかし, 「日常の問題が出ないこと」の指摘などの直面化をしたり, 面接140回頃よりコーネルによる方法を取り入れたこともあり, しだいにアレキシシミアとしての印象は薄らぎ, さまざまな「気がかり」なことに触れたり, 神経症的な葛藤や不安を表現するようになった。一方, 書痙症状は徐々に軽快し, 去勢不安とも取れる事柄を語るようになった第170回頃よりほとんど完全に消失した。フォーカシングは心身症に対しても試みる価値がある治療技法であると思われた。
著者
高橋 京子 川瀬 雅也 東 由子 廣川 和花 宮久保 圭祐 江口 太郎 原田 和生 村田 路人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

博物学的生薬資料並びに医療文化財に基づくプロファイル情報は、実地臨床使用の根拠を有し、伝統医療の国際化に伴う材料天然物の有効性・安全性・均一性を担保できる標準化インデックスであることを示唆した。江戸・享保期の薬種国産化政策の実践例として育種・栽培されてきた大和芍薬を対象に、網羅的元素分析(メタロミクス解析)とγ線を利用したメスバウワー効果測定法を構築し、原料生薬の品質が漢方薬(当帰芍薬散)の臨床効果に反映することを明らかにした。
著者
大久保 功子 百瀬 由美子 玉井 真理子 麻原 きよみ 湯本 敦子
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

看護への示唆を得るためCohenらの解釈学的現象学を用い、当事者の視点から遺伝子診断による選択的中絶の意味を記述した。浮かび上がった主テーマである「つながりの破壊と障害者の存在に対する相反する価値との直面」をもとに物語を再構成した。I.知るということ、「1.夫婦の心のすれちがい、2.不幸の上にもっと不幸:障害の差異化、3.家族の中での犯人探し、4.自己疎外」II.選ぶということ、「1.身ごもった子どもの存在を宙吊りにしておく辛さ、2.障害者の存在の肯定と否定に引き裂かれて、3.中絶した子どもを忘れてしまうことの罪悪感と、亡くしたことを悲しむことへの嫌悪感というジレンマ、4.内なる優生思想との遭遇」III.つながりへの希求、「1.夫婦と家族の絆、2.必要なうそ、3.子どもに受け継がれ再現される苦悩への懸念」出生前遺伝子診断では、遺伝病という衝撃が生んだ夫婦の心のすれ違いと、障害の差異化によって人とのつながりが破壊され、家族の中での犯人探し、自己疎外、障害者の存在の肯定と否定とに直面化を招いた。選択的中絶によって自分の中での合い入れない価値観に自らが引き裂かれ、内なる優生思想が自分や家族の中に露呈するのを目の当たりにしていた。どのように生きるかを選ぶことは当時者の実存的問題であり、医療が決めることではない。しかし未来の中に苦悩が再現される可能性が出生前遺伝診断の特徴であり、その人の生き方ならびに人とのつながりを診断が破壊、支配もしくは介入しかねない危険性をはらんでいる。生きていくのを支えていたのもまた、人とのつながりでありであった。医療者自身が障害と選択的中絶に対する価値観を問われずにはおかないが、同時に中立的立場と判断の止揚を求められている。世代を超えた継続的なケアと、人と人とのつながりへの細心の配慮と、看護者自身がその人とのあらたなつながりとなることが必要とされていることが示唆された。
著者
久保田 秀和 角 康之 西田 豊明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.1-8, 2004-09-10
被引用文献数
3

