著者
坂本 拓弥
出版者
日本体育・スポーツ哲学会
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.121-136, 2017 (Released:2018-05-02)
参考文献数
89
被引用文献数
1 1

This paper provides a new contention, which could be needed for developing the anti-doping education in Japan, through the critical consideration about its present situation. For this purpose, the question, “why do athletes choose doping?”, is explored from the perspective of Girard’s theory of desire. This theory suggests that the competitive sport includes the desire for victory and that the desire could paralyze the judgement of athlete with extravagance. Girard points that human desire is the “triangular” desire as a mimetic one and it means that the desire of a subject is not linear to an object but the mimesis of the mediator’s desire. In the position that the essence of competitive sport is the competition, the essence is equal to the desire for victory. Therefore, in the competitive sport, athletes have the desire for victory which is mimetic desire of the opposition. Moreover, the mediator also mimics the subject’s desire and its mediation form is called as the reciprocal mediation. This mediation form becomes “the hell of reciprocal mediation” in the case in which the spiritual distance between the subject and the mediator is close, and it builds the hostile relation between an athlete and the opposition. This relation makes the athlete to have the cognition which wants to just defeat the opposition rather than to win the game or match. Hence, in the hell of reciprocal mediation, an athlete chooses doping with paralyzing her sense of reality which is willing to follow the written rule or the spirit of fair play in competitive sport. Finally it is presented that, in anti-doping education, athletes themselves have to recognize the risk of the triangular desire in competitive sport.
著者
坂本 治也 富永 京子 金澤 悠介
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
pp.NPR-D-22-00013, (Released:2024-02-16)
参考文献数
41

なぜ日本人の政治参加は他国と比べて低水準なのだろうか.なぜこの30年あまりの間に低下し続けているのだろうか.これらの問いに答える新たな理論的説明として,本稿では過去の大規模な社会運動に対する否定的評価が政治参加水準に与える影響に着目する.つまり,日本人の政治参加が他国の人々に比べて低調であり時系列的にも低下しているのは,過去の社会運動に対する悪いイメージが投票参加を除いた政治参加全般に投影されて,政治参加への強い忌避感を生じさせているためではないか,との仮説を立て,その仮説の妥当性を検証した.分析の結果,1960年安保闘争や2015年安保法制抗議行動への否定的評価は,投票参加以外の政治参加(ボランティアや寄付を含む)に対して有意な負の影響を与える関係にあることが明らかとなった.日本人の政治参加水準を向上させるためには,過去の大規模社会運動に対する悪いイメージが政治参加全般に安易に投影されている現状を改めて行く必要がある.
著者
岡田 凌太 坂本 光重 井保 武寿 中川 良隆
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.31-42, 1992-12-01 (Released:2013-04-26)

明石海峡大橋は中央支間長1990mの3径間2ヒンジ補剛トラス橋として建設される世界最大の吊橋である。約300mの主塔をささえる2基の主塔基礎 (2P, 3P) は設置ケーソン工法により施工され, ケーソン内には全体で約50万m3の水中コンクリート (水中不分離性コンクリート) が打設された。この水中不分離性コンクリートには, 打設面積が広く, かつ1回のコンクリート打設量が約1万m3に及ぶため, 厳しい品質規定が定められた。本稿は, 2P, 3Pで打設した水中不分離性コンクリートの施工概要について報告する。
著者
髙岡 昂太 坂本 次郎 橋本 笑穂 北條 大樹 古川 結唯 菊池 愛美 佐藤 瑛洋 先光 毅士 山本 直美 鈴木 聡
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1D4GS1305, 2020 (Released:2020-06-19)

