著者
田崎 和江 縄谷 奈緒子 国峯 由貴江 森川 俊和 名倉 利樹 脇元 理恵 朝田 隆二 渡辺 弘明 永井 香織 池田 頼正 佐藤 一博 瀬川 宏美 宮田 浩志郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.435-452, 2002-07-15
被引用文献数
3 5

1991年12月,排砂ゲートを設けた出し平ダム(富山県黒部川水系1985年設立)から,初の直接排砂が行われ,その際,多量のヘドロが排出された.その後も1999年までに計8回の排砂が行われた.本研究において,出し平ダム湖および富山湾堆積物の特性について分析を行った.その結果,特に芦野沖にヘドロが堆積していること,そして,富山湾堆積物は他の湾堆積物と比べカオリン鉱物,スメクタイトが多く,出し平ダム湖堆積物と類似した粘土鉱物組成を持つことが明らかとなった.実験より,ニジマスのエラにスメクタイトが吸着することで,エラの変形や脱水を引き起こすことが明らかとなり,また,富山湾で採取されたヒラメのエラ表面が,微細粒子で覆われているのが観察された.以上の結果と1991年から1999年の出し平ダム排砂量とヒラメの漁獲量の変遷には密接な関係が認められ,ダム湖や富山湾底質の経時変化を観察することの重要性が示された.
著者
手塚太郎 李龍 高倉 弘喜 上林 弥彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.67, pp.503-508, 2002-07-18
被引用文献数
1

World Wide Web(以下、WWW)は日常的な情報収集の手段として広く用いられているが、地域関連情報の検索はその重要な一角を占める。本研究ではWWW上のテキストデータに対する内容解析によって人間の地理空間認知の構造を明らかにし、地域情報検索の効率化に役立てる。自然言語において地名は格助詞を伴って現れることが多い。そこで格助詞の意味分析を行ない、共起しやすい格助詞の種類によって地名を特性付けした。地名には狭義と広義のふたつの意味を持つものが多く、解釈において困難を生じさせているが、その判定に格助詞との共起パターンを用いられることを示した。World Wide Web is now widely used as a tool for daily information search. One important usage of WWW is to search local information. Our paper discusses human cognition on geographic space. In Japanese text data, most place names appear with case intensifying particles. We performed analysis on case intensifying particles and characterized place names based on which particles it is likely to co-occur with. There are many place names that have more than one meaning: the original meaning and the extended meaning, which surrounds the original. We showed that the characterization based on case intensifying particles could be used to determine such duplication of the meaning.
著者
倉島 健 手塚 太郎 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.67, pp.47-53, 2005-07-13
参考文献数
14
被引用文献数
1

人間の行動は時間的・空間的要因によって規定されている.Blogの普及により,地域を実際に体験した個人の情報発信が活発になり,さらには記述された日時が記録されているというBlogの特性によって,このような人間の動きに関する情報が得られるようになった.本研究においては,ある場所について書かれた個々のテキストから,人々の体験を,時間・空間・動作・対象属性間の相関ルールマイニングによって抽出する手法を提案する.そして,ユーザがそれらの属性を指定することで,抽出した体験を柔軟に検索・要約することのできるシステムの提案を行う.これにより,容易にその地域における人々の行動を把握することが可能となる.The prevalence of Blogs has enabled observation of the personal experiences in a certain location and time. Such information were traditionally unavailable except indirectly through local newspapers and periodicals.This paper proposes a method of obtaining spatially-specific experiences of urban visitors, for example, visitors' activities at several sight-seeing spots and their evaluations, by extracting association rules from the contents of Blog articles.By geographical mapping of Blog articles, the proposed system enables users to observe visitors' real activities and impressions of their visiting places, which are often more diverse than the guidebooks and more trustworthy than the advertisements.
著者
新上 和正 下川 信祐 倉持 裕
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.289-290, 1999-03-09