本論文では,知球と呼ばれる持続的に発展可能な個人の外化記憶構築システムを提案する.初めに,外化記憶をコンテンツの一種として捉えることにより,その持続的な発展を時空間的なコンテンツの蓄積としてモデル化する.知球とはこの時空間記憶モデルに基づいた外化記憶を仮想的な球面上に構築するシステムである.実験として約1100件のコンテンツ断片から構成される外化記憶を知球上に構築した結果,知球の奥行きや左右,カードの大きさなど空間的手がかりを生かした外化記憶の配置を行うことによって,自分らしいポリシーに基づく外化記憶が構築可能であるという示唆を得た.
著者
梅崎 昌裕 河野 泰之 大久保 悟 富田 晋介 蒋 宏偉 西谷 大 中谷 友樹 星川 圭介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地域研究者が土地利用図を作成するために必要な空間情報科学の最新技術について、その有用性と限界を検討した。具体的には、正規化法による地形補正、オブジェクトベースの分類法による土地被覆分類、数値表層モデルの分析による地理的変数の生成が、小地域を対象にした土地利用図の作成に有用であることが明らかになった。さらに、アジア・オセアニア地域における土地利用・土地被覆の変化にかかわるメカニズムの個別性と普遍性を整理した。
著者
飯田 明由 小久保 あゆみ 塚本 裕一 本田 拓 横山 博史 貴島 敬 加藤 千幸
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.73, no.732, pp.1637-1646, 2007-08-25
被引用文献数
6

The aim of this investigation is to understand the generation mechanism of aero-acoustic feedback noise radiated from rear-view mirrors. In order to clarify the relationship between the velocity fluctuation and radiated noise, correlation in terms of aerodynamic noise and velocity fluctuations were measured in a low-noise wind tunnel. The experimental results showed that noise level of the tonal-noise depended on the ratio of the height of the bump to the thickness of the boundary layer. Strong tonal-noise was generated when the height of the bump was almost equal to 40% of the height of the boundary layer. The tonal-noise level also depended on the length between the trailing-edge of the bump and the edge of rear-view mirror. The frequency of the tonal noise can be calculated by modified Rossiter equation. The tonal-noise was disappeared in the case of the bump was placed at separated boundary layer. It revealed that the seed of the tonal noise was small disturbances generated by the bump on the surface of the rear-view mirror.
著者
中西 正己 紀本 岳志 熊谷 道夫 杉山 雅人 東 正彦 和田 英太郎 津田 良平 大久保 賢治
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

1993年の琵琶湖の夏は、記録的な冷夏・長雨だったのに対し、1994年は猛暑と渇水に見舞われた。この気候変動は、琵琶湖の微小生物生態系を大きく変化させた。1993年夏の琵琶湖国際共同観測(BITEX)に続いて、1994-1995年夏の本総合研究において、世界に先駆けて実施された生物・化学・物理分野の緊密な連携のもとでの集中観測結果は、琵琶湖の水環境を考える上での最重要部分である『活性中心』としての水温躍層動態の劇的な変化を我々に垣間見せてくれた。特に注目された知見として、1993年、1995年の降雨は、河川からの水温躍層直上への栄養塩の供給を増やし、表水層での植物プランクトンの生産を活発にしたのに対し、1994年は河川水の流入が絶たれたため、表水層での植物プランクトンの生産は低下し、キッセ板透明度も十数メートルと向上した。その一方で、躍層内での植物プランクトンの異常に高い生産が、詳細な多地点・沿直・高密度連続観測によって発見された。この劇的な理学の変化は、湖の生物・化学・物理全般にわたる相互作用として、従来指摘されていなかった新たな機構についての知見の一つである。
著者
背山 洋右 SALEN GERALD SHEFER SARAH BJOERKHEM IN 笠間 健嗣 久保田 俊一郎 穂下 剛彦 米本 恭三 BIOERKHEM Ingemar KASAMA Takeshi EGGERTSEN Go BJORKHEM Ing TINT Stephen SHEFER Sarah SALEN Gerald 永田 和哉 清水 孝雄 BUCHMAN Mari
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