日本では推計で毎年500人の子どもが虐待で死亡している。親が嘘をつく場合や、子どもが加害者から脅され話せないなど、正確な情報収集が難しい課題がある。ベテラン職員であっても判断を誤ることがあるため、虐待対応には判断の質の向上が喫緊に求められる。さらに、増加する虐待通告件数に対応する施策も満足に打てていないことが問題である。申請者らは現場職員の判断を支援し、かつ虐待件数増加に対応する施策決定に向けたAI実証実験を2019年7月より始めた。現場と達成目標をすり合わせた上で、一時保護すべきケースの見過ごしを無くすため、予測精度の高い勾配ブースティングを実装した。また、将来的な再発率や重篤度の算出には、現場の説明責任を担保するため、因果推論を行う確率モデリングを採用した。試行の進捗として①現場の業務フローの差異の把握、②データ収集の調整、③パラメーターチューニング、④UI/UXの改修を含むアジャイル開発、⑤ICTが得意または苦手なユーザーへの研修の配慮など、社会課題解決に向けた社会実装で得た知見について発表を行う。
著者
坂本 泉 後藤 春彦 髙嶺 翔太 林 廷玟
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.713-720, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究の目的は、地元住民と地域外企業による「地域価値共創事業」の実態とそれを円滑に進めるための体制について明らかにすることである。 はじめに、瀬戸田町における「地域価値共創事業」を概観した。次に、「地域価値共創事業」に対する地元住民と地域外企業の評価を明らかにした。調査の結果から、自治体と地域マネジメント企業が、地域のコーディネーターとして「フィルター」「ハブ」「バッファ」の3つの機能を果たしていることが明らかになった。両者は密に連携を取り、地元住民や地域外企業と良好な関係性を構築する必要がある。今後の「地域価値共創事業」においては、自治体がこのような体制を可能にする原資を提供すること、地域マネジメント企業の存在、さらには事業開始までに十分な準備時間を確保することが必要不可欠である。
著者
坂本 百大
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.35, pp.1-18, 1985-05-01 (Released:2009-07-23)
著者
有村 公一 黒木 愛 西村 中 坂本 哲也 飯原 弘二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.776-783, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
16

目的:本邦における脳卒中病院前救護の現状は不明であり,全国的な調査が必要である。方法:本研究では全国の消防本部を対象としたアンケート調査を実施した。病院前診断,医療機関情報,搬送手段,ICT,脳卒中最新治療の周知状況,事後検証・再教育体制などについてアンケート項目を設定した。結果:PSLSおよび病院前脳卒中スケールの活用率はそれぞれ47.6%,59.9%であった。半数以上で管内に常時血管内治療が可能な施設がなく,ドクターヘリは53%で活用されていた。ICTは41.1%で導入されていた。また脳卒中最新治療の認知は33.9%にとどまっていた。搬送先病院との事後検証は72.6%で行われていたが,地域MC協議会の事後検証の半数以上に脳卒中専門医が関与していなかった。結論:脳卒中病院前救護の標準化,地域格差の是正,医師と救急隊とのより積極的な情報共有などが必要であると考えられた。
著者
坂本 和靖 森田 陽子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、人間の行動規定要因としての規範意識の在り方が(Akerlof and Kranton2000)、家計行動に与える影響に関する実証分析を行った。ここでは規範として「性別役割分業意識(男性は仕事、女性は家事・育児)」に注目し、それが既婚女性の時間配分に与える影響を計測した。先行研究に倣い、(年齢・学歴・居住地域から推計された)女性の潜在的稼得所得を軸に分析した結果(Sakamoto and Morita 2020)、夫所得よりも潜在的稼得所得が高い女性ほど就業せず、稼得所得を抑制させる傾向が、また夫よりも実際の稼得所得が高い女性は逸脱行為を補うため家事時間が長くなる傾向が確認された。
著者
木村 建貴 香西 直文 坂本 文徳 福谷 哲 池上 麻衣子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_375-III_382, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
20

粘土鉱物に吸着したセシウムの一部が微生物の作用により溶出することが明らかになってきている.一般的に植物は微生物と共生関係を築くが,粘土鉱物からのセシウム溶出に係る植物と微生物間における相乗効果は報告されていない.本研究では,植物由来の有機酸に着目し,まず植物(シロツメクサ)が生産する有機酸分析を行った.次に,シロツメクサ由来として同定された乳酸を用いて,微生物の培養実験を黒雲母存在下で行った.その結果,増殖の誘導期において黒雲母から溶出した鉄等の量が乳酸の添加により増大した.また,セシウムを吸着させた黒雲母からセシウムが溶出した.これは黒雲母が部分的に溶解したことに伴い吸着していたセシウムが溶出したと考えられる.また,溶出したセシウムは,増殖した微生物に吸収されたことが示唆される.
著者
坂本 将俊
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.663-667, 2017 (Released:2017-07-01)