デザインの理論的枠組みの構築を目指して、コミュニケーションツール(たまごっち、プリントクラブ、ポケットベル、PHS、放課後クラブ、携帯電話、電子メール)の利用イメージ、継続・非継続利用行動について、若年層女子を中心にしている。アンケート調査を行って分析し得られた結果を報告する。
著者
笹島 宗彦 來村 徳信 長沼 武史 倉掛 正治 溝口 理一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.171-189, 2008-04-15
被引用文献数
3 4

日常生活行動のオントロジーに基づくユーザモデル構築方式を提案し,携帯電話を介して利用されるモバイルインターネットサービス利便性向上への提案方式適用について述べる.現状のドメイン指向型で分類されたメニュー階層の問題点を改善するために筆者らは,タスク指向型メニューを提案してきた.プロトタイプでは良い性能を示したタスク指向型メニューを実規模に拡張するには,モバイルユーザの日常行動をできるだけ一般性をもってモデル記述するためのスケーラブルな方式が必要であり,本研究ではモバイルユーザの行動に関するオントロジーを構築して利用する.構築したオントロジーと提案方式に関する評価実験を行い,提案方式がモバイルユーザの状況モデル記述を支援し,現状のモバイルサービスが想定する状況の大部分を記述する能力があることを確認できた.
著者
坂田 一拓 市村 重博 倉島 顕尚
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.6, pp.37-42, 2000-01-20

携帯電話を用いたメールサービスは、単独の受信者にメールを送信する機能しか持たないため、利用者がグループコミュニケーションを行う際にはメーリングリストを用いる。コミュニケーションには、そこで交換される情報を目的とするものと、雑談のように情報交換の行為を目的とするものがある。メーリングリストには、後者のコミュニケーションを行う場合、そこに参加する意思のない者にまで不要なメールを配信してしまう、という問題があった。本論文で提案するメーリングリストサーバは、グループの各メンバの意思に応じてメールの配送先を動的に変更するセッション召集方式により、この問題を解決する。A mailing-list system is used for group communication over mobile-phone e-mail services, since the services allow their users to specify only one recipient for each e-mail. Two types of group communication can be considered, i.e., the exchanging of concrete information and mere casual conversation. Traditional mailing list servers are not well suited for the latter, since they deliver e-mails even to members who are not interested in the content of the e-mails. As a means of solving this problem, we propose a mail-delivery method called "session-call method" which dynamically changes the members of the delivery group in accordance with recipients' requests.
著者
北尾 敦子 倉賀野 妙子 奥田 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-24, 1996-02-20
被引用文献数
2

限られた資源を大切にし、環境汚染をくいとめるという視野から、家庭での揚げもの料理の実態と使用済み油の物理、化学的測定を行ない劣化度との関連性を検討した。1.使用後の廃油の酸価、過酸化物価、TBA値、粘度、色(L、a、b、彩度)は、新油のそれとほぼ同じ分布幅にあり、新油とほぼ変わらない程度の油が廃油として捨てられていた。 2.これは、揚げ物を始めて使い終るまでの期間が短いこと、使用回数が少ないことなど短期使い捨て型使用実態に裏うちされていた。3.さし油の有無によって上述の測定値には差がなかった。本結果のような短期使い捨て型ではさし油の効果は認められなかった。4.油の使用をストップする目安として色のほかに、健康によくない、カラット湯がらないという理由が上げられた。5.短期使い捨て型であるため廃油が多いものと推察されたが、流しに捨てるものは1%で、多くは市販凝固剤で固める、紙などに吸わせる、牛乳パックに入れゴミとして廃棄していた。6.資源を大切にするために、廃油になるまでの使用回数をいま少し延ばし、安易に油を廃棄する習慣を改め、1回の廃油量を減らす工夫が重要である。今後、1回のはり込み量を少なくするための鍋の形状、1回のはり込み油脂量と廃油との関連性を検討する予定である。
著者
小倉 肇
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-16, 2003-01-01