脳腱黄色腫(CTX)は先天性脂質代謝異常症で,コレステロールから胆汁酸に至る経路の酵素が障害されて,小脳やアキレス腱における黄色腫,小脳症状,白内障などの症状があらわれる。1937年にvan Bogaert等により報告されたのに始まるが,我が国では1969年の柴崎の報告が第1例である。この疾患の成因と遺伝子における異常を明らかにすることを目的として,1)患者から得られた線維芽細胞について欠損酵素である27位水酵化酵素をコードする遺伝子の解析と,2)疾患モデル動物の作製実験を行った。1.CTXにおける遺伝子異常の解析:スウエーデンのカロリンスカ研究所のBjoerkhemとの共同研究で,日本側からは米本恭三(慈恵医大),穂下剛彦(広島大・医)と久田俊一郎(東大・医)が関わった。CTX患者の線維芽細胞を培養して,RNAを精製し,ステロール27位水酸化酵素の活性に関与するアドレノドキシン結合部位とヘム補酵素結合領域を対象に,RT-PCR法により増幅した。得られた産物をシークエンスして,Russellにより報告されたcDNAの塩基配列と比較した。鹿児島大学で見つかった5人の患者について塩基配列の解析を行ったところ,何れもヘム補酵素結合領域である441番目のアルギニンをコードするコドンに異常があることが明らかになった。1人の患者では更に445番目のアミノ酸をコードする部位に1塩基の欠失が認められた。このうち,アルギニンがグリタミンに置換されている患者では制限酵素Stu Iによる切断部位が新たに生ずるので,RT-PCR産物について切断パターンから診断が可能になった。また,アルギニンがトリプトファンに置換された患者ではHpa IIによる切断部位が無くなるので,遺伝子診断が可能であることがわかった。家系によって遺伝子異常が異なっていたことは,それぞれの家系について予備実験が必要なことを意味しており,今後のスクリーニングの実施に当たってはこの点の配慮が必要となった。2.CTX疾患モデル動物の作製:アメリカのニュージャージ医科歯科大学教授のSalenおよびSheferとの共同研究であり,日本側では笠間健嗣(東京医科歯科大・医)が携わってきた。CTX患者では血清中のコレスタノール(ジヒドロコレステロール)濃度が上昇する高コレスタノール血症が見られる。マウスに高コレスタノール食を投与すると,CTX患者に準じた高コレスタノール血症がもたらされ,それに伴って角膜変性症などが引き起こされることを既に観察してきた。今年度は胆石形成が見られる現象に着目し,生化学的検討を行った。1%コレスタノール食をBalb/cマウスに14か月にわたって投与したところ,20%の頻度で胆石形成が見られ,同時に胆嚢の壁の肥厚,血管拡張などの炎症症状を呈していた。この胆石を分析したところ,コレスタノールが55%,コレスタノールが45%であり,この組成は胆嚢胆汁中の両者の組成と一致していた。一方,コレスタノール食を投与したマウスの胆汁から結晶が析出し,この結晶を走査電顕を用いて観察したところ,その形はコレステロールの結晶とは異なる正方形の滑らかな表面をもっていることがわかった。肝臓のHMG-CoAレダクターゼおよび7α-ヒドロキシラーゼを測定したところ,前者は51%上昇した反面,後者は59%低下していた。また,1%コレスタノール食を13か月間与えた後,1か月間標準食に戻したところ,上昇した血清と肝臓のコレスタノール値は低下し,この両酵素活性は正常値に戻った。これらの結果は,コレスタノールの増加によりHMG-CoAレダクターゼが誘導され,7α-ヒドロキシラーゼが抑制されたことを示唆している。この両酵素はコレステロール生合成と胆汁酸生合成系の律速度酵素であるが,コレスタノールの両酵素に及ぼす影響が相まって胆石形成を引き起こしたものと考えられる。今回のモデル動物の作製はコレスタノールと胆石の関係を明らかにするうえで意義のあるものであり,本疾患の病態解明に役立つものと期待される。日本,スウエーデン,アメリカの3国間で実施した,本研究はそれぞれの研究チームの特色を生かして,CTXという疾患の病態解明を行い遺伝子レベルにおける診断の可能性を示した点で大きく貢献したといえよう。
著者
三木 一郎 松瀬 貢規 久保田 寿夫
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