我が国での抗うつ剤の歴史は1958年に世界初の抗うつ剤であるイミプラミン(商品名:トフラニール)が発売されたところから始まった。イミプラミンが発売されてから50年以上が経ち、抗うつ剤も少しずつ進化してきた。初期の抗うつ剤は副作用に大きな問題があったが、現在の抗うつ剤は安全性に優れるものが多くなってきた。しかし現在においても抗うつ剤の基本的な原理はいまだ変わっていない。このコラムでは、現在使われている抗うつ剤について、その効果・副作用と限界について、抗うつ剤の歴史をみながら照会する。
著者
森下 啓明 坂本 英里子 保浦 晃徳 石崎 誠二 月山 克史 近藤 国和 玉井 宏史 山本 昌弘
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.120, 2006 (Released:2006-11-06)

<症例> 61歳男性、既往歴に脳梗塞がある。アレルギー歴なし。 平成17年10月29日昼頃、自宅近くの山林で採取した白色のキノコ約20本を調理して摂取した。同日20時頃より腹痛、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状が出現したが自宅で経過観察していた。10月31日には経口摂取不能となったため、当院救急外来を受診。受診時は意識清明、バイタルサインに大きな異常はなく、神経学的異常所見も認めなかった。しかし、血液検査に於いて肝機能障害、腎機能障害を認めたことからキノコ中毒を疑い緊急入院となった。 患者の持参したキノコの特徴および、経過(消化器症状に続発する肝機能障害)よりドクツルタケ(アマニタトキシン)中毒を疑い、日本中毒センターに問い合わせを行った上で治療を開始した。補液、活性炭投与(25g/回、6回/日、2日間)、血液還流療法(2日間)、ペニシリンG大量投与(1800万単位/日、2日間)を施行し、肝機能障害は改善傾向、第26病日には正常化した。また、第7病日より急性膵炎を発症したが、メシル酸ガベキサート投与などを行い第28病日には改善したため、平成17年12月26日退院となった。 入院時に採取した血液、尿および持参したキノコは日本中毒センターに送付し、分析を依頼している。<考察> ドクツルタケ、タマゴテングタケなどに含まれるアマニタトキシンは、ヒトにおいては約0.1mg/kgが致死量とされており、日本におけるキノコ中毒の中で最も致死率の高いものである。急性胃腸症状とそれに続発する肝機能障害が典型的な経過であり、肝不全が死因となる。本例は典型的な臨床経過よりアマニタトキシン中毒と診断したが、ドクツルタケでは1から2本で致死量となることから、今回摂取したキノコは比較的アマニタトキシン含有量の少ない種類であったものと推測された。治療法としては腸肝循環するアマニタトキシンを活性炭により除去すること及び対症療法が中心となり、解毒薬として確立されたものはない。血液還流療法が有効とする報告もあるが、未だに確固たる証拠はない。ペニシリンG大量投与によってアマニタトキシンの肝細胞への取り込みが阻害されることが動物実験によって確認されているが、臨床における有効性は確立されていない。その他、シリマリン、シメチジン、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン等が使用されることもあるが、いずれの有効性も未確立である。 本例では活性炭投与、血液還流療法、ペニシリンG大量投与を行い、肝機能障害を残すことなく生存退院に至った
著者
林 文代 杉浦 静子 坂本 弘
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.91-96, 2003-05-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
22

This study investigated a method of clarifying the effects of sound elements in music on blood pressure. As experimental sound conditions, two paired sets were made; one pair was composed music R and fluctuating noise corresponding to music R, the other pair was composed music S and fluctuating noise corresponding to music S. Subjects were exposed to each of the sounds for 130 sec at the most comfortable intensity level for each sound as adjusted by the individual subject. The blood pressure was measured continuously by Finapres. Elevation of the blood pressure while listening to music R was more dominant than that on exposure to fluctuating noise. That was, the effects of timbre and melody were manifested. On the contrary, the changes in blood pressure on listening to music S showed results similar to those on exposure to fluctuating noise, indicating that sound intensity, tempo, and rhythm were the main source of the effect. This study presented the new method for clarifying the physiological effects by the sound elements.
著者
坂本 保夫
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-6, 2021 (Released:2021-03-30)
参考文献数
20

近年のライフスタイルでは,眼にとって「ストレス的な光」または「必要な光」として,紫外線(UV),バイオレットライト(VL),ブルーライト(BL),イエローライト(YL)が注目されている。デジタル化時代と高齢化社会において,これらの光ばく露が最適になるように,眼鏡レンズのスペクトラルバランスを考えてみる。UV,VL,BLの波長領域は重なっており,適度なばく露と過度なばく露の判別は難しい。確かに,最適な光線被ばく量には個人差がある。今後も,光から眼を守るためには,基礎・臨床・疫学的な研究・調査が必要であり,レンズの開発と使用者への啓発が望まれる。
著者
荒木 裕子 山本 直子 岩崎 智裕 坂本 聖人 丸井 正樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.154, 2017 (Released:2017-07-08)