〈大為尓〉は,源順の「あめつちの歌四十八首」の冒頭2首および『万葉集』巻1の巻頭歌ならびに『三宝絵』序の冒頭に引く古人の「漢詩」を踏まえて作成された,「江」を含む48字の誦文で,作者は,『口遊』『三宝絵』の著者,源順の弟子の源為憲である。〈大為尓〉は,綿密かつ周到に計算された用語で構成されており,まさに「此誦為勝」と見なすことのできる内容の誦文(韻文)となっている。〈阿女都千〉から〈大為尓〉への改変は,源為憲の「ちゑのあそびの産物」であり,「此誦為勝」という注記は,音韻史の問題(ア行「衣」とヤ行「江」の区別)とは全く関係のないもので,そのまま文字通りの意味で理解することができる。また,五音と誦文との相互補完的な結びつきは,〈以呂波〉が成立してから後のことであることも改めて確認する。
著者
倉 真一
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.113-128, 2006

本稿は1980年代以降に創刊された新興の保守系オピニオン誌の一つである『SAPIO』における外国人言説を考察したものである。1989年の創刊から1990年代前半までの在日外国人に関連する記事を分析した結果、「われわれ=日本人」という主体による「混住社会ニッポン」の実現が90年代初頭には語られていたが、そこで暗黙に想定されていた「外国人」とは、『SAPIO』の主要な読者である企業サラリーマン層からみて同質性が高く、理解可能でコントロール可能な客体、いわば他者性を縮減された「外国人」であった。しかし「外国人犯罪」に関する記事のなかで、「外国人」=加害者(主体)と「日本人」=被害者(客体)という図式が強まり、「外国人」を理解やコントロールが困難な他者性を孕んだ主体として表象するようになるにつれ、最初期の「混住社会ニッポン」を構想する主体としての「われわれ=日本人」という言説は後退し、やがて「混住」というキーワードは誌面上から消えてしまう。かわりに誌上に現れたのは、日本社会にとって〈有益な外国人〉-〈有害な外国人〉という二項対立的な図式であり、それが1990年代後半以降における『SAPIO』の外国人言説の基調をなすことになる。
著者
鎌倉 友男 阿比留 巌 熊本 芳朗
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.802-809, 1990-10-01
被引用文献数
2

音波の吸収、回折、非線形効果を集約したKZK放物形波動方程式を数値解析することで、1周期の正弦波パルスが伝搬するに際し発生する波形歪を追跡した。初期波形、特に符号のみ異なる正及び負で立ち上がるパルスに対して、波形の変化のみならずパワースペクトルの変化についても言及した。広帯域なパルス波においては1次波と2次波のスペクトルが重畳し、周波数成分間の非線形相互作用や回折効果の違いにより複雑な波形変化をする。初期信号の符号のみを変えることでこのような歪んだ波形から1次波と2次波を分離することができ、この手法について実験結果を加えて議論した。
著者
瀬戸 雅宏 寺倉 祐二 佐々木 幹夫 山部 昌
出版者
The Japan Society of Polymer Processing
雑誌
成形加工 (ISSN:09154027)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.148-154, 2003-02-20 (Released:2009-11-18)
参考文献数
11
被引用文献数
10 3