電気自動車(EV)用40kW、12-8極のスイッチトリラクタンスモータ(SRM)の設計開発を行い、始動および定常駆動の位置センサレス制御アルゴリズムの開発・実用化を目指し、新しい駆動系電気自動車の完成を最終目的として研究を行った。市販の車をベースに電気自動車を開発するために、従来のエンジンを取り外し、代わりにSRMがそのまま設置できるようにモータ外形寸法をまず決定し、次にバッテリーで供給可能な電圧から必要なトルクが得られる電流を求め、基本的なモータ仕様を割り出した。これらの基本設計を基にモータの製作をメーカーに依頼し、同時にSRM用の特殊なインバータの製作を別メーカーに依頼した。これと並行して、位置センサレス制御アルゴリズムの開発を進め、次の事を明らかにした。1.始動、および低速から高速まで安定して運転が可能な位置センサレス制御手法を開発できた。ただし、始動法に関しては既に類似の手怯が発表されていることが明らかになった。2.負荷が印加され、電流が流れると磁気飽和の影響によりセンサレス制御の精度が悪化するが、これに対処する方法を開発した。3.速度推定は、低速になるとその精度が悪化していたが、これを改善する手法を見出すことが出来た。以上が、センサレス手法に関する研究成果である。EVを構成する基本的な要素、すなわちSRM、駆動用インバータおよひバッテリーによる模擬実験用システムを構成し、実験を行った。負荷にはPMモータを使用した。各指令速度に対する電流、電圧波形の測定、負荷試験などを実施した。これらの結果より、効率については、モータ単体て80-90%、駆動回路まで含めると65-75%程度であることがわかった。さらに、SRMの大きな欠点である振動・騒音についても追加て研究を進め、これらを軽減できる一方法を明らかに出来た。今後はこれをさらに進め、より実用性の高いSRM搭載電気自動車の開発を進める予定である。
著者
松久保 隆 佐藤 亨 小野塚 実 藤田 雅文 石川 達也
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、研究-1:偏位性咀嚼習癖を持つ患者の聴力変化の機構を明らかにするため、コットンロール噛みしめ時の聴性誘発脳磁場(AFEs)を定量的に比較検討すること。研究-2:歯科診療所に来院した患者の偏咀嚼と聴力値との関連性を疫学的に検討すること、である。本年度に得られた新しい知見は、研究-1:申請者らの開発した最大咬合圧の40%以下までのコットンロール噛みしめの条件でAFEs測定を行う方法を用いて研究1を行い、以下の結果を得た。噛みしめ時のAEFs応答は、左右側音刺激に対するAEFs応答はすべての被験者で低下しており、特に噛みしめ側と同じ聴覚野の応答に有意な差が認められた。噛みしめが聴覚野応答を低下させる理由として1)顎関節の偏位による形態的変化、2)中耳および内耳の神経支配への影響、あるいは3)gate controlによる中枢での抑制が考察された。本研究は、コットンロール噛みしめが、聴覚誘発磁場に影響を与えていることを客観的に示すものである。また、本研究に用いた方法は、噛みしめの聴覚応答をはじめとする体性感覚に影響を与えていることを実験的に検討する方法として有用であることを示している。研究2:オージオグラムの咬合咀嚼機能の動的評価への応用について20症例による検討を行った。すなわち、プレスケールおよびシロナソアナライジングシステムによる咬合咀嚼機能の評価にオージオグラムを加えることの有効性を評価しました。その結果、質問紙調査、口腔内診査、プレスケール、咀嚼運動ならびに作業用模型による分析にオージオグラムの周波数別の聴力低下パターン評価を組み合わせることにより、咬合咀嚼運動のより正確な動的評価が可能であることが示された。
著者
大久保 力廣 小久保 裕司
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

人工舌の開発にあたり,まずCT画像から日本人の平均的な舌の大きさおよび形態を計測した結果,下顎骨体積は平均87,806mm^2,舌体積は平均78,990mm^2,舌の位置・可動範囲を決定する一つの要因となる舌/下顎骨比率は平均91%であった.舌容量の測定後,空気圧とナイロンストリングの張力を利用した2WAY方式の軟性アクチュエータを舌の柔軟性運動を再現する最適モデルと決定した.また,人工舌に適切な形態・位置変化を行わせるためのアクチュエータの配置や相互干渉を検証し,軟組織モデルを構築するのに適した軟性空気圧アクチュエータモデルを試作した.開発したプロトタイプモデルはアクチュエータ同士の干渉もまったくなく,従来までの多関節ロボットでは到達できない舌固有の曲線でリズミカルな柔軟性運動と形態の多様化を再現することが可能であった.さらに,駆動源を必要としない自己駆動機構を有し,リズミカルな嚥下を実現する人工舌を考案した.
著者
小久保 喜弘 中村 敏子 神出 計 宮本 恵宏 渡邊 至
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