【目的】ネームとはタイの発酵ソーセージである。ネームは乳酸発酵により、微生物の繁殖を抑制しており、生食できるのが大きな特徴である。演者らは、これまでネームの安全性や調製方法による細菌の変動等の検討を行ってきた。本研究では、ネームの嗜好性を検討することを目的に物性、乳酸量、pHの経時的変化を観察した。また、細菌検査も行い、安全性の検討も行った。【方法】試験試料は、調製材料のみの自然発酵区と材料にネームパウダー、無水グルコン酸、プレーンヨーグルトを添加した4種類を調製した。35℃で4日間発酵させ、物性、乳酸量およびpHを経時的に測定し、乳酸菌数と大腸菌群による安全性の検討を行った。【結果】乳酸量とpHは発酵が進むにつれ乳酸量が増加し、pHの減少が見られた。中でもグルコン酸添加区、ネームパウダー添加区は発酵0日で乳酸量の増加が著しくpH5を下回った。物性測定では調製方法により「かたさ」「凝集性」に差が出たが、3日発酵の完成時にはほぼ同じ値になった。完成したネームの細菌検査では、グルコン酸添加区、ネームパウダー添加区では大腸菌群は十分に抑制されていたが、自然発酵区、ヨーグルト添加区では大腸菌の抑制は十分ではなかった。自然発酵区とヨーグルト発酵区では乳酸菌数の大きな増殖が見られ、これらの適度な酸味が嗜好性に貢献していることが考えられた。4種の調製方法では、ヨーグルト添加区が調製が簡便であり完成したネームの性状も優れていた。
著者
宮野 加奈子 吉田 有輝 坂本 雅裕 上園 保仁
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
看護薬理学カンファレンス 2020東京 (ISSN:24358460)
巻号頁・発行日
pp.ES-2, 2020 (Released:2020-12-28)

オキシトシンは、9 つのアミノ酸から構成されるペプチドホルモンであり、子宮収縮を促すホルモンとして 1906 年に発見された。オキシトシンは視床下部室傍 核(PVN)および視索上核(SON)で合成後下垂体後葉から分泌され、当 初は "出産や子育てに関連するホルモン" として、子宮収縮や乳汁分泌などの 生理作用をもつと考えられていた。しかしその後多くの研究により、オキシトシン は母性・社会行動の形成、抗ストレス、摂食抑制など非常に幅広い生理作用 を持つことが明らかとなり、"愛情ホルモン" あるいは "幸福ホルモン" と呼ばれ るようになった。漢方薬「加味帰脾湯」は 14 種類の生薬で構成されており、神経症、精神 不安、不眠症、貧血などに対して処方され、その効果はオキシトシンの作用と 一部共通している。しかしながら、加味帰脾湯がオキシトシンシグナルに及ぼす 影響については不明である。本講演では、加味帰脾湯がオキシトシン受容体な らびにオキシトシン分泌に関わるイオンチャネルにどのような作用を有するかとい う私たちが最近行っている研究の一部を紹介する。加えて近年、オキシトシンは PVN および SON に加え、脳や脊髄に投射しているオキシトシンニューロンからも分泌され、鎮痛作用を有することが明らかに されてきた。オキシトシンの鎮痛作用には、オキシトシン受容体を介する経路お よび受容体を介さない経路が報告されている。後者はオキシトシン受容体に似 た構造をもつバソプレシン1A 受容体、ならびに痛みのセンサーのひとつである transient receptor potential Vanilloid 1 (TRPV1) などが関与しているこ とが報告されている。加えてオキシトシンの鎮痛作用に、オキシトシンによる内 因性オピオイドの増加、ならびに オ オピオイド受容体の関与が報告されており、 オキシトシンの鎮痛作用にオピオイドシグナルの関与が示唆されている。しかし ながら、オキシトシンのオピオイドシグナルに対する詳細な作用については不明 である。そこで、加味帰脾湯のオキシトシンシグナルに対する作用に加えて、オ キシトシンのオピオイド受容体を介するシグナルへの作用について、当研究室で の研究成果を紹介する。本講演がオキシトシンの多彩な作用を説明する一環 となれば幸いである。