The material properties within injection molded products may display a distribution or anisotropy due to the influence of the resin flow velocity distribution profile and the cooling rate during the injection molding process. As a result, the products may warp. From the standpoint of production efficiency, it is very important to predict such warpage prior to the injection molding process, and injection molding CAE tools are widely used at present to conduct warpage analyses.Warpage analysis techniques currently available do not provide sufficient accuracy because they cannot predict the distribution of material properties that occurs in the interior of injection molded products. This is especially true for thick injection molded products, which display a large distribution of material properties across their thicknesses. As that distribution is thought to affect warpage substantially, the accuracy of the warpage analysis presumably declines even further.In this research, a thick flat plate was injection molded from a medium density crystalline polyethylene material, and the distribution of the thermal expansion coefficient was measured along the thickness of the molded part. The molecular orientation ratio and crystallinity were also measured and their correlation was examined in order to investigate a method for predicting the thermal expansion coefficient distribution. The results revealed that the thermal expansion coefficient displayed a large variation and anisotropy in the thickness direction and that the distribution correlated with the crystallinity. Moreover, using the thermal expansion coefficient data obtained by these measurements, a material property database was created for use in conducting warpage analyses that take account of the distribution of material properties along the thickness of injection molded products. A multi-layer analysis model was then used in an effort to improve warpage analysis accuracy. The results indicated that warpage analysis accuracy was improved, which shows that a multi-layer model that takes account of the distribution of material properties is effective in conducting more accurate warpage analyses.
著者
西園 昌久 高橋 流里子 対馬 節子 松永 智子 福屋 靖子 土屋 滋 大貫 稔 高橋 美智 浅野 ふみぢ 小松崎 房枝 鈴木 小津江 平山 清武 中田 福市 鈴木 信 壁島 あや子 名嘉 幸一 鵜飼 照喜 福永 康継 浪川 昭子 高田 みつ子 岩渕 勉 森脇 浩一 加藤 謙二 早川 邦弘 森岡 信行 津田 司 平野 寛 渡辺 洋一郎 伴 信太郎 木戸 友幸 木下 清二 山田 寛保 福原 俊一 北井 暁子 小泉 俊三 今中 孝信 柏原 貞夫 渡辺 晃 俣野 一郎 村上 穆 柴崎 信吾 加畑 治 西崎 統 大宮 彬男 岩崎 徹也 奥宮 暁子 鈴木 妙 貝森 則子 大橋 ミツ 川井 浩 石川 友衛 加世田 正和 宮澤 多恵子 古賀 知行 西川 眞八 桜井 勇 三宅 史郎 北野 周作 竹洞 勝 北郷 朝衛 橋本 信也 斉藤 宣彦 石田 清 畑尾 正彦 平川 顕名 山本 浩司 庄村 東洋 島田 恒治 前川 喜平 久保 浩一 鈴木 勝 今中 雄一 木内 貴弘 朝倉 由加利 荻原 典和 若松 弘之 石崎 達郎 後藤 敏 田中 智之 小林 泰一郎 宮下 政子 飯田 年保 奥山 尚 中川 米造 永田 勝太郎 池見 酉次郎 村山 良介 河野 友信 G. S. Wagner 伊藤 幸郎 中村 多恵子 内田 玲子 永留 てる子 石原 敏子 河原 照子 石原 満子 平山 正実 中野 康平 鴨下 重彦 大道 久 中村 晃 倉光 秀麿 織畑 秀夫 鈴木 忠 馬渕 原吾 木村 恒人 大地 哲郎 宮崎 保 松嶋 喬 桜田 恵右 西尾 利一 森 忠三 宮森 正 奥野 正孝 江尻 崇 前沢 政次 大川 藤夫 関口 忠司 吉新 通康 岡田 正資 池田 博 釜野 安昭 高畠 由隆 高山 千史 吉村 望 小田 利通 川崎 孝一 堀 原一 山根 至二 小森 亮 小林 建一 田中 直樹 国府田 守雄 高橋 宣胖 島田 甚五郎 丸地 信弘 松田 正己 永井 友二郎 向平 淳 中嶌 義麿 鎮西 忠信 岡田 究 赤澤 淳平 大西 勝也 後藤 淳郎 下浦 範輔 上田 武 川西 正広 山室 隆夫 岡部 保 鳥居 有人 日向野 晃一 田宮 幸一 菅野 二郎 黒川 一郎 恩村 雄太 青木 高志 宮田 亮 高野 純一 藤井 正三 武内 恵輔 南須原 浩一 佐々木 亨 浜向 賢司 本田 麺康 中川 昌一 小松 作蔵 東 匡伸 小野寺 壮吉 土谷 茂樹 岡 国臣 那須 郁夫 有田 清三郎 斎藤 泰一 清水 強 真島 英信 村岡 亮 梅田 典嗣 下条 ゑみ 松枝 啓 林 茂樹 森 一博 星野 恵津夫 正田 良介 黒沢 進 大和 滋 丸山 稔之 織田 敏次 千先 康二 田中 勧 瓜生田 曜造 尾形 利郎 細田 四郎 上田 智 尾島 昭次 大鐘 稔彦 小倉 脩 林 博史 島 澄夫 小池 晃 笹岡 俊邦 磯村 孝二 岩崎 栄 鈴木 荘一 吉崎 正義 平田 耕造
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.145-173, 1984-06-25 (Released:2011-08-11)
著者
兼松 隆 照沼 美穂 後藤 英文 倉谷 顕子 平田 雅人
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.105-112, 2004 (Released:2004-01-23)
参考文献数
52