市部一般住民における代謝性疾患と頚動脈硬化の進展に関する追跡研究と血管内膜中膜肥厚(IMT)の進展との追跡研究について、生活習慣要因から検討した。正常高値血圧以上で最大IMT値が有意に厚かった。女性の最大IMT値は、血圧と高感度CRP高値との間に交互作用が見られた。また、女性の糖尿病型、男性の境界型以上で平均・最大IMTは有意に厚かった。頸動脈狭窄は血糖が高くなるとリスクが高く、さらに血圧上昇と交互作用が見られた。慢性腎障害は頸動脈硬化の危険因子であり、頸動脈硬化は慢性腎障害の正常高値血圧、高血圧群でさらに進展していた。頸動脈硬化症の予防に、慢性腎障害への進展抑止と血圧のコントロールが重要であるごとがわかった。さらに、追跡研究では頸動脈IMT、特に総頸動脈最大IMTは循環器病発症の予測因子であることが分かった。正常高値血圧、糖尿病型、non-HDLコレステロール高値、喫煙、BMIが保健指導において動脈硬化進展の予防に有効な指標であることが分かった。
著者
寺井 隆幸 鈴木 晶大 田中 照也 星野 毅 久保 俊晴 志村 憲一郎
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

核融合炉ブランケットでの使用が検討されている各種トリチウム増殖材料候補中でのトリチウム挙動及びブランケット配管におけるトリチウム漏洩防止についての研究を実施し、液体リチウム及び流動下液体リチウム鉛中水素同位体の配管を通しての漏洩速度及び移行メカニズム、さまざまな酸化還元状態の溶融塩候補材料中のトリチウム化学形変化、固体酸化物候補材からの蒸発挙動を明らかにするとともに、トリチウム透過防止コーティング中のトリチウム移行メカニズム解明とコーティング作成手法の最適化を行った。
著者
森 欣司 藤原 英二 久保田 稔 呂 暁東 森山 甲一
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、必要な情報サービスを得られるためには、状況に応じてユーザが動的に集まり協力して処理を行なう「コミュニティ」アーキテクチャを提案し、これに基づき、コミュニティ通信・処理技術を提案した。1. コミュニティメンバが個別に変化するサービス要求・機能・情報を持つ分散環境下において、機能不完全なサブシステムが存在する場合にもシステム全体の稼働を保証する自律分散システムコンセプトに基づき、各サブシステムがそれぞれの持つ機能・情報の部分的な共有を繰り返すことにより連携し、高信頼で柔軟な通信・処理を統一的に捉えるデータ指向型システムアーキテクチャを提案した。2. コミュニティ内のネットワークがサービスのレベルに応じて通信範囲を限定しながら自律交信する技術、とユーザが要求するサービスをネットワーク内にて逐次検索を行い、サービス提供者の応答の伝幡によってユーザ要求の拡散を抑制する技術を提案した。3. サービス提供者やユーザの分布等の状況を反映し、サービス情報が配布・共有されるコミュニティエリアを動的に構築する技術、コミュニティメンバのダウンなどの障害が起きたときに、所定の情報配布エリアに対して必要な情報を配布することができるノード間自律協調技術、とサービスの質とそのアシュアランス性を保証するため、各ノードが自律的に冗長ノードの確保と構造の再構築を行なうための自律負荷漸近調整技術を提案した。実際に自律分散コミュニティシステムプラットフォームを構築し、このプラットフォームによって、インターネットを介した研究協力者との共同実験を行い、提案技術の有効性を検証した。
著者
大久保 哲
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学法学 (ISSN:09150463)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-21, 2000-07