イオンチャネル内蔵型のGABAA受容体は,γ-アミノ酪酸(GABA)をトランスミッターとし,脳における抑制性神経伝達をつかさどる主要な受容体である.この受容体の異常は,不眠·不安·緊張·けいれん·てんかんなどの様々な病態を引き起こすことが知られ,GABAA受容体の正常な働きは,複雑な脳·精神機能を形成する分子的基盤の重要な一角をなす.興奮性神経伝達機構の解析が分子レベルで進む中,抑制性神経伝達機構の解析は後手にまわっている感があった.しかし近年,GABAA受容体の相互作用分子が次々と発見され,それらの分子をとおしてGABAA受容体の機能制御機構を解析することで,その全体像が明らかになりつつある.本総説は,現在明らかになっているGABAA受容体の構築から分解系に至る分子メカニズムを「GABAA受容体の一生とそれを調節する分子達」と題してまとめたものである.我々は,新規イノシトール1,4,5-三リン酸結合性タンパク質(PRIP-1)研究を進める中,PRIP-1に相互作用する2つの分子を同定した.その一つがGABARAP(GABAA受容体の膜輸送に関係があるとされる分子)であったことから,PRIP-1欠損マウスを作製しGABAシグナリングの解析を行った.するとこのマウスは,GABAシグナリングに変調をきたした.また,PRIP-1はプロテインホスファターゼであるPP-1に結合し,この酵素活性を負に調節する.最近,PRIP-1がGABAA受容体自身のリン酸化/脱リン酸化反応をPP-1の酵素活性を制御することで調節することをみいだした.あわせてここで紹介する.今後,抑制性神経伝達機構解明研究が分子レベルで進めば,複雑な脳·精神機構の理解が深まり,多くの脳·精神疾患の新しい治療法や新薬の開発につながることが期待できる.
著者
藤倉 まなみ 大和 妃香里 福岡 雅子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第29回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.105, 2018 (Released:2018-12-03)

SNSに写真を掲載することを目的に「インスタ映え」する料理を注文し、それを食べ残すことにより、食品ロスが増加しているかどうかを明らかにするため、Webを利用したアンケート調査を実施した。その結果、外食時に料理を撮影し、かつSNSに掲載した経験があるのは、全数の38%で、SNS利用者の半数以上と考えられた。料理写真のSNS掲載の経験がある者は、写真映え等を意識した注文を行っており、「メガ盛り注文」「共有のための注文」「いいね注文」の経験者は、そのような注文をした時に、撮影やSNS掲載をしないグループよりも有意に食べ残し頻度が大きかった。また、同一回答者でみても、普段よりもそのような注文をした時の方が有意に食べ残し頻度が大きかった。SNSの利用率は今なお増加傾向にあるため、今後SNSへの掲載に起因する食べ残しは増加する可能性がある。
著者
朝倉 宏 中村 寛海
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,食品媒介性感染症として世界中で多発するカンピロバクターがヒト生体内での感染過程で顕す遺伝子発現及び腸内細菌叢の動態を発症患者由来検体を研究対象にプロファイル化し,疫学情報及び原因菌株のゲノム特性と融合を通じ,本菌感染に伴う病態発現の分子基盤に係る基礎知見の集積を図ることを目的としている。ヒト腸管環境において本菌が顕す病態形成機構は依然として不明な点が多く、主たる病原因子の同定並びに微生物間クロストークに関する分子解明,ひいては予防治療に資する標的分子の特定や腸管環境下の細菌叢調節を通じた感染制御策の構築等へと波及することが期待される。